2019年05月17日
脳卒中抑制の視点から捉えた脂質管理
(2次予防に関しては、LDL-Cをコントロールすることは非常に有効で、実績が証明されている治療法です!
1次予防に関しては、生活習慣病から疾患が発生する場合が多く、LDL-C値単独では予防できないことがわかっています。
家族性高脂血症は単独でもLDL-C>190(正常値<140)なので下げないと心臓・脳血管系の病気が高い頻度で起きるのは当然なので、最初から治療しなければいけません。
この手の発表で気になるのは、LDL-Cいくつ以上の人に服用させるのかという基準を求める研究ではないのに、1次予防を語れるわけがないだろう!
発表で何も裏打ちされていないことを話していいのかということです)
脳卒中抑制の視点から捉えた脂質管理
2019年04月03日 06:00
日本動脈硬化学会理事長でりんくう総合医療センター(大阪府)病院長の山下静也氏は、
第44回日本脳卒中学会(STROKE2019、3月21〜23日)で「脳卒中発症・再発予防のための脂質管理」をテーマに講演。
さまざまなエビデンスを基に脂質異常症治療薬について解説するとともに、日本動脈硬化学会が発表し話題となった「PCSK9阻害薬の適正使用のための薬物治療フローチャート」にも言及した。
非心原性脳梗塞患者はCADの初発予防でも高リスク
山下氏はまず、日本動脈硬化学会編『動脈硬化性疾患予防ガイドライン(GL)2017年版』について概説した。
GLでは総コレステロールと脳卒中の関係について、
「総コレステロールは脳卒中の発症や死亡を予想する」とされている。
その一方で、従来の多くの疫学研究は総コレステロールを測定していたことから、
「LDL-コレステロール(LDL-C)と脳卒中との関係については、日本人において十分なエビデンスがあるとは言えない」と記載されている。
同様にnon-HDL-Cの上昇については「脳卒中には関連がないという報告もある」と記載されている。
その一方で、HDL-Cの低下とトリグリセライド(TG)の上昇は、いずれも「将来の脳梗塞の発症や死亡を予測する」と記載されている。
他にもGLでは、冠動脈疾患(CAD)予防の観点から見た脂質管理目標を設定。
非心原性脳梗塞患者は高リスクとして一次予防の対象とされ、LDL-Cで120mg/dL未満、non-HDL-Cで150mg/dL未満といった管理目標値が定められている。
こうしたGLの内容を踏まえ、同氏は「非心原性脳梗塞の患者はCADの一次(初発)予防でも高リスクと捉えるべき」と述べた。
LDL-C低下度が大きいほど脳卒中相対危険度は低下
山下氏は続いて、脳卒中発症・再発に対する、スタチン、エゼチミブ、EPA製剤といった脂質異常治療薬の有効性について、次のようにまとめた。
スタチンに関しては、アトルバスタチンの多施設共同ランダム化比較試験SPARCLの結果が広く知られている。
主要評価項目である致死性/非致死性脳卒中が16%有意に減少(P=0.03)した他、
副次評価項目である脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)も23%有意に減少した(P<0.001)。
他方、Post hoc解析では虚血性脳卒中は減少したが、出血性脳卒中の増加が認められた。
虚血性脳卒中患者に対するプラバスタチンの再発予防効果を検討したJ-STARS試験では、
主要評価項目である脳卒中/TIAは有意差を認めなかったが(P=0.82)、
副次評価項目であるアテローム血栓性脳梗塞は有意に減少した(P=0.0047)。
また、脳出血はコントロール群と差がなかった。
2009年に報告されたメタ解析では、
スタチンにより脳卒中が初発予防で19%、二次(再発)予防で12%と、いずれも有意に減少した(順にP<0.0001、P=0.003)。
『脳出血』については、初発予防ではスタチンの影響はほとんどなかったが、再発予防では73%有意に増加した(P=0.004)。
スタチンによるLDL-C低下と脳卒中リスクの関係を見た他のデータでも、
LDL-C低下度が大きいほど脳卒中の相対危険度は低下し、
1mmoL(38.6mg/dL)の低下ごとに21.1%の有意なリスク低下が認められている(P<0.001)。
エゼチミブに関しては、IMPROVE-IT試験でシンバスタチン+エゼチミブ併用とシンバスタチン単独が比較されている。
その結果、特にTIMIリスクスコア3点以上の症例において虚血性脳卒中の抑制効果がより顕著に認められた。
またω-3多価不飽和脂肪酸のEPA製剤については、REDUCE-IT試験で致死性/非致死性脳卒中の発生が28%有意に減少(P=0.01)する成績が得られた。
これらのデータから、同氏は「スタチン、エゼチミブ、EPA製剤は脳卒中、特に虚血性脳卒中の発症予防に有効と考えられる」と説明した。
LDL-Cが59%低下しても脳出血には影響しない
以上の薬剤に加え、近年、新たな脂質異常症治療薬として、エボロクマブやアリロクマブといったPCSK9阻害薬が注目されている。
エボロクマブを被験薬としたFOURIER試験では、LDL-Cが48週後までに30mg/dLまで59%有意に低下し(P<0.00001)、
これに伴い主要評価項目の脳卒中を含む複合エンドポイントが15%有意に減少(P<0.0001)する成績が認められた。
脳卒中既往例を対象としたサブ解析でも、複合エンドポイントは有意に減少した(P=0.047、図)。
注目された脳出血はほとんど変化しなかった。
図. 脳卒中既往例に対するエボロクマブの効果
(STROKE2019発表資料)
さらに、アリロクマブを被験薬としたODYSSEY OUTCOMES試験では、
主要評価項目である虚血性脳卒中を含む複合エンドポイントが15%有意に減少(P<0.001)した他、
副次評価項目の全死亡も15%減少した。
致死性/非致死性脳卒中は27%減少し、出血性脳卒中は増加しなかった。
最後に山下氏は、GLに記載されたPCSK9阻害薬の適正使用指針を紹介。
同指針では、家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ複合体において、
LDL-C管理目標値に達せず、スタチン最大耐用量かつ/またはエゼチミブ併用で効果が得られない場合、
PCSK9阻害薬が考慮されるとしている。
また、非FHのCAD患者の二次予防では、スタチンを中心とするLDL-C低下療法、
あるいはエゼチミブ併用かつスタチン最大耐用量まで増量しても効果不十分の場合、
PCSK9阻害薬の追加を考慮するとともに、
LDL-Cが低下しにくい場合はFHを疑う必要があるとした
(関連記事:「動脈硬化学会がPCSK9阻害薬の使用に声明」)。
以上の内容から同氏は、PCSK9阻害薬について「LDL-Cを著明に下げても脳出血は増加せず、むしろ虚血性脳卒中の発症は有意に抑制される」とまとめた。
(LDL-C<70で有意に脳出血が増加する。その原因は血管の脆弱性を誘発するからではないか、という論文が出ている)
(STROKE2019 取材班)
1次予防に関しては、生活習慣病から疾患が発生する場合が多く、LDL-C値単独では予防できないことがわかっています。
家族性高脂血症は単独でもLDL-C>190(正常値<140)なので下げないと心臓・脳血管系の病気が高い頻度で起きるのは当然なので、最初から治療しなければいけません。
この手の発表で気になるのは、LDL-Cいくつ以上の人に服用させるのかという基準を求める研究ではないのに、1次予防を語れるわけがないだろう!
発表で何も裏打ちされていないことを話していいのかということです)
脳卒中抑制の視点から捉えた脂質管理
2019年04月03日 06:00
日本動脈硬化学会理事長でりんくう総合医療センター(大阪府)病院長の山下静也氏は、
第44回日本脳卒中学会(STROKE2019、3月21〜23日)で「脳卒中発症・再発予防のための脂質管理」をテーマに講演。
さまざまなエビデンスを基に脂質異常症治療薬について解説するとともに、日本動脈硬化学会が発表し話題となった「PCSK9阻害薬の適正使用のための薬物治療フローチャート」にも言及した。
非心原性脳梗塞患者はCADの初発予防でも高リスク
山下氏はまず、日本動脈硬化学会編『動脈硬化性疾患予防ガイドライン(GL)2017年版』について概説した。
GLでは総コレステロールと脳卒中の関係について、
「総コレステロールは脳卒中の発症や死亡を予想する」とされている。
その一方で、従来の多くの疫学研究は総コレステロールを測定していたことから、
「LDL-コレステロール(LDL-C)と脳卒中との関係については、日本人において十分なエビデンスがあるとは言えない」と記載されている。
同様にnon-HDL-Cの上昇については「脳卒中には関連がないという報告もある」と記載されている。
その一方で、HDL-Cの低下とトリグリセライド(TG)の上昇は、いずれも「将来の脳梗塞の発症や死亡を予測する」と記載されている。
他にもGLでは、冠動脈疾患(CAD)予防の観点から見た脂質管理目標を設定。
非心原性脳梗塞患者は高リスクとして一次予防の対象とされ、LDL-Cで120mg/dL未満、non-HDL-Cで150mg/dL未満といった管理目標値が定められている。
こうしたGLの内容を踏まえ、同氏は「非心原性脳梗塞の患者はCADの一次(初発)予防でも高リスクと捉えるべき」と述べた。
LDL-C低下度が大きいほど脳卒中相対危険度は低下
山下氏は続いて、脳卒中発症・再発に対する、スタチン、エゼチミブ、EPA製剤といった脂質異常治療薬の有効性について、次のようにまとめた。
スタチンに関しては、アトルバスタチンの多施設共同ランダム化比較試験SPARCLの結果が広く知られている。
主要評価項目である致死性/非致死性脳卒中が16%有意に減少(P=0.03)した他、
副次評価項目である脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)も23%有意に減少した(P<0.001)。
他方、Post hoc解析では虚血性脳卒中は減少したが、出血性脳卒中の増加が認められた。
虚血性脳卒中患者に対するプラバスタチンの再発予防効果を検討したJ-STARS試験では、
主要評価項目である脳卒中/TIAは有意差を認めなかったが(P=0.82)、
副次評価項目であるアテローム血栓性脳梗塞は有意に減少した(P=0.0047)。
また、脳出血はコントロール群と差がなかった。
2009年に報告されたメタ解析では、
スタチンにより脳卒中が初発予防で19%、二次(再発)予防で12%と、いずれも有意に減少した(順にP<0.0001、P=0.003)。
『脳出血』については、初発予防ではスタチンの影響はほとんどなかったが、再発予防では73%有意に増加した(P=0.004)。
スタチンによるLDL-C低下と脳卒中リスクの関係を見た他のデータでも、
LDL-C低下度が大きいほど脳卒中の相対危険度は低下し、
1mmoL(38.6mg/dL)の低下ごとに21.1%の有意なリスク低下が認められている(P<0.001)。
エゼチミブに関しては、IMPROVE-IT試験でシンバスタチン+エゼチミブ併用とシンバスタチン単独が比較されている。
その結果、特にTIMIリスクスコア3点以上の症例において虚血性脳卒中の抑制効果がより顕著に認められた。
またω-3多価不飽和脂肪酸のEPA製剤については、REDUCE-IT試験で致死性/非致死性脳卒中の発生が28%有意に減少(P=0.01)する成績が得られた。
これらのデータから、同氏は「スタチン、エゼチミブ、EPA製剤は脳卒中、特に虚血性脳卒中の発症予防に有効と考えられる」と説明した。
LDL-Cが59%低下しても脳出血には影響しない
以上の薬剤に加え、近年、新たな脂質異常症治療薬として、エボロクマブやアリロクマブといったPCSK9阻害薬が注目されている。
エボロクマブを被験薬としたFOURIER試験では、LDL-Cが48週後までに30mg/dLまで59%有意に低下し(P<0.00001)、
これに伴い主要評価項目の脳卒中を含む複合エンドポイントが15%有意に減少(P<0.0001)する成績が認められた。
脳卒中既往例を対象としたサブ解析でも、複合エンドポイントは有意に減少した(P=0.047、図)。
注目された脳出血はほとんど変化しなかった。
図. 脳卒中既往例に対するエボロクマブの効果
(STROKE2019発表資料)
さらに、アリロクマブを被験薬としたODYSSEY OUTCOMES試験では、
主要評価項目である虚血性脳卒中を含む複合エンドポイントが15%有意に減少(P<0.001)した他、
副次評価項目の全死亡も15%減少した。
致死性/非致死性脳卒中は27%減少し、出血性脳卒中は増加しなかった。
最後に山下氏は、GLに記載されたPCSK9阻害薬の適正使用指針を紹介。
同指針では、家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ複合体において、
LDL-C管理目標値に達せず、スタチン最大耐用量かつ/またはエゼチミブ併用で効果が得られない場合、
PCSK9阻害薬が考慮されるとしている。
また、非FHのCAD患者の二次予防では、スタチンを中心とするLDL-C低下療法、
あるいはエゼチミブ併用かつスタチン最大耐用量まで増量しても効果不十分の場合、
PCSK9阻害薬の追加を考慮するとともに、
LDL-Cが低下しにくい場合はFHを疑う必要があるとした
(関連記事:「動脈硬化学会がPCSK9阻害薬の使用に声明」)。
以上の内容から同氏は、PCSK9阻害薬について「LDL-Cを著明に下げても脳出血は増加せず、むしろ虚血性脳卒中の発症は有意に抑制される」とまとめた。
(LDL-C<70で有意に脳出血が増加する。その原因は血管の脆弱性を誘発するからではないか、という論文が出ている)
(STROKE2019 取材班)
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