2020年10月02日
【現地化】ロシアに浸透しつつある日本食
以前ロシアで日本食として認知されてきたのは、寿司と刺身、天ぷらでしたが、近年モスクワではうどんやラーメンなどの大衆向け日本食が勢力を拡大しつつあります。
ある調査によると、2019年時点でロシアにある日本食レストランは、約2,600軒となり、2017年が約2,400軒であったため、増加傾向にあります。
日本のコンセプトをそのまま持ち込むのではなく、味や店舗も含め、どこまでロシアの感覚を取り入れていくかが、ロシアにおける日本食の展開に重要となります。
寒い時期にロシアはモスクワの玄関口となるシェレメチェボ空港に到着し、現地スタッフと車に乗り込み、食事に向かうと何やら日本でも見慣れた看板を掲げたお店に案内されました。日本でも全国展開するうどんチェーンで、好きな天ぷらを選んで、最後に会計をするシステムも日本と変わりません。日本では見慣れないチーズなどのトッピングもあり、ロシアでも人気上々で、どうしても紹介したいとのことでした。ロシアの伝統料理といえば、ボルシチやビーフストロガノフ、ピロシキが有名ですが、ここはひとまず馴染みの味を楽しみました。
近年モスクワでは、外食産業に大きな変化が生じています。オシャレな雰囲気を前面に出したフードコートの流行や高級価格帯を含むハンバーガー、ロシア産牛肉を使ったステーキハウス、中華やベトナムなどのアジア料理の普及などが該当します。日本食では、うどんやラーメンなどの大衆向けが勢力を拡大しつつあります。以前からロシアで日本食として認知されてきたのは、カリフォルニアロールを含む寿司と刺身、天ぷらでした。今では、これら以外への関心が高まっています。
ロシアで日本食を食べると、確かに日本人からすれば、味が少し変わっていると感じられる料理もあります。この違いは、食材調達の難しさに起因します。日本料理では、食材の良し悪しが大きく味を左右することになります。寿司をつくるにしても、ネタとなる新鮮な魚介類やお米、海苔、お酢などをすべて現地で調達するのは、それなりのコストがかかります。内陸に位置するモスクワでは、魚介類を食べる頻度が少なく、一般的に塩蔵品や燻製、冷凍品など長期保存が可能なものが多いことから、現地調達しやすいサーモンやイカ、魚卵などが使用される傾向にあります。巻き寿司のバリエーションは日本より多彩で、アボカドを用いたカリフォルニアロールは定番の人気メニューです。スライスしたきゅうりを使った巻き寿司やクリームチーズのメニューもあります。
2019年の農林水産省の調査によると、ロシアにある日本食レストランは、約2,600軒です。2017年の時点で約2,400軒であったため、増加傾向にあります。この日本食レストラン数には、メニューにカリフォルニアロールのあるレストランも含まれていますが、在留邦人数はおおよそ2,700人であることを考えると、日本食レストランの多さには驚かされます。
ロシアにおける日本食レストランの増加は、1990年代からはじまり、2000年代以降に大きなブームとなりました。1990年代にモスクワに登場した日本食レストランでは、寿司や刺身、鍋物を中心としたメニュー構成でした。1990年代半ばからは、日本の居酒屋をコンセプトとした日本食レストランや焼き鳥を前面に出した日本食レストランなどが出現しました。焼き鳥は、ロシア料理にも類似する串焼き料理があったことから、ロシア人の間に抵抗なく受け入れられました。
2000年に入ると比較的安価な寿司チェーンが登場し、日本食は市民の間でも急速に浸透しました。同時期にモスクワでは、高級日本食店が出現し、新鮮な魚介類を日本から空輸することで、主に富裕層の心をつかみました。2000年代半ばには、日本の豊富な居酒屋メニューを手軽な価格で楽しめるお店が登場し、ロシア人の間でも人気店となりました。2017年には、現地化が進みロシア人によるラーメン居酒屋が登場し、日本食ブームの火付け役となっています。
一方、日本の牛丼チェーンは、2019年にモスクワにお店をオープンしながらも、即撤退した事例もあります。しかし、大勢としては日本食への関心は拡大していく傾向で、たい焼き店やお好み焼き店、ラーメン店などが営業しています。
ロシアで日本食を展開する際に、味を現地に合わせるかどうかは、大きな決断となります。一般的にロシアでも現地の味覚に合わせた方が、売り上げは伸びるとされています。既に進出しているうどんチェーンでは、チーズうどんや焼肉うどん、照り焼きうどん、豚骨うどんなど、日本人にとっては奇抜なメニューを打ち出し、ロシア人に好評を博しています。
一方、ロシア極東で日本の味を持ち込んで成功しているお店も一部ありますが、基本的に日本のコンセプトをそのまま持ち込むのは、ロシア市場には受け入れられにくい傾向です。うどんチェーンの例にもあるように、少なくともモスクワでは味の現地化が求められます。現時点では、味だけでなく店舗も含め、どこまでロシアの感覚を取り入れていくかが、ロシアにおける日本食の展開に重要となります。
数量自体はまだまだの状況ですが、ロシアへ輸出される日本産の食品で伸びているのは、ゆずを使用したドレッシングや七味唐辛子などの調味料です。
しかし、日本産のお米などはまだ普及が進んでいません。そもそも、ロシア産米と日本米との味の違いが十分に理解されておらず、価格差もあることから、及び腰になっています。
以前からロシアで日本食として認知されてきたのは、カリフォルニアロールを含む寿司と刺身、天ぷらでしたが、近年モスクワではうどんやラーメンなどの大衆向け日本食が勢力を拡大しつつあります。
2019年の農林水産省の調査によると、ロシアにある日本食レストランは、約2,600軒です。2017年の時点で約2,400軒であったため、増加傾向にあります。
日本のコンセプトをそのまま持ち込むのは、ロシア市場には受け入れられにくく、現時点では、味だけでなく店舗も含め、どこまでロシアの感覚を取り入れていくかが、ロシアにおける日本食の展開に重要となります。
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