https://journals.plos.org/plosmedicine/article?id=10.1371/journal.pmed.1003889Changing your diet could add ten years to your life – new research
https://theconversation.com/changing-your-diet-could-add-ten-years-to-your-life-new-research-176494
査読付きの医学誌である PLOS Medicineに掲載された最新の研究によると、健康的な食生活を中年から続けた場合は寿命が6〜7年延び、若年層から続けた場合は約10年延びる可能性が示されました。
研究チームは145カ国3600人を超える研究者がコラボレーションして主要な疾病・負傷・危険因子による死亡率・障害などを評価する研究プログラム・ GBDのデータから、食事と寿命に関する研究データを分析しています。分析の結果、研究チームは果物・野菜・全粒穀物・精製穀物・ナッツ・豆類・魚・卵・乳製品・赤身肉・加工肉・ジュースなどの摂取量を継続的に変化させた場合に寿命がどのような影響を受けるのかを推定することに成功しました。
さらに、研究では分析データから寿命を延ばすために最適な食事を導き出し、典型的な西洋型の食事と比較しています。ここでいう「典型的な西洋型の食事」というのは、「加工食品・赤身肉・高脂肪乳製品・高糖質食品・出来合い品などが多く、野菜や果物は少ない食事」を指します。一方、研究チームが導き出した「長生きに最適な食事」は「豆類(豆・エンドウ豆・レンズマメ)・全粒穀物(オーツ麦・大麦・玄米)・ナッツが多く、赤身肉と加工肉は少ない食事」です。
研究では、20歳の頃から健康的な食事をとることで、アメリカ・中国・ヨーロッパの男女なら平均寿命が10年以上長くなることが明らかになっています。また、60歳から「西洋型の食事」を「長生きに最適な食事」に変更することで、平均余命が8年長くなることも発見しています。さらに、80歳からでも平均寿命は3年半長くなる可能性があるとのこと。
さらに、研究チームは「西洋型の食事」と「長生きに最適な食事」の中間の食事に変更した場合の寿命の延びについても計算しています。この中間の食事を研究チームは「feasibility approach diet(実現可能性アプローチダイエット)」と呼んでおり、この食事でも20歳から導入すれば女性で6年強、男性で7年強も寿命を延ばすことができることが判明しました。
以下は「Typical western diet(西洋型の食事)」「feasibility approach diet(実現可能性アプローチダイエット)」「Optimal diet(長生きに最適な食事)」という3つの食生活における1日の接種目安量を食品別にまとめた表。
分析結果から、研究チームは「どの年齢であっても、長期的な食事の変更に取り組むことで、平均寿命を延ばすことができる可能性が示されました。そして、人生の早い段階で食生活の改善を行った場合、寿命の延長は最大化されます」と記しています。
ただし、今回の研究では「10年以上の長期にわたり食事を変えた場合、寿命の変化により大きな影響が出る可能性」や、寿命に影響を与える可能性のある過去の罹患歴などについても考慮されていません。つまり、今回導き出された「食事が寿命に与える影響」に関する考察はあくまで平均的なものであり、健康問題・遺伝・喫煙・飲酒・運動などのライフスタイルや、その他のさまざまな要因については考慮されていないという点については注意が必要です。
食事の改善がなぜ寿命を延ばすことにつながるのか、その詳細なメカニズムについては明らかになっていません。しかし、今回の研究で寿命を延ばすのに推奨された食品は抗酸化物質を多く含むものばかり。ヒトの細胞を用いた 研究では、抗酸化物質が老化の原因となる細胞の損傷を防いだり遅らせたりすることを示すものもあります。しかし、老化の原因をつきとめる研究はまだまだ進行中の段階にあるため、抗酸化物質を多く含む食品が寿命を延ばしているのか否かは不明です。また、今回の研究で「長生きに最適な食事」に多く含まれる食品には、抗酸化物質を多く含む食品だけでなく、抗炎症作用を持つ食品も多く含まれます。