2013年07月27日
小郷は思わずその唇の動きに
小郷は思わずその唇の動きに見とれてしまった。
「君勇もいいが、鈴子もいい」
舞妓を一本にするには、君勇の旦那になるのとは較べものにならぬくらい金がいるが、
「君勇もいいが、鈴子もいい」
舞妓を一本にするには、君勇の旦那になるのとは較べものにならぬくらい金がいるが、
それぐらいの金は小郷にとっては、何でもなかった。使い切れぬぐらいの新円を銀行から引き出していたのだ。
小郷にそんな野心があるとは、鈴子は気づかず、君勇に話しかけた。
「君勇姐さん、ええ扇子お持ちどんな」
「えッ?」
君勇はわれにもあらずどぎまぎした。
扇子には鶴の絵が描かれているのだ。鶴雄の鶴に因んだ絵だとは知られたくない。
「それどこでお買いやしたんどす……?」
「河原町で……」
と、言いかけて、君勇はいきなり、
「――ほしかったら、あんたにあげる」
「おおーけに……」
鈴子は無邪気にその扇子を受け取った。
そこへ女中が、
「あの、新聞社の方がお見えどす」
と、知らせて来た。
歯科 税理士 酒は憂いを掃う玉箒 ? allog (ブログ)
小郷にそんな野心があるとは、鈴子は気づかず、君勇に話しかけた。
「君勇姐さん、ええ扇子お持ちどんな」
「えッ?」
君勇はわれにもあらずどぎまぎした。
扇子には鶴の絵が描かれているのだ。鶴雄の鶴に因んだ絵だとは知られたくない。
「それどこでお買いやしたんどす……?」
「河原町で……」
と、言いかけて、君勇はいきなり、
「――ほしかったら、あんたにあげる」
「おおーけに……」
鈴子は無邪気にその扇子を受け取った。
そこへ女中が、
「あの、新聞社の方がお見えどす」
と、知らせて来た。
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