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作用をいとなむ「脳幹・背髄系」とがあるわけだが、以上がこれまで大脳生理学によっ
て知られている大脳における生のいとなみである。
わたくしは、このほかに、これまでほとんどその機能が知られていない間脳が、霊性 の部位であるとのべたのである。の部位を開発訓練することにより、ヒトはしだいに 高度の霊性を持つようになり、や霊的世界を認識把握することができるようにな
る。その局限の異なる霊的世界への飛翔であろう。
ひしよう
わたくしは、三十七道品
時に開発練磨してゆ
この間脳と、それに新皮質系の特殊な部位とを同 であると断定したのである。
古代、精神的にすぐれていたひとびとは、 間脳が極度に発達し、 間脳に通ずる霊的視 覚器官である「第三の目」を持っていたのである。いま、第三の目は退化し、ほとんど 閉鎖されてしまった。しかし、その痕跡は科学的に証明されつつある。 ごく稀れだが、 この眼を持つヒトもじっさいにいる。 間脳も退化してその果たす機能もわからなくなっ てしまったが、近来、大脳生理学も、なにか特殊なはたらきをするらしいとして、「ブ ラックボックス」とよび、追究をはじめているようである。それに先立ちわたくしは、 十数年も前からこの間脳に注目していたのである。
これからのあたらしい人類文化は、この間脳の開発からはじめられなければならぬ、 と、わたくしは「間脳思考』で主張した。 では、いまから二千数百年もむかしの古代に 説かれたシャカの教法である七科三十七道品→阿耨多羅三藐三菩提→涅槃→成仏 という古めかしい構図と、ハイテクノロジーの現代に生きるわれわれとの接点はいった
どこにあるのか?
わたくしはここで、どうしても「間脳思考』を見ていただかねばならぬと思うのであ
す」
はっすい
る。すこし長いが、抜粋しよう。著名なジャーナリストであり、プロデューサーである K氏と、わたくしとの対談の部分である。
ヒトは脳に「霊性」の部位を持つ
では、いよいよ本論に入りましょう。 アーサー・ケストラーはこう言っていま
K氏は『ホロン革命』のページをひらいた。
ホモ・サピエンスは進化論に適合しない病に冒された異常な生物種で、 人類の過去の記録をみても、また現代の脳科学からいっても、ホモ・サビ エンスが最後の爆発段階に達したある時点で何かに狂いが生じたことは、そし
もともと人間の体には(もっと具体的に言えば、神経回路には致命的な工学 上の欠陥が誤って組み込まれ、それがために人類の妄想傾向が歴史を通して脈 脈と流れていることは、否定すべくもない。これは恐ろしくも当然の仮定であ り、人間の条件を真摯に追求しようとすれば、これから目をそらすことはでき ない」
「ゆえに、『種』として人類は絶滅するのだ、とかれはいっております。 桐山先生 は、これにたいしてどうお考えですか?
人類はケストラーのいうように、脳に致命的な設計ミスを持った異常な生物種で あるとお考えになりますか?」
「いや、わたくしはそう思いません。設計はほとんど完全に近かったと思います」 すると、設計は完全に近かったが、設計通りに進行しなかったということです J
そうです。ですから、ケストラー自身もいっているように、もう一つのほうの推
『ホモ・サピエンスが最後の爆発的段階に達したある時点で何かに狂いが生じ
たことは』といっているのが正しいのです。設計ミスではなかった。設計はほとん 完全だったが、進化の途中で方向が狂ってしまったのです。わたくしは、すで に、それを「密教・超能力の秘密』で指摘しています」
「具体的にお示しください」
「人間は脳に霊性の部位を持っているのです。 これはそのように設計されているの です。だから、この部位がその設計の通りに活動していたら、人類は、 ケストラー のいうように「狂気」の症状をあらわさなかったでしょう。 したがって、いまのよ うな破滅に直面するようなことにはならなかったのです。 この部位が進化の途中で 閉鎖されてしまった。そのために、人類は、“超””人になってしまったのです」 「ふうむ、これはおどろくべき発想ですね」
「発想じゃないのです。事実なのです」
「その霊性の部位はどこですか?」
しょう
「大脳の最も中心である脳の視床下部です。 このいちばん奥に、その部位があ
ります。ただし、これがはたらくためには、そのすぐそばにある松果腺という内分 腺の特殊なはたらきが必要です」
「それは大脳生理学者の説ですか?」
というのです。
「いいえ、そうじゃありません。わたくしの修行体験による発見です。 インドのク ンダリニー・ヨーガ、チベット密教の修行などを参考に、わたくしが把握したもの です。脳生理学はまだそこまで到達しておりません。ただし、アメリカのホルモン 分泌学の権威・D・ラトクリフという学者は、その著書『人体の驚異』(小学館) の中で、おもしろいことを言っております。
『その機能がようやくわかりかけてきた松果腺は、脳の下側にくっついている 小さなので、人間が原始時代の祖先から受けついできた第三の目の残 跡と推定されている』
第三の目というのをご存じですか?」
ずうっと以前に、そういう題名の本を読んだことがあります。 なんとかいう英国
なるほど」
ます。この視床下部が第三の目と連撃して活動するとき、人間は霊性を顕現するのです。その究極において、「密教・超能力の秘密』でいっているように、カミ、 ホ トケにまで到達するのです。人間は、知性・理性の場である新皮質と、本能の座である辺縁系との中間にある『間脳』に、霊性の場を持っていたのです。これにより、 人間はバランスがとれるのです。ところが、この間脳にある霊性の場を、人間は失 ってしまった」
しかし、それを知っているひとたちがいた。その代表が、 シャカです。 シャカ は、「成仏法』という名で、この霊性の場を再開発するシステムを完成した。 古代 密教が、それを受けついだ」
「古代密教、とおっしゃるのはどういうわけですか?」
後世の密教は、大乗仏教の影響を受けて、 シャカがつたえたシステムを様式化し てしまったのです。まったくちがったものにしてしまった」
「しかし、仏像とか、仏画とかは、古代密教の表象をそのままつたえています。 密 教の仏像の多くが、第三の目を持っているのはこのためです」
「あの、眉間のところにある目ですね?」
「そうです。 その密教の代表ともいうべき仏像が、摩醯首羅です。 これは、梵語の Maheśvara (ヘーシュヴァラ)を音写したもので、これを「大自在天』と漢訳し、 宇宙の大主宰神とされております。眉間に第三の目があって、合計、三つの目を持 っています。われわれは、目が二つです。その二つの目の一つは、辺縁系の脳に通 ずる目であり、もう一つは新皮質の脳に通ずる目で、この二つが一対になって、現 世界(物質世界)を見るのです。このほかに、じつはもう一つの目があった。そ れは間脳の視床下部の脳に通ずる霊性の目で、霊的世界を見る目です。 これが、第 三の目とよばれるものなのです」
「で、その第三の目が、『残跡』となると同時に、先生のおっしゃる霊性の『場』 もはたらかなくなってしまったということですか?」
「そうですね。しかし、それは、霊性の『場』が閉ざされてはたらかなくなってし
まったから、第三の目もはたらかなくなって、たんなる「残痕』になってしまったのだともいえるでしょう。 要するに、密接な相関関係にあるものですから」
K氏はしばらく考えこんでいたが、
と首をかしげた。
「なぜ、人間は、その霊性の『場』を失ってしまったのですか? 退化、とは考え られませんねえ。人間の精神活動は原始時代から非常なスピードで進化し、進歩し ているわけですから、退化などとは考えられない」
その理由ですか?」
わたくしは言った。
「第三の目」はなぜ消えてしまったか?
「第三の目が閉じられてしまったのには、もちろん、大きな理由があります。 わた くのいう霊性の『場』は、 間脳の視床下部にありますが、 それは、要するに、物 質的な欲望や本能を制御し、時には否定して、より崇高なるものにあこがれる精神 領域です。そういうと、それは新皮質系の領域じゃないかといわれるかも知れませ ん。そうじゃないのです。
新皮質系の知性は、神を考え(分析し演繹して)仏を理解しようとするものです が、霊性は、神と一体になり、仏と同化しようとする題性です。 明らかに新皮質系 のものとはちがうのです。
新皮質が生む知性は、時実博士の表現によれば「より良く生きる」こと、「より 高く生きることを目ざします。 そのための創造行動をいとなみます。その結果、 どういうものが生み出されたかといいますと、精神的には哲学 (および倫理・道徳)、
物質的には科学と技術)です。 ことばを変えていうと、「より良く生きる』が科 学と技術を生み出し、より高く生きる』が哲学・倫理を生み出した。ところが、 哲学・倫理はいままったく行きづまって、人類がいまかかえる問題に、大声で警告 は発するけれども、なんの答も出すことができない。
一方、新皮質の『より良く生きる』という目標は、『より便利に』『より速く』 の追求になってしまった。 ごらんなさい。 現代社会は、新皮質文明であり、新皮質 の産物ですが、現代社会の目標は、『より便利に』『より速く」がモットーでしょう。 地球上のすべての企業が、それを目ざして狂気のごとく活動しています。 それが結 局は自分の首をしめることを新皮質は知りながら、止まることができない。 なぜな らば、それをおしとどめる間脳のはたらき、霊性の『場』を、はるか以前に、新皮 質自身が押さえこんでしまっていたのです」 大京
「そんなことがあり得るのですか?」
「こういう現象は、大脳においてつねにおこなわれるものです。 たとえば、動物が 高等になるにつれて新皮質が発達してくるために、旧皮質はしだいに大脳半球の
面へ押しやられ、古皮質は大脳半球内部へ押しこまれるようになります。 これは大 脳生理学の定説で、これとおなじ現象が、人間の大脳においておこなわれたので す。
新皮質は、それが人類の進歩と進化であり、平和と繁栄につながるのだというが 義名分のもとに、 間脳を押さえこんでしまったのです。 そういう理くつを考え出す のは、新皮質の得意ちゅうの得意ですから。
霊性とは物質的な欲望や本能を制御し、時には否定さえして、より崇高なるもの にあこがれる精神領域だと、さきにわたくしは申しましたが、そういうものは、新 皮質の生み出す物質文化にブレーキをかけるものです。考えようによっては、新皮 質の敵といっていい。だから、新皮質は全力をあげて、霊性の場を押しつぶしにか かった。人間のすべての欲望 (大脳辺縁系)がこれにくわわった。これが、人間の
『葉』というものでしょう。
だから、知性と称するものは、霊的なものを、いまでも、迷信といって敵視する でしょう。知性の持ちぬしだと自称するひとたちが、『霊』ということばを聞くと、たちまち歯をむき出して噛みついてくるのは、そのためです」
「は、はぁはぁ、なるほど、なるほど」
K氏は大声で笑ったが、
「それはつまり、新皮質脳が脳を押しつぶしてしまったのは、人類の歴史 で、いつごろのことでしょうか?」
知性(新皮質脳)と霊性(間脳)が一時に花ひらいた時代
わたくしは、逆にK氏に質問した。
「K先生は、さきほど、人間の精神活動は原始時代から非常なスピードをもって、 進化し、進歩してきたとおっしゃいましたが、はたしてそうでしょうか?」 「といいますと?」
「わたくしは、ずうっと古いある時代から、すこしも進歩していないのじゃないか
と思うのです。むしろ、退化しているのじゃないかと考えます」
「どういう意味ですか?」
「わたくしは、人類の精神文化は、いまから数千年前に、その進歩がおわってしま って、その後は、なんらあたらしいものを生み出すことなく、ただ先人のあとをな ぞっているのにすぎないのではないかと思うのです。高い精神文化は、すべて紀元 前に完成されてしまっている。ことに、霊性にもとづいた叡智の文化がそうです」 「ふうむ」
たとえば、人類の知的産物としての古典を考えてみるとき、ごくおおざっぱにい って、三つのグループに分けられるでしょう。 中国の古典、ギリシャの古典 イン ドの古典です。いま、手もとに参考とするものがありませんから、ごくおおざっぱ ないいかたですが、中国においては、西紀前五世紀に孔子が生まれて儒教を説き、 以後、ざっと、墨子、 荘子、 から、孟子、司馬遷にいたるまで、すべて紀元前のひ とたちです。
ギリシャでは、紀元前八世紀に、 ホメロスが、『イリアス』 『オデッセイア』を書き、前七世紀には、イソップが生まれ、前五世紀には数学のピタゴラス、哲学者のヘラクレイトス、悲劇作家のアイスキュロス、ソフォクレス、前四世紀ごろには、 有名なソクラテス、プラトン、 ついでアリストテレスが活動しています。このひと たちが、のちのヨーロッパ知的文化のもとをなしたことはご承知の通りです。 いま 西洋文明の知的産物は、これらのひとたちの芸術や思想を抜きにしては考えられ ず、さらには、後世から現代まで、はたしてこれら世紀前のひとたちを凌駕するだ あたらしい知性的産物を生み出しているといえるかどうか」
「インドではもっと古く、紀元前一〇〇〇年、すなわち、 前十世紀にすでに「リグ・ ヴェーダ』が成立しています。 前八世紀にはバラモン教が活動しはじめています。 前七世紀には『ウパニシャッド』が完成し、 前五五六年にはシャカが生まれていま
「西アジアでは、モーゼの出エジプトが紀元前十三世紀ですし、 前八世紀には、預イザヤが活動し、前七世紀にはゾロアスター教が成立、同時に預言者エレミア が活躍している。そして、中央アジアでキリストが生まれ、紀元元年をむかえるわ けです 。
K氏は無言のままうなずいた。
「じつに、百花乱ともいうべき華やかさでありませんか。人類の精神文明の頂点これは、見かたによれば、知性=新皮質と、霊性=間脳が一時に花ひらいた時代 とみてよいでしょう。 このあと、急速に新皮質は発達します。 新皮質はギリシャに おいて哲学を生み、これが科学へと進んでゆくのです。 そして遂には太陽のエネル ギーを手中にし、人間を月に送りこむまでになったのです。
しかし、そのように急速に爆発的に発達した新皮質は、第三の目を閉ざし、霊性 の場である視床下部をふさいでしまった。人類は、霊性の目を閉じ、霊性の場をふ さぐことにより、科学という名の物質的欲望をみたしてきたのです。 そのためにはう言っています。
「わたしは生化学戦争の恐怖について、何もふれなかった。人口爆発、公害に ついてもふれなかった。それらはたしかに脅威ではある。 しかしそうした問 題ゆえに、社会の意識はひとつの重大な事実から不当にそらされてきたといっ てよい。その事実とは? 一九四五年以降、人類は自らを絶滅させる悪魔の力 を身につけてきた。そして過去の事実から判断するかぎり、そう遠くない将 来、 ある危機のなかでその力を行使する可能性は大きい。そうなれば、宇宙船 地球号は死に絶えた乗組員を乗せて星間を漂流する幽霊船と化すにちがいな い』
要するに、世界の危機を核爆弾ひとつにしぼって論じているわけです。
これにたいし、わたくしも、わたくしなりの危機にたいするデータを持っていま す。決して、 ノストラダムスやその他のひとたちのシリ馬に乗ってさわいでいるわ けではない。 わたくしはわたくし独自の見地から、この世界の破滅崩壊を予感しているのです。 最初に申し上げたと思いますが、核爆弾とか、環境汚染とか、人口 増加、大地震、移動というように、ひとつひとつのデータではない、ヒト自身の 上に起こったホラーキー崩壊の現象から、 どういうアクシデントでかは別として、 とにかく、 間脳を失ったヒトから成り立つこの世界は崩壊するよりほかない、と予 「感しているのです」 (以下略)
以上で、成仏ということばのほんとうの意味が、ご理解いただけたことと思う。同時 に、釈尊の説かれた成仏法と現代社会、そしてそこに生きるわれわれとのふかいかかわ りもまた、ご理解いただけたことと思う。われわれの社会がいまやあらゆる面で行きづ まり、崩壊の危機に直面しつつあることは、アーサー・ケストラーの警告を待つまでも ないことである。この、お
毎日のように報じられるこどもの自殺出ひとつみても、この社会が異常化し崩壊し つつあることがうかがわれる。健康的に正しく成長しつつある社会では、こどもはつね に希望にみちている。 決して自殺などはしないのである。こどもたちは敏感にこの社会
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