新型コロナウイルスは人間に感染すると、急速に肺を侵そうとする。肺の空気の通り道である気管支の表面には、粘液を作る細胞と繊毛を持つ細胞がある。粘液は、肺を病原体から守りつつ、乾燥を防ぐ。繊毛は、花粉やウイルスなどのごみを取り込んだ粘液を押し出して、体外に排出する働きをもつ

これが正常に機能していれば、炎症のプロセスは厳しく管理され、感染した範囲をとどめられる。ところが、まれに免疫系が暴走して、健康な組織も含め、あらゆるものを破壊してしまうことがある。第2段階だ。

次の第3段階では、肺はさらに損傷し、呼吸器不全に陥る。また、死に至らないまでも、肺に後遺症が残ることもある。WHOによると、SARSの患者は肺にハチの巣状の穴が開いていたというが、新型コロナウイルスの感染者にも同様の病変が報告されている。過剰に反応した免疫系が組織を傷つけるせいで、こうした穴が開くようだ。

ここまで来ると、人工呼吸器が必要になる。また、酸素を取り込む場所である肺胞と、その周りをめぐる血管の間の膜の透過性が高まって、胸水がにじみ出てたまり、血液に十分な酸素を送れなくなる。

「特に深刻な場合、肺は水でいっぱいになって息ができなくなります。そして、亡くなってしまうのです」と、フリーマン氏は説明する。