アップル初のAR/VRヘッドセットは、6月の開発者会議WWDCにて発表されることがほぼ確実とみられている。これまでの噂話では、4KマイクロOLEDディスプレイ2枚やデュアルプロセッサー、手や目の動きを追跡する12個のカメラなど、競合他社の製品とは一線を画する豪華な仕様が伝えられてきた。
アップルの社内事情に詳しいBloombergのMark Gurman記者は、本製品を長年にわたり追ってきた1人だ。それは2017年、同社がAR/VRの状況を一変させるべく、rOSと呼ばれる新OSや専用のApp Store込みで準備中と報じたことまで遡る。
最新記事の冒頭でGurman氏は、本製品を「ティム・クック(CEO)の当初のビジョンから外れてしまった」と表現している。またアップルのトップ幹部には、この製品の可能性に懐疑的であり、距離を置いている人物もいるという。同社内で先行きに深刻な不安を抱く声があることは、The New York Timesも伝えていたことだ。
アップルがヘッドセットとは別にARメガネ、いわゆる「アップルグラス(Apple Glasses)」に取り組んでいることは公然の秘密だ。後者は、小型化やバッテリー持続時間に難があることから、発売は早くても数年後とみられている。
しかし今回の記事によると、クックCEOは本当はアップルグラスを優先したかったが、開発作業はヘッドセットにますます集中することになったという。
当初は一日中かけていても邪魔にならない眼鏡のようなものを想定していたはずが、スキーのゴーグルのようなヘッドセットに変貌し、外付けのバッテリーパックが必要となった。技術的な制約や製品を市場に投入したいという欲求、社内の不一致などから、次第に既存のVR製品に近いものに流れていったそうだ。
その妥協の産物であるヘッドセット「Reality Pro(仮)」でさえ、製品化するため、より多くの妥協が必要になっていったという。他のMR(複合現実)ヘッドセットメーカーと同様、アップルもいくつかの「核心的な技術的問題」を解決できていないと暗黙のうちに認めたようなもの、とのこと。
本製品はMacの外付けディスプレイとして使えたり、複数人でのビデオ会議もできるというが、それは当初の意図ほど進歩しておらず、改善の余地があるという。またバッテリーをヘッドセットに内蔵したかったが、軽量化しつつオーバーヒートを防ぐため、アップルらしくないデザイン上の妥協(外付けバッテリーを持ち歩く)をしたそうだ。これは理想の製品ができるまでは市場に投入しないという、同社の通常のスタンスとは大きく異なる。
2023年05月19日
アップルの初ヘッドセット、約40万円でも「原価割れ寸前」か
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