2019年02月28日
教育レベルは認知症に影響せず
教育レベルは認知症に影響せず
ー学校教育より卒後数十年の経験が重要な可能性も
2019年02月14日 14:45
高いレベルの教育歴を有する人は
認知症に拮抗する能力"認知予備能"が高いため認知症になりにくい
と考えられていたが、この従来の定説を覆す結果が示された。
米・Rush University Medical CenterのRobert S. Wilson氏らは、
高齢者約3,000例の試験データを解析した結果、
教育レベルは認知症の発症年齢や進行速度と関連しないことが示されたとNeurology(2019年2月6日オンライン版)に発表した。
平均年齢78歳の約3,000例を8年追跡
解析対象は、
米国のカトリック聖職者が対象のReligious Orders Studyおよび
シカゴの高齢者が対象のRush Memory and Aging Projectの2試験の参加者計『2,899例』。
試験開始時平均年齢78歳、
平均教育年数16.3年(0〜30年)、
『平均追跡期間8年』。
全例が年1回の認知機能検査を受け、死後の脳剖検(10種の神経変性、脳血管マーカーを検出)に同意した。
試験期間中に696例が認知症を発症、752例が死亡、405例が認知症を発症後に死亡した。
全体では、教育レベルが高い参加者ほど試験開始時(正規の教育が終了してから数十年後)の思考・記憶能力が高かったが、
『教育レベルと認知機能低下速度との関連は認められなかった』。
認知症発症群では、認知症診断の『平均1.8年前から認知機能低下』が進行していたものの、
教育レベルと認知機能低下の開始年齢および進行速度に関連は認められなかった。
死亡群では、死亡の平均3.4年前から認知機能低下が進行していたが、やはり教育レベルと進行速度との関連は認められなかった。
また、教育レベルが高い参加者ほど脳全体および顕微鏡で検出できる梗塞発症率が低かったものの、
その他の神経病理学的マーカーと教育レベルとの関連は認められなかった。
『学校教育より卒後数十年の経験が重要な可能性も』
従来の研究では、
高学歴の人は低学歴の人に比べていったん認知機能低下が始まると進行が速いことや、
脳内のアルツハイマー病マーカー値が高い高学歴の人はマーカー値が同程度で低学歴の人ほど認知機能低下が急速ではないことが示されていた。
しかし、今回の解析では同様の結果は認められなかった。
Wilson氏は「教育は認知機能の発達や脳構造の変化に影響するという認識からすれば、
『今回の解析では認知予備能に対する教育の寄与がほとんど見られなかった』
のは驚きだ」と述べている。
ただし、参加者が正規の教育を修了したのは数十年前であったことから
「その後の思考・記憶能力が関与する活動、
例えば外国語の習得や社会活動、
高い知的能力を要する仕事、
人生の目的を持つことなども
認知予備能の維持に重要な役割を果たしている可能性があり、
それらは以前の学校教育より関連が強いのかもしれない」との見解を示している。
さらに「もちろん、認知機能低下が同じ速度で進行するならば、
やはり進行開始時点の認知予備能は高い方がよい」と付言している。(太田敦子)
ー学校教育より卒後数十年の経験が重要な可能性も
2019年02月14日 14:45
高いレベルの教育歴を有する人は
認知症に拮抗する能力"認知予備能"が高いため認知症になりにくい
と考えられていたが、この従来の定説を覆す結果が示された。
米・Rush University Medical CenterのRobert S. Wilson氏らは、
高齢者約3,000例の試験データを解析した結果、
教育レベルは認知症の発症年齢や進行速度と関連しないことが示されたとNeurology(2019年2月6日オンライン版)に発表した。
平均年齢78歳の約3,000例を8年追跡
解析対象は、
米国のカトリック聖職者が対象のReligious Orders Studyおよび
シカゴの高齢者が対象のRush Memory and Aging Projectの2試験の参加者計『2,899例』。
試験開始時平均年齢78歳、
平均教育年数16.3年(0〜30年)、
『平均追跡期間8年』。
全例が年1回の認知機能検査を受け、死後の脳剖検(10種の神経変性、脳血管マーカーを検出)に同意した。
試験期間中に696例が認知症を発症、752例が死亡、405例が認知症を発症後に死亡した。
全体では、教育レベルが高い参加者ほど試験開始時(正規の教育が終了してから数十年後)の思考・記憶能力が高かったが、
『教育レベルと認知機能低下速度との関連は認められなかった』。
認知症発症群では、認知症診断の『平均1.8年前から認知機能低下』が進行していたものの、
教育レベルと認知機能低下の開始年齢および進行速度に関連は認められなかった。
死亡群では、死亡の平均3.4年前から認知機能低下が進行していたが、やはり教育レベルと進行速度との関連は認められなかった。
また、教育レベルが高い参加者ほど脳全体および顕微鏡で検出できる梗塞発症率が低かったものの、
その他の神経病理学的マーカーと教育レベルとの関連は認められなかった。
『学校教育より卒後数十年の経験が重要な可能性も』
従来の研究では、
高学歴の人は低学歴の人に比べていったん認知機能低下が始まると進行が速いことや、
脳内のアルツハイマー病マーカー値が高い高学歴の人はマーカー値が同程度で低学歴の人ほど認知機能低下が急速ではないことが示されていた。
しかし、今回の解析では同様の結果は認められなかった。
Wilson氏は「教育は認知機能の発達や脳構造の変化に影響するという認識からすれば、
『今回の解析では認知予備能に対する教育の寄与がほとんど見られなかった』
のは驚きだ」と述べている。
ただし、参加者が正規の教育を修了したのは数十年前であったことから
「その後の思考・記憶能力が関与する活動、
例えば外国語の習得や社会活動、
高い知的能力を要する仕事、
人生の目的を持つことなども
認知予備能の維持に重要な役割を果たしている可能性があり、
それらは以前の学校教育より関連が強いのかもしれない」との見解を示している。
さらに「もちろん、認知機能低下が同じ速度で進行するならば、
やはり進行開始時点の認知予備能は高い方がよい」と付言している。(太田敦子)
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/8590790
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック