結論から言うと、より高いパフォーマンスが求められるような用途では、価格差以上にMacBook Proの方が高性能です。もちろん、バッテリーの持ちがスペック上で1時間長いとか、楔形の形状がいいんだ! とか、ゴールドしか持ちたくない! とかのニーズは否定しません。スペック上で110g軽いことが見逃せない人もいるでしょう。
実際、文書を作ったりウェブで何かしたりする程度ならば、両者に大きなパフォーマンスの差は感じないでしょうね。でも、実際に動かしてみると意外に大きな違いがありました。
単純なベンチではGPUで圧倒する第10世代のMacbook Airだけれど
MacBook Airには第10世代Coreプロセッサが採用されています。このプロセッサには機械学習処理を加速させる命令セットや追加回路などが搭載され、LPDDR4X対応やWiFi-6対応など様々な改良、拡張が加えられています。2世代も進化しているのですから、良くなっているのは当然なのですが、現代のシステムはスペック通りのクロック周波数で動いているわけではありません。冷却システムや周囲の温度環境などによって最適化されるようになっていますからね。それに複数コアが同時にどのぐらい、どんな速度で動けるのか。その辺りのチューニングはハードウェアの設計次第なところがあります。
一方で第8世代Intel Coreで2基のThunderbolt 3ポートなMacBook Proですが、同じMacBook Proでもこちらは15ワットTDPのプロセッサが搭載されてきました。なお、Ice Lake搭載で4つのThunderbolt 3ポートな上位モデルは28ワットまでのプロセッサに対応しており、底面の両脇に大きな吸気スリットがあるかどうかでも判別できます。同じ名前だけど、実はエアフロー設計が違うんです。
さて、Turbo Boostで最大は〜なんて言い方もされますが、実際のところどのぐらいのクロック周波数で動くかなんてのは、周囲の環境にもよるわけで、もっと言えばシステムの設計に依存します。どう考えてもエアフローが少なそうな(実際、搭載しているプロセッサは10W)MacBook Airと、どのぐらい性能が違うんだろう? と気になりませんか?
ちなみにGeekBench 5でPro対Airを行うと、シングルコアの成績がおおよそ950対1100、マルチコアが3850対2600ぐらい。GPU(Compute、Metal)では7500対7800ぐらいです。謎なのは依然GPUスコアです。2019 LateのMacBook Proでは内蔵Intel Iris Plus Graphics 654のスコアが5100ぐらいでした。ところが急に7499なんてスコアが出て驚いたのですが、手元にある2018年モデルで確認したところ、Intel Iris Plus Graphics 655も7000台のスコアを出したのです。つまり、少なくともAirとの比較ではGPUは同等ということになりますよね。
もっとも、これらの数字は揺れもあるので、大まかにこのぐらい違うよ、程度に思っておいてください。そこは実アプリケーションの比較において、あまり重要ではないからです。
ということで、いくつかのアプリを動かしてみました。
どんなシーンでもMacBook Proの下位モデルの方が高パフォーマンスに
まずは動画編集ソフト。ここでは無償ながらプロ向けとほぼ同等の機能が使えるBlackmagic DesignのDaVinci Resolve 16で、複数動画を重ね合わせ、テロップを入れつつ、クロスリゾルブでトランジションをかけた16分の動画(フルHD/30fps)を書き出してみました。
このアプリケーションは動画を書き出す際、映像処理のかなりの部分をGPUで実行します。GPUの利用もOpen CLではなくmacOSネイティブのMetalを通して使うので、MacBook Airが搭載するIce Lakeには有利な条件です。
ところが、きちんとフルフルにGPUを使っていることを確認しながら比較してみましたが、MacBook Airが約24分かかったのに対してMacBook Proは19分で終わりました。
実は書き出し当初はかなり近いスループットが出ていたのですが、1分ほどで速度差が明確になってきます。おそらくですが、負荷が高い中で発熱を抑える制御が入ったのかもしれません。
次にRAW現像処理ソフトの中でも、高画質ながらとりわけ"重い"と評判のLuminar 4でEOS RのRAWファイル(CR3)を100枚、AI自動判別現象処理を併用しながら一括現像させてみました。
こちらもGPUが目一杯回りますが、同時にCPUも回るというかなり厳しい条件です。するとMacBook Proでは49分だった処理が、MacBook Airでは1時間16分も掛かりました。何度か実行してみたところ、数分の揺れを確認できましたが、その差は圧倒的で多少の誤差はあってもMacBook Airが逆転することはないでしょう。
CPU処理も"持続性"は第8世代のProが上
本来は高速になるはずの新世代GPUでリードできていないのですから、GPU処理が大きなファクターとなるアプリケーションでもこうした結果になるのですから、CPU処理ならなおさらです。
CPUで3Dレンダリング処理を行うCinebench R20にてシングルコアでのレンダリングを行ってみると、Geekbench 5のシングルコアはMacBook Airの方が良いスコアが出ているのに対し、結果はほぼ同じ(若干Proの方が良い)スコア(Pro対Airで397対355)となりました。
マルチコアは元々、MacBook Airが不得意な領域なのでもっと差は広がり、Pro対Airで1566対872に。これは熱を抑えるためにMacBook Airのマルチコア性能が制限されているからでしょう。
このベンチマーク結果と同様に一番大きな影響を受けるのはRAW現像処理です。
先ほどLuminar 4のテスト結果を紹介しましたが、AdobeシステムズのCamera RAWやキヤノンのDigital Photo Professionalといった現像ソフトはGPUを一切使いません(手元にあるものだけなのでGPUを使うものが他にあるかもしれませんが)。macOS Catalinaには、各アプリケーションがどのぐらいGPUを使っているのかを表示する機能がアクティビティモニターに追加されているので、自分が使っているソフトがどの程度、GPUを使っているのかを調べてみるといいかもしれません。
他にもあるProとAirの差
実はThunderbolt 3ポートが2基のモデルを評価することになるとは思っていなかったのですが、真面目に評価してみると、そして価格がMacBook Airと2万円しか違わないとなると、多少重くなってもProを勧めたい、自分ならこちらを選ぶだろうと感じています。現行MacBook Airが発表された時点では、まだMacBook Proが割高だったのですが、設定されている為替レートが変更されたことに加え、SSD単価が下がったこともあってかなりお買い得なモデルに変化したと思います。
ちなみに細かく見ていくと、MacBook ProとMacBook Airには次のような違いもあります。
- ディスプレイの最大輝度がProの方が明るい(500nitsに対してAirは400nits)
- ディスプレイの色再現域がProの方が広い(Display-P3に対してAirはsRGB)
- トラックパッドの幅がProの方が広い
- 冷却性能はProの方が高い(28ワットプロセッサまで対応するProに対してAirは10ワットの設計)
- スピーカーの音質、再生帯域がProの方が整えられてる(高域の歪みが少なく中音域が厚い。ただし音圧は少しだけAirの方が高くなる)
- Touch Barの有無(必要ないという声もありますが使いこなしているアプリケーションでは便利な場合もあります)
費用対効果ならProの低価格版
ということで、費用対効果の面で言えばMacBook AirよりもMacbook Proの方がいいなぁというのが正直な実感です。
もちろん、28ワット版Ice Lake搭載のThunderbolt 3ポート4基なMacBook Proは、もっとずっと上の性能を出してくれるでしょう。すでに米国では上位モデルのテスト結果、レビューが登場しています。明日、あるいは明後日には、そちらのテストに関してもお届けしますので「上位モデルはどうなる?!?」という方は、そちらをお楽しみにしておいてくださいませ。
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