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2019年01月09日

川端康成の「雪国」から見えてくるシナジーのメタファーとは−「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ  4

4 認知発達型ロボティックス

 従来のロボティックスは、知能と身体の合体を目指していた。しかし、知能の組み込みが困難なため、設計の段階でロボットが自ら行動して学習し、内容を発達させていくような仕掛けを組み込もうと考えた。それが認知発達ロボティックスである。
 大宮(2010)によると、認知発達ロボティックスとは、知能発達機能が組み込まれた未完成の知能と胴体を合わせて未完成のロボットをまず作り、コミュニケーションや行動からロボット自身が活動の中で知能を発達させていく動的知能学のことをいう。つまり、身体を動かして初めてわかることがロボットの世界でもいえることになる。しかし、ここでは生まれたばかりの赤ん坊のような脳の活動ではなく、あくまで目的達成型の脳の活動を考えていく。
 認知発達ロボティックスは、未完成の知能と身体からなる組が上位で目的達成型ロボットと組になると考える。例えば、床掃除のロボットの場合、初めは部屋のどこに埃が溜まりやすいのか分からない。掃除を繰り返す経験知からソファーの下に溜まりやすいことがインプットされると、そこを掃除するときに、自動で吸引力が上がる。
 川端の「雪国」では、愛と組むと止揚する無が未知の知能で、愛が行動する身体となり、互いに否定し合いながら、両者を包むより高次の統一体に発展する。この統一体は、「雪国」の中で川端が感謝の気持ちを持って書いている愛情とし、それが目的達成型のAI(=認知発達)と組になると考える。愛とは、価値を認めて大切に思うこと、例えば、学問への愛とか男女や親子の抱擁であり、愛情とは、死んだ親とか恋人を慈しむ心である。

花村 (2018)「川端康成の『雪国』から見えてくるシナジーのメタファーとは」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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