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2020年04月07日

国木田独歩の「武蔵野」の相関関係について3

3 小説の場面に適用する 

表1 武蔵野の春、夏、秋、冬

A 武蔵野に散歩する人は、道に迷うことを苦にしてはならない。どの路でも足の向くほうへゆけばかならずそこに見るべく、聞くべく、感ずべき獲物がある。武蔵野の美はただその縦横に通ずる数千条の路を当てもなく歩くことによって始めて獲えられる。意味3 思考の流れ 誠実さ1、人工知能 同感2

B 春、夏、秋、冬、朝、昼、夕、夜、月にも、雪にも、風にも、霧にも、霜にも、雨にも、時雨にも、ただこの路をぶらぶら歩いて思いつきしだいに右し左すれば、随処に吾らを満足さするものがある。 
意味3 思考の流れ 誠実さ1、人工知能 同感2

C これがじつにまた、武蔵野第一の特色だろうと自分はしみじみ感じている。武蔵野を除いて日本にこのような処がどこにあるか。北海道の原野にはむろんのこと、奈須野にもない、そのほかどこにあるか。林と野とがかくもよく入り乱れて、生活と自然とがこのように密接している処がどこにあるか。じつに武蔵野にかかる特殊の路のあるのはこのゆえである。意味3 思考の流れ 誠実さ1、人工知能 同感2

D されば君もし、一の小径を往き、たちまち三条に分かる処に出たなら困るに及ばない、君の杖を立ててその倒れたほうに往きたまえ。あるいはその路が君を小さな林に導く。林の中ごろに到ってまた二つに分かれたら、その小なる路を撰んでみたまえ。意味3 思考の流れ 誠実さ1、人工知能 同感2

E あるいはその路が君を妙な処に導く。これは林の奥の古い墓地で苔むす墓が四つ五つ並んでその前にすこしばかりの空地があって、その横のほうに女郎花など咲いていることもあろう。頭の上の梢こずえで小鳥が鳴いていたら君の幸福である。意味3 思考の流れ 誠実さ1、人工知能 同感1

花村嘉英(2020)「国木田独歩の『武蔵野』の相関関係について」より

国木田独歩の「武蔵野」の相関関係について2

2 相関の作り方

 シナジーのメタファーのために作成しているデータベースは、データの種類で見ると、俗に言う測れないカテゴリーデータからなる。数量データといわれる身長、体重、気温、湿度などとは異なり、値が連続ではなく飛び飛びで離散的となる。前野(2012)によると、カテゴリーデータは、対象の性質を表したり、現象や区別を表したりする。性別、好き、嫌い、うまい、まずい、おもしろいなどあるものの性質や現象が示される。
 相関とは原因から結果が生じ、それが互いに関係しあっていることをいう。また、相関関係があるとは、ある測定値の変化に対して他の測定値も変化する場合に使われる。相関の強さは、ピアソンの相関係数で表す。合わせて共分散という統計用語が重要になる。 

(1) 共分散の公式
共分散=[(xの各データ−xの平均値)x(yの各データ−yの平均値)]の和/データ数
   =[(xの偏差)x(yの偏差)]の和/データ数
   = xとyの偏差積の和/データ数

正の相関があると0より大きく、負の相関があると0より小さくなる。

(2) 相関係数(ピアソン)
相関係数=XYの偏差平方和/√(Xの偏差平方和)x(Yの偏差平方和)

「武蔵野」の問題解決の場面を使用して、簡単な例を見てみよう。

花村嘉英(2020)「国木田独歩の『武蔵野』の相関関係について」より

国木田独歩の「武蔵野」の相関関係について1

1 先行研究

 武蔵野の風景を描写した「武蔵野」の一場面のデータベースを使用し、既存の研究と照合すると、執筆時の国木田独歩(1871−1908)は、誠実な眼で天地自然の存在を見出し、人物や自然に見る存在感を指摘している。また、人物描写は、明治時代に特有でしかも失意の人や慎ましい人、独歩と同じことを感じている人に向けられた。
 この小論では、自作のデータベースを使用して相関関係を考察する。言語の認知のカラムは、思考の流れ、即ち、誠実さ1ある、2ない、情報の認知のカラムは、人工知能 同感1ある、2ないである。 

花村嘉英(2020)「国木田独歩の『武蔵野』の相関関係について」より

2020年03月31日

心理学統計の検定を用いて志賀直哉の「城の崎にて」を考える7

3 まとめ

 志賀直哉の「城の崎にて」の作者と鼠の努力についてデータベースから心理学統計による評価をしてみると、差がないことが分かった。

参考文献

大山正・中島義明 実験心理学への招待 サイエンス社 2012
実吉綾子 心理学統計入門 技術評論社 2013
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方−トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 中国日语教学研究会上海分会論文集(2017)華東理工大学出版社 2018 241-249 
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默 ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
花村嘉英 川端康成の「雪国」から見えてくるシナジーのメタファーとは−「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日语教学研究会上海分会論文集(2018)華東理工大学出版社 2019 276-283
花村嘉英 志賀直哉の「城の崎にて」の執筆脳について 2020
志賀直哉 城の崎にて 新潮文庫 2004

心理学統計の検定を用いて志賀直哉の「城の崎にて」を考える6

1 最初は作者と鼠とで努力に差がないと予測する。両者の平均値を取ると、直哉 0.9、鼠 1.2になる。この差は誤差の可能性がある。
2 具体度の1、2は独立変数であり、それにともなう努力の大小は、従属変数になる。
3 独立変数そのものの1、2が要因で、独立変数の実際の値である努力が水準になる。
4 ここでは、どちらの水準も同じ標本からデータを集めているため、具体度という要因は、参加者内要因になる。
5 得られた有意確率(p値)を有意水準と比較する。危険率は通常5%未満のため、ここではt検定を採用する。 
6 t検定では、二つの平均の差を表す統計量(t値)、データの規模を表す自由度(df)、p値(p-value)を説明する。
[満足度のt検定]
直哉 0.9、鼠 1.2、よってt値=0.3。
自由度は、独立した標本の個数から1引いたものである。よってdf=8。
p値は0.2にする。ここでは5%未満のため、対立仮説を採用し有意な差があるとする。

花村嘉英(2020)「心理学統計の検定を用いて志賀直哉の『城の崎にて』を考える」より 

心理学統計の検定を用いて志賀直哉の「城の崎にて」を考える5

表2 具体度

 今自分にあの鼠のようなことが起こったら自分はどうするだろう。自分はやはり鼠と同じような努力をしはしまいか。自分は自分の怪我の場合、それに近い自分になった事を思わないではいられなかった。→小さい努力1、大きい努力2 直哉1、鼠2

 自分はできるだけの事をしようとした。自分は自分で病院を決めた。それへ行く方法を指定した。もし医者が留守で、行って直ぐ手術の用意ができないと困ると思って電話を先にかけて貰う事などを頼んだ。→強い努力2、努力なし0 直哉2、鼠0

 半分意識を失った状態で一番大切な事だけによく頭の働いた事は自分でも後から不思議に思った位である。しかもこの傷が致命的なものかどうかは自分の問題だった。然し、致命的なものかどうかを問題としながら、ほとんど死の恐怖に襲われなかったのも自分では不思議であった。→強い努力2、努力なし0 直哉2、鼠0

 「フェータルなものか、どうか?医者は何といっていた?」こうそばにいた友が訊いた。「フォータルな傷じゃないそうだ」こう云われた。こう云われると自分は然し急に元気づいた。亢奮から自分は非常に快活になった。→小さい努力1、努力なし0 直哉1、鼠0

 フェータルなものだと若し聞いたら自分はどうだったろう。その時分は一寸想像できない。自分は弱ったろう。然し普段考えている程、死の恐怖に自分は襲われなかったろうという気がする。そしてそういわれても尚、自分は助かろうと思い、何かしらの努力をしたろうという気がする。それは、鼠の場合と、そう変わらないものだったに相違ない。→強い努力2、強い努力2 直哉2、鼠2

花村嘉英(2020)「心理学統計の検定を用いて志賀直哉の『城の崎にて』を考える」より 

心理学統計の検定を用いて志賀直哉の「城の崎にて」を考える4

2.3 「城の崎にて」の登場人物間で理解度が違う 

 「城の崎にて」は、作者が但馬・城の崎に赴き、風景描写をした短編である。ここでは、この小論の研究テーマ、直哉と鼠の努力に関し違いがあるかどうかについて作成したデータベースを基に考察していく。 

解答 直哉と鼠の努力に違いがない

表1 具体度

 「一の湯」の前から小川は往来の真ん中をゆるやかに流れ、円山川へ入る。ある所まで来ると橋だの岸だのに人が立って何か川の中の物を見ながら騒いでいた。それは大きな鼠を川へ投げ込んだのを見ているのだ。鼠は一生懸命に泳いで逃げようとする。→努力なし0、強い努力2 直哉0、鼠2

 鼠には首の所に七寸ばかりの魚串が貫してあった。頭の上に三寸程、咽喉の下に三寸程それが出ている。鼠は石垣へ這い上がろうとする。子供がニ三人、四十位の車夫が一人、それへ石を投げる。却々当たらない。カチッカチッと石垣に当たって跳ね返った。→努力なし0、強い努力2 直哉0、鼠2

 見物人は大声で笑った。鼠は石垣の間にようやく前足をかけた。然し這入ろうとすると魚串が直ぐにつかえた。そして又水へ落ちる。鼠はどうかして助かろうとしている。顔の表情は人間にわからなかったが動作の表情に、それが一生懸命である事がよくわかった。→小さい努力1、強い努力2 直哉1、鼠2

 鼠は何処かへ逃げこむことが出来れば助かると思っているように、長い串を刺されたまま又川の真ん中の方へ泳ぎ出た。子供や車夫は益々面白がって石を投げた。傍の洗場の前で餌を漁っていた二三羽の家鴨が石が飛んでくるのでびっくりし、首を伸ばしてきょろきょろとした。→小さい努力0、強い努力2 直哉0、鼠2

 スポッ、スポッと石が水へ投げ込まれた。家鴨は頓狂な顔をして首をのばしたまま、鳴きながら、忙しく足を動かして上流の方へ泳いでいった。自分は鼠の最期を見る気がしなかった。→努力なし0、努力なし0 直哉0、鼠0

花村嘉英(2020)「心理学統計の検定を用いて志賀直哉の『城の崎にて』を考える」より 

心理学統計の検定を用いて志賀直哉の「城の崎にて」を考える3

2.2 実験計画

【研究テーマ】 
質問 直哉と鼠の努力に違いがある。
帰無仮説 直哉と鼠の努力に関し違いがない。 
対立仮説 直哉と鼠の努力に関し違いがある。 
【実験計画】
独立変数 実験や調査をする人が仮説を検証するために使用する変数。原因と結果でいうと原因である。
従属変数 独立変数の操作に応じて変化すると考えられる変数。原因と結果でいうと結果である。
【要因と水準】
要因 実験者が使用する変数。独立変数そのもの。
水準 実験者が使用する種類。独立変数が実際にとる値。
【参加者間要因と参加者内要因】
参加者間要因 水準のデータが異なる標本から集められる場合。
参加者内要因 水準のデータが同じ標本から集められる場合。
【有意確率】
帰無仮説を前提としたときに、誤差から偶然ある程度の差が標本に生じる確率のこと。危険率とかP値という。また、誤差には、本当はないのに誤って誤差があるとする第一種と誤差があるのに誤ってないとする第二種とがある。実吉(2013)では、5%水準を基準にしている。

花村嘉英(2020)「心理学統計の検定を用いて志賀直哉の『城の崎にて』を考える」より 

心理学統計の検定を用いて志賀直哉の「城の崎にて」を考える2

2 心理学統計

 心理学統計では、心の働きを数値化しながら客観性を計り、集計や分析を試みる。心を測定する時は、様々な要因がデータに含まれるため、データには誤差が付き物である。そのため、統計学により誤差を取り除き真の値を求めていく必要がある。そうすると、限られた人数のデータから人間一般に共通する心の働きも推測可能になる。

2.1 有意性検定

 科学では全般的に仮説を立てて検証する方法が使われる。実吉(2013)によると、検定の際に仮説が成り立つかどうかは、作成したデータから決めていく。検定の対象は、そこに有意性の差があるかどうかである。例えば、男女の性差で満足度に差があるのかどうか、または不安度に差があるのかどうか考える。こうした問題に対してデータを集めながら検定すると、解答が見えてくる。

【検定の流れ】
 帰無仮説と対立仮説を立てる → 独立変数と従属変数を具体的に決め、実験計画を立てる → データを取る → 実験計画に応じた統計検定を行う → 得られた有意確率(p値)を有意水準と比較する → 帰無仮説の棄却、採択を決定する

 ここで、帰無仮説とは、比較する数値間に差がないという仮説である。対立仮説は比較する数値間に差があるとする仮説である。検定では、まず帰無仮説が正しいことを前提に検討され、帰無仮説が成り立たなければ、それを棄てて対立仮説に移り、差があるという結論にする。つまり背理法による命題の証明である。

花村嘉英(2020)「心理学統計の検定を用いて志賀直哉の『城の崎にて』を考える」より 

心理学統計の検定を用いて志賀直哉の「城の崎にて」を考える1

1 先行研究との関係

 データベースを作成ながら購読脳と執筆脳を分析するシナジーのメタファーの研究も次第に安定してきている。これまでバランスを意識して二個二個のルールに基づき多くの組み合わせを作ってきた。統計についても、バラツキ、相関関係、多変量分析と進み、今回の心理学統計を含めれば、バラツキと相関、多変量と心理という組み合わせができる。この小論では、実吉(2013)の心理学統計の検定の手法に従い、志賀直哉の「城の崎にて」を使用して直哉と鼠の努力に関し類似しているかどうか考えていく。 

花村嘉英(2020)「心理学統計の検定を用いて志賀直哉の『城の崎にて』を考える」より 
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プロフィール
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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