2020年06月10日
【解決】酵母調味料の謎
酵母調味料とは
加工食品メーカーがスナック、カップラーメン、カレー、タレ、ドレッシングなどの製品を開発する上で、味を組み立てるために主に酵母を自己消化した酵母調味料(酵母液・酵母エキス)は、欠かせない原材料のひとつです。加工食品の新製品開発時には、開発者の好みにも左右されますが、うま味が引き立っているので、ついつい舌で味わってしまうこともあります。加工食品の原材料表示を見ると酵母調味料は、様々な製品に使用されていることがわかります。この酵母調味料ですが、消費者の目には奇妙にうつるかもしれません。得体の知れない酵母調味料は、体に悪い添加物だと思われがちです。酵母自体は、身近なパンやビール、しょうゆ油、みそお酒といった食品の製造に使用されている微生物のことで、なじみ深く食生活において非常に重要な位置を占めています。
生化学や微生物学を志す学生にとっては、酵母の自己消化物(イーストペプトン)は、菌を培養するための培地の成分のイメージが強いかもしれません。
酵母調味料は、グルタミン酸ナトリウムなどの化学調味料単体では、出すことが難しい自然なうま味やコクを食品に付与できます。最近では、化学調味料を使用しない食品が求められる傾向もあり、加工食品の分野では欠くことのできない天然の調味料として、使用されています。
酵母調味料の製造工程
ビールなどの発酵に使用した食用酵母を回収、洗浄し、ある環境条件下におくと酵母自身の酵素で自らを分解するいわゆる自己消化が始まります。さらに酵素を加え、分解を促進させることもあります。このように酵母を主に自身の酵素で分解したものが酵母調味料です。ビールメーカーの関連会社が主となる酵母調味料メーカーは、自社の酵母にあった製法を駆使することで、さまざまな酵母調味料を製造しています。
特に後に引くうま味を強調した酵母調味料は、核酸を分解するためにヌクレアーゼをはじめとした複数の酵素で処理する製法を採用しています。目的は、核酸をかつお節のうま味成分であるイノシン酸やしいたけのうま味成分であるグアニル酸まで分解するためです。この酵母調味料はだしなどと組み合わせることで、食品に後引きのあるうま味やまろやかさを付与することができます。
また、でんぷんを酵素で分解し生成するブドウ糖やトウモロコシの芯を分解することでできるキシロースという糖と混合し加熱することで、メイラード反応が起こり、食欲をそそるロースト感の強い酵母調味料となります。
酵母調味料の味と用途
酵母調味料は、化学調味料を加えることなく、たんぱく質とその構成成分となるアミノ酸、イノシン酸などのうま味を呈す核酸、ビタミン類が豊富に含まれており、美味しさを追求する素材として、とても魅力的です。加工食品では、呈味に加え、肉汁風のコクを付与したいときに使用します。
オーストラリアではベジマイト、ニュージーランドではマーマイトという製品名で市販されており、独特の香りを有しているため好みが分かれますが、現地ではバターのようにパンに広げて、食しています。
健康食品においては、アミノ酸やビタミンなどの補強目的で、錠剤や粉末状をはじめさまざまな形状で市販されています。
また、今までと同様に微生物の培地の原材料として、あるいはペットフード及び飼料としての用途開発が進められています。
酵母調味料の安全性
酵母調味料の原材料に用いられている酵母は、ビールの醸造で副生するビール酵母や当初から調味料にすることを目的としたトルラ酵母があげられます。これらの酵母は、食経験も長く、米国食品医薬品局でも、安全性が科学的に認められています。
まとめ
酵母調味料ときくと怪しく謎が多いように感じますが、実のところ身近なパンやビール、しょうゆ油、みそ、お酒といった食品の製造に使用されている酵母という微生物に由来しているのです。これらは昔から食べ親しんできた安全性が確認された食品です。加工食品を開発する際には、うま味やコクを付与できる重要な要素です。そのため、安全性も相まってスナックやカップラーメン、カレー、タレ、ドレッシングなどの加工食品に使用されています。耳慣れないことに起因し、過敏になることもあるかもしれませんが、健康にも良いイメージを持ってほしいです。
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