2018年10月21日
『オヤジおこし』第4話 父と息子の対立と葛藤
○宝島区役所・全景
○同・会議室
小田信子(50)、清野、犬飼が応接セットに座っている。
信子は厚化粧、派手なスーツ。鼻の下に大きなほくろ。扇子を仰いでいる。
信子「無理ですね」
清野「区の文化遺産になると思うんです」
信子「税金の無駄遣いです」
清野「あの、戸塚いさむや、青塚としおを生んだアパートですよ」
信子「素晴らしい漫画家さんたちです」
清野「ご理解いただけましたか」
信子「仮に、仮にですよ。区が出資して、トキノ荘を再建した場合の費用対効果をデータとして示していただけませんか」
清野「費用対効果」
信子「当然、見込みがあるんでございましょう」
清野、メガネを触る。
清野「もちろんです」
信子「その前に。トキノ荘通りは人を呼べるような環境になっていますか」
清野「と、いいますと?」
信子、扇子を翻しながら、
信子「ゴミは落ちていませんか、壁に落書きはありませんか、公衆トイレはキレイですか?」
清野「それは……」
信子「3日あげましょう。4日後に、私が視察に伺います。その時に、ちり一つ落ちていないように町の清掃をお願いします」
清野、腕時計を見て、
清野「1日でやります」
犬飼「ええ!」
清野「1日あれば十分です」
犬飼「無茶いうな」
信子「わかりました。明後日、10時に視察に伺います。ゴミが1つでも落ちていた場合、この話には死んでいただきます」
○はらっぱ公園・公衆トイレ
清野と犬飼が便器をそうじしている。
犬飼「なんで一日でできるなんていっちまったんだよー」
清野「時間は大切です。お待たせしては申し訳ないと思いまして」
清野はゴム手袋、ゴーグル、マスクをしている。
犬飼「小田ってまだ独身らしいぜ」
清野「結婚しなかったんですね」
犬飼「あれじゃ、できないだろ」
清野「将来の夢が総理大臣でしたもんね」
犬飼「女性初の総理大臣になるんだって息巻いてたよなー。小学校も中学校も生徒会長だったし。大学出て、今じゃ区の職員か」
清野「夢と現実の乖離」
犬飼「だれでもそうなんじゃねーの」
便器をゴシゴシこする清野と犬飼。
時生が木の陰から清野と犬飼を見ている。
○トキノ荘通り
ちり一つ落ちていない商店街。
信子が来る。
信子、ジロジロと辺りを見回し、扇子で仰いだりしている。
○せいの時計店・前
清野、犬飼、信子が立っている。
信子、扇子を閉じる。
信子「条件は満たしたようですね」
清野「では、出資していただけますか?」
信子「トキノ荘はどこに建てる計画ですか?」
清野「はらっぱ公園です」
信子「許可がとれるかどうか」
清野「そこを何とか、ご協力お願いいたします」
信子「一応、区長に相談してみます」
清野「ありがとうございます」
信子「なぜですか?なぜ、そこまでしてトキノ荘を再建したいのですか」
清野はメガネに触る。
清野「トキノ荘は、宝だからです。この町の、この何にも取り柄がない商店街の唯一の宝だからです!」
信子「期待しないでください」
信子は立ち去る。
犬飼「『タカラダカラ』ってダジャレ?」
清野、真剣な顔。
……続く。
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体とは一切関係ありません。
齋藤なつ
【2970円の眼鏡セット CLASSIC 度付きメガネ】AL327-2 DMBR 価格:2,970円 |
カラフルボックス
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/8222271
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック