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2023年10月12日
短編怪談『向かい合う神社』【神社にまつわる怖い話】
ハイキング中に見つけた奇妙な神社。
谷底の道の両脇に鳥居を構え、急斜面に石段を積み上げ、
向き合っている神社。
まあ、急ぐ山行ではないので、まず右側の石段を登り始めたが、
気まぐれを起こした自分を恨みたくなるほどきつい登りだった。
ようやく上までたどり着くと、小さなお堂があり、
こんな場所にしては珍しく多くの絵馬がぶら下がっている。
絵馬というより、木簡に近い代物だが、
そこに書かれているのは、何者かを深く怨み、不幸を願う気持ち。
木簡には、記入者の持ち物と思われる時計や、
筆記用具などが縛り付けられている。
未記入の新しい木簡が、黒い木箱に入れられている。
嫌な気分で石段を降り、下まで行けば、
そこには向き合って建つ神社の石段。
どうするべきかと考えたが、
このまま立ち去るのは非常に心残りなので、
先ほどの神社を背中に感じながら、
目の前の石段を登りつめた。
小さなお堂に、ぶら下がった木簡。
向き合った斜面の、似たような光景の神社。
手にとって読んだ木簡に書かれていたのは、
誰かの幸福や成功を願う言葉。
記入者本人に向けられた言葉もある。
そして、やはり身の回りの品が結び付けられている。
幸福を願う気持ちに触れても、なぜか心温まらない。
腑に落ちぬ思いを抱えて石段を降りていると、
竹箒を持った老人が登ってくる。
老人は俺の顔をじっと見つめ
「奉納に来た顔じゃないな」
そのまま石段に腰を降ろしてしまった。
成り行き上、俺もそこに座らざるを得ない。
老人によれば、木簡を記入し、奉納するなら、
両方の神社でそれをしなければならないという事だった。
怨むだけでは駄目。
幸福を願うだけでも駄目。
決まりを守らない場合、記入者本人を、
とんでもない不幸が見舞うとの事だった。
「死ぬんですか?」
「寿命が伸び、ひたすら苦しんで生き続ける」
「幸福を願うだけでも?」
「そのようだ」
怨み、不幸を願う木簡は、
幸福を願う木簡よりも圧倒的に多かった。
そして、もうひとつの決まり事を教えられた。
自らの不幸、幸福を願って奉納してはならない。
首都圏に、この山はある。
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【短編怪談】ばんそうこう
うちのダンナは仕事柄、
かなり朝早く起きて出勤する。
だいたい5時には一緒に起きて、
私は朝ごはんの、
ダンナは出勤の支度をする。
眠い目を擦って台所に立ち、
ダンナが洗面所で顔を洗っている音が聞こえた。
突然インターホンが鳴って、
覗き窓から見てみると、
見た事も無い小学生低学年の男の子が、
ランドセルを背負って黄色い学帽かぶって立っていた。
「誰?どうしたの?」
って聞くと、その男の子
「ママがケガしちゃったから、
ばんそうこう頂戴」
って言ってきた。
どこの子だろう?って思いながら、
台所に戻り救急箱からばんそうこうの箱を取って玄関に。
ドアを開ける前に、
「ねぇ、どこの子?」
と聞きながらサンダルをつっかけていると、
その子
「僕のママ、血がいっぱい出ているの」
と言う。
じゃあばんそうこうじゃ間に合わないんじゃない?と思いながら、
「どうやってケガしちゃったの?」
と聞くと、
「ママ、血がいっぱい出て動かなくなっちゃったの。
早く開けてよ」
って。
なんか恐くてヤバい!と思って、
「うちは駄目!どっか他所に行って!」
と言うと、
ドアを凄い勢いで蹴った音がして静かになった。
ドキドキしながら覗き窓を覗くと、
その男の子が外側の覗き窓の高さまでよじ登って、
反対にこっちを覗いてニヤニヤしてる。
ぞっとして後ろに下がって…
と、そこで目が覚めた。
心臓がまだドキドキしている。
ダンナが
「あれ?また寝ていたの?」
と言いながら洗面所から部屋に戻ってきた。
ホッとして起きて、
ご飯を作らなくちゃと思って布団を出ようとした時、
右手にばんそうこうの箱を持っていた。
あれ?と思っているとダンナが、
「さっきお前、玄関にいてなんか騒いでいたから、
どうしたのか聞こうと思ってたんだよ。
なんかドアとか蹴られてたろ?」
って。
2023年09月02日
【洒落怖】自動車事故
去年の実体験の話をします。
6月の半ば頃の話。
当時俺はバイク買ったばかりで、
大学が終わるとしょっちゅう一人でバイクに乗って
あちこちを走り回っていた。
その日も特にする事がなかったので、
次の日休みという事もあり神奈川方面へ結構な遠出をした。
で、その帰り道、
たしか夜の12時過ぎくらいだったと思う。
道とかも適当で、
標識を頼りにあまり車通りの多くない道を
世田谷方面に向かって進んでいると、
急に前を走っていた車が急ブレーキを踏んで蛇行し、
ガードレールにぶつかった。
目の前で事故を見たのは初めてだったので
かなりびっくりしたが、そうも言ってられないので、
ひとまずバイク路肩に停めて車のほうへ駆け寄った。
車の窓から中を覗き込むと中には女の人がいて、
両手でハンドルを持ったまま頭を項垂れてガタガタ震えている。
え?これヤバくね?と思い、
とりあえず窓越しに
「大丈夫ですかー?」
と声をかけたのだが、
女の人から返事は無い。
結構パニック気味だった俺は、
ここで警察に電話しないととふと気付いて
110番をした。
警察を待っている間、
俺が何度か
「大丈夫ですかー?」
と聞いていると、
女の人はやっと車から降りてきた。
見た感じ怪我は無さそうだが、
顔色は真っ青で何かぶつぶつと呟いている。
少し呟きが気になったので、
「どうしたんですか?」
と口元に耳を近付けると、
震えた声でとんでもない事を呟いていた。
「子供轢いちゃった…
子供轢いちゃった…
子供轢いちゃった…
子供轢いちゃった…」
俺はかなりギョっとした。
事故の瞬間を見てはいたが、
子供なんていたか?
記憶を思い返しても
道路に人影があったようには見えなかった。
慌てて道路の方を振り返ったが、
どこにも子供の姿はない。
俺は女の人を路肩に座らせて、
あちこち歩いて見て周ったのだが、
子供なんてどこにもいない。
そうこうしているうちにパトカーがやってきて、
警官が2人降りてきた。
警官に俺が事情を話し、
警官もかなりあちこち探してみたのだが
結局子供はいなかった。
俺も色々事情を聞かれたのだが、少なくとも俺は、
女の人の乗る車が急ブレーキを踏んで
ガードレールにぶつかったところしか見ていないし、
道路に人影も見ていない。
俺は自分の記憶にあるとおり
警官に伝えた。
再度警官が女の人に事情を聴きに行き、
俺もいっしょに聞いていたのだが、
女の人が言うには、
急に道路わきから子供が飛び出してきて、
衝突する音も聞いたという。
でも、現実にはどこにも子供の人影は無い。
警官の一人がパトカーに戻り無線で何か話し始め、
もう一人の警官が女の人に、
怪我はないかとか痛い所はないかとか聞いていたとき、
急に女の人が道路わきにあったカーブミラーを見て、
ぎゃあああああああああああああああ
と物凄い絶叫を挙げた。
びっくりして、
俺と色々聞いていた警官もカーブミラーを見た。
カーブミラーには俺が一番手前に、
歩道の路肩に女の人が座り、
その横に警官が屈んでいたのだが、
女の人と警官の後ろ、
本来誰もいないその場所に子供が写っている…
年は4歳か5歳くらい。
ちょっと良いところの幼稚園児が着る様な服を着て、
無表情に鏡越しに俺たちを見ていた。
俺と警官はたぶんほぼ一緒に後ろを振り向いたと思う。
しかし、そこには誰もいなかった。
もう一度ミラーのほうを見ると、
そこには俺たち3人しか写っていなかった。
女の人はこれで完全にパニックになって、
とても話が聞けるような状態ではなくなってしまい、
警官が呼んだ救急車でそのまま運ばれていった。
そして、俺には
一応あとでまた事情を聞くかもしれないと
住所や電話番号を聞き、最後に
「ああいうのはさっさと忘れたほうが良い、
気にしないほうが良いよ」
と言ってきた。
が、そう言っている警官もかなり顔色が悪かったが…
その後、警察からは特に連絡など何もなかったので、
申し訳ないが後日談とか真相とかいわくとか、
そういうのは全く解りません…
以上で俺が体験した話は終わりです。
2022年10月03日
お祓いの効果【怖い話】
大学卒業する間際のころ。
田舎の親から電話があって、
「おばあちゃんがお祓いをすると言って聞かない」といわれ、
しかも「家族全員がそろわなきゃだめだといってどうしようもないのよ」
とのこと。
忙しい時期でしたが
内定先の説明とかもあったので急遽帰省することにしました。
私は「またばあちゃんが変な宗教にひっかかんだろう」
ぐらいにしか思ってませんでした。
家に帰ると客間、
実際は父親のオーディオルームと化してましたが、
そこに神社などでみる大きい神棚が組まれていました。
ばあちゃんけっこうまじなんだなーとか思いつつ、
居間にいくと真っ黒に日焼けした、
小汚い服をきたちっちゃいおじいちゃんがいました。
このおじいちゃんがお祓いをする先生とのこと。
おじいちゃんはにこにこしながら私を見て、
「遠いところからすまないねえ。
でもあなたがおったほうがうまくいくきよ」
と言われました。
これがどういう意味か、お祓いが始まってすぐわかりました。
神棚の前に、さっきのおじいちゃんが神主さんの格好で現れました。
私たち家族、父、母、祖母、私、弟の5人は
神棚の前で正座させられています。
手にはもらったお札を合掌の手に挟むように持たされています。
神主さんは私たちに目をつぶってお祈りするようにと言って、
お経のようなものを読み上げ始めました。
しばらくして、私はちょうど生理のような、
お腹に重い痛みを覚えました。
目をつぶっていたのでわからないはずなんですが、
背後になにか人の気配を感じました。
お腹の痛みに耐えながら、
しかし私の意識は少しづつ薄れて行きました。
かすかな意識のなかで私はものすごい悲しみを感じました。
しばらくして気がつくと、家族全員が私の方を心配そうに見ていました。
私は、自分の目から鼻から涙のようなものが出ているのに驚きました。
しかしなぜか力がはいりません。
脱力、放心状態でした。
あとで家族に聞いた話によると私は神主に質問ぜめにされ、
意味不明なわめき声を発してたらしいです。
神主さんの説明では、
裏の森から私の家の前を流れる川に向かう、
霊の通り道がある。その通り道に丁度私の家があったことから、
この家に住み着いてしまう霊がいたとか。
それが私に乗り移り、霊を説得して、成仏させたということでした。
お祓い(神主さんは祭りっていってましたが)がすんで、
後片付けも全部神主さんとそのお付の人がやってくれました。
神主さんは帰り際、
「あっちに戻ってなんか変なことがおこるようやったらここに電話してな」
といって名詞のようなものを頂きました。
それで、私が高校受験とかでお参りにいった
神社の神主さんであるということがわかりました。
東京に戻った後、私は、
他の人が見えないものを見てしまうようになってしまいました。
霊感とかそういうものには話には聞くけど
実際に自分が見えてしまうとはすごい驚きでした。
私は数日後、神主さんに電話をかけました。
神主さんは笑いながら、
「あーあなたはもともとそういう体質なんですよ。
今回のお祓いがキッカケで感覚が鋭くなってしまってるんでしょうねえ。
でも大丈夫ですよ。
しばらくしたらまた前と同じに戻りますよ」
言葉どおり、1〜2ヶ月は頻繁にに霊がみえていました。
しかし取り憑かれるようなことはありませんでした。
3ヶ月ぐらいみはそういう感覚は全くなくなっていました。
2022年09月28日
龍神岩【ほんのりと怖い話/山にまつわる怖い話】
自分の家は山のてっぺんなんだけど、そこから隣の山の頂上に、
大岩がたくさん置いてあるのが見えるんだわ。
実際は誰が置いたわけでもないのだろうが、
この表現が一番しっくりくる
で、近所の爺さんに「あの岩は何?」って聞いたら、
「岩の中に老人が二人住んでる」
みたいな物語を聞いたんだけど、詳しくは覚えてない。
で、どーしても会いに行ってみたくなって、行ったんだわ。
てっぺん目指して山道をひたすら登る。
でもどうしてもたどり着けない。
てっぺんは平原みたいになってるはずなのだが、
いつまでたっても森の中。
次々と頭の中に、
『本当にあった怖い話』シリーズのネタが浮かんでくる。
泣きそうになりながら、実際ちょっと泣きながら、
それでも1時間ほど登った所で、急に視界が開けた。
やっと着いたかと思ったが、
大岩は無く、あるのは寂れた赤い鳥居。
不思議だったのは、鳥居だけだったこと。
建物が見あたらない。
で、ここで分かれ道になってて、一つは再び森の中へ、
もう一つは鳥居をまっすぐ行く道。
暗い森の中には行きたくなかったので、まっすぐ行くことにした。
鳥居をくぐり進む。
が、しばらく進むと、この道も森の中へ再び入っていった。
この時点でもう出発から3時間は経ってて、
へとへとで泣きながら進んだ。
すると、なんか集落みたいな所に出て、
人もいたので、急に安心してしまいもっと泣いた。
そんな私を見て、事情が飲み込めたのだろう。
「ようきたね」と言いながら、頭をなでてくれた。
そんで、「もどろうか」と言ってくれたが、
そこからは記憶が無く、気がついたら龍神岩の前にいた。
龍神岩ってのは、
自分の町にある神社の池の真ん中にある馬鹿でかい岩で、
土地の先祖が龍を退治して閉じこめた岩らしい。
その神社は自分が登った山とは反対方向だったが、
疲れていたのか疑問に思うことなくそのまま家に帰ったら、
両親が泣きながら飛びついてきた。
どうやら家を出てから2日経ってたらしく、
やれ神隠しだ遭難だと、大騒ぎだったそうだ。
ちなみに、今ではそのてっぺんの大岩には、
2時間もあれば行けるようになった。
遺跡じゃないんだろうが、遺跡っぽい雰囲気が好き。
町も一望できるし、今じゃお気に入りの場所です。
それから、二度とそのじーさまの話は信用しませんでした(笑)
長いし怖くないしでごめんね。
孫が出来たら話そうかと思う。
2022年09月27日
「ぼうや、神徳があるねえ、じゃ20年後にまた来るよ」烏帽子おじさん【怖い話】
小学校4年生の夏休みのことで、今でもよく覚えてる。
川と古墳の堀をつないでる細い用水路があって、
そこで一人で鮒釣りをしてたんだ。
3時頃から始めたんだけど、
いつになくたくさん釣れるので面白くてやめられなくなった。
だんだんあたりが薄暗くなってきて、
日の長い時期なので7時近かったと思う。
そろそろ帰らないと怒られるな、
もう一匹だけ釣ったらやめようと思っていたら、
ガサガサと藪を踏み分ける音がして、
川原の丈の高い草の中を何かが近づいてくる音がする。
人が通るような道はないので動物かと思ってちょっと身がまえたが、
出てきたのは自分の父親より少し年上くらいのおじさんだった。
おじさんは神主さんのに似た上下白の着物を着て、
顔は大人なんだけど小学生の自分と同じくらいの背丈で、
頭に黒くて長い帽子をかぶってる。
それが烏帽子というものだとは後でわかった。
はじめは怖いという感じはぜんぜんしなかった。
おじさんはにこにこ微笑んでいてとても優しそうにみえたから。
おじさんは体についた草の葉を払いながら
「ぼうや釣れるかい?」と聞いてきたので、
「はい、釣れます」と返事をすると
「ちょっとお魚見せてくれるかい」と言いながら歩み寄って
魚籠を引き上げ、
「ほーう大漁だねえ。いくらかもらってもいいかな」
そしてこちらの返事も待たずに
魚籠の中から一番大きい鮒を二本指ではさんでつまみ上げ、
「いただくよ」と両手で抱えて頭から囓り始めた。
バリバリという骨の砕ける音が聞こえてくる。
おじさんは
「いいな、いいな、生臭いな」
と歌うようにつぶやいて頭のなくなった鮒を草の上に捨てた。
自分が呆然と見ていると
「殺生だよ、殺生はいいな、いいな」
と言いながら、
魚籠の上にしゃがみ込んで、
今度は両手をつっこんで2匹の鮒を取り出すと、
こちらに背を向けるようにして、交互に頭を囓りだした。
やっぱりバリバリゴリゴリと音をたてて頭だけ食べている。
生臭い臭いが強くした。
魚を捨てると立ち上がってこちらを振り向いた。
にこにこした顔はそのままだが、
額と両側の頬に鮒の頭が生えていた。
鮒はまだ生きているようでぱくぱく口を開けてる。
「ああーっ」と声を上げてしまった。
ここから逃げなくちゃいけないと思ったが、体が動かない。
おじさんは動物のような動きで一跳びで自分の側まで来て、
「ぼうやももらっていいかな」
と言って肩に手をかけてきた。
思わず身をすくめると、
同時におじさんのほうも弾かれたように跳び離れた。
そしてこちらを見て不審そうに首を傾げ
「・・・ぼうや、神徳があるねえ、どこかにお参りにいったかい?」
そう言うおじさんの顔から目を離せない。
すると急におじさんの顔が黒くなり、吠えるような大声で
「どっかにお参りにいったかと聞いてるんだ」
と叫んだ。
気おされて「・・・この間お祭でおみこしを担ぎました」と、
なんとか答えると、おじさんは元のにこにこ顔に戻って
「そうかおみこしねえ、ふーん残念だなあ、じゃ20年後にまた来るよ」
ゴーッと強い風が顔に当たって、
目をつぶってもう一度開けるとおじさんの姿はなくなっていた。
体が動くようになったので釣り道具をぜんぶ捨てて家に逃げ帰った。
家族にこの話をしたけど、何を馬鹿なことをという反応だった。
母親が変質者かもしれないと少し心配そうにしたくらい。
翌日中学生の兄といっしょに昼前に堀にいってみたら、
釣り竿なんかは草の上に投げ捨てられたままになっていた。
ただ魚籠に近づくとひどい臭いがして、
中はどろどろになってあたりの水面に油と魚の鱗が浮いていた。
その後はその古墳の堀には近づいていないし、
特に奇妙な出来事も起きていない。
ただもうすぐあれから20年になるんだ。
2022年09月26日
136からの電話 【実話系・怖い話】
これはずいぶん前に、私の弟の身に起こった出来事です。
私と弟は歳が近く、実家では1つの部屋を共有して使っていました。
狭い部屋に男が2人、しかも年齢差があまりないものですから、
仲は悪く常に喧嘩していました。
それでも兄弟ではありましたら、
仲が悪いと言ってもピンチの時は絶対に助ける、
という絆はお互いに持っていたのだと思います。
弟がもう間もなく成人を迎えるという頃。
学生時代を謳歌していた弟は、その日も飲み会へ参加していたため、
深夜遅くに帰宅しました。
私は眠っていましたが物音で起き、
今頃帰ってきたんだな、くらいにしか思わずまた目を閉じます。
ヴーン…ヴーン…
鳴り響く音でまた目が覚めました。
音の正体はすぐに分かりました。携帯のバイブレーションです。
私のものはピクリとも反応していませんから、
弟に着信がきているのでしょう。
しかし肝心の弟は、酒の力で爆睡しているのか全く出ようともしません。
「おい、電話鳴ってるぞ!うるせーから早くでろ!」
弟をたたき起こし、電話に出るよう急かします。
あぁ、と呻きながらやっと携帯を手にした弟は、画面を見るなり
「え?136?何これ。」
と声を上げました。
兄ちゃんこれ見て、と差し出された弟の携帯には、
「136」から着信が来ているのを、私も確かに見たのです。
弟「こんな番号ってあるの?」
私「わからんけど…まぁとりあえずうるさいから出てみれ。」
もうずいぶん長い時間、携帯は鳴っています。
弟は携帯を耳に当てました。
「はい。え?いやオレに言われても…。はい、ちょっと待って下さい。」
そう言って弟は、何やらメモを取り始めます。
「はい、わかりました。」
電話は終わりました。
「何だったの?」
私が尋ねると、弟は
「いや、何か亡くなっている人が居る住所を教えるので、
そこへ行って下さいって言うんだよ。オレ警察じゃないのに。
とりあえず住所メモした。」
と答えました。
意味が分からないので、私も弟も再び寝ることにしました。
翌日、起きると弟のメモがそのまま机に置きっぱなしになっていました。
現実だったんだなと思って弟の携帯を確認しましたが、
136からの着信履歴など無かったのです。
分からない事だらけでしたので、ちょっと調べてみました。
すると「136」は電話履歴を教えてくれる、
固定電話の有料サービスだと判明。
ですが136から直接電話が来る事は有り得ない。
あくまで136に電話をかける事で、利用出来るサービスでした。
次にメモをした住所。
インターネットの情報によると、
そこは人里離れた場所にある人家のようでした。
それ以上の情報は特に出てこず、謎は深まるばかりです。
「そんな遠い場所じゃないし、オレ友達と行ってみるわ。」
弟は、気になるのか現地に向かうようです。
私は「おう」とだけ言って、
これから何が起ころうとしているのか予想すらつきませんでした。
その日の夕方近くになって、弟から連絡がありました。
「兄ちゃん、ヤバい事になった。今警察にいる。」
「何?一体どうした?!」
両親はまだ仕事で帰ってこないため、
私が代わりで警察署へと向かいました。
警察には弟と、友人2人が居ました。
話を聞いてみると、
あのメモの住所へ向かってみると廃墟があったそうです。
何気なく中を探してみると電話の通り、
本当に人の骨があったので警察へ通報。
事情聴取のため、
警察へ連れていかれたが保護者的な人が来るまでは帰せない、
という事で私が呼ばれたようです。
警察へありのままを話そうかとも思ったのですが
「夜中に136という番号から電話が来て、
言われた住所へ行ったら人の遺体があった。」
なんて話をしても、余計に怪しまれるだけなのは明白です。
とりあえず弟達が心霊スポット巡りをしていたら偶然そうなった、
という事で話を合わせます。
遺体は首吊りの形跡があり、
死後かなりの年月が経っているとのことで、
一応家に帰ることは出来ました。
それからというもの、弟に異変が起きました。
最初は弟の
「今、テレビになんか変なの映らなかった?」
という指摘から始まりました。
何度もそういう事が重なったので、
弟とテレビを見ている時は
常に録画をして不可解な所があったら見直してみる、
という方法を試してみたのですが…
録画では、その現象は確認出来ませんでした。
弟が言うには
「女の人の影みたいなのがみえる」
らしいのです。
一度全てを両親に相談してみたのですが、
そんな事があるはずもない、の一点張りで相手にもされません。
そのうち弟は、日常生活の場面でも「女の影が見えた」と言い始めます。
これは廃墟にいた遺体の霊の仕業だという確信だけが、
私の中にありました。
そこで近所の神社でお祓いを受け、
お守りを買い込んで弟の持ち物にくまなく投入。
友人達にも相談し、あらゆる手を試しました。
ところが、弟は良くなるどころか悪化していきました。
女の影に怯えて外出を拒み、
鏡にうつるらしくお風呂や洗面所にも行きたがりません。
流石の両親もこれはおかしいと気付き、
伝手で知った方に除霊を頼んでみることになりました。
除霊当日。
霊能力者だというおばさん3人が家に来て、早速事が始まりました。
お経をあげながら長い事やっていると、終わったようで説明を受けます。
「とりあえず除霊は終わりましたが…
残念ながら失敗してしまいました。申し訳ございません。
手は尽くしたのですが、
この方に憑りついている霊は何か強い念を訴えはするのですが、
それが何なのか読み取れないのです。
分かり易く申しますと、会話が成り立たない状態です。
強い要望があるのは確かで、
恐らくそれを達成すれば成仏するとは思うのですが…。」
除霊も通用しないと聞いて、かなりショックを受けました。
もう弟は助からないのではないか…。
悲しくて涙が出ました。
それでも私達家族が諦める訳にはいきません。
私は警察署へ向かい、発見された遺体について聞いてみる事にしました。
警察は最初、そういう事は教えられないと頑なな態度でしたが、
私があまりにも食い下がるので根負けしたのでしょう。
情報をもらえました。
とは言っても、
警察でも分かっていることがほとんど無く困っている状況でした。
遺体は若い女性、死後かなりの年数が経過しているため
はっきりとはしないが、恐らく死因は首吊りによる窒息死。
廃墟の関係者も皆死去しているため、調べようがないそうです。
最後に残された術として、
私は遺体が発見された廃墟へと向かってみました。
効果があるのかも分かりませんが、
現地で直接訴えれば何とかなるのではないか、そう思ったのです。
途中で線香と花を買い、現場へ到着したら線香に火をつけて花を置いて
「頼むから成仏してくれ!」
と、何度も祈りました。
するとどこからか女の声で
「ありがとう」
と聞こえたのです。
人生でこの瞬間ほど恐怖を感じた事は、今のところありません。
声にならない声をあげながら、
私はトップスピードで廃墟から逃げ帰りました。
そして驚く事に、それから弟はみるみる回復。
女の影もすっかり見えなくなったようで、
今ではウザいくらいの元気を取り戻しました。
ここからは私の憶測です。
あの遺体は、
ひょっとして誰かに供養をして欲しかっただけなのかもしれません。
どういう状況だったのかは分かりませんが、
自殺という手段をとって成功したものの、
誰にも発見されず放置されたままでは、
魂が楽にならず苦しみが長いこと続いた。
そこに助けてくれる希望として、
どういう訳か分かりませんが弟に白羽の矢がたった。
なぜ弟なのかは、きっと人智の及ばない領域の話なのかもしれません。
弟にも聞いてみたのですが、
この件に関して全く心当たりは無いそうです。
唯一、これかもと思う出来事があるとすれば
「ゼミの研究でその廃墟がある地域へ行った事がある」
くらいしか思い浮かばない、とのことです。
2022年09月25日
天安河原 「あんま見ない方がいい」【実話系・不思議な話/怖い話】
10年ほど前、まだ学生で宮崎にグループ旅行した時のこと。
パワースポット好きの先輩がルート決めたんで、
高千穂峡、高千穂神社、天岩戸神社などを回ることになった。
紅葉も楽しめるからって言われて、
そっちがメインやないんかいとは思ったが。
先輩曰く、イチオシがあまのやすがわらとかいう所で、
そこの祠に参って東国原は宮崎県知事に出馬することを決めたとか何とか。
パワーが強すぎて体調不良の人には良くないとか。
俺自身はなんの下調べもなくただついてったんだが、
中々圧巻の風景だった。
願いを成就させる為に石を積むと良いとかで、
ほんとあちこち無数に石が積んである。
ちょっとやそっとじゃこれは作れんな、というレベル。
ググッてくれたら雰囲気分かると思う。
一緒に来たヤツらは宝くじ当たりますようにとか、
いい男捕まえられますようにとか各々口にしながら石積んでた。
とりあえずやっちゃうのって日本人あるあるよな。
突き当たりがプチほら穴みたいな感じで、そこが祠らしい。
隅っこの方でまだ幼稚園くらいかな、子供2人が石積んで遊んでた。
ランニングに粗末なズボン、
いかにも母親カットですみたいな芋っぽい髪型で、
The昭和みたいなやつら。
リアルガチ田舎もんだな、と変に関心した。
ぶつぶつ喋りながら遊んでるから何となく見てたら、
「〇〇(人の名前?のように聞こえた)はもうダメやね」
「今夜でしまいや」
「××(これも人の名前?)にうらみかっとるっちゃけどね」
みたいに聞こえた。
ねねちゃんのリアルおままごとみたいな感じかな、と思った。
「さーご飯食べ行こ!」
って先輩に腕掴まれて、半強制的に出口に歩かされた。
おお、胸当たってるとかちょっと意識したが、
先輩はお構いなしにめっちゃ声を潜めて
「あんま見ない方がいい」
って。
決して先輩は後ろを見なかったが、視線で後ろの事、
つまりさっきの昭和の子供たちのこと言ってるんだとわかった。
俺は、なんで?変質者と間違われたら困るから?と聞き返したんだが、
「バカ、あんた回り見た?足の踏み場も無いほど石積まれてたじゃん。
どこも通って崩れたあと無かったよ。それにいま11月なのに、
あんな真夏みたいな格好してるのおかしいでしょ」
先輩にそう言われて背筋が寒くなった。
ワンチャン、虐待とかも考えたがそっちの方が怖いかもな。
しかし時間が経てば経つほど、
あそこはパワーはあるかも知らんが
会いに行ける賽の河原感強すぎてやっぱ怖い。
2019年03月12日
借家の話「もし家を建て替えていなければ・・・」【怖い話】
建替えた持ち家と、一時住んだ借家での話。
子供の頃、あちこちガタのきた、
古くて狭い木造家屋に住んでいた。
そんな時、隣の土地を買えたので、
そのボロ家を潰してちょっと広い家を新築することになった。
しかし、
さぁこれからという時に祖母が病気になり、
半年後に亡くなった。
家の建替え費用から、数百万円が治療費や葬儀に消えた。
当時の我が家の家計では、
消えた費用をもう一度貯めるには何年かかるか分からない。
建替えを諦めるか悩んだ母は、
伯母の紹介でとある占い師に相談した。
占い師いわく、
「無理してでも建てなさい。
急がないと家族に不幸が出るかもしれない」と。
それで両親はかなり覚悟のいる借金をして、
家を新築することにした。
住家を壊すので、
新居が完成するまでは借家住まいになる。
運良く、家から徒歩15分程の所に、
二階建て一軒家の賃貸物件が見つかった。
家賃も安く、小鳥を飼っていたし、姉は受験を控えていたしで、
両親は喜んでろくに下見もせずにその一軒家を借りてしまった。
借家は住宅密集地の真ん中にあり、
二階の南窓に僅かに陽が当たるだけの薄暗い家。
一階が玄関・台所・洋間・風呂・洗面・トイレで、
二階が洋間と和室。
玄関は鬼門になっている。
この家がとにかくジメジメしていて、暗くて臭い。
家中どこに居ても、
下水管から上ってくるような生臭いニオイがする。
おまけに蝿やゴキブリ、
蟻、蜘蛛、団子虫、百足、ダニやノミ・・・。
毎日狂ったように掃除しても、
いたるところから涌き出る虫。
さらに南側隣家との隙間、
猫の額ほどの庭にはしょっちゅう猫の死骸が落ちている。
10日に一度くらいの凄い頻度で。
ただでさえ臭い家に、台所の小窓から死臭が入る。
家の周辺が野良猫のたまり場になっていて、
夜は鳴き声がうるさくて眠れない。
飼っていた小鳥は鳴かなくなり、
専業主婦の母は1ヵ月でノイローゼ気味になった。
一階の台所は一応ダイニングキッチンだったが
誰もそこで食事する気にならず、二階の床にちゃぶ台を置いて、
小鳥も含め家族全員なるべく二階で過ごした。
多少なりとも陽の差す二階の方が、
不浄な空気が少ない気がしていた。
この家には何か悪いモノでも憑いているんじゃないか?、
とみんな思っていた。
仏壇も二階に置いて、
中の祖父母やご先祖に毎日手を合わせた。
「家族に災難が起きませんように。
早く新しい家が建ちますように」と。
宗教に特別熱心な家ではなく、
普段は盆と命日と法事くらいしか拝まなかったが、
あの借家にいる間は家族全員が内でも外でも
「神様仏様」と拝み倒した。
とにかく怖かった。
家の仏壇、近所の神社やお寺やお地蔵さんまで、
拝めるものは拝み倒したおかげか、
新しい家は予定より3ヶ月も早く完成した。
11月の爽やかな秋晴れの日、
気味の悪い借家から無事に引っ越すことが出来た。
年が明けて平成7年1月17日、
阪神淡路大震災が起こる。
我が家は震度7の激震地だった。
近所はみなぺちゃんこに倒壊し、
うちを含め比較的新しい家だけが数軒残った。
何人も亡くなった。
もし新築していなければ、
我が家でも犠牲が出ていたかもしれない。
そして、あの借家は全壊し、
そこに新しく入っていた家族のうち2人が亡くなったと聞いた。
あくまで天災だし、
ご不幸に遭われた方々はお気の毒に思う。
自分たちの幸運を、
八百万の神様や仏様に感謝いたします。
空き家の記憶【怖い話】
昔、炭坑が廃山になり
それまで皆が住んでた区域の炭住が
あちこち空家になり取り壊す為、
残ってる人達は他の区域の炭住に移された。
幾日か経って突然修行僧が我が家にやってきた。
「早く引っ越したほうが良い。
私の力ではどうしようできない。ここは・・」
詳しくは覚えてないけどそんな事を言ったと思います。
当時、真面目一徹の父が仕事を失ったショックで病気になり
働けず私達子供もまだ幼く、
母がパートの掛け持ちで何とか暮らしている状態で
引っ越したくても引っ越せない状況。
「みんな心配するんじゃない」
と父はお坊さんを帰らせ
私達を安心させようといつもは見せてくれない
お笑い番組を見ていいと許しが出たり、
お小遣いを貰ったりとても幸せな出来事が続いたので
すっかりその修行僧の事は忘れてしまった。
我が家の横の棟は空家で
「あの家で遊んだら駄目よ。傾いているから危ない」
と親に言われていた。
でもその空家は炊事場の水道が出たり
家の中には家財がほとんど残ってて
テレビも電源がついて番組が見れたので
私と妹は親の目を盗み毎日のように遊んでた。
(今思えばおかしな状況です。でも妹と昔話をすると
「あの頃は楽しかったね。でも何で電気ついたんかなぁ?
前の住人が夜逃げしたすぐあとだったんだろうね」
と当時の事を話すので私の記憶違いではないはずです。)
ある日、急に妹が寝てしまったので
「布団かけなきゃ」
と私は押し入れを初めて開けてしまった。
突然目の前に現れた光景は
埃っぽい押入れの中には小さな仏壇と御位牌、
線香とロウソクの燃えカス
そして赤いお米が散乱してて見ているうちに
真っ赤な血が流れているように見え
怖くなり妹を起こそうと呼ぶが声が出ない。
ふと押入れの上を見上げると縄で吊るされた
髪の長い日本人形がクルクル回っていた。
それからどうやって妹を連れて家に戻ったか
記憶がありません。
妹は全く何も見てないようで次の日も
「遊びに行こう」
と私に強請りましたが
「お母さんに怒られたからもう行かない」
と嘘をついてなだめました。
それから1年もしないうちに父が首を吊り自殺しました。
第一発見者は私だそうです。
でも記憶がありません。
「すまん。カァチャンと○○(妹の名前)を頼む。」
父の痩せ細った白い足が木箱をのぼる
今でもたまにそんな悪夢を見ます。
あの日、修行僧は何を父に言ったのか
あの日、私があのお人形を見なければ・・
それがずっとずっと心残りです。