2019年03月12日
うんちで認知症が分かる
うんちで認知症が分かる
『腸内細菌叢は独立した関連因子』
2019年02月15日 06:05
国立長寿医療研究センターもの忘れセンター副センター長の佐治直樹氏らは、もの忘れ外来受診患者の検便サンプルを収集し、腸内細菌叢と認知機能との関連を分析。
その結果、『腸内細菌叢の組成の変化が認知症の独立した関連因子』であることを明らかにし、Sci Rep(2019; 9: 1008)に発表した。
128例の検便サンプルで腸内細菌叢と認知症との関連を検討
認知症患者は、2015年には全世界で4,680万人だったが、2050年までに3倍になると予測されている。
日本でも、2012年に65歳以上の15%に当たる462万人が認知症と診断され、今後も増加傾向は続くとみられている。
こうした状況の中、認知症対策は喫緊の課題であり、現在さまざまな研究が展開されている。
これまでに、腸内細菌叢は肥満や心血管疾患、炎症性疾患と関連することが示されている。
海外では認知症や脳神経との関連も報告されている。
しかし、腸内細菌叢の組成は人種や食生活によって異なる。過去に日本人を対象に腸内細菌叢の組成と認知症発症との関連について検討した研究はなかった。
そこで佐治氏らは、認知症患者と非認知症患者との間には腸内細菌叢の組成に違いがあると仮定。
日本人を対象に認知機能テストや頭部MRI検査で包括的に認知機能を評価し、腸内細菌叢の組成と認知症との関連を検討した。
解析対象は、研究期間中に国立長寿医療研究センターもの忘れセンターを受診した128例(女性59%)で、
平均年齢は74±8.7歳だった。
認知症と診断されたのは34例、非認知症は94例だった。
ミニメンタルステート検査(MMSE)の平均スコアは24で、
認知症患者のうち臨床認知症評価尺度(CDR)が0.5、
MMSEが20未満だったのは14例だった。
腸内細菌叢の組成に、従来のバイオマーカーより強い関連
患者の検便サンプルを収集し、Terminal restriction fragment length polymorphism(T-RFLP)法で腸内細菌叢を網羅的に解析したところ、認知症の有無によって腸内細菌の組成に違いが見られた。
細菌の割合により、
エンテロタイプT(バクテロイデスが多いタイプ)、
同U(プレボテラが多いタイプ)、
同V(その他の細菌が多いタイプ)
の3タイプに分類し、腸内細菌叢の組成と認知症との関連を分析したところ、
認知症患者は非認知症患者よりエンテロタイプIが少なく、
『エンテロタイプV』が多かった。
多変量ロジスティック回帰分析では、
エンテロタイプT
〔オッズ比(OR)0.1、95%CI 0.02〜0.33、P<0.001〕、
エンテロタイプV
(OR 18.5、95%CI 4.1〜121.9、P<0.001)
が認知症と強く関連していることが示された。
これらの関連は、脳萎縮スコア(VSRAD)やアポリポ蛋白E(apoE)よりも強かった。
佐治氏は「症例数が少ないため、分析結果をそのままうのみにはできないが、
バクテロイデスの少なさとその他の細菌の多さは、
従来の認知症バイオマーカーよりも認知症との関連性が高い」と考察した。
研究結果について、同氏は「腸内細菌が認知機能に関連するという新しい知見が得られたことは興味深い」とコメントする一方で、研究の限界について次のように言及。
「今回の研究は横断研究であり、腸内細菌叢の違いと認知症の因果関係を示すものではない。
認知症患者の中にエンテロタイプUが存在しなかったことが、分析結果になんらかの影響を与えた可能性はある。
また、単施設コホートであるため、対象に偏りがあった可能性も否定できない」。
さらに、今後について「食事習慣や栄養といった視点からも研究を行う予定だ」とし、
「腸内細菌の詳細な解析が、認知症の新規治療法の開発につながるかもしれない。
そして、新たな予防策を講じる際の糸口にもなりうるだろう」と展望している。(比企野綾子)
『腸内細菌叢は独立した関連因子』
2019年02月15日 06:05
国立長寿医療研究センターもの忘れセンター副センター長の佐治直樹氏らは、もの忘れ外来受診患者の検便サンプルを収集し、腸内細菌叢と認知機能との関連を分析。
その結果、『腸内細菌叢の組成の変化が認知症の独立した関連因子』であることを明らかにし、Sci Rep(2019; 9: 1008)に発表した。
128例の検便サンプルで腸内細菌叢と認知症との関連を検討
認知症患者は、2015年には全世界で4,680万人だったが、2050年までに3倍になると予測されている。
日本でも、2012年に65歳以上の15%に当たる462万人が認知症と診断され、今後も増加傾向は続くとみられている。
こうした状況の中、認知症対策は喫緊の課題であり、現在さまざまな研究が展開されている。
これまでに、腸内細菌叢は肥満や心血管疾患、炎症性疾患と関連することが示されている。
海外では認知症や脳神経との関連も報告されている。
しかし、腸内細菌叢の組成は人種や食生活によって異なる。過去に日本人を対象に腸内細菌叢の組成と認知症発症との関連について検討した研究はなかった。
そこで佐治氏らは、認知症患者と非認知症患者との間には腸内細菌叢の組成に違いがあると仮定。
日本人を対象に認知機能テストや頭部MRI検査で包括的に認知機能を評価し、腸内細菌叢の組成と認知症との関連を検討した。
解析対象は、研究期間中に国立長寿医療研究センターもの忘れセンターを受診した128例(女性59%)で、
平均年齢は74±8.7歳だった。
認知症と診断されたのは34例、非認知症は94例だった。
ミニメンタルステート検査(MMSE)の平均スコアは24で、
認知症患者のうち臨床認知症評価尺度(CDR)が0.5、
MMSEが20未満だったのは14例だった。
腸内細菌叢の組成に、従来のバイオマーカーより強い関連
患者の検便サンプルを収集し、Terminal restriction fragment length polymorphism(T-RFLP)法で腸内細菌叢を網羅的に解析したところ、認知症の有無によって腸内細菌の組成に違いが見られた。
細菌の割合により、
エンテロタイプT(バクテロイデスが多いタイプ)、
同U(プレボテラが多いタイプ)、
同V(その他の細菌が多いタイプ)
の3タイプに分類し、腸内細菌叢の組成と認知症との関連を分析したところ、
認知症患者は非認知症患者よりエンテロタイプIが少なく、
『エンテロタイプV』が多かった。
多変量ロジスティック回帰分析では、
エンテロタイプT
〔オッズ比(OR)0.1、95%CI 0.02〜0.33、P<0.001〕、
エンテロタイプV
(OR 18.5、95%CI 4.1〜121.9、P<0.001)
が認知症と強く関連していることが示された。
これらの関連は、脳萎縮スコア(VSRAD)やアポリポ蛋白E(apoE)よりも強かった。
佐治氏は「症例数が少ないため、分析結果をそのままうのみにはできないが、
バクテロイデスの少なさとその他の細菌の多さは、
従来の認知症バイオマーカーよりも認知症との関連性が高い」と考察した。
研究結果について、同氏は「腸内細菌が認知機能に関連するという新しい知見が得られたことは興味深い」とコメントする一方で、研究の限界について次のように言及。
「今回の研究は横断研究であり、腸内細菌叢の違いと認知症の因果関係を示すものではない。
認知症患者の中にエンテロタイプUが存在しなかったことが、分析結果になんらかの影響を与えた可能性はある。
また、単施設コホートであるため、対象に偏りがあった可能性も否定できない」。
さらに、今後について「食事習慣や栄養といった視点からも研究を行う予定だ」とし、
「腸内細菌の詳細な解析が、認知症の新規治療法の開発につながるかもしれない。
そして、新たな予防策を講じる際の糸口にもなりうるだろう」と展望している。(比企野綾子)
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