栄養に関しては、概ね誰もがエネルギーの他にビタミンやミネラルのような栄養素を供給する食物を必要としていますが、健康的な食事は年齢や性別によって異なるようです。
男性は女性よりも筋肉量が多く大柄な傾向にあり、代謝が高めであることから、一般的に一日を通して女性よりも多くのカロリーや食物繊維の他、特定の必須ビタミンやミネラルを必要とします。また、正常なテストステロン(男性ホルモン)濃度を促進するなど、男性特有の栄養素も必要です。1
その前に、まずはカロリーから
具体的な栄養素の推奨摂取量を把握する前に、まずは総カロリー摂取量を確認することから始めましょう。平均して、男性は女性よりも高めのカロリーである1日約2,220〜3,000kcalを必要とします。これは平均値ですが、各自の目標によって必要なカロリーが前後します。
目安としては、総カロリーの約45〜65%をエネルギー源となる炭水化物に、約10〜35%を筋肉量の維持に役立つタンパク質に、残りの20〜35%は腹持ちを良くする脂質に充てる割合で摂取すると良いでしょう。1
必要なカロリーは、年齢、身長、体重、活動レベル、性別によって異なる上に、女性よりも男性の方が代謝が高い傾向にあるため、自分の推奨摂取カロリーを把握しておくことが重要です。1
それでは、心身の健康を維持する食生活を上手に計画できるように、男性にとって最も重要な栄養素について詳しく見ていきましょう。
1. タンパク質
現在推奨されている平均的な成人男性の1日のタンパク質摂取量は、体重1kgあたり0.8gです。1 ただし、運動習慣のある男性にこの推奨値は低すぎるかもしれません。
国際スポーツ栄養学会(ISSN)によると、良質なタンパク質を3〜4時間おきに20〜40g摂取すれば十分であり、筋タンパク合成、健康な体組成、運動パフォーマンスのサポートに役立ちます2
では、良質なタンパク質源とはどんなものを指すのでしょうか。良質なタンパク質源には、9種類の必須アミノ酸がいずれも適切な濃度で含まれており、完全タンパク質とも呼ばれています。大豆やキヌアなどの植物性タンパク質にも必須アミノ酸がすべて含まれていますが、完全タンパク質は通常、動物由来です。3
一般に、ホエイプロテイン(乳清タンパク質)は乳糖(ラクトース)を含みませんが、乳製品アレルギーの方にお勧めできる完全タンパク質の代替品には卵白タンパク質や大豆タンパク質などがあります。一方、ヴィーガンの方は、大豆由来のプロテイン製品を選んだり、米、エンドウ豆、麻、チアシードなどの植物性タンパク質が(それぞれ単体の製品よりも)ブレンドされたプロテインパウダー他の製品を探してみてはいかがでしょうか。
体重を増やしたい方や減らしたい方も、あるいは現状維持したい方も、その目的にかかわらず、タンパク質を十分に摂取するためにプロテインパウダーやバーを常備しておくと重宝します。
2. 食物繊維
食物繊維の1日の推奨摂取量を満たしている人はわずかで、男性の97%は推奨されている1日28〜34gの食物繊維を摂れていないのが現状です。
食事にぜひ取り入れたい食物繊維は以下の2種類です。
- 水溶性食物繊維:コレステロールの低下と血糖値の安定に役立つ水溶性食物繊維は、オーツ麦、豆類、エンドウ豆、大麦、リンゴなどに含まれています。
- 不溶性食物繊維:腸の健康を改善する不溶性食物繊維は、小麦ふすまやナッツ類の他、カリフラワー、インゲン豆、ジャガイモなどの野菜に多く含まれています。
果物、野菜、全粒穀物は食物繊維の優れた供給源であり、このような食品を多く含む食事には、腸の動きを活発にし、炎症を抑え、心疾患のリスクを下げる働きが期待できます。4
そこで、食物繊維の効果を実感できるように、普段の食事に果物や野菜、全粒穀物をたっぷり取り入れるようにしましょう。食物繊維を十分に摂れないという方には、食物繊維のサプリメントをお勧めします。
3. オメガ3
男性は、1日約1.6gのオメガ3脂肪酸が必要です。1 研究では、適切なカロリー摂取と合わせてオメガ3脂肪酸を十分に摂ることで、心血管疾患、2型糖尿病、肥満といった食事関連の慢性疾患のリスク軽減に役立つ可能性が示唆されています。
オメガ3は、脳や精子の細胞膜の形成など、多くの重要な身体プロセスに関与しています。5
オメガ3の代表的な供給源は、サケ、マグロ、サバ、ニシン、イワシなど脂肪の多い冷水魚ですが、チアシード、フラックスシード(亜麻仁種子)、クルミ、キャノーラ油といった植物性食品にも含まれています。
オメガ3を多く含む魚を週に数回ほど食べる習慣のない方やベジタリアンの方は、フィッシュオイルまたは藻類由来のオメガ3サプリメントで、この体に良い重要な脂肪を十分に摂取するよう心がけましょう。1,5
4. ビタミンD
ビタミンDは骨の健康に欠かせないにもかかわらず、男性の90%以上がこのビタミンを十分に摂取していないというデータがあります。1 十分なビタミンDとカルシウムの組み合わせは、骨の弱化・軟化を防ぐのに役立ちます。ビタミンDは、カルシウムの吸収、免疫系のサポート、炎症の抑制にも重要な役割を果たします。
男性は、少なくとも1日600 IU(または15mcg=マイクログラム)のビタミンDを摂取する必要があります。1 ビタミンDの供給源として最もよく知られているのは日光でしょう。週に2回以上、屋外で5〜30分間過ごすことでビタミンDを十分に摂取できます。6
ビタミンDを豊富に含む食品は稀ですが、脂肪の多い魚(サケ、マグロ、サバ、マス、ニシン)やタラ肝油のような魚の肝油にはビタミンDが含まれています。このように、ビタミンDを多く含む食品が少ないことに加え、日照時間が短い北国に住んでいる方は(特に冬の間)皮膚でビタミンDが効率よく作られないため、ビタミンDサプリメントを摂取する必要があるでしょう。1,6
5. カルシウム
ビタミンDと同じく、カルシウムにも骨の健康を促進する働きがあります。研究では、カルシウムを十分に摂取することで、大腸がん(結腸がん・直腸がん)のリスク軽減を促すことが示唆されています。
カルシウムの推奨摂取量は1日1000mgですが、男性の約30%は十分に摂れていません。そこで、必要量を満たせるように、カルシウムを多く含む食品や栄養強化食品を挙げてみました。1
- 低脂肪または無脂肪の乳製品(牛乳、チーズ、ギリシャヨーグルトなど)
- ケール
- ホウレンソウ
- チンゲンサイ
- 豆腐
- 栄養強化されたシリアル
- 栄養強化されたオレンジジュース
乳製品を摂る習慣がない方や、カルシウムの摂取量が少ないと感じている方は、カルシウムのサプリメントで不足分を補うと良いでしょう。なお、カルシウムの種類によっては、薬剤はもちろん、他のサプリメントとも併用しないよう、時間を決めて摂取する必要があるため、かかりつけ医または管理栄養士に確認し、指示に従ってください。
6. マグネシウム
マグネシウムは、筋肉の収縮、身体能力、体内のエネルギー生成に重要な役割を果たす必須ミネラルです。8,9 マグネシウムが不足すると、エネルギーレベルや身体能力に支障が出やすくなります。テストステロン濃度が低い方は、マグネシウムを十分に摂取し、運動量を増やすことで効果が期待できそうです。8
マグネシウムの摂取量は1日約420mgが目安です。1 このミネラルを豊富に含む食品には以下のようなものがあります。9
- カボチャの種
- チアシード
- アーモンド
- ホウレンソウ
- カシューナッツ
- ピーナッツ
- 枝豆
- 黒豆
マグネシウムを多く含む食品を毎日の食事に取り入れるのはもちろん、必要量を満たすには マグネシウムサプリメント も摂取することをお勧めします。
7. ビタミンC
創傷治癒とコラーゲンの生成に重要で、強力な抗酸化物質であるビタミンCを十分に摂取することで、特定のがんの予防や発症遅延に役立つ可能性があります。また、抗酸化物質が豊富な野菜や果物の多い食事は、成人男性の主要な死因である心疾患のリスク低下につながるとされています。10,11
1日に必要なビタミンCは90mgで、赤ピーマン、柑橘類、イチゴ、ブロッコリーなど、さまざまな食品から簡単に摂取できます。1,10