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2014年10月19日

安部首相の年功賃金の見直し発言

が報じられています。記事によると、9月29日の政労使会議の冒頭での発言だそうです(その産経新聞yahooニュースは→こちら)。
産経新聞の記事には「子育て世代に手厚く賃金を分配すべきという考え方で、女性の活躍を後押しする安倍政権が、若年世代までも味方につける巧みな戦略が透けてみえる。」との、発言の動機推測がされていますが、あながち的外れではないかもしれません。選挙に不正が行われていないという前提でいうと、票数を効率よく確保するためには有権者属性別の人口比を意識したマーケッティング技術を高度化させなければならないのは自明の理だからです。一般的に年功型賃金システムの恩恵を受けるとされるのが40代アップとされており、有権者を世代別属性による人口比でみた場合、既に最大マーケットであった団塊の世代はとうにその恩恵とは縁を切っており、今後、徐々にではあっても、年功給で割を食う若年層のマーケット占有比率が上昇してくるからです。産経記事では、”梯子を外される”のは40台アップに限定されるような印象に読めますが、実際のところ、年功給システムという将来の慣行的約束から生まれる期待値を当てにして不利益に目をつむる滅私奉公期間が賃金カーブと共に緩やかにフェードアウトするという性格上、もう少し若年世代も含めた方が適格だと思います。年功給を突如廃止した場合に、「話が違うヨー」となる世代のことをいってます。年功給システムも年金システムも、人口、マーケットと共に経済のパイが拡大していく時期には本来目指す目的に対して有効に機能しますが、逆の時期にそれをそのまま維持し続けようとすると無理が生じますし、こんな事は皆知っているわけです。問題となるのは、この時点で制度改変に手を付けなければ社会的公正さが徐々に歪められていくことはわかっていても、実際のところは、その制度破綻しかかった期間には、恩恵を受ける有権者世代が最大多数マーケットとなるため、効果的、抜本的な制度改革は政治力学上、先送りされがちになところにあると思います。その後、世代間人口比がフラットに戻りつつある局面になって、やっとこさ、遅れた修正を一気に取り戻そうという要請が強まるため、結果、間の悪い、ツキに見放された世代がババを掴まされることになるという、よくTVでやる巨大風船膨らませバツゲーム的になってしまうのだと思います。以前、ちょっとだけ紹介した城繁幸さんが、団塊世代周辺を「食い逃げ世代」と表現している真意は、社会的公正さを維持するために必要な時期に必要な処置をしなかった、その不作為や無関心さを批判しているものだと管理人は理解しています。この方、表現はかなり辛辣ですが、述べてる内容自体はひじょうに筋が通っていると思います。

ただし、こうした議論の中で、成果給への移行という話になりがちなのを強く牽制したいという立場を管理人は持っています。成果給は、バブル崩壊後の景気低迷時の中で、一時期導入ブームが起こりましたが、概ね失敗に終わった、というのが妥当な評価とされています。プロスポーツ選手の評価システムをよく例に出しますが、これは、そもそも雇用契約というよりは実質的には個人経営者との業務請負契約に近く、通常の労働契約と同列で議論することは話をあまりにも単純化しすぎていると思います。

成果給が成立するための必要条件として、以前紹介した遠藤公嗣教授は次の3点を挙げておられます。

@成果の定義が明確であって、しかも、成果の数量が容易に数値測定できること。
A投入された労働以外の要因が成果に影響しないこと。
B成果の品質をとくに留意しないこと。あるいは、留意しなくても成果の品質を維持できること。

以上の条件が完全に満たされるケースは、厳密にいうと皆無かもしれませんが、一般的な職務との相対的な立ち位置からして上記条件への接近度が有意と認められる職務まで拡大適用するとしても、それはひじょうにレアな職務になるものと思われます。特にAを考慮すると、通常の業務においては「個人」というよりは「組織」で事を進めるのが普通で、そうした組織内のシャドーワーク的なものの質によって、成果は如何様にもなるという経験を持っているのは管理人だけではないはずです。案の定、先に述べた第一次成果給導入ブーム時に、チームワークの乱れにより組織全体でのパフォーマンスが思惑とは反対に低下したことがブーム終焉の一番の要因と聞いています。また、一部残存している成果給的な名称のシステムについても、目標に対する達成率を評価対象にしており、その目標自体が上位管理者との面談の中で決定されるという、微妙なプレッシャーがかかった状態での自己申告制になっているのが一般的だというのも、評価の公正さという面からして問題があると思っています。目標設定を手加減なしに低く設定できるかどうかの ”図々しさ能力指数” に変容しているような気がするからです。

このように、社会的要請から、年功給か?成果給か?という、あたかもそれ以外の選択肢がないかのように思いこませようとする二者択一論には注意が必要に思いますし、そもそも、こうした議論の中で、職務給と成果給がほぼ同じもののように理解されてしまっている背景は是正していくべきだと思っています。職務給(職務基準賃金)は、職務分析を行い、職務の価値に対して対価を設定するのであって、成果に対してではありません。「とはいっても、職務の価値を評価する事は困難で・・・」という文脈もありがちですが、実際のところはというと、既に欧米、特に欧州で職務分析は確立されています。というか、前にも記事にしていますが、賃金決定システムで世界標準なのは、この職務分析を基にした職務基準賃金であり、日本だけが特殊なのであり、慣れていない日本企業が職務分析をする事は確かに困難かもしれませんが、手法自体については真似るだけのことです。むしろ、その導入切り替えにあたって、先に述べた「ババを掴まされる世代」への配慮と全体としての公正さを維持するというトレードオフの関係になりがちな問題への対処の方が困難だと思います。この移行ノウハウは、当然、世界のどこにもありませんから・・・。

職務基準賃金への移行により、欧州で確立されている同一価値労働同一賃金原則が達成されます。これは、遠藤教授の言葉を借りれば、”労使双方にとって、現状考えられる中で、最も納得性の高い賃金決定システム”と言い換えてもよいもので、欧米発のペイエクイティー運動の中で、正にそのため(納得性を高めるため)に誕生したものですから当然といえば当然といえます。納得性を高めることは、ジャックハーシュライファー教授の理論からいけば、闘争技術へのモチベーションを最小化させるわけですから、労働分配率に変化がないという前提でいうと、インセンティブが生産技術の方向に直に作用することから、生産性が上がる筈です。もちろん、以前の記事で述べたように、報酬だけが単純に動機付けに作用するのではないという人間の複雑性を考慮した、より先進的な試みは重要ですが、そうした、より望ましいと考えられる施策は模倣できるような、ある程度一般的な職務全域にわたって通用する成功例が未だないわけですから、同一の労働ですら賃金が同一にならないというような前近代的な雇用環境の公正さ水準を、まずは標準的レベルまで引き上げてからの次の次元の話だと思います。

念のため、   よく言われる”同一労働同一賃金”は子供的感覚からしても当たり前の事をいっているに過ぎず、”同一価値労働同一賃金”とは、言葉はよく似ていますが内容は大きく違います。前者は、同一の労働かどうかの判定しか必要ありませんが、後者は、異なる職務間での労働価値の程度差を評価する必要があるため職務分析が必要になります。

この時、先ずは同一労働同一賃金という次元から導入して・・・というような無意味に導入順序をつけようというやり方については、小さなことをすることによる事実上の不作為になると思います。既に、より完成された手法があるのにわざわざ低次元から事を進めるというのは無駄であり、効率が悪いと思うからです。発展途上国が、「ここんとこ豊かになってきたんで、先ずは白黒ブラウン管テレビから普及させよう」と政策を練るような感じがします。導入するための労力に大した差がないのであれば、より効果(今回の場合、社会公正さ)が期待されるものを選択するべきです。かといって、より、効果があるだろうからといって、未だ実用化されていない8Kを開発して導入しようというのは、「無理があります。順番にやりましょう。」といっているわけです。

このあたりの政策について興味を持った方用に、文中登場した、遠藤公嗣教授の著書紹介しておきます(以前にも紹介しましたが、解りやすいですこの本)。

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(追記)不利益変更になるのは誰なのか?
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