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2018年01月27日

「小池知事に裏切られた…」公共事業巡り人気漫画家の訴え

「小池知事に裏切られた…」公共事業巡り人気漫画家の訴え
2018年01月26日 11時00分 NEWSポストセブン

「平穏だった日常生活が東京都によって奪われようとしているんです。あれだけ“都民ファースト”を謳っていた小池百合子都知事(65才)には裏切られた気持ちしかありません。都民の声にちゃんと耳を傾けてほしいんです!」

 こう怒りをぶちまけるのは榮倉奈々・豊川悦司のW主演で映画化された『娚の一生(おとこのいっしょう)』や『姉の結婚』などで知られる人気漫画家の西炯子(けいこ)氏だ。

 京王井の頭線・永福町駅から徒歩10分ほどにある閑静な高級住宅街。緑豊かな公園では、子供たちが日が暮れるまで遊んでいる。近くを流れる神田川はソメイヨシノの桜並木が続き、両岸の遊歩道は川の流れや鳥の声に耳を傾けながら散歩やジョギングを楽しむ人の姿があり、朝夕は制服姿の学生やランドセルを背負った子供たちが駆けていく。この住宅街の一角に西氏の仕事場兼自宅がある。

「現在、神田川の治水対策のため、都は調整池を作る工事を計画しています。その工事は日常生活を脅かすほど大規模な上に、8年にも及ぶ。そんな長期間ただ耐えろというのはあまりに酷です。このままでは私たち、住民は暮らしていけません」(西氏)

 これまで神田川流域では台風や豪雨による氾濫で浸水被害が発生してきた。2005年9月には1時間に100mmを超える豪雨によって、杉並区や中野区を中心に3000戸を超える浸水被害に見舞われた。そのため、都は各地で護岸整備や分水路、調整池による治水対策を進めてきた。

 西氏が抗議する調整池もその1つ。完成予定は2025年度で、昨年10月までテニスコートなどに使用されていた広大な土地に、25mプール100杯分を貯水できる調整池が整備されるという。

 西氏が同計画を知ったのは昨年7月上旬。その5か月前に都は説明会を開いたというが、周知されておらず、その案内に気がつく住民は少なかった。西氏宅に8月1日に行われる工事説明会のチラシが届いたのは7月に入ってから。

 寝耳に水だった西氏ら住民が都に問い合わせると、その工事内容は受け入れがたいものだった。

 西氏の自宅を含む、近所の住宅前を通る狭い道路が工事車両の搬入ルートに指定されており、そこを1日60台の10tトラックが往来する。さらに遊歩道を含む、神田川に杭を打ち、新たな道路を作り、そこも搬入ルートに。また自宅前の道路には高さ3mの防音壁が立ちはだかり、春には満開となるソメイヨシノも伐採されるという。


「調整池を作ることに反対しているわけではありません。工事車両の搬入ルート選定が、われわれ住民にとって到底納得できるものではないからです。都に問い合わせをしたら“本来説明義務はない。説明会翌日(8月2日)には工事を始める”と言われた住民もいました。充分な説明がないまま、工事をスタートさせようとしたことにも不信感が拭えません」(西氏)

◆騒音や振動に悩まされ、窓やカーテンも開けられない

 8月1日に行われた説明会で住民の不満は爆発。都に「見直し」を求めた。西氏ら住民の抗議内容は以下の通り。

●1日最大60台の大型トラックの通行による騒音は幹線道路と等しく、住宅街ではありえない。また狭い道路でのトラックの往来は子供たちに危険が及ぶ。
●地盤の緩い河川に杭を打つことへの家屋の影響。その補償も曖昧。
●高さ3mの防音壁は日光や通風を妨げる上、死角もできて防犯上危険である。
●8年間、騒音や砂埃対策として、窓を閉め切る生活が続くことが苦痛である。

「私は自宅を仕事場にして漫画を描いています。自然豊かで静かな環境だからこそ、この地に家を買ったんです。職業柄精神的にツラいことも多く、窓を開けて自然と触れることで気分転換しながら、読者に漫画が届けられているんです。

 工事が始まってしまえば、一日中トラックが行き来する音や振動に悩まされ、さらには窓やカーテンも開けられず、日も差さない状況が続く。家を売ろうにも、この工事が10年近く続く以上、買い手も見つからないでしょうし、資産価値も下がります。八方塞がりです」(西氏)

 そして説明会から半年が経った昨年末、都は「見直し案」を提示。だが、その内容は住民の気持ちを蔑ろにするような内容だったという。

「既存案から多少の変更があっただけで、根本は何も解決していない。私たちが提案したルートも都は“検討した”と言うが、本当に検討したのかははなはだ疑問です」(西氏)

 東京都にこの状況について話を聞くと、こう回答した。

「もともと、昨年8月に着工というわけではなく、説明会で了承を得られれば工事に入っていくという予定でした。昨年7月に住民からの反対意見があることは認識しており、搬入ルートの選定にご意見と要望がございましたので、それを検討しております。昨年末、提案した見直し案は確定したものではなく、住民や近隣の学校などに意見をうかがっている段階です。より安全なルートを選び、地元にご理解の上で事業に着手したい」(東京都第三建設事務所工事第二課課長)


 今後、もう一度工事説明会を開いた上で工事に着手するという。これまで“都民ファースト”を喧伝してきた小池都知事に住民の声は届いているのか。

「そこまでは私もわかりません。反対意見があることは上の建設局には上げていますが、私が直接知事には上げておりませんので、把握しておりません」(前出・課長)

◆訴訟を起こしてもなかなか勝てない

 西氏に突如降りかかった窮地だが、これは決して他人事ではない。2014年、東京都江戸川区で国交省が進める「スーパー堤防事業」のため、約90世帯の住民が立ち退きを迫られ、新宿区でも都営アパート住民が新国立競技場建設のため、2016年1月末までに半ば強制的に移転させられた。

 公共事業問題に詳しい法政大学名誉教授で弁護士の五十嵐敬喜氏は解説する。

「公共事業は規模の大小はあるが、全国各地で行われている。公共事業は国や自治体が税金を使って行うもので、必ず手続きを踏んでいる。だが、手続きが充分に住民に伝わっていないためにいきなり工事が始まるということも少なくない。いちばんの問題は住民の意見が反映されず、訴訟を起こしても勝てないことが多いこと。ですが可能性はゼロではありません。現地レベルでは反対の声を上げ、議会に陳情したり、行政と根気強く対話していくことが大事です」

 最後に西氏はこう小池都知事に訴えた。

「皮肉にも私が暮らす杉並区は“アニメのまち”を標榜しています。漫画文化の担い手の1人として、ただ穏やかに仕事をさせてほしいだけ。小池都知事は私たち都民を守る気はあるのでしょうか?」

 小池都知事が掲げる“新しい東京”を作るための3つのシティの1つ『ダイバーシティ“誰もがいきいき生活できる、活躍できる東京”』の実現のためにも、ぜひ耳を傾けてほしい。

※女性セブン2018年2月8日号

タグ:小池都知事
posted by 小出美水 at 14:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 政治
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