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2017年09月11日

病院では スマホ 電源 OFF が よさそうです 微弱電波で  誤作動が起きてます

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通常は画面の右上に心拍数などが表示されている

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LED照明からの電波干渉などで画面右上の心拍数表示が消えた

注意したい病院のスマホ 利便性の死角 政策 現場を歩く
2017/9/10 6:40日本経済新聞 電子版(写真 日経WEB刊)

 このままでは病院でスマートフォン(スマホ)を使いにくくなるかもしれない。1人1台の時代になりつつあるスマホが、政策に新たな課題を突きつけている。

 埼玉県日高市。東京都心から電車で1時間半ほどの郊外に、県内を代表する医療センターを抱える埼玉医科大学がある。多くの医師やスタッフは今、病院内でのスマホの使い方に頭を悩ませている。病院内を飛び交う電波の影響で、医療機器が誤作動するケースが目立っているためだ。

■照明つけるだけで誤作動

 「これが医療用テレメーターです」。センターで働く加納隆・滋恵医療科学大学院大学教授が見せてくれたのは、画面が付いた機器だ。患者の体にセンサーを装着すると、病室内のアンテナから数十メートル先のナースセンターに心拍数などのデータが送られる。離れた場所からでも患者の状況が画面で把握でき、何かあればアラームが鳴る。実験用にテレメーターには模擬的に心拍する装置を取り付けてあり、画面には「心拍数60」などと表示されている。

 「見ていてください」。加納氏がテレメーターのそばに置いた発光ダイオード(LED)照明を点灯させると、画面に表示された心電図がちらつきはじめ、やがて心臓停止の表示になった。

 医療用テレメーター、輸液ポンプ、電子カルテの管理。あらゆる医療機器が電波を使ってデータをやり取りする時代になった。遠く離れたところから状況を把握できれば、より多くの患者に手厚い診療ができるようになる。利便性が一気に高まる。

 そこで新たな問題が生じている。様々な電波に医療機器が干渉され、誤表示が出るといったことが起こっているのだ。

 併設されている国際医療センターの病棟で話を聞いた。「誰にもつながっていないはずのテレメーターの画面に、突然心拍数が表示されたことがあります」。センターのスタッフは“怪奇現象”を証言する。機器が誤って他人のデータを受信して表示してしまったのだ。工事現場のクレーンの無線にテレメーターが反応することもある。

 「生体情報が誤って届くのは極めて危ない」と加納氏は言う。情報と名前が一緒に送られるケースもあり、プライバシーの問題にも発展しうる。

 病院でおなじみの注射や医薬品を運ぶときに使うステンレスのカートもやっかいだ。これが電波が通るのを邪魔して、データが送られないなどの事象も発生したことがあるという。

 埼玉医科大国際医療センターではベッド数700床に対し、30人以上の臨床工学技士を抱え、日々医療機器の管理を徹底するよう体制を整えた。「ここまでそろえている病院は少ないのでは」と加納氏。フロアごとに利用する電波の帯域を細かく設定し、機器同士の干渉がなくなるようにしてきた。

■総務省は意見交換を開始

 総務省は医療機関で適正に電波が使われるように、啓発活動と意見交換の場を6月から設け始めている。高市早苗前総務相が音頭を取って始めた。高市氏の家族が入院したときに、テレメーターの誤表示を経験したことがきっかけだ。

 だが、病院での電波利用は医療従事者だけの問題ではない。

 かつて、病院では携帯電話の利用が禁じられていた時代があった。第2世代(2G)の携帯までは電波の出力が強く、体内に埋め込まれたペースメーカーに支障を来す恐れがあったためだ。

 電波が弱くても通じる第3世代(3G)や高速通信(LTE)の普及にともない、政府や業界関係者からなる電波環境協議会は2014年8月、病室で医療機器より1メートル以上離れれば利用できるとの指針を打ち出した。通信技術の進歩が、スマホをどこでも気軽に使える環境にしたといっていいだろう。20年に実用化が始まる次世代無線通信「第5世代」(5G)でも、まずは携帯電話の通話では問題はないとされる。

 だが、だからといって好き勝手にスマホでネットにつなぐのは注意したほうがいいかもしれない。問題になり得るのは、無線LANだ。

■無線LAN接続も課題に

 医療センターのスタッフがある画面を見せてくれた。センターに設置されている無線LANルーターの利用状況だ。ひときわ大きな波形が出ていたのは、電子カルテのために使われているものだが、そのほかにも何種類もの電波が重なって波形が表示されている。「誰かがスマホなどでネットにつないでいるものです」

 今後は医療器具の利便性を高めるため、インターネットにつなげて操作したり診断に活用したりするケースが増えてくることが予想される。そのとき、外来患者や見舞客が無線LANにアクセスし、電波が混雑してしまうと、診断に支障を来す可能性がある。

 増え続けるスマホ。病院で使えなくなれば、患者からも不満が出るだろう。命にかかわることだから、改めて規制をするのか。それとも安心してスマホを使えるように機器を開発し、ルールを整えるのか。便利なテクノロジーの普及を止めるすべがないことだけは、はっきりしている。

(秋山文人)


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