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2020年09月29日

【思い出】祖母が育てていた食用菊とサツマイモとフキ


 94歳まで生きた大正生まれの祖母は、とても働き者でした。80代でも畑仕事に精を出し、帰省するたびに畑から新鮮な野菜をとってきては、食べきれないほど持たせてくれました。幼少期には畑でスイカやメロンもつくってくれ、食べ頃がよくわからない中、包丁で半分にして、味見をしたこともありました。全く甘くないスイカを祖母と一緒に食べて、「美味しくない、失敗した。」と言いながら、笑っていたことが昨日のことのように思い出されます。祖母が手塩にかけてつくったナスやキュウリに友達と爆竹を仕掛け、バラバラに吹き飛ばして遊んでいたときは、「食べ物を粗末にするな。」と叱られたこともありました。今となっては、感謝しかありませんが、その言葉も届かないところに祖母はいってしまいました。





 そんな祖母が畑の片隅でつくっていたのが、食用菊です。度々食卓に上りました。サツマイモができると干し芋をつくっていました。とても甘くて、食べ始めたら止まりません。フキは意図的に育てているわけではありませんが、畑の一角で自然に増えていました。もちろん、フキも食材として、食卓を彩っていました。





 今でも食用菊や干し芋、フキを見かけると祖母の姿が思い出されます。畑仕事を手伝って、いろいろと教えてもらいたかったのですが、もはやかないません。



grandmother-506341_1920.jpg


食用菊


 食用菊は、名前の通り食用に品種改良されたものです。苦みを抑え、食べる部分となる花びらを大きくさせた品種です。山形県や新潟県で主に栽培され、紫花の延命楽(もってのほか)と黄花の阿房宮(あぼうぎゅう)が有名です。これらは苦みが少なく、ほのかに甘みがあることが特徴です。





 食用菊は刺身に添えられているだけでなく、和え物や天ぷらにしても美味しく食べられます。





 食用菊には、抗酸化作用をもつビタミンCやビタミンE、皮膚や粘膜を丈夫にするビタミンB2などの栄養素を含んでいます。ほかにも生活習慣病を予防することで、注目されているポリフェノールの一種となるクロロゲン酸と独特の苦み成分であるイソクロロゲン酸を有し、これらは悪玉コレステロールを抑制して中性脂肪を減らす効果が報告されています。





 菊は、花びらの部分とガクという根元の部分に分けられます。ガクは固くて苦味が強い部分ですが、おひたしや酢の物、佃煮にして食べます。





 色鮮やかな食用菊は、ただの飾りではありません。和え物やおひたし、天ぷらにすることで、食卓を彩るふるさとの味わいに生まれ変わります。



サツマイモを原材料とする干し芋


 干し芋は、蒸したサツマイモを干してつくります。乾燥芋とも言われます。サツマイモを蒸し、皮をむいて平切りにし、天日に何日もさらすことで乾燥させます。





 そのままでも十分に甘味があり、美味しく食べられますが、少しあぶるとより一層甘味が増します。白い粉が吹いていることも多く、これは干し芋の糖分が表面に析出したものなので、味や品質に問題ありません。





 干し芋の原材料は、サツマイモだけです。栄養成分としては、食物繊維のほかにビタミンB群や抗酸化作用のあるビタミンCとビタミンE、カリウム、鉄、マグネシウムなどを含んでいます。食物繊維は、血糖値の急激な上昇を防ぎことやコレステロールの吸収を抑制すること、腸内環境を整える効果があります。カリウムは、細胞内液の浸透圧を調節して一定に保つ働きや体液のpHバランスを保つ役割も果たしています。さらに ナトリウムを身体の外に出しやすくする作用があるため、塩分の摂り過ぎを調節する役割があります。鉄分は、赤血球を構成するヘモグロビンの成分で、とり込んだ酸素と結びつき、体のすみずみまで運ぶという重要な働きをしています。





 カロリーは100gあたり300kcal前後となり、やや高めとなりますが、GI値は55となり低GI食品に該当します。このGIとは、食後血糖値の上昇を示す指標、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、オーストラリアのシドニー大学ではぶどう糖を基準とした場合、GIが70以上の食品を高GI食品 56〜69の間の食品を中GI食品 55以下の食品を低GI食品と定義しています。GIは、2003年にWHOから過体重や肥満、2型糖尿病の発症リスクを低GI食品が低減させる可能性があるというレポートが出されたことから、注目されています。なお、白米のGI値は88、食パンのGI値は95、うどんのGI値は85、コーンフレークのGI値は75となり、高GI食品に分類されます。





 干し芋は、GI値が低く、腹持ちがいいため、間食に最適です。



2209507_s.jpg


フキ


 フキは、古くから親しまれてきた野菜の1つで、特有の香りとほろ苦さが特徴です。また、ふきの花茎であるふきのとうは、春の味覚として重宝されています。日本のみならず中国や朝鮮半島にも分布しています。市場に多く流通しているのは、愛知県産のフキです。早生で品質が高いことから人気となっています。食用にしているフキの部分は、茎ではなく、葉柄(ようへい)です。葉柄は葉と茎をつなぐ部分で、フキの茎は地下にあります。





 張りがあり、葉茎が淡緑色のフキは新鮮です。一方、葉茎がしなりすぎているものは、鮮度が落ちています。また、葉茎が太すぎるとスジっぽいことがあります。フキはアクが強いので、調理前にアク抜きをします。葉茎を適当な長さにカットし、塩をかけ、そのまま熱湯で5分程度ゆで、冷めたら皮を手でむき、煮物やきゃらぶき、和え物などに用います。





 フキの主な成分としては、食物繊維やカリウム、ポリフェノールなどがあります。ポリフェノールには強い抗酸化作用があるので、動脈硬化などの予防やアレルギー症状に関係するヒスタミンの生成を抑制する効果が期待されています。





 ふきのとうは、フキの花芽のことで、つぼみが開く前の状態のほうが、味がよく、開くと苦味がより強くなります。特有の香りとほろ苦さがあるふきのとうは、フキと同様にアク抜きをしてから和え物や炒め物、揚げ物などにして食べるのが一般的です。天ぷらにする場合は、アク抜きをしなくても問題ありません。



まとめ


 94歳まで生きた祖母が畑の片隅でつくっていたのが、食用菊とサツマイモ、それを原材料とした干し芋、フキです。度々食卓に上りました。長寿の秘訣は、主要な野菜以外にも、食物繊維やミネラル、ポリフェノールを含むさまざまな作物を自ら育て、バランスよく食べていたからではないでしょうか。





 ふるさとの畑に食用菊はもうありませんが、サツマイモやサツマイモを干すためのかご、手間をかけずともたくましく育つフキを見るにつけ、家族や近所の方々のために一生懸命作物を育てている祖母の姿が浮かんできます。





 そして、インターネットを通して、どこかで何となく祖母と以前のように会話している気持ちになります。祖母に感謝です。ありがとう。



posted by Kaoru at 05:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 食品
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