2017年06月17日
「水爆弾」とスクールミーティング 〜 Sands School 訪問B 〜 イギリス、Devon州にて
2007年5月23日(水)サンドスクール訪問3日目
この日も天気は快晴・・・というか「いい天気」を通り越してかなり暑かった。
午前中は、いつものように授業を見学させてもらい、「クッキング」の授業が入っていたので、私も一緒に作るのを手伝わせてもらった。
メニューは、「ペンネ・アラビア−タ」と、お菓子だった。
トマト缶を開けるのを手伝ったが、缶切りが日本のものと全く違っていて、初めは使い方がよく分からなかった。
ヘイゼルの相棒・ジョージョーがお手本を見せてくれて、何とかクリア。
全部で80人分くらいの食事を、だいたい3,4人くらいで作るようだ。(毎日違っていて、洗い物の時はもっと多い)
イタリアンの美味しそうな匂いが 漂い始め、あらかた準備ができたところで、私は、他の授業を見に行かせてもらった。
ちょうど、「GEN STUDIES」という授業で、「麻薬」に関するビデオを見ていた。その恐ろしさがどういったものか・・・という。
この授業では、他にも様々なテーマについて、映像を通して現実を知っていくらしい(エイズや環境問題など・・・)
先生が、時々説明を入れ、子ども達は真剣に見てうなずいている。
次は、「科学」の教室に行ってみた。これまた、みんな真剣な表情・・・。
先生が中心というよりも、子ども達と、先生との相互のやりとりで成り立っている。
しかし、途中で入り口とは反対のドアから、この前会ったチャーリーが水風船を片手に騒々しく入ってきた。
その途端、「チャーリー!!」と、先生・・・ではなく、子ども達みんなの叱責の声が飛んだ。
「ごめんごめん」と言って、彼はおとなしく座った。
そこから外に出ると、一人の少年が、大きな丸い板と角材を使って、木工仕事をしていた。
「これは何?」と質問してみたが・・・答えてくれているのだが、残念ながらよく分からなかった(・・;)
そこで話をしているちょうどその時、目の端に何か色のついたカタマリが映ったかと思う間もなく、私の腕に
「ビシャッ」っと当たった。
(何なんだ〜っっ)
「オーッッ!ソーリー!!」と、一人の少年がすっ飛んできた。
腕は少し濡れていたが、大したことはなかった。
そして、ひょっと見上げると隣りの建物の上にチャーリーが水風船を持って立っていた。
顔には笑顔をいっぱいに浮かべて・・・。
「水爆弾がくるぞ」
他にも何人かの子ども達が同じように水風船を持ってあちこちに散らばっていた。
これはこの近くにいたら被害に遭いそうだと、とりあえず、違う場所に避難した。
なんとも楽しそうだが、、、
これは、先生達はどう対処するのだろう?
もちろん、こういったことも「スクール・ミーティング」次第なのだった。
さて、もうすぐスクール・ミーティングということで、事務所ではなにやらたくさんの印刷物が印刷されていた。
実は、この週が終ると来週からはしばらく学校はお休みになる。確か「ミッド・ホリデー」とか言っていたような・・・一週間くらいの短いお休みだそうだ。
そして夏休みはちゃんとまた別に7・8月ほとんど2ヶ月いっぱいの長期休暇となり、子ども達はもちろん先生達も長い休暇に入るらしい。
その話を聞いた時、「日本では、夏休みも学校に仕事に行かなければいけなくて、お盆休みも一週間かせいぜい長くて2週間くらいだ」と言うと
「ええ?!一体子どもがいないのに何をするの?」とびっくりされ、
「そんな所にいないで、イギリスの学校にいらっしゃい」と、冗談まじりに言われた(^^ゞ
実際、ヨーロッパの学校の夏期休暇は、普通の学校でもかなり長い。
そして、学校だけでなく社会全体でキリスト教の「安息日」の教えの影響からか「休むべき時は休む」という主義を徹底している。
だからだろう、ヨーロッパの時間の流れは本当にゆっくりに感じる。そして、何より人との距離が小さく感じた。見知らぬ相手と、話を交わすのも、ごく当たり前のこと・・・。そう、その余裕を彼らは持っているのだと感じた。
さて、二時半になっていよいよみんながミーティングルームに集まってきた。みんな部屋のはしに座って 中心に向かって円をえがくような感じで、思い思いの姿勢でリラックスして座っていた。ほぼ全員が参加しているようだった。
ルールは以下の通り。
@意見がある人は挙手。指名権は議長にある。
Aその意見に対して意見がある場合も挙手。
B教師と生徒は同等な一票と挙手権を持つ。
C決定は多数決の場合もあれば、教師の話し合いに持ち越される場合もある。
そして、議長らしき一人の年長の男子生徒が司会役を務め、会は進められていった。
正直なところ、英語力の関係で、電話の次に苦手なのが、この「会議(ミーティング)」だった。
状況判断ができないからだ。しかし、一生懸命聞いて、所々は何とか理解できた。
それにしてもみんな積極的なこと!挙手の数が多くて、議長が指名を選ぶのに苦労している。
休み前のちょっとした管理の話や、その前に行くキャンプに関してなど・・・教師からも、生徒からも様々な議題が出された。
そしてしばらくたって「水爆弾」のことが出てきた。(やっぱり出た!)
実質的に被害をこうむっているのは、近くの科学棟だった。
最初に意見を言った人は「みんなの迷惑になるから止めてほしい」というもの。
「EXAM(試験)勉強している人にとって特に迷惑」というものもあった。
当事者のチャーリー達の意見は、
「でもこんなに暑いんだから少しくらいいいだろう」
「場所を変えれば問題ないんじゃない?」
中間的意見としては、「森の向こうのグラウンドでやったら?」
「グラウンドが水浸しになるのも困るよ」などなど・・・。
結局、みんなの意見はまとまらす、先生同士の話し合いに持ち越されたようだ。
最後に、今日印刷されていた白い何枚かのプリントが配られ、説明を受け、会は終った。
みんなはそれぞれ、バラバラに散っていき、学校中の様々な場所でその白いプリントと真剣な表情で向き合っていた。
私も見せてもらったが・・・実はこれは「先生に関する評価」だった。
授業を受けている全ての教師について10問ほどの問いがあり、それぞれBad(悪い)からGood(良い)までの5段階の中からの選択性と、別に「コメント・アドバイス」という空欄があって、自由に書けるようになっている。
内容は・・・というと、
「授業の中で、ショーンはみんなを平等に扱いますか?」
「ショーンは、あなたの質問を聞いたり、答えたりしてくれますか?」
「授業の中でショーンの知識についてどのように感じますか」
などなど・・・
「どれくらいの頻度で、これをやるの?」とショーンに尋ねると、
「年に一度」と答えが返ってきた。
思わず「年に一度!」とリピートしてしまった。
(じゃあ、確率としてはすごい時に来たんだ・・・)
この学校の光景として、仲間同士で教えあっている様子や、教師と子ども達が友だちのように親しく色々質問したりしている姿がほほえましいのだが、
この時も、初めてこのシートと向き合っている一番下のグループの子達が
「ねえ、これはどういうふうに書けばいいの?」と質問している様子があちこちで見られた。
子ども達は、「友だちのように」接しながら、ちゃんと教師のことを尊敬し、認めているのだ。
大きな声で叱らなくても、「信頼関係」が成り立ち、「なぜそれをしてはいけないのか」みんなで考え、意見を出し合い、話し合う中で、子ども達はみんな納得する。
「スクール・ミーティング」によって自治が成り立つには、お互いの「信頼関係」が不可欠であり、意思疎通が可能な、小さな学校だからこそできることだろうと思う。そして、先生達の「人間力」も、、、
(つづく)
実際の旅に役立つ情報編へは、こちら
ヨーロッパの自由学校訪問記 〜情報編〜
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午前中は、いつものように授業を見学させてもらい、「クッキング」の授業が入っていたので、私も一緒に作るのを手伝わせてもらった。
メニューは、「ペンネ・アラビア−タ」と、お菓子だった。
トマト缶を開けるのを手伝ったが、缶切りが日本のものと全く違っていて、初めは使い方がよく分からなかった。
ヘイゼルの相棒・ジョージョーがお手本を見せてくれて、何とかクリア。
全部で80人分くらいの食事を、だいたい3,4人くらいで作るようだ。(毎日違っていて、洗い物の時はもっと多い)
イタリアンの美味しそうな匂いが 漂い始め、あらかた準備ができたところで、私は、他の授業を見に行かせてもらった。
ちょうど、「GEN STUDIES」という授業で、「麻薬」に関するビデオを見ていた。その恐ろしさがどういったものか・・・という。
この授業では、他にも様々なテーマについて、映像を通して現実を知っていくらしい(エイズや環境問題など・・・)
先生が、時々説明を入れ、子ども達は真剣に見てうなずいている。
次は、「科学」の教室に行ってみた。これまた、みんな真剣な表情・・・。
先生が中心というよりも、子ども達と、先生との相互のやりとりで成り立っている。
しかし、途中で入り口とは反対のドアから、この前会ったチャーリーが水風船を片手に騒々しく入ってきた。
その途端、「チャーリー!!」と、先生・・・ではなく、子ども達みんなの叱責の声が飛んだ。
「ごめんごめん」と言って、彼はおとなしく座った。
そこから外に出ると、一人の少年が、大きな丸い板と角材を使って、木工仕事をしていた。
「これは何?」と質問してみたが・・・答えてくれているのだが、残念ながらよく分からなかった(・・;)
そこで話をしているちょうどその時、目の端に何か色のついたカタマリが映ったかと思う間もなく、私の腕に
「ビシャッ」っと当たった。
(何なんだ〜っっ)
「オーッッ!ソーリー!!」と、一人の少年がすっ飛んできた。
腕は少し濡れていたが、大したことはなかった。
そして、ひょっと見上げると隣りの建物の上にチャーリーが水風船を持って立っていた。
顔には笑顔をいっぱいに浮かべて・・・。
「水爆弾がくるぞ」
他にも何人かの子ども達が同じように水風船を持ってあちこちに散らばっていた。
これはこの近くにいたら被害に遭いそうだと、とりあえず、違う場所に避難した。
なんとも楽しそうだが、、、
これは、先生達はどう対処するのだろう?
もちろん、こういったことも「スクール・ミーティング」次第なのだった。
さて、もうすぐスクール・ミーティングということで、事務所ではなにやらたくさんの印刷物が印刷されていた。
実は、この週が終ると来週からはしばらく学校はお休みになる。確か「ミッド・ホリデー」とか言っていたような・・・一週間くらいの短いお休みだそうだ。
そして夏休みはちゃんとまた別に7・8月ほとんど2ヶ月いっぱいの長期休暇となり、子ども達はもちろん先生達も長い休暇に入るらしい。
その話を聞いた時、「日本では、夏休みも学校に仕事に行かなければいけなくて、お盆休みも一週間かせいぜい長くて2週間くらいだ」と言うと
「ええ?!一体子どもがいないのに何をするの?」とびっくりされ、
「そんな所にいないで、イギリスの学校にいらっしゃい」と、冗談まじりに言われた(^^ゞ
実際、ヨーロッパの学校の夏期休暇は、普通の学校でもかなり長い。
そして、学校だけでなく社会全体でキリスト教の「安息日」の教えの影響からか「休むべき時は休む」という主義を徹底している。
だからだろう、ヨーロッパの時間の流れは本当にゆっくりに感じる。そして、何より人との距離が小さく感じた。見知らぬ相手と、話を交わすのも、ごく当たり前のこと・・・。そう、その余裕を彼らは持っているのだと感じた。
さて、二時半になっていよいよみんながミーティングルームに集まってきた。みんな部屋のはしに座って 中心に向かって円をえがくような感じで、思い思いの姿勢でリラックスして座っていた。ほぼ全員が参加しているようだった。
ルールは以下の通り。
@意見がある人は挙手。指名権は議長にある。
Aその意見に対して意見がある場合も挙手。
B教師と生徒は同等な一票と挙手権を持つ。
C決定は多数決の場合もあれば、教師の話し合いに持ち越される場合もある。
そして、議長らしき一人の年長の男子生徒が司会役を務め、会は進められていった。
正直なところ、英語力の関係で、電話の次に苦手なのが、この「会議(ミーティング)」だった。
状況判断ができないからだ。しかし、一生懸命聞いて、所々は何とか理解できた。
それにしてもみんな積極的なこと!挙手の数が多くて、議長が指名を選ぶのに苦労している。
休み前のちょっとした管理の話や、その前に行くキャンプに関してなど・・・教師からも、生徒からも様々な議題が出された。
そしてしばらくたって「水爆弾」のことが出てきた。(やっぱり出た!)
実質的に被害をこうむっているのは、近くの科学棟だった。
最初に意見を言った人は「みんなの迷惑になるから止めてほしい」というもの。
「EXAM(試験)勉強している人にとって特に迷惑」というものもあった。
当事者のチャーリー達の意見は、
「でもこんなに暑いんだから少しくらいいいだろう」
「場所を変えれば問題ないんじゃない?」
中間的意見としては、「森の向こうのグラウンドでやったら?」
「グラウンドが水浸しになるのも困るよ」などなど・・・。
結局、みんなの意見はまとまらす、先生同士の話し合いに持ち越されたようだ。
最後に、今日印刷されていた白い何枚かのプリントが配られ、説明を受け、会は終った。
みんなはそれぞれ、バラバラに散っていき、学校中の様々な場所でその白いプリントと真剣な表情で向き合っていた。
私も見せてもらったが・・・実はこれは「先生に関する評価」だった。
授業を受けている全ての教師について10問ほどの問いがあり、それぞれBad(悪い)からGood(良い)までの5段階の中からの選択性と、別に「コメント・アドバイス」という空欄があって、自由に書けるようになっている。
内容は・・・というと、
「授業の中で、ショーンはみんなを平等に扱いますか?」
「ショーンは、あなたの質問を聞いたり、答えたりしてくれますか?」
「授業の中でショーンの知識についてどのように感じますか」
などなど・・・
「どれくらいの頻度で、これをやるの?」とショーンに尋ねると、
「年に一度」と答えが返ってきた。
思わず「年に一度!」とリピートしてしまった。
(じゃあ、確率としてはすごい時に来たんだ・・・)
この学校の光景として、仲間同士で教えあっている様子や、教師と子ども達が友だちのように親しく色々質問したりしている姿がほほえましいのだが、
この時も、初めてこのシートと向き合っている一番下のグループの子達が
「ねえ、これはどういうふうに書けばいいの?」と質問している様子があちこちで見られた。
子ども達は、「友だちのように」接しながら、ちゃんと教師のことを尊敬し、認めているのだ。
大きな声で叱らなくても、「信頼関係」が成り立ち、「なぜそれをしてはいけないのか」みんなで考え、意見を出し合い、話し合う中で、子ども達はみんな納得する。
「スクール・ミーティング」によって自治が成り立つには、お互いの「信頼関係」が不可欠であり、意思疎通が可能な、小さな学校だからこそできることだろうと思う。そして、先生達の「人間力」も、、、
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