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2014年02月13日

炭酸カルシウム

炭酸カルシウム(たんさんカルシウム、calcium carbonate)は、組成式 CaCO3 で表されるカルシウムの炭酸塩である。

貝殻やサンゴの骨格、鶏卵の殻、石灰岩、大理石、鍾乳石、白亜(チョーク)の主成分で、貝殻を焼いて作る顔料は胡粉と呼ばれる。土壌ではイタリアのテラロッサに含まれる。



目次 [非表示]
1 製法
2 利用
3 性質
4 結晶構造
5 参考文献
6 関連項目


製法[編集]

実験室では、水酸化カルシウムに二酸化炭素を反応させて合成する(石灰水による二酸化炭素の検出原理)。
Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O
塩化カルシウムなど可溶性カルシウム塩水溶液に少量のさらし粉を加え不純物の鉄、マンガンを酸化させたあと水酸化カルシウムを加え、不純物を濾別し、炭酸アンモニウムを加えて沈殿を得る[2]。
Ca2+ (aq) + CO32− (aq) → CaCO3
産業的には「タンカル」と通称され、粉砕した石灰岩を粒度分級した普通品、重質品がほとんどを占めるが、化学反応で微細な結晶を析出させた沈降炭酸カルシウム(薬局方)、軽質炭酸カルシウムも用いられている。粒度をコロイド領域でそろえるなどしたものが、医薬品や食品添加物、填料などに用いられている。

製造法の反応式は実験室と同じで、日本では炭酸ガス反応法(主に生石灰用焼成炉からの)、欧米では可溶性塩反応法によって生産されている。

利用[編集]

錠剤の基材、チョーク、窯業、農業、製紙などに用いられる。ゴムや充填剤の添加剤としても使われ、研磨作用を利用し消しゴムや練り歯磨きにも入っている。化粧品原料、食品添加物としても使用が認められている。医薬品としては、胃酸過多に対して制酸剤として使われている。

性質[編集]

無色結晶または白色粉末であり、中性の水にほとんど溶けないが、塩酸などの強酸と反応して、二酸化炭素を放出する。
CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2
25 °C における溶解度積は以下の通りであり、炭酸バリウムよりやや小さく炭酸ストロンチウムよりやや大きい[3]。
CaCO3 \rightleftarrows \ Ca2+(aq) + CO32−(aq), Ksp = 3.6 × 10−9
加熱することにより酸化カルシウムと二酸化炭素に分解する。二酸化炭素の解離圧が1気圧に達するのは 898 °C である。
CaCO3 → CaO + CO2
水酸化カルシウム水溶液(石灰水)に二酸化炭素を吹き込むと炭酸カルシウムの沈殿が生じる。さらに過剰の二酸化炭素を吹き込むと炭酸水素カルシウム Ca(HCO3)2 となり水に溶解する。
CaCO3 + CO2 + H2O → Ca(HCO3)2
多少吸い込んでも、肺の中に蓄積しない。血液の中には二酸化炭素があり炭酸カルシウムは炭酸水素カルシウムに変化して溶解するからである。

結晶構造[編集]





方解石の結晶構造
固体結晶には菱面体、三方晶系のもの(方解石として産出)および斜方晶系(霰石として産出)の多形が存在し、常温常圧では三方晶系の方がやや安定である。他に、六方晶系のヴァテライトが知られているが非常に不安定。三方晶系の格子定数は a = 6.36 Å、α = 46.4°であり、斜方晶系では a = 7.92 Å、b = 5.72 Å、c = 4.94 Å である[4]。

屈折率は三方晶系では通常光線に対して 1.6585、異常光線に対して 1.4864 の複屈折を示す。斜方晶系では 1.681(a軸に平行)、1.685(b軸に平行)、1.530(c軸に平行)と3軸不等である。

室温で塩基性の水溶液から炭酸カルシウムを沈殿させると三方晶系の方解石結晶が生じるが、溶液を煮沸させながら沈殿させると斜方晶系のアラゴナイトが析出する。しかしこの沈殿は放置により三方晶系に変化しやすい。また、中性付近の溶液からだとヴァテライトが最初は沈殿する。

また、天然に産出する含水塩としてモノハイドロカルサイト CaCO3・H2O およびイカ石 CaCO3・6H2O が知られている。

参考文献[編集]

1.^ Wagman, D. D.; Evans, W. H.; Parker, V. B.; Schumm, R. H.; Halow, I.; Bailey, S. M.; Churney, K. L.; Nuttal, R. I.; Churney, K. L.; Nuttal, R. I. (1982). "The NBS tables of chemical thermodynamics properties". Journal of Physical Chemistry Ref. Data 11 Suppl. 2.
2.^ 『新実験化学講座 無機化合物の合成II』 日本化学会編、丸善、1977年。
3.^ 中原昭次、小森田精子、中尾安男、鈴木晋一郎 『無機化学序説』 化学同人、1985年。ISBN 978-4759801187。
4.^ 『化学大辞典』 共立出版、1993年。
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