本日はこちら「アサシンクリード クロニクル:チャイナ」から続く三部作、「インディア」「ロシア」をレビューします。
本作は名前のとおり有名シリーズ作品の世界観をベースにした2.5Dステルスアクションです。
本家アサシンクリードのように自由な攻略は出来ませんが、ノーキルノーアラートを主体にしたデザイン(後の作品になるほど実績的な縛りは緩くなりますが、フルアップグレードを施すには最高評価であるシャドウゴールドを取るのが望ましい)はなかなか秀逸で、「2.5D」とアサクリ特有のフリーランシステムがすごく良い感じにマッチしています。
2.5Dは、ベルトスクロールアクションのようなライン移動や、FEZのように基本2Dでありながら奥行を足したような感じです。奥の柱に隠れたり、手前の縁に掴まって敵をやり過ごしたりと、奥行きの概念がステルスによく馴染んでいます。
まったく関係ないけど悪魔城ドラキュラとかの「メトロイドヴァニア」系ゲームも2.5D化したら化けるんじゃないかと思いました(笑)
本作は、悪く言えば完全な覚えゲーです。
敵の移動ルート、視線の切り返しなどは完全にパターンに沿っており、ステルスとは打って変わった脱出シーン(大抵すぐ後ろで建物などの倒壊が迫っている)も、即死ギミックなどの発生タイミングが細かいスクリプトによって制御されており、どんなに速く走ろうとも、あるいは遅く走ろうともほとんど差がでません。
ゆえにこの脱出シーンは初見時はことある毎に即死して相当なリトライを要することとなり、若干ストレスでした。
ゲーム全体としての出来は、全然悪くないです。
最初に選べるノーマルでステージを予習し、躓きながら少しずつアップグレードを増やし、その後選べるプラスモードで取り逃したアップグレードを補完し、最後にプラスハードモードでガジェットの力と二周した知識をフル活用して完璧な攻略を目指す、と、それぞれの難易度にそれぞれ遊ぶためのモチベーションが潜んでおり、とても良いデザインだと感じたものです。
アサクリの外伝的なゲームとしては、アサクリシリーズの特色を踏まえつつ良い味が出せています。難易度としても、じっくり腰を据えれば特に苦労する場面はありませんが、かといって初見でもさっくりあっという間にクリアできるほど淡泊でもなく、ややアルデンテ。
強力なガジェットである煙幕もロシア編では活用しにくくなってたり、作品毎でも少しずつ難易度が上がっていると感じました。
反面、ストーリーや設定などはアサクリらしからぬお粗末な出来でした。
フィクションであるアサシン教団とテンプル騎士団の確執を実際の史実に埋め込んで演出してはいるのですが、欠伸が出てくるくらいには陳腐だったのが残念です。
一応、つじつまなどは合わせてあるし、エデンの果実である「箱」が時代を経て中国からインド、そしてロシアへと流れていく繋がり、チャイナ編では復讐をテーマに暗殺ステージが多かったり、インド編では遺跡を駆け抜けるタイムアタックステージが多かったり、ロシア編では二人の主人公が協力して道を切り開いたりと工夫はところどころに生きてはいるのですが。
ツングースカ大爆発って作中のお話より現実の方がよっぽどフィクションに聞こえるんですけどね(笑)
そんな中でどうしても気になって仕方ない設定が一つあるんです。
それはチャイナ編の、主人公の宿敵「八虎」。
彼らは「宦官(かんがん)」という役職に就いており、ごく簡単に言えば(そして誤解を恐れず強引に言い切れば 笑)「皇帝のお后様候補(何百人もいる)の身の回りの世話をするため雇われた役人」であり、その際「まかり間違ってもお后様候補に悪戯できないようにタマタマを取っちゃった人達」です。
ちょっと勘違いや勉強不足なところがあったのでwikipediaで勉強しなおしたのですが、宦官の歴史は古く、独特な文化からアジア周辺、特に中国の歴史とは切っても切れないくらいに縁が深い文化です。ちなみに日本で刑罰など特殊な事情を除いて、局部切除の風習は存在しないというのが定説みたいです。
宦官とは(Wikipedia)
そんなわけで八虎が中国の支配を目論んであれやこれやと悪事を画策するのはまーお話としてもしょうがないとして……。
前述の通り、宦官とは生まれが名もない奴隷だったとしても皇帝のすぐ側に仕えられるくらいに一定の特権を許された代わりに、子孫を残さない、と文字通り命懸けで誓った役人のことです。
wikiにもさらっと書いてありますが、タマタマを取っちゃうと男性ホルモンの分泌が激減して、身体が女性化していくんです。
具体的に言うと体毛が薄くなり(髭も生えない)、声が高くなる傾向にあります。
しかし、本作の八虎は筋骨隆々の体躯に、戦士でもないのに絢爛な鎧を纏い、関羽も羨む見事な髭を蓄え、野太い声で悪だくみしてるんですよね。
主人公シャオ・ユンに対しては「以前は皇帝のお后様候補の一人であったが、彼女の魅力を損なわないために、纏足をさせなかった(だからアサシンになれた)」などの設定があるのにこの落差はなんなのだ。
まぁこの設定も現実の風習と当時の人の目で見てみれば、纏足しない=性的対象にならない=皇帝の后になり得ない、と矛盾が生じるのですが。
纏足によって変形した小さな足と、それによってうまく歩けない様子が女性の弱弱しさを表していて、「女性的で美しい」とされていたようです。
だもんだから現代で美しいとされる体幹バランスが優れていてスポーティな女性は「農作業でもしてろ、ブス!」という目で見られていたわけで、とても後宮には入れないと思うんだよね。
かなり極端な論になってしまいましたが、つまるところ「宦官はタマタマが無くて女っぽい」と学校で習った覚えがあって、八虎の、実際の史実よりも西洋人の考えるアジア人が優先されたデザインがどうしても気になって仕方がなかったのでした。
ちなみにインドとロシアの文化や歴史には全然詳しくないので割愛しますが、そこに住む人たちからみたらたぶん噴飯ものの描写なんでしょうね。日本人が作る西洋ファンタジーだってそういうもんだし、アメリカ人が作る日本や東京だって「これ中国のどのあたり?」っていうくらい似ても似つかないものだし、まぁどっこいどっこい(笑)
本作は単品販売、三つセット販売どちらもあります。
アサクリクロニクル:チャイナはGwGでも無料配信されたことがあります。
実績には関係ないけどチャレンジモード(ステージ数は少な目、あくまでおまけ)があったり、前述の通り三周は遊べるのでボリュームは良好。
私のように三作続けて遊んでいると、飽きがくるくらいにはボリュームがあって、深みもそんなもん(笑)
本腰を入れて攻略するメインディッシュの傍らで息抜きにプレイするサイドメニューって感じですね。
↓アサクリクロニクル:チャイナのステージ1
5分でクリアできるかな、とタイムアタックなノリでやってみたけど余裕で間に合わなかったため途中から(笑)
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