2019年03月01日
咽頭がんのリスクにも影響ー子宮頸がんで問題のウイルス
ヒトパピローマウイルスは子宮頸がんだけでなく、喉のがんの原因になります!
咽頭がんのリスクにも影響ー子宮頸がんで問題のウイルス
感染すると子宮頸(けい)がんや尖圭(せんけい)コンジローマなどを一定の確率で引き起こすことが知られているヒトパピロマウイルス(HPV)。
しかし、HPVの危険性はこれだけにとどまらない。
咽頭がんの一部の中咽頭部がん=用語説明=の患者の多くで患部にHPVの感染が報告され、
喫煙や過度の飲酒などと並んでHPV感染が発症リスクとして影響していることが分かってきた。
◇飲酒・喫煙原因と異なる治療効果
吉本世一・国立がん研究センター中央病院頭頸部外科科長
このHPVは子宮頸部(けいぶ)や中咽頭などの粘膜に付着して増殖し、
免疫などの攻撃を生き延びて長期間の継続感染に移行した場合、
確率は低いが細胞のがん化につながる、といわれている。
「中咽頭がんは、
HPVの影響を受けているものと
過度の飲酒や喫煙が主な原因と推定されるものに大別できる、
と言う方が正しい表現かもしれない。
なぜなら、治療効果も治療後の展開も大きく異なるからだ」。
国立がん研究センター中央病院の吉本世一頭頸部外科科長は、こう説明する。
吉本科長によると、
20年以上前から目立った飲酒や喫煙歴がないのに
へんとう腺に腫瘍が生じる中咽頭がんの患者が一定の割合がいて、
これらの患者では非常に『放射線治療の効果が高い』ことが臨床経験上分かっていた。
2000年を過ぎた頃から、これらの患者が患部にHPV感染が確認されるようになった。
検査を進めていくと、
欧米で中咽頭がん患者全体の70〜80%、
日本やアジアでも50%以上が
感染していることが明らかになった。
このため、同センターの一般向けのがん啓発サイトは「中咽頭がんの発生には、喫煙・飲酒との強い関連があります。
また、HPVが中咽頭がんの発生する危険性を高めることがわかっています」と記載し、
がんの進行状況や病期の評価を、
HPV感染の代用マーカーである特定のタンパク質(p16)に対する免疫染色の結果に応じて
2種類に分けて紹介している。
高橋渉・東京大学医学部付属病院放射線科医師
◇良い治療成績
このHPVの影響を受けた中咽頭がんの治療はどのようなものだろうか。
「中咽頭がんの治療としては、
放射線照射と抗がん剤などの化学療法を組み合わせたものと、手術がある。
HPVに起因する場合はどちらの治療成績も非常に良く、再発の有無などの予後も良好だ。
発病年齢も異なり、
HPV陰性(非感染)の中咽頭がんの患者は60〜70代の発病が多いのに対して、
HPV陽性(感染)の場合は50代が中心で、40代の患者も珍しくない」。
東京大学医学部付属病院放射線科で咽頭がんを専門とする高橋渉医師はこう話す。
「同じような腫瘍の大きさでも『HPV陽性では、より軽い進行度』に評価される。
また、以前はリンパ節に複数の転移があれば進行がんで深刻な状況であると診断していたが、
現在ではHPV陽性中咽頭がんではリンパ節転移があっても早期で根治が望める例が少なくないと考えられている。
診断当時は、リンパ節転移が複数あったことから『進行咽頭がん』で根治が難しいと判断されたHPV陽性の患者さんの中には、放射線治療がうまくいき、大きな副作用なく過ごしている方が多くいる」
このような経緯から、現在課題になっているのがHPV陽性中咽頭がんの患者に対する治療のあり方だ。
「多くの患者で治癒が望めるため、治療の副作用をより少なくし、
治療後の生活の質(QOL)を向上させるため、放射線の照射範囲を狭めたり、
化学療法を軽いものに変更したりできないか、世界中で研究が進んでいる。
治療現場でも患者の状況に応じて、より細かく治療法を調整している」と高橋医師は言う。
咽頭部の図解(国立がん研究センターがん情報サービスより)
◇HPV感染かを確認
喫煙や過度の飲酒の影響か、
HPVが原因かは、
治療に大きく影響する。
治療する側はもちろん、患者側も自身がHPVに持続感染しているか、少なくとも中咽頭がんと診断された段階では確認しておく必要がある。
前出の国立がん研究センター中央病院の吉本外科科長は「咽頭がんの治療を担当する専門医は重要性を熟知し、必ず検査を実施している。
患者からも積極的に説明を求めてほしい」と指摘する。
◇ワクチン摂種へ議論を
もう一つ問題なのが、HPV自体の感染予防のあり方だ。
中咽頭がんには有効な検診方法がなく、進行するまで自覚症状が出にくいため、早期発見のチャンスは高くない。
東京大学医学部付属病院放射線科の中川恵一准教授は
「感染経路については議論があるかもしれないが、
HPVが多くの人に感染しており、感染自体を防ぐためには男女共に
幼少期のHPVワクチン接種が有効なのは確かだ」と話す。
HPVワクチンをめぐっては、副反応と疑われる健康被害が報告され、訴訟を含めた社会問題となっている。
それでも中川准教授は「世界保健機関(WHO)の報告!や厚生労働省の調査でもワクチン接種と健康被害の関連は否定されている!。
早急にワクチン摂種推進に向けた議論を始めるべきだ!」と力説する。
中咽頭部は、
鼻の奥から食道につながる咽頭の管の中間部分で、口上部の軟口蓋から舌の奥の付け根の舌根までが含まれる。
鼻や口から入った空気と、口からの飲食物の両方が通る。
中咽頭がん全体の発病率は10万人に1人といわれ、
『その約半数でHPVの感染が原因』とされる。(喜多壮太郎・鈴木豊)
(2019/02/17 06:05)
咽頭がんのリスクにも影響ー子宮頸がんで問題のウイルス
感染すると子宮頸(けい)がんや尖圭(せんけい)コンジローマなどを一定の確率で引き起こすことが知られているヒトパピロマウイルス(HPV)。
しかし、HPVの危険性はこれだけにとどまらない。
咽頭がんの一部の中咽頭部がん=用語説明=の患者の多くで患部にHPVの感染が報告され、
喫煙や過度の飲酒などと並んでHPV感染が発症リスクとして影響していることが分かってきた。
◇飲酒・喫煙原因と異なる治療効果
吉本世一・国立がん研究センター中央病院頭頸部外科科長
このHPVは子宮頸部(けいぶ)や中咽頭などの粘膜に付着して増殖し、
免疫などの攻撃を生き延びて長期間の継続感染に移行した場合、
確率は低いが細胞のがん化につながる、といわれている。
「中咽頭がんは、
HPVの影響を受けているものと
過度の飲酒や喫煙が主な原因と推定されるものに大別できる、
と言う方が正しい表現かもしれない。
なぜなら、治療効果も治療後の展開も大きく異なるからだ」。
国立がん研究センター中央病院の吉本世一頭頸部外科科長は、こう説明する。
吉本科長によると、
20年以上前から目立った飲酒や喫煙歴がないのに
へんとう腺に腫瘍が生じる中咽頭がんの患者が一定の割合がいて、
これらの患者では非常に『放射線治療の効果が高い』ことが臨床経験上分かっていた。
2000年を過ぎた頃から、これらの患者が患部にHPV感染が確認されるようになった。
検査を進めていくと、
欧米で中咽頭がん患者全体の70〜80%、
日本やアジアでも50%以上が
感染していることが明らかになった。
このため、同センターの一般向けのがん啓発サイトは「中咽頭がんの発生には、喫煙・飲酒との強い関連があります。
また、HPVが中咽頭がんの発生する危険性を高めることがわかっています」と記載し、
がんの進行状況や病期の評価を、
HPV感染の代用マーカーである特定のタンパク質(p16)に対する免疫染色の結果に応じて
2種類に分けて紹介している。
高橋渉・東京大学医学部付属病院放射線科医師
◇良い治療成績
このHPVの影響を受けた中咽頭がんの治療はどのようなものだろうか。
「中咽頭がんの治療としては、
放射線照射と抗がん剤などの化学療法を組み合わせたものと、手術がある。
HPVに起因する場合はどちらの治療成績も非常に良く、再発の有無などの予後も良好だ。
発病年齢も異なり、
HPV陰性(非感染)の中咽頭がんの患者は60〜70代の発病が多いのに対して、
HPV陽性(感染)の場合は50代が中心で、40代の患者も珍しくない」。
東京大学医学部付属病院放射線科で咽頭がんを専門とする高橋渉医師はこう話す。
「同じような腫瘍の大きさでも『HPV陽性では、より軽い進行度』に評価される。
また、以前はリンパ節に複数の転移があれば進行がんで深刻な状況であると診断していたが、
現在ではHPV陽性中咽頭がんではリンパ節転移があっても早期で根治が望める例が少なくないと考えられている。
診断当時は、リンパ節転移が複数あったことから『進行咽頭がん』で根治が難しいと判断されたHPV陽性の患者さんの中には、放射線治療がうまくいき、大きな副作用なく過ごしている方が多くいる」
このような経緯から、現在課題になっているのがHPV陽性中咽頭がんの患者に対する治療のあり方だ。
「多くの患者で治癒が望めるため、治療の副作用をより少なくし、
治療後の生活の質(QOL)を向上させるため、放射線の照射範囲を狭めたり、
化学療法を軽いものに変更したりできないか、世界中で研究が進んでいる。
治療現場でも患者の状況に応じて、より細かく治療法を調整している」と高橋医師は言う。
咽頭部の図解(国立がん研究センターがん情報サービスより)
◇HPV感染かを確認
喫煙や過度の飲酒の影響か、
HPVが原因かは、
治療に大きく影響する。
治療する側はもちろん、患者側も自身がHPVに持続感染しているか、少なくとも中咽頭がんと診断された段階では確認しておく必要がある。
前出の国立がん研究センター中央病院の吉本外科科長は「咽頭がんの治療を担当する専門医は重要性を熟知し、必ず検査を実施している。
患者からも積極的に説明を求めてほしい」と指摘する。
◇ワクチン摂種へ議論を
もう一つ問題なのが、HPV自体の感染予防のあり方だ。
中咽頭がんには有効な検診方法がなく、進行するまで自覚症状が出にくいため、早期発見のチャンスは高くない。
東京大学医学部付属病院放射線科の中川恵一准教授は
「感染経路については議論があるかもしれないが、
HPVが多くの人に感染しており、感染自体を防ぐためには男女共に
幼少期のHPVワクチン接種が有効なのは確かだ」と話す。
HPVワクチンをめぐっては、副反応と疑われる健康被害が報告され、訴訟を含めた社会問題となっている。
それでも中川准教授は「世界保健機関(WHO)の報告!や厚生労働省の調査でもワクチン接種と健康被害の関連は否定されている!。
早急にワクチン摂種推進に向けた議論を始めるべきだ!」と力説する。
中咽頭部は、
鼻の奥から食道につながる咽頭の管の中間部分で、口上部の軟口蓋から舌の奥の付け根の舌根までが含まれる。
鼻や口から入った空気と、口からの飲食物の両方が通る。
中咽頭がん全体の発病率は10万人に1人といわれ、
『その約半数でHPVの感染が原因』とされる。(喜多壮太郎・鈴木豊)
(2019/02/17 06:05)
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