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2014年02月13日

葉理

葉理(ようり、ラミナ、英: lamination)とは、礫や砂、泥の粒子から構成される最小単位で表す層のこと。葉層とも。



目次 [非表示]
1 概要
2 参考文献
3 関連項目
4 外部リンク


概要[編集]

肉眼で識別することが可能な最小の層構造を示し、一般には波状や筋状などの縞模様、微地形が観察され、堆積した環境を推定することができる。類似した葉理が重なり単層(bed)を形成し、単層が何枚か重なり地層が形成される。一般的には堆積物の供給が休止したり、環境の変化があると単層となり、その単層の面(層理面)が地質境界となる。

また、堆積構造とは地層(単層)の内部構造のことであり、葉理の状況から推察される。
平行葉理葉理の成す面構造(葉理面)が単層と平行(層理面と平行)していること。斜交葉理葉理の成す面構造(葉理面)が単層と斜交(層理面と斜交)していること。未固結な状態時に風や水によって粒子が流されたことが判定できる。堆積層序に対して斜交するため偽層ともいう。
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砕屑岩

砕屑岩(さいせつがん、英: clastic rock[1])は、地表の岩石から風化・侵食によって生じた粒子(砕屑物)によって構成されている堆積岩である。特に、火山由来の粒子が堆積してできたもの(凝灰岩など)は、火山砕屑岩(火砕岩)と呼ぶ。

砂岩と泥岩には、粒径のわずかな違いから、葉理と呼ばれる堆積構造が発達することが多い。一般に、堆積に水が関与している砕屑物の粒径は、堆積時の水のエネルギーの大小を反映するとされている。そのため、砕屑岩の研究においては砕屑物の粒径の変化、葉理、その他さまざまな堆積構造の発達の有無が重視される。



目次 [非表示]
1 区分
2 脚注
3 参考文献
4 関連項目
5 外部リンク


区分[編集]

砕屑岩は砕屑物の粒径により、大きく礫岩・砂岩・泥岩に区分される。
礫岩 - 砕屑物の平均粒径が2mm以上のもの。
砂岩 - 砕屑物の平均粒径が2〜1/16mmのもの。
泥岩 - 砕屑物の平均粒径が1/16mm以下のもの。 シルト岩 - 泥岩の中で平均粒径が1/256mm以上1/16mm以下のもの。
粘土岩 - 泥岩の中で平均粒径が1/256mm以下のもの。


礫岩のうち、礫が角張っているものは角礫岩という。また、泥岩が剥離性(はくりせい)をもつようになったものを頁岩や粘板岩という。

二酸化ケイ素

二酸化ケイ素(にさんかケイそ, 英: silicon dioxide)はケイ素の酸化物で、地殻を形成する物質のひとつとして重要である。組成式はSiO2。シリカ(英: silica)、無水ケイ酸とも呼ばれる。圧力、温度の条件により、多様な結晶相(結晶多形)が存在する。



目次 [非表示]
1 性質
2 利用
3 反応
4 埋蔵量
5 毒性
6 脚注
7 参考文献
8 関連項目
9 外部リンク


性質[編集]

結晶は共有結合結晶であり、ケイ素原子を中心とする正四面体構造が酸素原子を介して無数に連なる構造をしている。

二酸化ケイ素の結晶多形の中で代表的なものとして、石英(英: quartz、水晶)、鱗珪石(英: tridymite、トリディマイト)、クリストバライト(英: cristobalite)、コーサイト(英: coesite)、 スティショバイト(英: stishovite)、ザイフェルト石(英: Seifertite)、衝撃石英(英: Shocked quartz)などがある。

温度と圧力を変化させた場合のシリカ鉱物(SiO2)の安定関係が次第に明らかになってきた。常温常圧下ではα石英が安定だが、573度でβ石英に転移する。さらに温度を上げると、870度でトリディマイト、さらにクリストバライトとなり、融解に到る。温度ではなく圧力を上げていくと、500度から800度の場合は、3.5GPaでコーサイト(1953年に合成)に、10GPaでスティショバイト(1961年に合成)に転移することが分かった。

ケイ素原子は非常な高圧下では6個の酸素原子が配位した八面体構造をとることもある。1961年にソ連のS.M.StishovとS.V.Popovaが1200℃、160kbarという条件下で人工的な合成に成功したスティショバイトである。これは隕石が地表に衝突した際にも生成する。例えば、バリンジャー隕石孔から発見されている。遷移層から下部マントル程度の高圧条件下ではシリカはスティショバイト構造をとると考えられている[1][2][3]。

利用[編集]

電球の内側に、眩しさを防ぎ光を拡散させる目的で塗料として塗られる。また、無機ガラスの主成分である。タイヤのゴムに、補強充填剤としてシリカが配合される。

また、「無水ケイ酸」などと呼ばれ食品添加物や化粧品などに用いられる。これについてはシリカ#食品添加物としての利用およびシリカ#化粧品・医薬品への添加を参照のこと。

反応[編集]

二酸化ケイ素はフッ化水素ガス (HF) やフッ化水素酸 (aq. HF) と反応し、それぞれフッ化ケイ素 (SiF4)、ヘキサフルオロケイ酸 (H2SiF6) を生ずる。
SiO2 + 4HF(gas) → SiF4 + 2H2OSiO2 + 6HF(aq) → H2SiF6 + 2H2O
また、固体の水酸化ナトリウム (NaOH) と熱することによりケイ酸ナトリウム (Na2SiO3) が生成する。ケイ酸ナトリウムに水を加えて熱すると水ガラスとなる。
SiO2 + 2NaOH → Na2SiO3 + H2O
埋蔵量[編集]

二酸化ケイ素(シリカ)は石英、珪砂、珪石などの形で産出する。天然の石英の資源量には限りがあるが、工業的には代わりに人工石英がもちいられる[4]。珪砂や珪石の資源量は非常に潤沢であり、工業用の純度の高いものも世界中に広く分布する[5]。

成熟した砂漠の砂にも多く含まれる。砂漠#砂の組成を参照。

毒性[編集]

粉体状のものを多量に吸入すると、塵肺の一種である珪肺の原因となる[6]。ホークス・ネストトンネル災害などが発生し、鉱石採掘現場での労働災害が課題となった。シリカ結晶は、国際がん研究機関によりグループ1の「ヒトに対する発癌性が認められる」物質に指定されている。微粉末の吸入が問題なのであり、吸入しなければ問題は認められない。例えばある程度大きな結晶を素手で触れたとしても、それ自体は何ら問題ではない。

炭酸カルシウム

炭酸カルシウム(たんさんカルシウム、calcium carbonate)は、組成式 CaCO3 で表されるカルシウムの炭酸塩である。

貝殻やサンゴの骨格、鶏卵の殻、石灰岩、大理石、鍾乳石、白亜(チョーク)の主成分で、貝殻を焼いて作る顔料は胡粉と呼ばれる。土壌ではイタリアのテラロッサに含まれる。



目次 [非表示]
1 製法
2 利用
3 性質
4 結晶構造
5 参考文献
6 関連項目


製法[編集]

実験室では、水酸化カルシウムに二酸化炭素を反応させて合成する(石灰水による二酸化炭素の検出原理)。
Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O
塩化カルシウムなど可溶性カルシウム塩水溶液に少量のさらし粉を加え不純物の鉄、マンガンを酸化させたあと水酸化カルシウムを加え、不純物を濾別し、炭酸アンモニウムを加えて沈殿を得る[2]。
Ca2+ (aq) + CO32− (aq) → CaCO3
産業的には「タンカル」と通称され、粉砕した石灰岩を粒度分級した普通品、重質品がほとんどを占めるが、化学反応で微細な結晶を析出させた沈降炭酸カルシウム(薬局方)、軽質炭酸カルシウムも用いられている。粒度をコロイド領域でそろえるなどしたものが、医薬品や食品添加物、填料などに用いられている。

製造法の反応式は実験室と同じで、日本では炭酸ガス反応法(主に生石灰用焼成炉からの)、欧米では可溶性塩反応法によって生産されている。

利用[編集]

錠剤の基材、チョーク、窯業、農業、製紙などに用いられる。ゴムや充填剤の添加剤としても使われ、研磨作用を利用し消しゴムや練り歯磨きにも入っている。化粧品原料、食品添加物としても使用が認められている。医薬品としては、胃酸過多に対して制酸剤として使われている。

性質[編集]

無色結晶または白色粉末であり、中性の水にほとんど溶けないが、塩酸などの強酸と反応して、二酸化炭素を放出する。
CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2
25 °C における溶解度積は以下の通りであり、炭酸バリウムよりやや小さく炭酸ストロンチウムよりやや大きい[3]。
CaCO3 \rightleftarrows \ Ca2+(aq) + CO32−(aq), Ksp = 3.6 × 10−9
加熱することにより酸化カルシウムと二酸化炭素に分解する。二酸化炭素の解離圧が1気圧に達するのは 898 °C である。
CaCO3 → CaO + CO2
水酸化カルシウム水溶液(石灰水)に二酸化炭素を吹き込むと炭酸カルシウムの沈殿が生じる。さらに過剰の二酸化炭素を吹き込むと炭酸水素カルシウム Ca(HCO3)2 となり水に溶解する。
CaCO3 + CO2 + H2O → Ca(HCO3)2
多少吸い込んでも、肺の中に蓄積しない。血液の中には二酸化炭素があり炭酸カルシウムは炭酸水素カルシウムに変化して溶解するからである。

結晶構造[編集]





方解石の結晶構造
固体結晶には菱面体、三方晶系のもの(方解石として産出)および斜方晶系(霰石として産出)の多形が存在し、常温常圧では三方晶系の方がやや安定である。他に、六方晶系のヴァテライトが知られているが非常に不安定。三方晶系の格子定数は a = 6.36 Å、α = 46.4°であり、斜方晶系では a = 7.92 Å、b = 5.72 Å、c = 4.94 Å である[4]。

屈折率は三方晶系では通常光線に対して 1.6585、異常光線に対して 1.4864 の複屈折を示す。斜方晶系では 1.681(a軸に平行)、1.685(b軸に平行)、1.530(c軸に平行)と3軸不等である。

室温で塩基性の水溶液から炭酸カルシウムを沈殿させると三方晶系の方解石結晶が生じるが、溶液を煮沸させながら沈殿させると斜方晶系のアラゴナイトが析出する。しかしこの沈殿は放置により三方晶系に変化しやすい。また、中性付近の溶液からだとヴァテライトが最初は沈殿する。

また、天然に産出する含水塩としてモノハイドロカルサイト CaCO3・H2O およびイカ石 CaCO3・6H2O が知られている。

参考文献[編集]

1.^ Wagman, D. D.; Evans, W. H.; Parker, V. B.; Schumm, R. H.; Halow, I.; Bailey, S. M.; Churney, K. L.; Nuttal, R. I.; Churney, K. L.; Nuttal, R. I. (1982). "The NBS tables of chemical thermodynamics properties". Journal of Physical Chemistry Ref. Data 11 Suppl. 2.
2.^ 『新実験化学講座 無機化合物の合成II』 日本化学会編、丸善、1977年。
3.^ 中原昭次、小森田精子、中尾安男、鈴木晋一郎 『無機化学序説』 化学同人、1985年。ISBN 978-4759801187。
4.^ 『化学大辞典』 共立出版、1993年。

続成作用

続成作用(ぞくせいさよう、diagenesis)は堆積物が固まって堆積岩になる作用で、以下のような2つの方向の作用がある。
物理的続成作用砕屑物が上載圧力を受け、粒子間の隙間が詰まったり、粒子間の水が排水に伴って抜けたりする圧密現象(コンソリデーション)と呼ばれる物理的作用を中心とする。化学的続成作用地下水に溶け込んだ成分(炭酸カルシウムや二酸化ケイ素など)が晶出し、長期間を経て、粒子間結合部およびその周辺に化学生成物を析出し、固結力を高める(膠結:セメンテーション)作用等。
物理的作用と化学的作用は堆積終了と同時にスタートするが、初期は主に圧密に伴う物理的作用が支配的で、その終了の後、数万年もの長期にわたって化学的続成作用が続く。なお、化学的作用は、固結した堆積岩が掘削などによって表層に露頭し、乾湿繰り返しや凍結融解などの風化作用を受けると次第に消失して強度低下をもたらし、さまざまな工学的問題を引き起こす場合がある。

カーボナタイト

カーボナタイト(英: carbonatite)は、方解石または苦灰石を主成分とする火成岩。石灰岩や苦灰岩とは起源が全く異なり、火成炭酸塩岩(かせいたんさんえんがん)ともいう。岩脈や岩床など貫入岩として見られることが多く、世界中でとくに古い年代で知られる。

唯一、タンザニアのオルドイニョ・レンガイがカーボナタイトを噴出した活火山である。

参考文献[編集]
黒田吉益・諏訪兼位 『偏光顕微鏡と岩石鉱物 第2版』 共立出版、1983年。ISBN 4-320-04578-5。
諏訪兼位 『裂ける大地 アフリカ大地溝帯の謎』 講談社〈講談社選書メチエ〉、1997年。ISBN 4-06-258107-8。
諏訪兼位 『アフリカ大陸から地球がわかる』 岩波書店〈岩波ジュニア新書〉、2003年。ISBN 4-00-500431-8。

関連項目[編集]

ウィキメディア・コモンズには、カーボナタイトに関連するカテゴリがあります。
岩石 - 火成岩
岩石の一覧

アイソスタシー

アイソスタシー(英: isostasy)とは、比較的軽い地殻が、重く流動性のある上部マントルに浮かんでおり、地殻の荷重と地殻に働く浮力がつりあっているとする説。地殻均衡(説)ともいう。

ヒマラヤ山脈での鉛直線の偏差を説明するために、ジョージ・ビドル・エアリー(1855)とジョン・ヘンリー・プラット(1859)が唱えた説で、後にクラレンス・エドワード・ダットン(1889)が「アイソスタシー」と命名した。

概要[編集]

アイソスタシーにおいて、地球表層である固体の層をリソスフェア、リソスフェアをその上に浮かべている液体の層をアセノスフェアと呼ぶ。地球内部には、我々の生活する地殻とその下のマントルの2つの層が存在するが、地殻とマントルの固体部分リッドが結合した岩石の塊がリソスフェア、マントルの液体部分がアセノスフェアである。より厳密に言えば、地震波の観測[1]によると、マントル全体は固体である。すなわち、マントルは、巨大な質量の荷重といった長い年月によるゆっくりとした力には液体の性質を示し、瞬間的な力には固体の性質をもつ。

アイソスタシーは、我々が普段目にする山や海底といった地形の形成に重大な役割を果たす。アイソスタシーにおいて、地殻の厚さでその土地の標高が決定するからだ。固体であるリッドは、アセノスフェアに比べて密度が大きく、リッドだけではアセノスフェアに沈む。密度の小さい地殻がその上に接着することにより、浮力が生まれる。浮力は物体の体積が大きければ大きいほど強くなるため、厚い地殻はより強い浮力を得て、標高を高くする。上の図では、地殻の厚さとその土地の標高の高さが一般的に比例することを示している。巨大な岩石の塊@は高くそびえる山岳となり、逆に薄い岩盤Cは海底となる[2]。

地球表層の大部分でアイソスタシーは成立している。ただし、アイソスタシーが成り立たない地域もある。収束型境界のような大きな水平圧力が地殻に働いている場合や、氷床といった巨大な質量が消失し、地殻の質量の変化に対応して新しいアイソスタシーが生まれる途上などである。例えば、かつて巨大な氷床に覆われていたスカンジナビア半島[3]では、現在数ミリメートル単位で隆起が続いている。

脚注[編集]

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1.^ 地震波にはP波とS波の2種類が存在するが、S波が伝わらずP波のみ伝わる地球内部の物体は液体、S波も伝わる物体は固体であるとされる。
2.^ 浮力とは別に、物体の浮き沈みはその物体の密度も関係し、一般に物体の密度が大きくなると物体を沈めようとする力も大きくなる。このことから、山脈の下の物質は他の土地に比べ密度が小さいとされる。大陸上部地殻は海洋地殻よりも一般的に密度が小さく、これはP波速度の測定で証明されている(深尾良夫 『地震・プレート・陸と海 : 地学入門』 岩波書店〈岩波ジュニア新書〉、1985年、[要ページ番号]。全国書誌番号:85041009。OCLC 673429161。)。
3.^ スカンジナビア半島は2,000mの氷床に覆われていたが、氷期が終わり、氷床が溶けたため、上部マントルにかかる地殻の荷重が小さくなった。そのため、荷重と浮力の均衡を保つために、現在スカンジナビア半島は年に1 - 2cmの速さで隆起している。

応力

応力(おうりょく、ストレス、英: stress)とは、物体[1]の内部に生じる力の大きさや作用方向を表現するために用いられる物理量である。

この物理量には応力ベクトル (stress vector) と応力テンソル (stress tensor) の2つがあり、単に「応力」といえば応力テンソルのことを指すことが多い。応力テンソルは座標系などを特別に断らない限り、主に2階の混合テンソルおよび混合ベクトルとして扱われる(混合テンソルについてはテンソル積#テンソル空間とテンソルを参照)。応力ベクトルと応力テンソルは、ともに連続体内部に定義した微小面積に作用する単位面積あたりの力として定義される。そのため、それらの単位は、SIでは[Pa] (N/m2)、重力単位系では[kgf/mm2]で、圧力と同じである。



目次 [非表示]
1 応力ベクトル
2 応力テンソル 2.1 垂直応力とせん断応力
2.2 応力テンソルの対称性
2.3 任意座標系への応力の変換
2.4 主応力 2.4.1 2次元応力状態における主応力

2.5 主せん断応力
2.6 平衡方程式
2.7 パイオラ・キルヒホッフ応力テンソル

3 偏差応力
4 材料の降伏と等価応力 4.1 最大主応力説
4.2 せん断ひずみエネルギー説
4.3 最大せん断応力説

5 応力と応力度
6 脚注
7 参考文献
8 関連項目


応力ベクトル[編集]

応力ベクトルとは、物体表面あるいは物体内に仮想的な微小面を考えたとき、その微小面に作用する単位面積あたりの力であり、ベクトル(1階のテンソル)で表される。後述する応力テンソルの説明にあるように、応力テンソルσの各成分の第1の下添字は「応力成分を考えている微小面の法線の向き」を、第2の下添字は「考えている微小面に作用する力の向き」をそれぞれ表している。このことから明らかなように、微小面の単位法線ベクトルを n とすると、その微小面での応力ベクトル t は次のように与えられる。
{\boldsymbol {t}}=\sigma ^{{\mathrm {T}}}{\boldsymbol {n}}
この式はコーシーの式[2]と呼ばれる。例えば、3次元デカルト座標系 (x , y , z ) において、単位法線ベクトルを {\boldsymbol {n}}=(n_{x},n_{y},n_{z})=(\cos \alpha ,\cos \beta ,\cos \gamma ) と表す[3]と、応力ベクトルの成分 t_{{x}},\;t_{{y}},\;t_{{z}} は次のようになる。
{\begin{pmatrix}t_{x}\\t_{y}\\t_{z}\end{pmatrix}}={\begin{pmatrix}\sigma _{{xx}}n_{x}+\sigma _{{yx}}n_{y}+\sigma _{{zx}}n_{z}\\\sigma _{{xy}}n_{x}+\sigma _{{yy}}n_{y}+\sigma _{{zy}}n_{z}\\\sigma _{{xz}}n_{x}+\sigma _{{yz}}n_{y}+\sigma _{{zz}}n_{z}\end{pmatrix}}
応力テンソル[編集]

応力テンソルは、応力ベクトルの定め方の違いから、真応力テンソル・Cauchy応力テンソル、公称応力テンソル・第1パイオラ・キルヒホッフ応力テンソル、第2パイオラ・キルヒホッフ応力テンソルの3種類が定義されており、いずれも(行列の形式で記述できる)2階のテンソルとなる。ただし、これらの応力テンソルに違いが生じるのは有限変形理論に基づいて物体の運動を記述した場合であり、材料力学や応用力学で多用されている微小変位・微小変形の仮定の下では、これらの応力テンソルはすべて真応力テンソルに一致する。

真応力テンソル(微小変形理論における応力テンソル)を σ で表すものとすると、その成分は座標軸をx , y , z と定めた3次元デカルト座標の下では、
\sigma ={\begin{pmatrix}\sigma _{{xx}}&\sigma _{{xy}}&\sigma _{{xz}}\\\sigma _{{yx}}&\sigma _{{yy}}&\sigma _{{yz}}\\\sigma _{{zx}}&\sigma _{{zy}}&\sigma _{{zz}}\end{pmatrix}},\ {\mbox{or}},\ \sigma ={\begin{pmatrix}\sigma _{{11}}&\sigma _{{12}}&\sigma _{{13}}\\\sigma _{{21}}&\sigma _{{22}}&\sigma _{{23}}\\\sigma _{{31}}&\sigma _{{32}}&\sigma _{{33}}\end{pmatrix}}
のように表される。このとき、各成分の第1の下添字は「応力成分を考えている微小面の法線の向き」を、第2の下添字は「考えている微小面に作用する力の向き」をそれぞれ表している。例えば、σxy とは、法線の方向がx 軸の向きに一致する微小面において考えている、y 軸方向の力の成分を意味する。そのため、応力テンソルの成分には、微小面の法線と力の作用方向が一致する垂直応力 (normal stress) 成分と、一致しない(異なっている)せん断応力 (shear stress) 成分の2種類に分類することができる。

垂直応力とせん断応力[編集]

上に示した3次元デカルト座標系における応力テンソルの成分について考えた場合、垂直応力は \sigma _{{xx}},\;\sigma _{{yy}},\;\sigma _{{zz}} の3成分となる。垂直応力は、力の作用面と力の作用方向とが直交し、作用面を引っ張る方向に作用した場合には引張応力 (tensile stress)、作用面を押し込む方向に作用した場合には圧縮応力 (compressive stress) と呼ばれる。材料力学や応用力学、構造力学などにおいては、引張応力が正の垂直応力となるように応力テンソルを定義するのが一般的であるが、地盤工学(土質力学)においては圧縮応力が正の垂直応力となるように力の正の向きを定義することもある。

一方、せん断応力は、力の作用面の法線の向きと力の作用方向とが一致しない応力成分であり、\sigma _{{xy}},\;\sigma _{{yx}},\;\sigma _{{yz}},\;\sigma _{{zy}},\;\sigma _{{zx}},\;\sigma _{{xz}}の6つが該当する。なお、微小変形の力学においては、せん断応力を記号τで表すことがある。この場合の応力テンソルの表記は以下のようになる。
\sigma ={\begin{pmatrix}\sigma _{x}&\tau _{{xy}}&\tau _{{xz}}\\\tau _{{yx}}&\sigma _{y}&\tau _{{yz}}\\\tau _{{zx}}&\tau _{{zy}}&\sigma _{z}\\\end{pmatrix}}
応力テンソルの対称性[編集]

応力を定義している物体内でモーメントのつりあい条件(角運動量保存則)を満たすものと仮定する[4]と、応力テンソル(真応力テンソル)は対称テンソルとなる[5]。すなわち、
\sigma =\sigma ^{{\mathrm {T}}}
が成り立つ。例えば、上に示した3次元デカルト座標系での成分については、
\sigma _{{xy}}=\sigma _{{yx}},\;\sigma _{{yz}}=\sigma _{{zy}},\;\sigma _{{zx}}=\sigma _{{xz}}
が成り立ち、応力テンソルσの独立な成分は6成分となることがわかる。

この性質のため、固体物性やCAEなどの分野では、独立な6成分を並べてベクトルとする表記がしばしば用いられる。これをフォークト表記 (Voigt notation)という[6]。
\sigma ={\begin{pmatrix}\sigma _{{xx}}\\\sigma _{{yy}}\\\sigma _{{zz}}\\\sigma _{{xy}}\\\sigma _{{yz}}\\\sigma _{{zx}}\\\end{pmatrix}}\equiv {\begin{pmatrix}\sigma _{x}\\\sigma _{y}\\\sigma _{z}\\\tau _{{xy}}\\\tau _{{yz}}\\\tau _{{zx}}\\\end{pmatrix}}
任意座標系への応力の変換[編集]





応力テンソルの座標変換
真応力はテンソル量であり、座標系によってその成分は変化することとなる。応力テンソルの座標系変換式は以下で表される。
\sigma '=A\sigma A^{{\mathrm {T}}}
ここで、 σは変換前の座標系における応力テンソル、σ' は変換後の座標系における応力テンソル、A は回転行列 、AT はA の転置行列である。各成分で表すと以下の通りである。
{{\begin{pmatrix}\sigma '_{{11}}&\sigma '_{{12}}&\sigma '_{{13}}\\\sigma '_{{21}}&\sigma '_{{22}}&\sigma '_{{23}}\\\sigma '_{{31}}&\sigma '_{{32}}&\sigma '_{{33}}\\\end{pmatrix}}}={{\begin{pmatrix}a_{{11}}&a_{{12}}&a_{{13}}\\a_{{21}}&a_{{22}}&a_{{23}}\\a_{{31}}&a_{{32}}&a_{{33}}\\\end{pmatrix}}}{{\begin{pmatrix}\sigma _{{11}}&\sigma _{{12}}&\sigma _{{13}}\\\sigma _{{21}}&\sigma _{{22}}&\sigma _{{23}}\\\sigma _{{31}}&\sigma _{{32}}&\sigma _{{33}}\\\end{pmatrix}}}{{\begin{pmatrix}a_{{11}}&a_{{21}}&a_{{31}}\\a_{{12}}&a_{{22}}&a_{{32}}\\a_{{13}}&a_{{23}}&a_{{33}}\\\end{pmatrix}}}
ここで、aij は2つの座標間の方向余弦で、各座標軸とは下記の表のような関係となる。



x_{1}

x_{2}

x_{3}


x'_{1}
a_{{11}} a_{{12}} a_{{13}}

x'_{2}
a_{{21}} a_{{22}} a_{{23}}

x'_{3}
a_{{31}} a_{{32}} a_{{33}}

上式を展開すると、3次元応力状態での各応力の変換式は以下のようになる[7]。
\sigma _{{11}}'=a_{{11}}^{2}\sigma _{{11}}+a_{{12}}^{2}\sigma _{{22}}+a_{{13}}^{2}\sigma _{{33}}+2a_{{11}}a_{{12}}\sigma _{{12}}+2a_{{11}}a_{{13}}\sigma _{{13}}+2a_{{12}}a_{{13}}\sigma _{{23}}\sigma _{{22}}'=a_{{21}}^{2}\sigma _{{11}}+a_{{22}}^{2}\sigma _{{22}}+a_{{23}}^{2}\sigma _{{33}}+2a_{{21}}a_{{22}}\sigma _{{12}}+2a_{{21}}a_{{23}}\sigma _{{13}}+2a_{{22}}a_{{23}}\sigma _{{23}}\sigma _{{33}}'=a_{{31}}^{2}\sigma _{{11}}+a_{{32}}^{2}\sigma _{{22}}+a_{{33}}^{2}\sigma _{{33}}+2a_{{31}}a_{{32}}\sigma _{{12}}+2a_{{31}}a_{{33}}\sigma _{{13}}+2a_{{32}}a_{{33}}\sigma _{{23}}\sigma _{{12}}'=a_{{11}}a_{{21}}\sigma _{{11}}+a_{{12}}a_{{22}}\sigma _{{22}}+a_{{13}}a_{{23}}\sigma _{{33}}+(a_{{11}}a_{{22}}+a_{{12}}a_{{21}})\sigma _{{12}}+(a_{{12}}a_{{23}}+a_{{13}}a_{{22}})\sigma _{{23}}+(a_{{11}}a_{{23}}+a_{{13}}a_{{21}})\sigma _{{13}}\sigma _{{23}}'=a_{{21}}a_{{31}}\sigma _{{11}}+a_{{22}}a_{{32}}\sigma _{{22}}+a_{{23}}a_{{33}}\sigma _{{33}}+(a_{{21}}a_{{32}}+a_{{22}}a_{{31}})\sigma _{{12}}+(a_{{22}}a_{{33}}+a_{{23}}a_{{32}})\sigma _{{23}}+(a_{{21}}a_{{33}}+a_{{23}}a_{{31}})\sigma _{{13}}\sigma _{{13}}'=a_{{11}}a_{{31}}\sigma _{{11}}+a_{{12}}a_{{32}}\sigma _{{22}}+a_{{13}}a_{{33}}\sigma _{{33}}+(a_{{11}}a_{{32}}+a_{{12}}a_{{31}})\sigma _{{12}}+(a_{{12}}a_{{33}}+a_{{13}}a_{{32}})\sigma _{{23}}+(a_{{11}}a_{{33}}+a_{{13}}a_{{31}})\sigma _{{13}}
2次元応力状態での応力変換式は以下の通りである[8]。
\sigma _{{11}}'=a_{{11}}^{2}\sigma _{{11}}+a_{{12}}^{2}\sigma _{{22}}+2a_{{11}}a_{{12}}\sigma _{{12}}\sigma _{{22}}'=a_{{21}}^{2}\sigma _{{11}}+a_{{22}}^{2}\sigma _{{22}}+2a_{{21}}a_{{22}}\sigma _{{12}}\sigma _{{12}}'=a_{{11}}a_{{21}}\sigma _{{11}}+a_{{12}}a_{{22}}\sigma _{{22}}+(a_{{11}}a_{{22}}+a_{{12}}a_{{21}})\sigma _{{12}}
ここで座標軸間の角度θを用いて上式を書き直した場合は以下の通りである。
\sigma _{{11}}'=\sigma _{{11}}\cos ^{2}\theta +\sigma _{{22}}\sin ^{2}\theta +2\sigma _{{12}}\cos \theta \sin \theta \sigma _{{22}}'=\sigma _{{11}}\sin ^{2}\theta +\sigma _{{22}}\cos ^{2}\theta -2\sigma _{{12}}\cos \theta \sin \theta \sigma _{{12}}'=(\sigma _{{11}}-\sigma _{{22}})\cos \theta \sin \theta +\sigma _{{12}}(\cos ^{2}\theta -\sin ^{2}\theta )


x_{1}

x_{2}


x'_{1}
a_{{11}}(=\cos \theta ) a_{{12}}(=\sin \theta )

x'_{2}
a_{{21}}(=-\sin \theta ) a_{{22}}(=\cos \theta )

この変換を図示する方法として、モールの応力円が知られている。

主応力[編集]

せん断応力成分がゼロとなるように座標系を取ったときの垂直応力を主応力 (principal stress) と呼ぶ。その座標系の基底ベクトルを応力テンソルの主軸あるいは主応力軸と呼ぶ。さらに主軸に垂直な面を主面あるいは主応力面と呼ぶ[9]。なお、真応力テンソル(Cauchy応力テンソル)は対称テンソルであるため、ある応力状態を表す真応力テンソルに対して、せん断応力が見掛け上現れず主応力のみが垂直応力として現れる主軸が必ず一組存在する。

せん断応力がゼロとなるときの垂直応力が主応力であるが、同時に主応力はあらゆる座標系の中で垂直応力が最大、最小となる値を示している[10]。3つの主応力をσ1 ≥ σ2 ≥ σ3 の関係となるようにとったとき、最大の主応力σ1 を最大主応力 、最小となる主応力σ3 を最小主応力 、これら2つに直交する主応力σ2 を中間主応力 と呼び、ある座標系での応力状態(\sigma _{{x}},\sigma _{{y}},\sigma _{{z}},\tau _{{xy}},\tau _{{yz}},\tau _{{zx}})が与えられているとき、主応力は以下の関係から求められる[10]。
{\begin{vmatrix}(\sigma _{{x}}-\sigma )&\tau _{{xy}}&\tau _{{zx}}\\\tau _{{xy}}&(\sigma _{{y}}-\sigma )&\tau _{{yz}}\\\tau _{{zx}}&\tau _{{yz}}&(\sigma _{{z}}-\sigma )\end{vmatrix}}=0
左辺は行列式で、上式を展開した3次方程式のσの根が主応力となる。実際に上式を展開すると、
{\begin{aligned}&\sigma ^{3}-J_{1}\sigma ^{2}+J_{2}\sigma -J_{3}=0,\\&J_{1}=\sigma _{x}+\sigma _{y}+\sigma _{z},\\&J_{2}=\sigma _{x}\sigma _{y}+\sigma _{y}\sigma _{z}+\sigma _{z}\sigma _{x}-\tau _{{xy}}^{2}-\tau _{{yz}}^{2}-\tau _{{zx}}^{2},\\&J_{3}=\sigma _{x}\sigma _{y}\sigma _{z}+2\tau _{{xy}}\tau _{{yz}}\tau _{{zx}}-\sigma _{x}\tau _{{yz}}^{2}-\sigma _{y}\tau _{{zx}}^{2}-\sigma _{z}\tau _{{xy}}^{2}\end{aligned}}
となる。一方、上式の根はσ1、σ2、σ3となるので、上式は以下のようも書き表せる。
{\begin{aligned}0&=(\sigma -\sigma _{1})(\sigma -\sigma _{2})(\sigma -\sigma _{3})\\&=\sigma ^{3}-(\sigma _{1}+\sigma _{2}+\sigma _{3})\sigma ^{2}+(\sigma _{1}\sigma _{2}+\sigma _{2}\sigma _{3}+\sigma _{3}\sigma _{1})\sigma -(\sigma _{1}\sigma _{2}\sigma _{3})\end{aligned}}
以上の2式を等値すれば、
{\begin{aligned}J_{1}&=\sigma _{1}+\sigma _{2}+\sigma _{3}=\sigma _{x}+\sigma _{y}+\sigma _{z},\\J_{2}&=\sigma _{1}\sigma _{2}+\sigma _{2}\sigma _{3}+\sigma _{3}\sigma _{1}=\sigma _{x}\sigma _{y}+\sigma _{y}\sigma _{z}+\sigma _{z}\sigma _{x}-\tau _{{xy}}^{2}-\tau _{{yz}}^{2}-\tau _{{zx}}^{2},\\J_{3}&=\sigma _{1}\sigma _{2}\sigma _{3}=\sigma _{x}\sigma _{y}\sigma _{z}+2\tau _{{xy}}\tau _{{yz}}\tau _{{zx}}-\sigma _{x}\tau _{{yz}}^{2}-\sigma _{y}\tau _{{zx}}^{2}-\sigma _{z}\tau _{{xy}}^{2}\end{aligned}}
を得る。J1、J2、J3は、ある応力状態において座標系に関わらず常に一定値となるので応力不変量(stress invariant)と総称される。それぞれ第一次応力不変量、第二次応力不変量、第三次応力不変量と呼ぶ[10]。

2次元応力状態における主応力[編集]





2次元における一般的な応力状態




2次元における主応力面
2次元応力状態では、\sigma _{{z}},\tau _{{yz}},\tau _{{zx}}が0なので、主応力は以下の関係から求められる[10]。
{\begin{vmatrix}(\sigma _{{x}}-\sigma )&\tau _{{xy}}\\\tau _{{xy}}&(\sigma _{{y}}-\sigma )\\\end{vmatrix}}=0
上式を展開するとσに関する2次方程式が得られ、これを解くと、2次元応力状態での主応力σ1、σ2は次のようになる。
\sigma _{1},\sigma _{2}={\frac {(\sigma _{x}+\sigma _{y})\pm {\sqrt {(\sigma _{x}-\sigma _{y})^{2}+4\tau _{{xy}}^{2}}}}{2}}
得られたσ1、σ2から、主軸の方向が得られる。
\theta _{1}=\tan {{\frac {\sigma _{1}-\sigma _{x}}{\tau _{{xy}}}}}\ ,\ \theta _{2}=\tan {{\frac {\sigma _{2}-\sigma _{x}}{\tau _{{xy}}}}}
ここでθは、x 軸とσ1、σ2の主軸が織りなす角度である。

主せん断応力[編集]

あらゆる座標系の中で最大となるせん断応力を主せん断応力または最大せん断応力と呼ぶ。主せん断応力が働く面は、主軸に対して45°あるいは135°傾いた面となる。主せん断応力τ1、τ2、τ3 は、主応力σ1、σ2、σ3 より次式で求まる[10]。
\tau _{1}={\frac {|\sigma _{2}-\sigma _{3}|}{2}}\quad ,\quad \tau _{2}={\frac {|\sigma _{3}-\sigma _{1}|}{2}}\quad ,\quad \tau _{3}={\frac {|\sigma _{1}-\sigma _{2}|}{2}}
一般的に、主応力とは異なり、主せん断応力が働く面にはせん断応力だけでなく垂直応力も働く。

平衡方程式[編集]

外力F を受けて静的な釣り合い状態にある物体内部の任意の点では、その応力σは次の平衡方程式あるいはつりあい方程式を満たす[11]。
{\begin{aligned}{\frac {\partial \sigma _{{xx}}}{\partial x}}+{\frac {\partial \tau _{{yx}}}{\partial y}}+{\frac {\partial \tau _{{zx}}}{\partial z}}+F_{x}&=0,\\{\frac {\partial \tau _{{xy}}}{\partial x}}+{\frac {\partial \sigma _{{yy}}}{\partial y}}+{\frac {\partial \tau _{{zy}}}{\partial z}}+F_{y}&=0,\\{\frac {\partial \tau _{{xz}}}{\partial x}}+{\frac {\partial \tau _{{yz}}}{\partial y}}+{\frac {\partial \sigma _{{zz}}}{\partial z}}+F_{z}&=0\end{aligned}}
あるいは次のような書き方もされる。
{\begin{aligned}&\sigma _{{ij,j}}+F_{i}=0,\quad (i=1,2,3),\\&\operatorname {div}\sigma +{\boldsymbol {F}}={\boldsymbol {0}}\end{aligned}}
応力場σが平衡方程式と、表面力規定境界∂Rt における境界条件(コーシーの式)
{\boldsymbol {t}}=\sigma ^{{\mathrm {T}}}{\boldsymbol {n}},\quad {\text{at}}\;\partial R_{t}
を満たすとき、その応力場σを静的に許容な場という[12]。

パイオラ・キルヒホッフ応力テンソル[編集]

真応力(コーシー応力)テンソルσと変形勾配テンソルF を用いて定義される次のテンソルをパイオラ・キルヒホッフ応力テンソル(Piola-Kirchhoff stress tensor)という[13]。
第1パイオラ・キルヒホッフ応力テンソル\Pi =\det(F)\sigma (F^{{-1}})^{{\mathrm {T}}}第2パイオラ・キルヒホッフ応力テンソルK=F^{{-1}}\Pi =\det(F)F^{{-1}}\sigma (F^{{-1}})^{{\mathrm {T}}}
真応力に関するコーシーの式は上述のとおり現配置での応力ベクトルt と法線ベクトルn で表されるが、パイオラ・キルヒホッフ応力テンソルを用いても類似の関係式が成り立つ。
{\begin{aligned}{\boldsymbol {t}}_{0}&=\Pi {\boldsymbol {n}}_{0},\\{\hat {{\boldsymbol {t}}}}&=K{\boldsymbol {n}}_{0}\end{aligned}}
ここで、
{\boldsymbol {n}}_{0}:基準配置の微小面の法線ベクトル
{\boldsymbol {t}}_{0}:現配置の微小面に作用している力を、基準配置の微小面の面積で割って定義される応力ベクトル
{\hat {{\boldsymbol {t}}}}:現配置の微小面に作用している力を基準配置で求めなおし、それを基準配置の微小面の面積で割って定義される応力ベクトル

である。

仮想仕事の原理を適用する際には、これらの応力テンソルと共役な関係にあるひずみテンソルは以下のようになる。
コーシー応力 - アルマンシーひずみ
第1パイオラ・キルヒホッフ応力 - 変形勾配
第2パイオラ・キルヒホッフ応力 - グリーンひずみ

偏差応力[編集]

偏差応力(deviatoric stress) は、応力テンソルからその等方成分を差し引いたものとして定義される。物体に等方的な圧縮・引張り以外のせん断変形が生じた場合に、偏差応力が発生する。偏差応力 dev[σ] は次のように定義される。
\operatorname {dev}[\sigma ]=\sigma +pI
ここで
p=-{\frac {1}{3}}\operatorname {tr}[\sigma ]=-{\frac {\sigma _{{kk}}}{3}}
は非決定(静水圧)応力、I は2階の単位テンソルである。

材料の降伏と等価応力[編集]

上記にあるとおり、応力は3次元的なテンソルである。一般の応力について材料の特性値を調べるのは困難であるため、降伏に対して等価とみなせる1軸応力に対応するスカラー量である等価応力に換算すると便利である。等価応力は材料の降伏する条件に応じて以下のようなものがある。

最大主応力説[編集]

ある点で最大主応力 σ1 が材料の降伏を決定するというのが最大主応力説である。すなわち、
\sigma _{1}\geq \sigma _{{\mathrm {Y}}}
が降伏の条件である。ここで σY は材料の降伏応力である。最大主応力説はガラスなどの脆性材料で良く当てはまる[14]。

せん断ひずみエネルギー説[編集]

単位体積あたりのせん断ひずみエネルギーが限界を越えると、材料が破壊されるという説である。ともいう。全ひずみエネルギーから静ひずみエネルギーを差し引いたせん断ひずみエネルギー U を評価基準とする。
U={\frac {1+\nu }{6E}}((\sigma _{1}-\sigma _{2})^{2}+(\sigma _{2}-\sigma _{3})^{2}+(\sigma _{3}-\sigma _{1})^{2})
ここで、νはポアソン比、E はヤング率である。

せん断ひずみエネルギーに比例する相当応力をMisesの相当応力σMisesとよび、主応力を用いて以下の式で表される。
\sigma _{{\mathrm {Mises}}}^{2}={\frac {(\sigma _{1}-\sigma _{2})^{2}+(\sigma _{2}-\sigma _{3})^{2}+(\sigma _{3}-\sigma _{1})^{2}}{2}}
降伏条件は以下の通り。
\sigma _{{\mathrm {Mises}}}\geq \sigma _{{\mathrm {Y}}}
せん断ひずみエネルギー説は鋼材などの延性材料に比較的良く当てはまる[14]。

最大せん断応力説[編集]

延性材料が降伏するときすべりが観察されることに着目し、最大せん断応力が降伏を決定するという説を最大せん断応力説、またはトレスカの応力説と呼ぶ。このときに用いられる相当応力をトレスカ応力とよび、最大せん断応力を記号 τmax 、トレスカ応力をσTrescaで表すと、主応力とは次式に示す関係がある。
{\begin{aligned}\tau _{{\mathrm {max}}}&={\frac {1}{2}}({\mathrm {max}}|\sigma _{i}-\sigma _{j}|),\\\sigma _{{\mathrm {Tresca}}}&=2\tau _{{\mathrm {max}}}\end{aligned}}
降伏条件は以下の通り。
\sigma _{{\mathrm {Tresca}}}\geq \sigma _{{\mathrm {Y}}}
最大せん断応力説も延性材料に当てはまることが多い[14]。また、σTresca ≥ σ1, σTresca ≥ σMises であり、上記2説に対して安全側であることから評価基準として利用されることがある。

応力と応力度[編集]

応力という言葉の定義は利用分野により異なる。土木、建築分野では連続体内部の面にかかる内力を応力、その単位面積当たりの力を応力度 (stress intensity) と呼んでいるが、機械工学関係では内力の単位面積当たりの力を応力と呼び、同じ言葉でも定義が異なることに注意が必要である[15][16]。

撓曲(とうきょく、flexure)とは、地中のある断層がずれたことで、上にある地層が撓む現象である。

地殻変動(ちかくへんどう、diastrophism)とは、地殻に応力が加わることで、長期間にわたり地殻の位置が年間数mmから数cm程度移動する現象である。地殻を構成するプレート運動や断層運動と密接に関係している。

陸上では水準測量、三角測量、GPS、水管傾斜計、石英管伸縮計によって長期間にわたり観測されている。近年では音波を用いて海底でも観測が始まっている。地殻変動観測は地震の研究・予知やプレート運動の研究などに生かされている。



目次 [非表示]
1 メカニズム
2 陸上観測 2.1 水準測量
2.2 三角測量
2.3 傾斜計・歪計
2.4 光波測距

3 海底観測 3.1 海上との音波交信
3.2 水圧計

4 航空・衛星観測 4.1 レーダー
4.2 GPS
4.3 VLBI

5 地震との関連
6 備考
7 関連項目
8 外部リンク


メカニズム[編集]

地球上で起こるほとんどすべての地殻変動はプレート運動と関連があるといっても過言ではない。局地的な地殻変動は、プレート間の相対運動、断層運動、火山活動によって生じている。

地殻では、場所によって応力に強弱や方向依存性(最大主応力と最小主応力)が生まれると、歪が生じる。これが地震や地殻変動となってあらわれるのである。

陸上観測[編集]

水準測量[編集]

詳細は「測量#水準測量」を参照

各地に設置されている基準測量点を定期的に測定することによって、地殻の水平移動及び垂直移動を調査する方法。基準測量点は、各等級別に分類されている。なお、日本全体の基準点は、日本水準原点。

なお、水準点が多すぎることと、地殻変動を捉えるためには、定期的測量が必要であるが、予算や人員の都合などによって、近年は後述のGPS測量などによって行われている。ただし今なおGPSに比べて精度が高い利点があるため、東海地震の想定震源域に近い御前崎市や、主要な火山の周辺では定期的に実施されている。

三角測量[編集]

詳細は「測量#三角測量」を参照

ただし測定精度に限界があること、多くの予算や人員が必要なことから、国土地理院による電子基準点網設置後は三角測量の必要性が薄れている。

傾斜計・歪計[編集]

水管傾斜計によって傾斜を、石英管伸縮計によって歪を測定する方法である。原理が簡単なことから歴史が古いが、機器固有の誤差や測定精度の限界がある、維持に費用がかかる、データが広く公開されていないなどの問題もあり、地殻変動を調べる手段として一般的でない。

傾斜計及び伸縮計による観測は、全国でもあまり行われていない。松代群発地震を捉えた、気象庁精密地震観測室等の限られた場所のみで実施されているためである。最大の理由は、地殻変動を捉えるためには、ある程度の長さを持つ水平3方向に掘られたトンネルが必要なためである。なお、廃抗となった鉱山を利用するなどの方法もあるが、鉱山周辺には、活断層が少ないため、観測するメリットは少ないのである。

光波測距[編集]

詳細は「光波測距儀」を参照

2点間の距離を測る方法。かつては伊豆半島・御前崎間や、三河湾周辺などで実施されていたが、GPS測量が普及してから衰退した。

海底観測[編集]

海上との音波交信[編集]

海底に機器を設置し(海底局)、海上との音波交信を通して海上局と海底局との距離を測定する方法。これによって、海底地形の変化が捉えられる。まず海上局(船舶やブイ)の位置をGPS等で決定するため、GPSの精度を超えて測定することはできない。さらに海洋中の音速構造によって結果が大きく左右される。日本では海上保安庁、名古屋大学、東北大学によって精度の向上方法が研究されている。海底局を多数設置するのは、広い海洋では難しいため、熊野灘、駿河湾、三陸海岸沖など一部の地域に限って行われている。

海洋観測船による音波探査も行われている。これは、海洋観測船から音波を海底に発射し、海底からの反射を測定することによって、海底までの距離を測定する方法。ただし連続観測に向かず、精度もよくない。深海潜水艇(しんかい6500)の母船や地球観測船『ちきゅう』などに搭載されている。

水圧計[編集]

海底地震計に付随して、もしくは単独で設置される水圧計による方法。水圧計にはその上の海水の圧力がかかるため、これを測定することで海底の深さを調べることができる。ただしデータの収集には陸上とケーブルで接続するか、すべての観測後に回収する必要がある。現在ではおもに後者が採用されているため、リアルタイム化は実現されていない。日本では東海地震警戒域の海底などに設置されている。

(Note.)2007年度(平成18年度)から、東海地震警戒域の水圧計はリアルタイム観測に切り替えが始まる予定である。中央防災会議の決定により、今後30年以内に起こる可能性が高いとされる、東海・東南海地震に向けた対策の一環である。

航空・衛星観測[編集]

レーダー[編集]

航空機から立体視の方法にて撮影された地形図によって、地殻の変化を捉える方法。近年は、地球観測衛星も活用されている。レーザー高度計やレーダ高度計など、高度な機器を用いて精密な測定が可能になりつつある。合成開口レーダーも参照。

GPS[編集]

国土地理院による電子基準点の設置後は、地殻変動観測の代表的な手法となっている。連続してデータを収集できる、基準点設置後は維持や観測にかかる費用が少ないなどの利点がある。また地震直後の余効変動調査では、一時的に多数のGPS受信機を設置して観測を行う「キャンペーン観測」がさかんに行われている。ただし鉛直成分の観測では水準測量に対して精度が劣るため、現在も両者が併用されている場合もある。GPS測量およびグローバル・ポジショニング・システムを参照。

VLBI[編集]

超長基線電波干渉法ともいい、各地に設置された電波望遠鏡による一定のクェーサーからの電波を測定することによって電波望遠鏡間の距離を測定する方法。日本ではJCNETと呼ばれるVLBI観測網にて実施している。精度は数mmまで達しているが、観測網が粗いためGPS観測による測定結果が国土地理院から公表されている。

地震との関連[編集]

詳細は「地震#地震予知」を参照

地殻変動は地震の前段階の現象として地震予知とともに扱われる場合が多い。とくに茂木清夫が1944年の東南海地震直前の水準測量データを検証し、地震の前には異常な地殻の変動が発生すると指摘してから、日本では地震予知を目的とした地殻変動観測がさかんに行われるようになった。

地殻変動と地震の関連性に関しては、プレート境界地震が上げられる。詳細は、プレートテクトニクスを参照していただきたいが、各プレート境界では、地殻のせり上がりや沈み込みに伴う、地殻歪が蓄積しやすい環境となっている。この地殻歪が臨界点を超えるような時、もしくはなんらかの原因で地殻歪が開放される時、地震が起こることが分かっている。

活断層と呼ばれる箇所は、プレートの伸縮によって生じた地表に近い歪の表面に現れた箇所との仮説もあり、これも地震の原因となりうる場合が多い。よって、地殻歪を観測することによって、地震予知や早期警報を出す研究が今も進められている。

ただし、地震体積モデルと呼ばれるものがあり、その臨界量がどれだけの量なのか、あるいはどのような地質構造の場合どれだけの歪で地震が起こるのか、等については現在も研究が進められている。なお、ハザードマップや地震指定地域と呼ばれるものは、過去数世紀の間に間歇的に地震が生じた箇所を、将来30年程度に生じる確率で表現したものであり、いつ起こってもおかしくはないとされる。特に、空白域と呼ばれる箇所は、有史以来地震の記録が残っていないが、地殻上に断層が残っているため、危険箇所として、多くの地震学者が危険視している箇所でもある。

地震後は余効変動と呼ばれる地殻変動が数日から数ヶ月間起こることが多く、その後はプレート運動にともなう定常的な変動のみとなる。

備考[編集]

ある事柄や構造、情勢などの大きな変化、動きを「地殻変動」と表現する場合がある。

関連項目[編集]
変動地形
プレートテクトニクス
造山運動
アイソスタシー
隆起と沈降
撓曲
曲動(曲隆、曲降)
地震
測量
グローバル・ポジショニング・システム(GPS)
国土地理院

撓曲

撓曲(とうきょく、flexure)とは、地中のある断層がずれたことで、上にある地層が撓む現象である。



目次 [非表示]
1 撓曲と断層
2 地震による撓曲
3 撓曲によりできる地形
4 関連項目


撓曲と断層[編集]

一般的な断層では、左右から引っ張られる(正断層)力、もしくは左右から押される(逆断層)力が地表にまで伝わり、上の地層ごと落ちる(上がる)現象のことを指す。撓曲と断層の違いは、力の強さであり、力が弱く地層が柔らかい時、地上部まで引く力が伝わらず、地層がずれた時に上の柔らかい地層が曲がってしまう。ただ、断層が硬い時は落ちた地層と撓んだ地層との間に隙間ができる。

さらに同じ場所でも地点により引っ張られる力が違う場合、強い方が断層、弱い方が撓曲となり、断層部分では丸ごと地層が落ち、撓曲部分では上の地層が撓むという現象も起こる。

また、断層によりできた崖のことを断層崖と呼び、撓曲によってできた崖のことを撓曲崖(とうきょくがい)という。もし上記のように場所により引っ張られる力が違う場合、強い部分は断層崖になり、力が最も弱い場所に近づくにつれ断層崖の部分が狭くなり、その分撓曲崖の部分が増える。

地震による撓曲[編集]

撓曲は地震でできやすい。特に逆断層付近では撓曲崖が目立つ。地震が起きた時、撓曲崖の部分では大きな被害を及ぼす。また柔らかい地層でできやすいため、家が沈んだり地滑りを起こすことが多い。また、地震による撓曲で、新たな活断層が分かる時もある。日本でも今までそれによりいろいろな撓曲や活断層が発見されてきたが、まだ地震の原因が解明されていない所が多く、見つかっていない撓曲はまだ多くある。

また撓曲は、活断層の有無や次の活動時期を知るのに有効な手がかりとなる。

撓曲によりできる地形[編集]
撓曲盆地撓曲によりできた盆地。世界では珍しい。
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