2019年07月02日
高血圧治療ガイドライン改訂、降圧目標の変更は?
(高血圧の基準がより厳しくなりました。
120/80未満、119/79mmHg以下が正常です。
日本人の約1/4が脳心血管の病気:
脳卒中、心筋梗塞で亡くなっています。
血圧が正常であれば、血管の病気にかからず、
健康に長生きできる可能性が高くなります。
外科をやめて、脳卒中の患者を多く診療しています。
大きな障害が残る病気を目の当たりにして身震いしていますー絶対に罹りたくない!)
高血圧治療ガイドライン改訂、降圧目標の変更は?
提供元:ケアネット 公開日:2019/04/23
本邦における高血圧有病者は約4,300万人と推計される。
このうち、治療によって良好なコントロールが得られているのは30%以下。
残りの70%は治療中・未治療含め血圧140/90mmg以上のコントロール不良の状態となっている。
2014年以来5年ぶりの改訂となる
「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」
では、一般成人の降圧目標値が引き下げられ、
より早期からの非薬物治療を主体とした介入を推奨する内容となっている。
4月25日の発表を前に、日本高血圧学会主催の記者発表が4月19日に行われ、
平和 伸仁氏(横浜市立大学附属市民総合医療センター)が改訂点やその作成経過について解説した。
家庭血圧 vs.診察室血圧、厳格治療 vs.通常治療などCQ方式で推奨度を明記
JSH2019では、
初めてClinical Question(CQ)方式、
Systematic Review(SR)方式が採用され、
エビデンスに基づく17のCQが作成された。
また、エビデンスが十分ではないが、
医療者が実臨床で疑問を持つ課題として9のQ(クエスチョン)を設定。
コンセンサスレベルでの推奨が解説されている。
作成されたCQは、
「成人の本態性高血圧患者において、
家庭血圧を指標とした降圧治療は、
診察室血圧を指標とした治療に比べ、推奨できるか?(CQ1)」、
「降圧治療において、
厳格治療は通常治療と比較して心血管イベントおよび死亡を改善するか?(CQ3)」、
「高血圧患者における減塩目標6g/日未満は推奨されるか?(CQ4)」など。
推奨の強さが3段階、エビデンスの強さが4段階でそれぞれ評価されている。
Qについては、2021年以降製造・輸出入が禁止される水銀血圧計に代わって何を推奨するか(Q1)、
家庭血圧はいつ/何回/何日間の測定を推奨するか(Q2)
などの項目が設けられた。
基準値は変更なし、ただし120/80mmHg以上は定期的な再評価と早期介入を推奨
高血圧の基準値は、2014年版(JSH2014)と同じく140/90mmHg以上。
一方で、正常域血圧の名称と拡張期血圧の範囲が、一部変更された:
・至適血圧:120/80mmHg未満→正常血圧:120/80mmHg未満
・正常血圧:120〜129/80〜84mmHg→正常高値血圧:120〜129/80mmHg未満
・正常高値血圧:130〜139/85〜89mmHg→高値血圧:130〜139/80〜89mmHg
背景には、120〜139/80〜89mmHgでは生涯のうちに高血圧へ移行する確率が高く、
120/80mmHg未満と比較して脳心血管リスクが高いというデータがある。
そのため、基準値以下である高値血圧あるいは正常高値血圧の段階から、
早期介入が推奨されている。
JSH2014では、I度高血圧以上のみ年齢や合併症の有無によって
層別化されていた脳心血管病リスクが、
高値血圧についても低〜高リスクに分類された(表3-2)。
また、高血圧管理計画は、高値血圧や正常高値血圧についても
フローチャートの形で整理され、初診時の血圧レベルに応じた再評価時期、
治療法選択の考え方が示されている(図3-1)。
なぜ、降圧目標は10mmHgずつ引き下げられたのか
合併症のない75歳未満の成人および脳血管障害患者、冠動脈疾患患者については
130/80mmHg未満、
75歳以上の高齢者については
140/90mmHg未満に、それぞれ降圧目標値が10mmHgずつ引き下げられた。
この背景には、
日本人対象のJATOS、VALISH、HOMED-BPなどを含む
介入試験のメタ解析結果(CQ3)と、
EPOCH-JAPANや久山町研究などのコホート研究結果があるという。
厳格治療群と通常治療群を比較したRCTのメタ解析では、
厳格治療群で複合心血管イベントおよび脳卒中イベントリスクが有意に低く、
『130/80mmHgを目標』とする厳格治療のメリットが示された。
またEPOCH-JAPANでは、
120/80mmHg未満と比較して
血圧レベルが上昇するにつれ脳心血管死亡リスクが高まることが示されている。
高齢者では、
130 mmHg未満への降圧による腎障害などに注意を要するため、
140/90mmHg未満とされたが、
「忍容性があれば個別に判断して130/80mmHg未満を目指す」とされている。
従来よりも厳格な薬物治療が求められる患者とは?
とはいえ、
「この目標値は、すべての患者における降圧薬による降圧目標ということではない」
と平和氏は重ねて強調。
初診時あるいは降圧薬治療中で130/80mmHg台、
低・中等リスクの患者では、生活習慣修正の開始・強化が推奨されている。
脳心血管病や糖尿病などの合併症のある高リスク患者でのみ、
「降圧薬治療の開始/強化を含めて、最終的に130/80mmHg未満を目指す」とされた。
JSH2014と比較して、
生活習慣修正の上で薬物による降圧強化が新たに推奨された病態としては、下記が挙げられている:
◇130〜139/80〜89mmHgで、以下のいずれか
・75歳未満の高リスク患者※
・脳血管障害患者(血管狭窄なし)
・冠動脈疾患患者
※高リスク患者の判定:
・脳心血管病既往
・非弁膜症性心房細動
・糖尿病
・蛋白尿陽性のCKD
・65歳以上/男性/脂質異常症/喫煙の4項目のうち、3項目以上がある
・上記4項目のうちいずれかがあり、血圧160/100mmHg以上
・血圧180/110mmHg以上
◇75歳以上で、収縮期血圧140〜149mmHg
■参考
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
■関連記事
降圧目標<130/80mmHgに厳格化の見通し−新高血圧ガイドライン草案
(ケアネット 遊佐 なつみ)
120/80未満、119/79mmHg以下が正常です。
日本人の約1/4が脳心血管の病気:
脳卒中、心筋梗塞で亡くなっています。
血圧が正常であれば、血管の病気にかからず、
健康に長生きできる可能性が高くなります。
外科をやめて、脳卒中の患者を多く診療しています。
大きな障害が残る病気を目の当たりにして身震いしていますー絶対に罹りたくない!)
高血圧治療ガイドライン改訂、降圧目標の変更は?
提供元:ケアネット 公開日:2019/04/23
本邦における高血圧有病者は約4,300万人と推計される。
このうち、治療によって良好なコントロールが得られているのは30%以下。
残りの70%は治療中・未治療含め血圧140/90mmg以上のコントロール不良の状態となっている。
2014年以来5年ぶりの改訂となる
「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」
では、一般成人の降圧目標値が引き下げられ、
より早期からの非薬物治療を主体とした介入を推奨する内容となっている。
4月25日の発表を前に、日本高血圧学会主催の記者発表が4月19日に行われ、
平和 伸仁氏(横浜市立大学附属市民総合医療センター)が改訂点やその作成経過について解説した。
家庭血圧 vs.診察室血圧、厳格治療 vs.通常治療などCQ方式で推奨度を明記
JSH2019では、
初めてClinical Question(CQ)方式、
Systematic Review(SR)方式が採用され、
エビデンスに基づく17のCQが作成された。
また、エビデンスが十分ではないが、
医療者が実臨床で疑問を持つ課題として9のQ(クエスチョン)を設定。
コンセンサスレベルでの推奨が解説されている。
作成されたCQは、
「成人の本態性高血圧患者において、
家庭血圧を指標とした降圧治療は、
診察室血圧を指標とした治療に比べ、推奨できるか?(CQ1)」、
「降圧治療において、
厳格治療は通常治療と比較して心血管イベントおよび死亡を改善するか?(CQ3)」、
「高血圧患者における減塩目標6g/日未満は推奨されるか?(CQ4)」など。
推奨の強さが3段階、エビデンスの強さが4段階でそれぞれ評価されている。
Qについては、2021年以降製造・輸出入が禁止される水銀血圧計に代わって何を推奨するか(Q1)、
家庭血圧はいつ/何回/何日間の測定を推奨するか(Q2)
などの項目が設けられた。
基準値は変更なし、ただし120/80mmHg以上は定期的な再評価と早期介入を推奨
高血圧の基準値は、2014年版(JSH2014)と同じく140/90mmHg以上。
一方で、正常域血圧の名称と拡張期血圧の範囲が、一部変更された:
・至適血圧:120/80mmHg未満→正常血圧:120/80mmHg未満
・正常血圧:120〜129/80〜84mmHg→正常高値血圧:120〜129/80mmHg未満
・正常高値血圧:130〜139/85〜89mmHg→高値血圧:130〜139/80〜89mmHg
背景には、120〜139/80〜89mmHgでは生涯のうちに高血圧へ移行する確率が高く、
120/80mmHg未満と比較して脳心血管リスクが高いというデータがある。
そのため、基準値以下である高値血圧あるいは正常高値血圧の段階から、
早期介入が推奨されている。
JSH2014では、I度高血圧以上のみ年齢や合併症の有無によって
層別化されていた脳心血管病リスクが、
高値血圧についても低〜高リスクに分類された(表3-2)。
また、高血圧管理計画は、高値血圧や正常高値血圧についても
フローチャートの形で整理され、初診時の血圧レベルに応じた再評価時期、
治療法選択の考え方が示されている(図3-1)。
なぜ、降圧目標は10mmHgずつ引き下げられたのか
合併症のない75歳未満の成人および脳血管障害患者、冠動脈疾患患者については
130/80mmHg未満、
75歳以上の高齢者については
140/90mmHg未満に、それぞれ降圧目標値が10mmHgずつ引き下げられた。
この背景には、
日本人対象のJATOS、VALISH、HOMED-BPなどを含む
介入試験のメタ解析結果(CQ3)と、
EPOCH-JAPANや久山町研究などのコホート研究結果があるという。
厳格治療群と通常治療群を比較したRCTのメタ解析では、
厳格治療群で複合心血管イベントおよび脳卒中イベントリスクが有意に低く、
『130/80mmHgを目標』とする厳格治療のメリットが示された。
またEPOCH-JAPANでは、
120/80mmHg未満と比較して
血圧レベルが上昇するにつれ脳心血管死亡リスクが高まることが示されている。
高齢者では、
130 mmHg未満への降圧による腎障害などに注意を要するため、
140/90mmHg未満とされたが、
「忍容性があれば個別に判断して130/80mmHg未満を目指す」とされている。
従来よりも厳格な薬物治療が求められる患者とは?
とはいえ、
「この目標値は、すべての患者における降圧薬による降圧目標ということではない」
と平和氏は重ねて強調。
初診時あるいは降圧薬治療中で130/80mmHg台、
低・中等リスクの患者では、生活習慣修正の開始・強化が推奨されている。
脳心血管病や糖尿病などの合併症のある高リスク患者でのみ、
「降圧薬治療の開始/強化を含めて、最終的に130/80mmHg未満を目指す」とされた。
JSH2014と比較して、
生活習慣修正の上で薬物による降圧強化が新たに推奨された病態としては、下記が挙げられている:
◇130〜139/80〜89mmHgで、以下のいずれか
・75歳未満の高リスク患者※
・脳血管障害患者(血管狭窄なし)
・冠動脈疾患患者
※高リスク患者の判定:
・脳心血管病既往
・非弁膜症性心房細動
・糖尿病
・蛋白尿陽性のCKD
・65歳以上/男性/脂質異常症/喫煙の4項目のうち、3項目以上がある
・上記4項目のうちいずれかがあり、血圧160/100mmHg以上
・血圧180/110mmHg以上
◇75歳以上で、収縮期血圧140〜149mmHg
■参考
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
■関連記事
降圧目標<130/80mmHgに厳格化の見通し−新高血圧ガイドライン草案
(ケアネット 遊佐 なつみ)
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