2020年06月27日
【何ともいえない】「におい」の言葉による表現
においがある成分は40万種ともいわれており、最も多くのにおい成分を扱っているのは、香料メーカーです。汎用的に使用するにおい成分は800種前後で、まれに使用する5ものを含めると5,000種にも及びます。これら5,000種の成分において、似たようなにおいはあるものの、まったく同じにおいではありません。
香料メーカーの研究開発部門では、新たなにおい成分の創造、フレーバリストにより食品をよりおいしくするためのにおいの分析やにおいの組み合わせを行っています。ビスケットに主に用いられるのは、香料メーカーの開発したバニラフレーバーですが、原材料の乳製品本来のにおいを引き立たせるために、バターやミルクのフレーバーも使われます。キャンディには、フルーツ系のほか、ハーブやメントールなどを配合したフレーバーが用いられます。レトルト食品は、殺菌条件が120℃以上となるため、耐熱性の高い調理フレーバーや加熱反応フレーバーなどの香料が活躍します。食肉加工品には、肉臭をマスキングして食欲を引き立たせるスパイスのフレーバーを使用します。また、風味を向上させるためにスモークフレーバーなども開発されています。
におい成分は、鼻の中の嗅上皮に取り込まれます。嗅上皮に取り込まれたにおい成分により、嗅細胞が興奮し、電気信号が嗅神経を介して、脳の一部である嗅球に伝達されます。嗅球から脳のさまざまな部分へ伝達され、どのようなにおいなのか、危険なのか、好ましいのかあるいは嫌いなのか、以前嗅いだことがあるのかなどの情報が統合され、処理されます。
においを説明する場合、表現することが困難です。味と比較して、人の経験や学習に依存することが多く、そのため科学的に統一された表現を定めることが難しいからです。食品メーカーでも香料を使用しますが、においの質やニュアンスを言葉で表現して、正確に伝わっているのか疑問になることがあります。同じにおいでも、その人の年齢や性別、職業、体調、あるいは温度や湿度などの外部環境によっても、受け取り方が、異なるからです。それでも日々以下のような表現で、意思の疎通を図っています。
・具体的な表現用語
「ジャスミンのような」、「シトラス系の」、「焦げたしょう油のような」、「あおくさい」、「ムスクのような」、「けもの臭のような」
・感覚的な表現用語
「明るい」、「暗い」、「大人しい」、「騒がしい」、「柔らかい」、「かたい」、「冷たい」、「甘い」、「辛い」
・感情的な表現用語
「好ましい」、「不快な」、「興奮する」、「繊細な」
・印象用語
「上品な」、「品がない」、「素朴な」
・物理化学的な用語
「濃い」、「薄い」、「酸臭」、「強い」、「弱い」、「持続性のある」、「拡散性のある」
ちなみにワインの不快臭となるとさらに理解することが難しい表現を使用します。「濡れた段ボール」、「馬小屋」、「物置」、「猫のおしっこ」などです。今のところ、個人的に使う機会はなさそうです。
においがある成分は40万種ともいわれ、香料メーカーは、5,000種にも及ぶにおい成分を組み合わせることでさまざまな製品のにおいを生み出しています。身近なところでは、清涼飲料やバニラアイス、ビスケット、クッキー、クラッカー、パイ、チョコレート、キャンディ、ガム、ドレッシング、カレー、ミートソース、ハム、ソーセージ、水産加工品などに香料が使用されています。
においは、的確に表現することが難しいです。なぜなら、においは人の経験や学習に依存することが多く、統一された表現がないからです。食品メーカーの製品開発でも香料を使用しますが、においの質やニュアンスを言葉で表現して、きちんと伝わっているのかは定かではありません。それだけに、においは奥が深く、今後の研究が待たれる分野です。
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