本日はこちら「シー オブ ソリチュード」のレビューです。
簡潔にまとめると、自己との対話を通して依存から脱却し、自立を目指す物語。自己の心象世界でリアルの自分を取り巻く障害が怪物の姿を借りて立ちふさがり、主人公のケイは彼らとの対話を通して問題を解決、自分の生き方を見つめなおす、みたいな?
多かれ少なかれ誰でも抱える問題であり感情なので、共感はできると思います。
私にも、ケイのように、いやケイよりももっと深く暗い茫漠とした生命を摩耗するような修羅の道を彷徨っていた時期があるので、彼らの言い分や考えることはよくわかりました。
なんか傷自慢みたいですが。
私が今こうして生きているのは、その暗い旅にきちんと、自分なりのやり方で決着をつけられたからだと、密かに誇りに思っています。いや誇りになんか思わないか。思い出したくないです。心にがっちり鍵を掛けて、あの頃のことは努めて考えないようにしています(笑)
ま、そんなことはどうでもよくて。
ストーリーのテーマ自体はとても重いのですが、グラフィックの柔らかさや映像演出などの軽快さ、テンポの良さがそれを中和してくれ、なかなか楽しく遊べると思います。
本作は「人によっては受け付けない、しかし刺さる人には刺さる」ようなゲームではなく、逆に非常にマイルドに味付けされた「誰にでも満遍なく浸透する、その中できっとわかる、気持ちを共有できる人がいると信じてメッセージを投げかける」、そんなゲームです。
ゲーム中よく出てくるセリフに"Leave me alone(ほっといてくれ)"がありますが、言葉通りの意味と、裏の意味がある気がします。
果たして私はメッセージを受け取れたかどうか。心に鍵かけちゃったので、無意識に距離を保っていたかもしれません。
おっとまた自分語りだ。
さて、ゲームとしてはどうかというと。
客観的に見れば凡庸かもしれません。やはり、テーマが先に来ていて、エンターテインメントは後からついてくるので、ゲームをプレイすることそのものの快感は薄いです。
ただし、演出面やアイデアとしてインディーズゲームとは思えないほど、質は高いと思います。
まずは水の表現。
水質そのものはライトですが、その扱いが非常にうまいです。心象世界ということでケイの感情によって水位が変化したり天候が変化したりするのですが、その変化によって同じ場所であるはずなのにまったく別のマップに変化させてしまうのが非常にセンスにあふれているなぁと。
本作の世界はやや狭めの一枚のマップなのです。
しかし、水位が上下したり、雪が降ったりと環境が変わることで、これがまったく別のマップに思えるくらいに見事に変化しているんですよね。
ほんとはこの小さな町をぐるぐるしてるだけなのに、まったくそういう風に思えないんです。結構ダイナミックなので、感動はあると思います。
もう一つは映像や雰囲気作りのうまさ。
本作はホラーゲームではないんですけど、ホラーによって引き出されるドキドキ感をうまく使っています。
アドベンチャーとして危険を乗り越え冒険するドキドキ感は結構ありました。怪物も謳い文句通り、美しくも本当に恐ろしいです。それゆえに、心の拠り所であるボートにたどり着いたとき、ぱーっと雨がやんで青空が広がる世界の変化はとても美しく、開放的で、ほっとします。
ちょっと残念なのは、この状態でのんびりボートを漕いでどんぶらこーする機会がそれほどなかったことですね。パズル要素も期待してはいけない。
ボリューム的に定価は割高ですが、これらの良い点や開発者の真摯な姿勢を考えると妥当だと思います。
あ、ちなみに実績文は英語ですが、本作は英語音声/日本語字幕です。
ローカライズのクオリティはかなり高い方だと思います。
時間はかかりませんが、マップ機能などがないので集め物を取り逃すと、自力での収集は骨が折れますね。
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