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2014年01月23日
その玄関の扉は
ピッタリと閉め切ってあったが多分まだ朝が早いせいであったろう。その扉の上の明窓から洩れ込んで来る、仄青い光線をたよりに、両側に二つ並んでいる急な階段の向って左側を、ゴトンゴトンと登り詰めて右に折れると、今度はステキに明るい南向きの廊下になって、右側に「実験室」とか「図書室」とかいう木札をかけた、いくつもの室が並んでいる。

その廊下の突当りに「出入厳禁……医学部長」と筆太に書いた白紙を貼り附けた茶褐色の扉が見えた。
 先に立った若林博士は、内ポケットから大きな木札の付いた鍵を出してその扉を開いた。背後を振り返って私を招き入れると、謹しみ返った態度で外套を脱いで、扉のすぐ横の壁に取付けてある帽子掛にかけた。だから私もそれに倣って、霜降のオーバーと角帽をかけ並べた。私たちの靴の痕跡が、そのまま床に残ったところを見ると、部屋中が薄いホコリに蔽われているらしい。
ヴォラーレ
Posted by salchan at 05:53 | この記事のURL
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