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2014年04月17日
黒い煙りがむくむく
取分けて下町方面の青空に大きい入道雲のようなものが真っ白にあがっているのが私の注意をひいた。雲か煙りか、晴天にこの一種の怪物の出現を仰ぎみた時に、わたしは云い知れない恐怖を感じた。
 そのうちに見舞の人たちがだんだんに駈けつけて来てくれた。その人たちの口から神田方面の焼けていることも聞いた。銀座通りの焼けていることも聞いた。警視庁が燃えあがって、その火先が今や帝劇を襲おうとしていることも聞いた。

ほとんど被害がないと云ってもいいくらいです。」と、どの人も云った。まったくわたしの附近では、家根瓦をふるい落された家があるくらいのことで、いちじるしい損害はないらしかった。わたしの家でも眼に立つほどの被害は見いだされなかった。番町方面の煙りはまだ消えなかったが、そのあいだに相当の距離があるのと、こっちが風上に位しているのとで、誰もさほどの危険を感じていなかった。それでもこの場合、個々に分かれているのは心さびしいので、近所の人たちは私の門前を中心として、椅子や床几や花むしろを一つところに寄せあつめた。ある家からは茶やビスケットを持ち出して来た。ビールやサイダーの壜を運び出すのもあった。わたしの家からも梨を持ち出した。一種の路上茶話会がここに開かれて、諸家の見舞人が続々もたらしてくる各種の報告に耳をかたむけていた。そのあいだにも大地の震動は幾たびか繰り返された。わたしば花むしろのうえに坐って、「地震加藤」の舞台を考えたりしていた。
阿佐ヶ谷の美容室
Posted by salchan at 18:36 | この記事のURL
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