2020年07月23日
【追跡と遡及】食品トレーサビリティ
平成13年9月にBSE(牛海綿状脳症)の牛が国内で発見され、その後も食肉偽装表示や輸入冷凍野菜の残留濃薬問題、無登録農薬の使用問題など、食の安全・安心に関わる大きな問題が相次いでいることから、消費者の不安は増大していました。食品の安全性や品質に対する消費者の関心は、今まで以上に高まっている中、平成14年4月に食の安全・安心の確保に向けた食と農の再生プラン、平成15年2月に国民の健康と保護を最優先とした食の安全・安心のための政策大綱が公表され、これらの施策の重要な柱として、信頼性確保のための食品トレーサビリティの導入及び普及が挙げられています。
トレーサビリティ(traceability)は、trace(追跡)と ability(可能性)の 2つの単語を合わせた言葉です。
食品トレーサビリティは、生産、加工及び流通の特定の一つまたは複数の段階を通じて、食品の移動を把握することと定義されています。各事業者は、食品の入荷と出荷に関する記録を作成、保管することになります。これは、食品に関する事件や事故が発生した場合、食品の移動を作成した記録をもとに追跡あるいは遡及して、原因究明や製品回収などを円滑に行えるようにするための仕組みとなります。ひとつの例として、ある製品の原材料に異物混入が発覚した場合、その原材料が使われている製品を特定し、製品を回収する範囲を絞り込んで対応することができるため、被害を最小限に食い止めることが可能となります。逆に出荷した製品に問題が発生した際は、製造ロットや工程を特定し、原因をいち早く調査することができます。なお、生産現場からの追跡は、トラッキングまたはトレースフ ォアー ドと呼び、 流通からの遡及は、トレーシングまたはトレースバックと呼びます。消費者の健康被害の拡大防止はもちろんのこと、事業者の経済的損害を可能な限り抑えて、社会的信用の失墜を招かないようにするために、業界全体で食品トレーサビリティに取り組んでいます。
各事業者で食品トレーサビリティの取り組みはさまざまです。入荷と出荷の記録の作成や保管といった基本的なトレーサビリティの取り組みから、製造ロットの情報の記録、事業者自体でその製品のトレーサビリティに関する記録も作成、保管する取り組みなど、事業者の状況に応じて、段階的に進められています。昨今のさまざまな事件や事故から、消費者は食品トレーサビリティの重要性を理解しており、業界全体に対して、さらなる徹底が望まれています。
日本のトレーサビリティに関する法律は、牛海綿状脳症(BSE)、つまり牛の病気の1つで、プリオンと呼ばれる病原体に牛が感染した場合、牛の脳の組織がスポンジ状になり、異常行動や運動失調などを示し、死亡することを契機として、牛の個体識別のための情報の管理及び伝達を目的とした牛トレーサビリティ法が制定されました。
適正なお米の流通を図るために、米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する米トレーサビリティ法が制定され、業者間の取引等の記録の作成と保管、産地情報の伝達が義務付けられています。
トレーサビリティへの取り組みは、世界各国に広がっており、法律の制定による義務付けや食品安全に関する国際規格(ISO22000など)でも、トレーサビリティが要件の1つに挙げられています。
消費者が自ら食品の生産方法などの情報を確認できることで、安心して食品を購入でき、生産もしくは加工現場から流通を経て、食卓まで顔の見える関係を構築し、消費者への信頼を確保するための手法が、食品トレーサビリティです。
食品トレーサビリティは、生産、加工及び流通の特定の1つまたは複数の段階を通じて、食品の移動を把握することと定義されています。各事業者は、食品の入荷と出荷に関する記録を作成、保管します。これは、食品に関する事件や事故が発生した場合、食品の移動を作成した記録をもとに追跡あるいは遡及して、原因究明や製品回収などを円滑に行えるようにするための仕組みとなります。
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