おはようございます。あるへです。
本日はこちら「カオス ;ヘッド ノア」のレビューです。
今では爆発的人気を誇り、神ゲーの座を悠々と手にした作品「シュタインズゲート」と世界を同じくし、直接的な繋がりはないもののシュタゲの前日譚となる物語を描いた「妄想科学アドベンチャー」の初作品です。
公式サイト
今でこそシュタゲの陰に隠れがちですが、傑作です。いままでのテキストゲームの常識を覆す様々な試みが作中で行われており、その流れは次回作シュタインズゲートに見事に受け継がれ、洗練されました。
と、豪語してみましたが、実のところ私はそれほどテキストゲームに触れてきたわけではないので、もしかしたら「常識を覆す」などというのは言い過ぎかもしれません。
ただ、このゲームにはそう思えるような斬新なアイデアが凝縮され、高次元でまとまっており、読んでいてとても気持ち良いのです。
ですので、あるへ的に注目したポイントをいくつか表してみようと思います。
たとえば歌詞。
厨二臭満開のワードが並び、格好いい旋律とともに歌われますが、歌詞の内容は本編のストーリーと密接にリンクしており、ゲームを進めながら毎回聞きなおすたびに受ける印象が変わります。
これは本当にすごいことだと思います。カオスヘッドで語られる物語の全てを細部まできちんと把握し、なおかつそれを初見のプレイヤーには悟られないようにしつつも、歌としてまとまりがあり、物語ともきちんとリンクする……その言葉の選び方が既に神懸かっていると感じました。
(シュタゲではこれを昇華させ、物語とのリンクに留まらず、物語、歌詞、そして映像の三つがそれぞれリンクしています。これは実際の様々なアニメにも……おっと誰か来たようだ)
ゲーム内用語集も非常に面白いです。現実、非現実の区別無く目を引く用語が埋まっていき、解説を読んでいくのもこのゲームの醍醐味のひとつです。気をつけて読まないと「あれ、これは造語? それとも実話?」なんてことに。
99%の科学と、1%の妄想は伊達じゃないと感じました。科学と妄想の接点がとても自然で、そこからの広がりにリアリティを感じました。カオスヘッドを読み終わった後に、シュタゲが発売されることを知り、「これ以上の話は無理だろう」と高をくくっていましたので、その衝撃たるや推しているべしですが、三作目はやっぱり息切れしてしまいましたね。
息切れ、いまいち面白みを感じられなかったそもそもの理由が、この99%の科学と1%の妄想に拘りすぎたところです。あ、ロボノもプレイ済みですので、続きはいつかそちらで。
あとは選択肢の表現方法でしょうね。ネガティブな妄想か、ポジティブな妄想か、ただそれをスイッチするだけの単純な演出ですが、これが選択肢の役割を持つとわかっていても、感覚的には実感し辛いんです。
おそらく、文字を読んで行動を選択する、というプロセスを踏まないからでしょう。
プレイヤーはトリガーを引いてどのような心情で後の展開を見守るか、という受動的な選択をすることになり、「ボタンではなくトリガー」「行動ではなく心理の選択」といった演出が我々から現実を遠ざけることに成功しているのではないでしょうか。(これもまたシュタゲでケータイという形で昇華されて……おっと誰)
この選択方法は、オタクで引き篭もりの主人公の性格とも相性抜群です。
こういったゲームプレイとしての仕様やシステムから、ストーリーにおける「テーマ」と小道具(ディソードやネット世界)等、非常に融和性が高く、またストーリーそのものも、伏線あり、どんでん返しありと素晴らしいとしか言いようがありません。
以上のことを踏まえると、テキストアドベンチャーという形態をうまく利用し、斬新で新鮮なアイデアを惜しげもなく投入した5pb.を代表するゲームであり、代表・士倉氏の人柄・クリエイター魂が漏れ溢れている作品です。
ひとたび読めばぐいぐいと世界観に引き込む強大な力を持っているのですが、それゆえその斬新さに馴染めない人もいるのが現実です。
このゲーム、Zタイトルでして、極端な描写はなく恋愛要素も若干薄めですが、変態要素が濃く、グロテスクな描写も少なくありません。
この辺のホラーちっくなドキドキや、変態ちっくなドキドキが、ストーリー本編のサスペンスドキドキとも非常によくマッチしているのですが、そんな理由のため開けっ広げにプレイすると、周囲の目にもドキドキです。
シュタゲをプレイしてしまうと、カオスヘッドのシステム周りの詰めの甘さがよくわかるのですが、だからと言ってやらない理由にはなりません。
カオスヘッドがこんなに面白いからこそ、シュタゲはもっと面白い!
シュタゲとカオヘは表裏一体、是非是非是非、プレイするべし。です。
P.S.
このゲーム、エンディングも秀逸ですね。ベストエンドは泣かせてもらいましたし、バッドエンドもかなりショッキングでした。
個人的にお勧めというか、非常に印象深いのが七海(ななみ)エンドですね。鳥肌が立ちました。その怖気は今でも覚えています。
作中で起こる事件や謎はセンセーショナルでショッキングな展開が多く、読んでいてかなり心拍数が上がります。拓巳(たくみ)が自宅に帰ってきたときの部屋の雑音(無音だけど常時PCが点いており、独特の機械音が鳴っている)が本当に「ふう、帰ってきた……」と思わせてくれて、リラックスさせてくれるんです。この自宅のシーンが物凄く好きなんですが、物語後半になって聖域であるはずのこの部屋も侵食されてくると……。
最後になりましたが、やはりシュタゲ、カオヘともども絶対に外せないのが主人公ボイスですよね。
彼らがいるから、これらのゲームは何倍にも光り輝いているんだと信じています。
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