2019年01月07日
『心身症』の代表的疾患、過敏性腸症候群(イリタブル・ボーエル・シンドローム;IBS)
『心身症』の代表的疾患、過敏性腸症候群(イリタブル・ボーエル・シンドローム;IBS)
心と体がいかに密接に繋がっているか、
心身症も、こころを治療すれば、気持ちの持ち方を気楽な方に誘導してあげるだけで、治るという実証がこの論文です。
催眠療法が過敏性腸症候群(IBS)の症状軽減に有効
オランダ・多施設RCT 2018年12月27日 06:00
腹痛、腹部膨満、下痢・便秘などの症状でQOLを著しく低下させる『過敏性腸症候群(IBS)』。
世界各国の有病率は数%〜20%程度と高く、
IBSに対する薬物療法や食事療法が無効な患者も少なくない。
そのため、催眠療法の効果が検討されているが、その多くは限られた高度専門施設で行われているのが実状だ。
そこで、オランダ・University Medical Centre UtrechtのCarla E. Flik氏らは、一次または二次治療を受けている成人のIBS患者354例を対象に、
催眠療法の有効性を検証する多施設ランダム化比較試験(RCT)を実施した。
その結果、催眠療法は教育および対症療法に比べて症状軽減に有効であったと、Lancet Gastroenterol Hepatol(2019; 4: 20-31)で報告した。(関連記事「慢性痛治療における催眠活用の可能性を検討」)。
催眠療法士の助言や自己催眠訓練で改善図る
Flik氏らは、プライマリケア医または二次医療機関から心理療法目的で紹介された18〜65歳のIBS患者を対象に、オランダの11病院の参加によるRCT、Efficacy of individual and group hypnotherapy in irritable bowel syndrome(IMAGINE)を実施。
2011年5月〜16年4月に登録した354例を、
個別催眠療法群150例、グループ催眠療法群150例、教育的対症療法群54例(対照群)に
ランダムに割り付けた。
催眠療法は45分のセッションを週2回、6週間行った。
催眠療法士は患者自身の力で痛みや不快感の軽減のために消化器系をコントロールする手法について助言した。
また、毎日15〜20分間、自己催眠訓練を行うためのCDを配付した。
主要評価項目はIBS症状の十分な軽減とし、3および12カ月後の有効率(4週連続で患者が十分な軽減と評価した率)を調査した。
intention-to-treat(ITT)解析で催眠療法の2群を対照群と比較し、催眠療法群は個別療法に対するグループ療法の非劣性(非劣性マージン15%)をper protocol解析で評価した。
効果は個別療法とグループ療法で同等
ITT集団は、個別催眠療法群142例、グループ催眠療法群146例、対照群54例で、各群で15〜20%が脱落した。
3カ月後の有効率は、
個別療法群で40.8%(95%CI 31.7 〜50.5%)、
グループ療法群で33.2%(同24.3〜43.5%)と、
催眠療法の2群は対照群(16.7%、同7.6〜32.6%)よりも高かった。
これらの効果は12カ月後も持続していた。
催眠療法群では、対照群よりもIBSの症状軽減に効果が見られ、オッズ比は、3カ月後で2.9(95%CI 1.2〜7.4、P=0.0240)、12カ月後で2.8(同1.2〜6.7、P=0.0185)だった。
per protocol解析では、個別療法群とグループ療法群の有効率は、
3カ月後がそれぞれ49.9%(95%CI 39.2 〜60.6)と42.7%(同32.3〜53.8)、
12カ月後が55.5%(同43.4 〜67.1)と51.7%(同40.2〜63.0)で、
個別療法に対するグループ療法の非劣性が示された。
催眠療法群で予期せぬ重篤な有害事象が8件報告されたが、大部分はがんや炎症性腸疾患によるもので、治療関連ではないと判定された。
セッション数や適応患者は要検討
Flik氏らは、脱落率の高さや、催眠療法のセッション数が通常の半数と少なかったため過小評価につながった可能性がある点などを研究の限界としつつも、
「催眠療法はIBSの一次または二次治療の選択肢として考慮されるべきである。
さらにグループ療法を行うことで、同じコストでより多くの患者が治療を受けられるのではないか」と指摘。また、「催眠療法の最適なセッション数、患者の心理学的症状の程度が効果に及ぼす影響などについては引き続き検討する必要がある」と述べている。
米・University of North CarolinaのOlafur Palsson氏は「今回、IBSの三次治療における催眠療法の有効性を検討した他の多くの試験と比べて示された効果が小さかったのは、IBSの一次および二次治療では心理的要因の関与がより少ないためと考えられる。腸管をターゲットとした催眠療法がIBS患者の一次および二次治療で適しているか結論を得るためには、さらなる試験が求められる」とコメントしている。
(坂田真子)
心と体がいかに密接に繋がっているか、
心身症も、こころを治療すれば、気持ちの持ち方を気楽な方に誘導してあげるだけで、治るという実証がこの論文です。
催眠療法が過敏性腸症候群(IBS)の症状軽減に有効
オランダ・多施設RCT 2018年12月27日 06:00
腹痛、腹部膨満、下痢・便秘などの症状でQOLを著しく低下させる『過敏性腸症候群(IBS)』。
世界各国の有病率は数%〜20%程度と高く、
IBSに対する薬物療法や食事療法が無効な患者も少なくない。
そのため、催眠療法の効果が検討されているが、その多くは限られた高度専門施設で行われているのが実状だ。
そこで、オランダ・University Medical Centre UtrechtのCarla E. Flik氏らは、一次または二次治療を受けている成人のIBS患者354例を対象に、
催眠療法の有効性を検証する多施設ランダム化比較試験(RCT)を実施した。
その結果、催眠療法は教育および対症療法に比べて症状軽減に有効であったと、Lancet Gastroenterol Hepatol(2019; 4: 20-31)で報告した。(関連記事「慢性痛治療における催眠活用の可能性を検討」)。
催眠療法士の助言や自己催眠訓練で改善図る
Flik氏らは、プライマリケア医または二次医療機関から心理療法目的で紹介された18〜65歳のIBS患者を対象に、オランダの11病院の参加によるRCT、Efficacy of individual and group hypnotherapy in irritable bowel syndrome(IMAGINE)を実施。
2011年5月〜16年4月に登録した354例を、
個別催眠療法群150例、グループ催眠療法群150例、教育的対症療法群54例(対照群)に
ランダムに割り付けた。
催眠療法は45分のセッションを週2回、6週間行った。
催眠療法士は患者自身の力で痛みや不快感の軽減のために消化器系をコントロールする手法について助言した。
また、毎日15〜20分間、自己催眠訓練を行うためのCDを配付した。
主要評価項目はIBS症状の十分な軽減とし、3および12カ月後の有効率(4週連続で患者が十分な軽減と評価した率)を調査した。
intention-to-treat(ITT)解析で催眠療法の2群を対照群と比較し、催眠療法群は個別療法に対するグループ療法の非劣性(非劣性マージン15%)をper protocol解析で評価した。
効果は個別療法とグループ療法で同等
ITT集団は、個別催眠療法群142例、グループ催眠療法群146例、対照群54例で、各群で15〜20%が脱落した。
3カ月後の有効率は、
個別療法群で40.8%(95%CI 31.7 〜50.5%)、
グループ療法群で33.2%(同24.3〜43.5%)と、
催眠療法の2群は対照群(16.7%、同7.6〜32.6%)よりも高かった。
これらの効果は12カ月後も持続していた。
催眠療法群では、対照群よりもIBSの症状軽減に効果が見られ、オッズ比は、3カ月後で2.9(95%CI 1.2〜7.4、P=0.0240)、12カ月後で2.8(同1.2〜6.7、P=0.0185)だった。
per protocol解析では、個別療法群とグループ療法群の有効率は、
3カ月後がそれぞれ49.9%(95%CI 39.2 〜60.6)と42.7%(同32.3〜53.8)、
12カ月後が55.5%(同43.4 〜67.1)と51.7%(同40.2〜63.0)で、
個別療法に対するグループ療法の非劣性が示された。
催眠療法群で予期せぬ重篤な有害事象が8件報告されたが、大部分はがんや炎症性腸疾患によるもので、治療関連ではないと判定された。
セッション数や適応患者は要検討
Flik氏らは、脱落率の高さや、催眠療法のセッション数が通常の半数と少なかったため過小評価につながった可能性がある点などを研究の限界としつつも、
「催眠療法はIBSの一次または二次治療の選択肢として考慮されるべきである。
さらにグループ療法を行うことで、同じコストでより多くの患者が治療を受けられるのではないか」と指摘。また、「催眠療法の最適なセッション数、患者の心理学的症状の程度が効果に及ぼす影響などについては引き続き検討する必要がある」と述べている。
米・University of North CarolinaのOlafur Palsson氏は「今回、IBSの三次治療における催眠療法の有効性を検討した他の多くの試験と比べて示された効果が小さかったのは、IBSの一次および二次治療では心理的要因の関与がより少ないためと考えられる。腸管をターゲットとした催眠療法がIBS患者の一次および二次治療で適しているか結論を得るためには、さらなる試験が求められる」とコメントしている。
(坂田真子)
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