酵素とは、触媒として働くタンパク質で、生物の細胞内で作られる。色々な化学反応を起こさせ、体内での物質合成や分解を行うもの。
発酵とは、生物による物質の分解や合成(つまり、生物による酵素反応)を利用して、食品中の成分を別のものに変えること。
酵母とは、微生物の一種で、アルコール発酵やパンの発酵などに長年利用されきた生物。
酵素を食べることは健康にいいの?
酵素の実体はタンパク質です。ですから、口から摂取した酵素は、ほかのタンパク質(肉や魚など)と同様に、消化によって、バラバラに分解されてから体内に吸収されます。ですから、消化管内で働くもの(消化酵素)を除けば、口から入った酵素が、そのままの形で必要とされる場所にたどり着くことはできません。酵素は基本一つの仕事しかしない職人なので、その酵素が必要とされる場所に行けなければ働けません。よく、「生の酵素」とか「生きた酵素」と言った表現がありますが、いくら生の酵素を食べても、その酵素が私たちの体内で働くことは困難なのです。
で、単純に「酵素を食べたらそれが体内で働く」という話は、比較的誤りがわかりやすいのですが、酵素健康法にはもう一段階理屈があったります。「酵素を食物から摂らないことで不健康になる、寿命が縮む」とする、「酵素栄養学」という理論です。酵素栄養学はエドワード・ハウエル氏が提唱した理論で、「潜在酵素」という、酵素の元のようなものが体内にあって、その量に限りがあるり、それが尽きると寿命も尽きる。そこで、消化酵素を食物から摂取(食物酵素)して節約し、それ以外の代謝酵素*1をつくるのに回そう、という話です。
ところが実は、「酵素栄養学」は、まったくの独自理論であり、科学的な研究が行なわれたものではないのです。「潜在酵素」というものも、ハウエル氏が独自に考えだしたものに過ぎず、現実に生物はいつでも必要な酵素を作れることが明らかになっています。
日本では「キラー・フード あなたの寿命は「酵素」で決まる」(川喜田昭夫*2訳、現代書林)というタイトルで翻訳書が出版されています。この本を読んでみると、現代生物学の常識とはかけ離れた内容が書かれています。文中、他の研究者によるいろいろな実験結果が引用されている*3のですが、結果の解釈はかなり飛躍しています。
例えば、p.55に「ミジンコを高温で飼ったら低温で飼うより寿命が短かった。そして、高温で飼ってるミジンコのほうが動きが活発で心臓の鼓動のペースも速かった。」という実験の結果が示されています。「キラー・フード」によれば、この実験を行ったマッカーサーとベイル曰く「寿命は代謝の強さによっていろいろと逆になる」ということらしいですが(この文自体も変ですね。実はこの本、翻訳もどうやらちょっと怪しくて、何かの誤訳の可能性も大。とにかく、代謝が活発であるほど早く死ぬ、ということでしょう)、ハウエル氏はこの実験から以下の結論を導き出しています。
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