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2020年03月29日

島崎藤村の「千曲川のスケッチ」に見る相関関係について6

5 まとめ

 島崎藤村の「千曲川のスケッチ」のデータベースのうち、言語の認知のカラム、批判的思考の1ある、2なしと、情報の認知のカラム、人工知能(共感)で1ある、2なしは、負の強い相関関係になることがわかった。

参考文献
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風舎 2005
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社 2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默 ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
前野昌弘 回帰分析超入門 技術評論社 2012
島崎藤村 千曲川のスケッチ 新潮文庫 2004

島崎藤村の「千曲川のスケッチ」に見る相関関係について5

表2 計算表 
A 2 3 5
偏差 -0.5 0.5 0
偏差2 0.25 0.25 0.5
B 5 0 5
偏差 2.5 2.5 5
偏差2 6.25 6.25 12.5
AB偏差の積 -1.25 -1.25 -2.5

◆相関係数は、次の公式で求めることができる。

相関係数=[(A-Aの平均値)x(B-Bの平均値)]の和/√(A-Aの平均値)2の和x(B-Bの平均値)2の和

上記計算表を代入すると、

相関係数 = -2.5/√0.5 x 12.5 = -2.5/2.5 = -1

従って、負の強い相関があるといえる。

数字の意味を言葉で確認しておこう。 

-0. 7≦r≦-1.0 強い負の相関がある
-0.4≦r≦-0.7 やや負の相関がある
0≦r≦-0.4 ほとんど負の相関がない
0≦r≦0.2 ほとんど正の相関がない
0.2≦r≦0.4 やや正の相関がある
0.4≦r≦0.7 かなり正の相関がある
0.7≦r≦1 強い正の相関がある

花村嘉英(2020)「島崎藤村の『千曲川のスケッチ』に見る相関関係について」

島崎藤村の「千曲川のスケッチ」に見る相関関係について4

A 言語の認知(批判的思考):1ある、2ない → 5、0
B 人工知能(共感):1ある、2ない → 3、2
 
◆A、Bそれぞれの平均値を出す。
Aの平均:(5 + 0)÷ 2 = 2.5
Bの平均:(3 + 2)÷ 2 = 2.5
◆A、Bそれぞれの偏差を計算する。偏差=各データ−平均値 
Aの偏差:(5 – 2.5)、(0 – 2.5)= 2.5、-2.5
Bの偏差:(3 – 2.5)、(2 – 2.5)= 0.5、-0.5
◆A、Bの偏差をそれぞれ2乗する。
Aの偏差2乗 = 6.25、6.25
Bの偏差2乗 = 0.25、0.25
◆AとBの偏差同士の積を計算する
(Aの偏差)x(Bの偏差)= -1.25、-1.25
◆AとBを2乗したものを合計する。
Aの偏差を2乗したものの合計 = 6.25 + 6.25 = 12.5
Bの偏差を2乗したものの合計 = 0.25 + 0.25 = 0.5
◆Aの偏差xBの偏差の合計を計算する。-1.25 +( -1.25) = -2.5

花村嘉英(2020)「島崎藤村の『千曲川のスケッチ』に見る相関について」

島崎藤村の「千曲川のスケッチ」に見る相関関係について3

3 小説の場面に適用する

表1 山に住む人々

A こういう土地だから、良い教育家に成ろうと思う青年の多いのも不思議は無い。種々さまざまな家の事情からして遠く行かれないような学問好きな青年は、多く国に居て身を立てることを考える。
意味3 1、人工知能 2

B 長野あたりから新聞記者を聘へいして講演を聴くなぞはここらでは珍しくない。何か一芸に長じたものと見れば、そういう人から新智識を吸集しようとする。小諸辺のことで言ってみても、名士先生を歓迎する会は実に多い。あだかも昔の御関所のように、そういう人達の素通りを許さないという形だ。
意味3 1、人工知能 1

C 御蔭で私もここへ来てから種々いろいろな先生方の話を拝聴することが出来た。故福沢諭吉氏も一度ここを通られて、何か土産話を置いて行かれたとか。その事は私は後で学校の校長から聞いた。朝鮮亡命の客でよく足を留めた人もある。旅の書家なぞが困って来れば、相応に旅費を持たせて立たせるという風だ。概して、軍人も、新聞記者も、教育家も、美術家も、皆な同じように迎えらるる傾きがある。
意味3 1、人工知能 1

D こうした熱心な何もかも同じように受入れようとする傾きは、一方に於いて一種重苦しい空気を形造っている。強しいて言えば、地方的単調……その為には全く気質を異にする人でも、同じような話しか出来ないようなところがある。意味3 1、人工知能 2

E それから佐久あたりには殊に消極的な勇気に富んでいる人を見かける。ここには極くノンキな人もいるが又非常に理窟ッぽい人もいる。意味3 1、人工知能 2

花村嘉英(2020)「島崎藤村の『千曲川のスケッチ』に見る相関関係について」

島崎藤村の「千曲川のスケッチ」に見る相関関係について2


2 相関の作り方

 シナジーのメタファーのために作成しているデータベースは、データの種類で見ると、俗に言う測れないカテゴリーデータからなる。数量データといわれる身長、体重、気温、湿度などとは異なり、値が連続ではなく飛び飛びで離散的となる。前野(2012)によると、カテゴリーデータは、対象の性質を表したり、現象や区別を表したりする。性別、好き、嫌い、うまい、まずい、おもしろいなどあるものの性質や現象が示される。
 相関とは原因から結果が生じ、それが互いに関係しあっていることをいう。また、相関関係があるとは、ある測定値の変化に対して他の測定値も変化する場合に使われる。相関の強さは、ピアソンの相関係数で表す。合わせて共分散という統計用語が重要になる。 

(1) 共分散の公式
共分散=[(xの各データ−xの平均値)x(yの各データ−yの平均値)]の和/データ数
   =[(xの偏差)x(yの偏差)]の和/データ数
   = xとyの偏差積の和/データ数

正の相関があると0より大きく、負の相関があると0より小さくなる。

(2) 相関係数(ピアソン)
相関係数=XYの偏差平方和/√(Xの偏差平方和)x(Yの偏差平方和)

「千曲川のスケッチ」の問題解決の場面を使用して、簡単な例を見てみよう。

花村嘉英(2020)「島崎藤村の『千曲川のスケッチ』に見る相関関係について」

島崎藤村の「千曲川のスケッチ」に見る相関関係について1

1 先行研究

 信濃の自然や文化を写生した「千曲川のスケッチ」のある一場面のデータベースを使用し、既存の研究と照合すると、執筆時の島崎藤村(1874−1943)には、「若菜集」から始まる文体の確立による思考の流れが確認できる。 
 この小論では、自作のデータベースを使用して文理の相関関係を考察する。言語の認知のカラムは、思考の流れ、即ち、課題や問題が与えられたときに生じる一連の精神活動で、周囲の状況に応じた批判的思考が1ある、2ない、及び情報の認知のカラムは、人工知能(共感)が1ある、2ないである。

花村嘉英(2020)「島崎藤村の『千曲川のスケッチ』に見る相関について」

2019年05月27日

リスク社会論からトップダウンで作家の執筆脳を考える−中島敦の「山月記」を交えて9

6 まとめ

 作家の執筆脳の研究をマクロに調節するために、ボトムアップ型の作家個人を比較するだけでなく、社会学、特にリスク社会論に覆われた危機管理者としての集団からなるトップダウン型のボーダーラインについて考察した。東西南北の比較、人文と社会の共生、購読脳と執筆脳からなるLの分析といった研究項目を用いて、シナジーのメタファーの研究の全体像の中で中島敦の執筆脳がどこに位置しているのかわかるであろう。今後も、作家個人の研究と危機管理者としての集団でいう脳の活動を研究のテーマにして日々努力を続けていく。

参考文献

ジグムント・バウマン、ティム・メイ 社会学の考え方 ちくま文庫 2016
橋爪大三郎、大澤真幸他 社会学講義 ちくま新書 2016
ウルリッヒ・ベック 世界リスク社会論 島村賢一訳 平凡社 2003年
ウルリッヒ・ベック 世界リスク社会 山本啓訳 法制大学出版局 2014年
日本成人病予防協会監修 健康管理士一般指導員受験対策講座3 ヘルスケア出版 2014
花村嘉英 『計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?』新風舎 2005 
花村嘉英 『从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む』華東理工大学出版社2015
花村嘉英 『日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで』 南京東南大学出版社 2017 
花村嘉英「シナジーのメタファーの作り方−トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖」『中国日語教学研究会上海分会論文集(2017)』華東理工大学出版社 241-249 
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析作品−ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018 
中島敦 山月記 青空文庫 1998 
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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