2013年06月22日
押鐘博士の顔が蒼ざめて
押鐘博士の顔が蒼ざめてみるみる白けていったが、糸――の真相を知らない旗太郎は、不自然な笑を作って、呟くように云った。
「ああ、僕は弩の絃のことをお話しかと思いましたよ」
しかし、博士は法水の顔をまじまじと瞶めて、突っかかるように訊ねた。
「どうも、仰言る言葉が判然と嚥み込めませんが、しかし、結局あの遺言書の内容が、なんだと云われるんです?」
「ああ、僕は弩の絃のことをお話しかと思いましたよ」
しかし、博士は法水の顔をまじまじと瞶めて、突っかかるように訊ねた。
「どうも、仰言る言葉が判然と嚥み込めませんが、しかし、結局あの遺言書の内容が、なんだと云われるんです?」
「僕は、現在では白紙だと信じているのです」と突然眼を険しくして、法水は実に意外な言を吐いた。
「もう少し詳細に云いますと、その内容が、ある時期に至って、白紙に変えられたのだ――と」
「莫迦な、何を云われるのです」と博士の驚愕の色が、たちまち憎悪に変った。そして、恥もなく、見え透いた術策を弄しているかの相手を、しげしげ瞶めていたが、ふと心中に何やら閃いたらしく、静かに莨を置いて云った。
「それでは、遺言書を作成した当時の状況をお聴かせして、貴方から、そういう妄信を去らせてもらいましょう。……その日はたしか、昨年の三月十二日だったと思いますが、突然先主が儂を呼びつけたので何かと思うと、今日偶然思い立ったので、ここで遺言書を作成すると申されたのでした。薬剤師転職 口コミ 薬剤師 転職サイトナビ
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