2016年06月16日
介護士も知っておくべきケアプランの考え方
私たち介護士は、ケアマネージャーの作成するケアプラン(介護サービス計画書)をもとに介護を行います。
施設入居者であっても、居宅で生活されている方であっても、介護保険制度を利用されている方はすべて、このケアプランというものを軸に介護サービスが提供されているためです。
今回は、そもそもケアプランとはどのようなものなのかについてお伝えしていきます。
現在介護士として働かれている方も、ケアプランについての考え方を理解しておくことで、より質の高い介護を実践するためのヒントにもなります。
なるべく難しい言い回しを多用せず、専門用語などには補足説明も入れていますので、安心して最後までお読みいただければと思います。
ケアプランとは、簡単に言うと利用者ひとりひとりのために作られた介護の計画書のことです。
基本的には、その計画書の通りに介護士や看護師、栄養士や機能訓練士などが、あらかじめ決められたサービスを提供します。
例えば、下肢の筋力が低下し、転倒への不安をお持ちの方がいるとしましょう。計画書には「歩行訓練を介護士と機能訓練士で行う」というサービスの内容が記載されているとします。そこで介護士と機能訓練士は、連携を図って歩行訓練を実施するというわけです。基本的にはすべて、計画書に記載されている通りに介護サービスを提供することになります。
計画書にない介護サービスを、介護士などが独自の判断で行うことは基本的にはありません。施設のケアプランでも、在宅のケアプランでも、すべての介護サービスはこのケアプランの中に記載されている必要があります。
もし、ケアプランに記載の無い介護サービスを行おうとするときには、必ずケアマネージャーへ報告をする必要があります。特に居宅系の介護サービスは、加算などの関係もありますのでサービスの調整がその都度必要となる場合があります。
ケアプランと一言でいっても、その種類は様々です。ここでは、ケアプランにはどのような種類があるのかを整理しておきましょう。
【施設サービス計画書】
介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の利用者を対象に、施設サービス計画書を作成し介護サービスを提供する。
【居宅サービス計画書】
居宅で生活されていて、介護給付を受けられている利用者(要介護者)を対象に、居宅サービス計画書を作成し介護サービスを提供する。
【介護予防サービス計画書】
居宅で生活されていて、予防給付を受けられている利用者(要支援者)を対象に、介護予防サービス計画書を作成し介護予防サービスを提供する。
【地域密着型サービス計画書】
小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、看護小規模多機能型居宅介護の利用者を対象に、地域密着型サービス計画書を作成し介護サービスを提供する。
介護保険制度を利用される利用者の方々には、そのひとりひとりが個別に持つニーズ(希望や要望、解決すべき課題)というものがあります。
利用者に合ったケアプランを作るためには、そのニーズを把握する必要があります。
ニーズを見つけるためには、要介護者が心身の状態や今の生活状況の中で、困っていることや不安なことはないかを探すことから始まります。
認知症や糖尿病などの病気、身体の障害など、要介護者には様々な理由があって介護を受けることになった方ばかりです。
要介護者はひとりひとり、状態や生活状況などが違いますから、当然ニーズもひとりひとり違います。
例えば、施設で(在宅で)の生活に不安を持っている方は多いですが、それをそのままニーズに当てはめてはいけません。利用者やご家族の言葉の奥には、具体的にはどのような不安があるのかを探り、深く掘り下げて見つけたものが、その方の本当のニーズです。
【ニーズを把握する際の良くない例】
利用者は施設(在宅)での生活に不安を持っていると言っている。 → ケアマネージャーは安心して生活を送りたいんだなと思った。それをニーズだと捉えてしまい、ニーズを「安心して生活を送りたい」と設定してしまった。
このように、ニーズを設定したとします。
この場合、広い意味では間違いではありませんが、これではその後に続く長期目標や短期目標の設定が、非常にあいまいな表現になってしまいます。
長期目標は「安心して生活を送ることができる」になりますし、短期目標も「不安なく生活ができる」となる可能性は非常に高いです。
あいまいなニーズ、長期短期目標の設定によって、その後の具体的なサービス内容だけは膨大な量になります。
安心して生活を送れるようにするためのサービス内容がずらっと列挙されることになるのです。
認知症などの病気や心身の障害のこと、気分転換を図るためのレク行事への参加や外出計画など、ありとあらゆるサービス内容が挙げられることになります。
簡単に言うと、ひとつのニーズに対してあれもこれも詰め込んだサービス内容になってしまうということです。
これでは、サービス提供後の評価にもばらつきが生まれ、最終的には総合的な評価しかできなくなるのは当然です。
「このサービスは良い評価だけど、このサービスはあまり良い評価ではない」というものが出てくると、最終的には総合的に評価するしかなくなるということは、長期短期目標の達成度もあいまいな達成度となりますし、いつまで経ってもニーズは解決されないまま同じニーズばかりが設定されるということにもなります。
すべては、具体的なニーズ、細かい長期短期目標の設定が出来ていなかったことが原因です。
では、次に良い例をみていきましょう。
【ニーズを把握する際の良い例】
利用者は施設(在宅)での生活に不安を持っていると言っている。 → ケアマネージャーは安心して生活を送りたいんだなと思った。そこからさらに、具体的にはどのような不安があるのかを、会話の中で引き出すようにした。
認知症があり、トイレの場所が分からなくなり失敗が目立つようになったこと、身体にも障害があって外出の機会が減り他者と関わることがほとんどなくなってしまったことなど、様々な理由から施設(在宅)での生活に不安を持っているということを聞き出すことが出来た。それらをひとつひとつのニーズとして捉えることにした。
このように、具体的なニーズが明らかになると、その後の長期短期目標も明確な目標を立てやすくなります。ひとつの具体的なニーズに対しての目標設定となりますので、達成度のパーセンテージもサービス提供後の評価もやりやすくなります。
サービス内容についても、長期短期目標の達成のためだけに、より具体的なサービス内容を考えることができますので、見やすく、こちらも明確になります。
先ほどの良くない例のように、最終的には「利用者が安心して生活を送れるようになる」ためのケアプランですが、ひとつひとつのニーズを具体的にすることで、利用者もご家族も、そしてサービスを提供する側も、現状を整理しながら、ひとつひとつのニーズを解決するためのプロセスを把握しやすくすることができます。
ケアプランは、作成したケアマネージャーのものでも、介護士や看護師などのものでもありません。
ケアプランは、利用者ご本人のものです。そしてそれを支えるご家族のものです。
利用者やご家族が、自身が今、どのようなニーズを抱えていて、それを解決するためにはどのような目標を立てて、何に取り組んでいけばいいのかを整理できるものが、ケアプランです。
私たち介護士は、普段なかなか意識して利用者ひとりひとりのケアプランを熟読する機会を作りにくいとは思います。
ですが、ケアプランにはその方の不安や、悩みや、これからの自身のより良い生活のための目標が書かれています。そしてそのために私たち介護士が何をすればいいのかが書かれています。
ただのルーティンでケアをしたり、ケア記録を書くのではなく、ケアプランに目を通しながら利用者の目標達成のためのケアや記録となるようにするのが、私たち介護士に求められているものなのだと意識しましょう。
まずは今目の前にいるひとりの利用者から、ケアプランを通しての介護というものを考えてみると、介護という仕事はもっと面白くなると思います。
ちゃんとした会社に転職したい、人間関係のいい職場を探したいという方はこちらの記事が参考になります。
介護の転職をしたいときにオススメしたい転職サイト
介護の資格を取りたい方はこちらをどうぞ。
介護士がまず取得すべき介護職員初任者研修資格とは
介護福祉士の資格取得を目指すなら
介護のキャリアパス制度について
まだ持っていない資格に興味のある方は、こちらからすべて無料で資料請求ができます。
【介護職員初任者研修】
【介護職員実務者研修】
【介護福祉士】
【ケアマネージャー】
↓ランキングに参加しています^^どちらかポチッと応援のクリックをお願いいたします☆
にほんブログ村
福祉・介護 ブログランキングへ
施設入居者であっても、居宅で生活されている方であっても、介護保険制度を利用されている方はすべて、このケアプランというものを軸に介護サービスが提供されているためです。
今回は、そもそもケアプランとはどのようなものなのかについてお伝えしていきます。
現在介護士として働かれている方も、ケアプランについての考え方を理解しておくことで、より質の高い介護を実践するためのヒントにもなります。
なるべく難しい言い回しを多用せず、専門用語などには補足説明も入れていますので、安心して最後までお読みいただければと思います。
ケアプラン(介護サービス計画書)とはどのようなものなのか
ケアプランとは、簡単に言うと利用者ひとりひとりのために作られた介護の計画書のことです。
基本的には、その計画書の通りに介護士や看護師、栄養士や機能訓練士などが、あらかじめ決められたサービスを提供します。
例えば、下肢の筋力が低下し、転倒への不安をお持ちの方がいるとしましょう。計画書には「歩行訓練を介護士と機能訓練士で行う」というサービスの内容が記載されているとします。そこで介護士と機能訓練士は、連携を図って歩行訓練を実施するというわけです。基本的にはすべて、計画書に記載されている通りに介護サービスを提供することになります。
計画書にない介護サービスを、介護士などが独自の判断で行うことは基本的にはありません。施設のケアプランでも、在宅のケアプランでも、すべての介護サービスはこのケアプランの中に記載されている必要があります。
もし、ケアプランに記載の無い介護サービスを行おうとするときには、必ずケアマネージャーへ報告をする必要があります。特に居宅系の介護サービスは、加算などの関係もありますのでサービスの調整がその都度必要となる場合があります。
ケアプラン(介護サービス計画書)の種類
ケアプランと一言でいっても、その種類は様々です。ここでは、ケアプランにはどのような種類があるのかを整理しておきましょう。
【施設サービス計画書】
介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の利用者を対象に、施設サービス計画書を作成し介護サービスを提供する。
【居宅サービス計画書】
居宅で生活されていて、介護給付を受けられている利用者(要介護者)を対象に、居宅サービス計画書を作成し介護サービスを提供する。
【介護予防サービス計画書】
居宅で生活されていて、予防給付を受けられている利用者(要支援者)を対象に、介護予防サービス計画書を作成し介護予防サービスを提供する。
【地域密着型サービス計画書】
小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、看護小規模多機能型居宅介護の利用者を対象に、地域密着型サービス計画書を作成し介護サービスを提供する。
ニーズとはなにか
介護保険制度を利用される利用者の方々には、そのひとりひとりが個別に持つニーズ(希望や要望、解決すべき課題)というものがあります。
利用者に合ったケアプランを作るためには、そのニーズを把握する必要があります。
ニーズを見つけるためには、要介護者が心身の状態や今の生活状況の中で、困っていることや不安なことはないかを探すことから始まります。
認知症や糖尿病などの病気、身体の障害など、要介護者には様々な理由があって介護を受けることになった方ばかりです。
要介護者はひとりひとり、状態や生活状況などが違いますから、当然ニーズもひとりひとり違います。
例えば、施設で(在宅で)の生活に不安を持っている方は多いですが、それをそのままニーズに当てはめてはいけません。利用者やご家族の言葉の奥には、具体的にはどのような不安があるのかを探り、深く掘り下げて見つけたものが、その方の本当のニーズです。
【ニーズを把握する際の良くない例】
利用者は施設(在宅)での生活に不安を持っていると言っている。 → ケアマネージャーは安心して生活を送りたいんだなと思った。それをニーズだと捉えてしまい、ニーズを「安心して生活を送りたい」と設定してしまった。
このように、ニーズを設定したとします。
この場合、広い意味では間違いではありませんが、これではその後に続く長期目標や短期目標の設定が、非常にあいまいな表現になってしまいます。
長期目標は「安心して生活を送ることができる」になりますし、短期目標も「不安なく生活ができる」となる可能性は非常に高いです。
あいまいなニーズ、長期短期目標の設定によって、その後の具体的なサービス内容だけは膨大な量になります。
安心して生活を送れるようにするためのサービス内容がずらっと列挙されることになるのです。
認知症などの病気や心身の障害のこと、気分転換を図るためのレク行事への参加や外出計画など、ありとあらゆるサービス内容が挙げられることになります。
簡単に言うと、ひとつのニーズに対してあれもこれも詰め込んだサービス内容になってしまうということです。
これでは、サービス提供後の評価にもばらつきが生まれ、最終的には総合的な評価しかできなくなるのは当然です。
「このサービスは良い評価だけど、このサービスはあまり良い評価ではない」というものが出てくると、最終的には総合的に評価するしかなくなるということは、長期短期目標の達成度もあいまいな達成度となりますし、いつまで経ってもニーズは解決されないまま同じニーズばかりが設定されるということにもなります。
すべては、具体的なニーズ、細かい長期短期目標の設定が出来ていなかったことが原因です。
では、次に良い例をみていきましょう。
【ニーズを把握する際の良い例】
利用者は施設(在宅)での生活に不安を持っていると言っている。 → ケアマネージャーは安心して生活を送りたいんだなと思った。そこからさらに、具体的にはどのような不安があるのかを、会話の中で引き出すようにした。
認知症があり、トイレの場所が分からなくなり失敗が目立つようになったこと、身体にも障害があって外出の機会が減り他者と関わることがほとんどなくなってしまったことなど、様々な理由から施設(在宅)での生活に不安を持っているということを聞き出すことが出来た。それらをひとつひとつのニーズとして捉えることにした。
このように、具体的なニーズが明らかになると、その後の長期短期目標も明確な目標を立てやすくなります。ひとつの具体的なニーズに対しての目標設定となりますので、達成度のパーセンテージもサービス提供後の評価もやりやすくなります。
サービス内容についても、長期短期目標の達成のためだけに、より具体的なサービス内容を考えることができますので、見やすく、こちらも明確になります。
先ほどの良くない例のように、最終的には「利用者が安心して生活を送れるようになる」ためのケアプランですが、ひとつひとつのニーズを具体的にすることで、利用者もご家族も、そしてサービスを提供する側も、現状を整理しながら、ひとつひとつのニーズを解決するためのプロセスを把握しやすくすることができます。
ケアプランは誰のためのものなのか
ケアプランは、作成したケアマネージャーのものでも、介護士や看護師などのものでもありません。
ケアプランは、利用者ご本人のものです。そしてそれを支えるご家族のものです。
利用者やご家族が、自身が今、どのようなニーズを抱えていて、それを解決するためにはどのような目標を立てて、何に取り組んでいけばいいのかを整理できるものが、ケアプランです。
私たち介護士は、普段なかなか意識して利用者ひとりひとりのケアプランを熟読する機会を作りにくいとは思います。
ですが、ケアプランにはその方の不安や、悩みや、これからの自身のより良い生活のための目標が書かれています。そしてそのために私たち介護士が何をすればいいのかが書かれています。
ただのルーティンでケアをしたり、ケア記録を書くのではなく、ケアプランに目を通しながら利用者の目標達成のためのケアや記録となるようにするのが、私たち介護士に求められているものなのだと意識しましょう。
まずは今目の前にいるひとりの利用者から、ケアプランを通しての介護というものを考えてみると、介護という仕事はもっと面白くなると思います。
ちゃんとした会社に転職したい、人間関係のいい職場を探したいという方はこちらの記事が参考になります。
介護の転職をしたいときにオススメしたい転職サイト
介護の資格を取りたい方はこちらをどうぞ。
介護士がまず取得すべき介護職員初任者研修資格とは
介護福祉士の資格取得を目指すなら
介護のキャリアパス制度について
まだ持っていない資格に興味のある方は、こちらからすべて無料で資料請求ができます。
【介護職員初任者研修】
【介護職員実務者研修】
【介護福祉士】
【ケアマネージャー】
↓ランキングに参加しています^^どちらかポチッと応援のクリックをお願いいたします☆
にほんブログ村
福祉・介護 ブログランキングへ
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/5096648
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック