【クアラルンプール時事】中国と東南アジア諸国連合（ASEAN）の外相会議が5日、クアラルンプールで開催され、最大の懸案である南シナ海問題などを協議した。

　協議後に記者会見した王毅外相は、南シナ海の緊張緩和に向け、法的拘束力を持つ「行動規範」策定協議の加速や、10月中旬にASEAN各国の国防相を中国に集めて初の非公式会議を開くことなど10項目に上る新たな協力提案を示したと明らかにした。

　会見に同席したタイのタナサック副首相兼外相は、ASEANを代表して協力提案に「歓迎」の意を表明した。同副首相によると、中国とASEANは救難活動に関するホットライン開設でも合意した。

　中国とASEANの間では、中国が昨年から本格化させた南シナ海・南沙（英語名スプラトリー）諸島の岩礁埋め立て問題が深刻な摩擦となっている。

こうした事態を受け、王外相は行動規範協議の加速を提示する一方、米国などを念頭に「域外国家はASEANや中国の努力を支持し、地域の緊張化や複雑化をもたらす行動を取らない」ようけん制したほか、「各国は航行・飛行の自由を維持する」よう求めた。

　王外相が提案した10項目協力ではこのほか、2016年から5年間にわたるASEANとの「行動計画」の策定や、双方の善隣友好協力条約締結に向けた協議の可能性を探る作業部会の設立などを挙げた。

　王外相は「ASEANとの1時間半の協議で90％は『協力』を話し合った」と述べ、ASEANとの関係の重点はあくまで協力であり、南シナ海問題ではないと強調した。

王外相は事前にASEAN各国外相と個別に会談するなど協調を前面に打ち出し、南シナ海問題が争点になって中国に批判が集中する事態を一応は回避した。

　王外相は行動規範の協議加速を訴えたものの、日米やASEANの間では、中国側が南シナ海に対する支配の拡大とその既成事実化のため、対話・協力の姿勢を示しつつ引き延ばしを図り、埋め立て・開発などの時間稼ぎをしているとの不信感が根強いのが現実だ。

中国、ASEANに10項目協力提案＝南シナ海協議加速や国防相会議開催

時事通信 5日(水)18時47分

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