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posted by fanblog

2015年04月17日

漫画家がファンをお見舞いした時

俺は漫画家なんだけど、出版社気付でファンレターが来る。
そんな大御所でもないし掲載紙もややマイナーなので、
その数は一ヶ月で数十通程度なのだが、
ヒマな俺はその大半にサイン色紙を送っている。

その中に住所が病院の子からのワープロ打ちの手紙があって、
見るとその病院はうちから車で20分くらいのところにあった。

ファンレターをくれるくらいなら、
きっと直接あげたらもっと喜ぶだろうと思った。
いや、それと同時にヒマな漫画家の俺が
そのときはきっとスター気分に浸れるだろう
というスケベ根性ももちろんあって、俺はその病院に向かった。

行って見ると、面会受付にその子の母親が偶然そこにいて恐縮した様子だった。
バカな俺はそれでスター気分に酔い始めた。

その子に会って俺は愕然とした。

「これは・・・人類なのか?」
折れそうな手足、頭蓋骨の輪郭がはっきりわかる顔つきは命の気配を感じず、
かろうじて動く手で五十音を書いた板を指して意思の疎通をする状態だった。

俺が動揺しながらも、その子に話しかけ、連載している漫画のキャラクターを
目の前で描いてみせると、その子は体を激しく痙攣させ、目から涙、鼻から鼻水、
口からよだれを流しながら、激しく震える手で五十音の板をまさぐり、
たった四文字をありったけの力で俺に伝えてきた。

う・れ・し・い

俺はその瞬間スター気分が吹っ飛んだ。
その代わり(その子にとっての)スターを演じ切って、
帰りの車を運転しながら泣いた、昼間だったが声をあげながら泣いた。

藤子は、石ノ森は、そして手塚は、俺みたいな経験をしたことがあったのだろうか。
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