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2024年07月23日

シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−魯迅「狂人日記」7

2.2 標準偏差による分析
 
 グループA、グループB、グループC、グループDそれぞれの標準偏差を計算する。その際、場面1、場面2、場面3の特性1と特性2のそれぞれの値は、質量ではなく指標であるため、特性の個数を数えて算術平均を出し、それぞれの値から算術平均を引き、その2乗の和集合の平均を求め、これを平方に開いていく。
求められた各グループの標準偏差の数字は、何を表しているのだろうか。数字の意味が説明できれば、分析は、一応の成果が得られたことになる。 

◆グループA 五感(1視覚と2その他)
場面1(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、2個と特性2、3個)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、0個と特性2、5個)の標準偏差は、0となる。
【数字からわかること】2
作品の中で重要な視覚情報は前半に多く、後半に進むと他の五感情報と併用されている。

◆グループB ジェスチャー(1直示と2隠喩)
場面1(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、2個と特性2、3個)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、1個と特性1、4個)の標準偏差は、0.4となる。
【数字からわかること】
「狂人日記」は、当時の世相を反映させた作品のため、場面1、場面2、場面3を通して、前半直示で後半隠喩というパターンであることがわかる。

◆グループC 情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)
場面1(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、2個と特性2、3個)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、1個と特性2、4個)の標準偏差は、0.4となる。
【数字からわかること】
場面1、場面2、場面3を通して、前半は旧情報が多く、後半は新情報が多いため、ストーリーがテンポよく展開していることがわかる。

◆グループD 情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)
場面1(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、2個と特性2、3個)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、4個と特性2、1個)の標準偏差は、0.4となる。
【数字からわかること】
「狂人日記」は、場面1、場面2、場面3を通して、問題解決が予想したよりも多いことがわかる。

花村嘉英(2019)「シナジーのメタファーのために一作家一作品でできること−魯迅『狂人日記』」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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