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2017年09月03日
4-2-1. 米国政策決定指標(2017年9月版)
FOMCは市場の混乱を嫌うため(世界経済に対する重責があるため)、市場予想がほぼ外れません。少なくとも、ECBやJOBのようにサプライズを起こしたがる中銀ではありません。
2017年の政策金利利上げは3回が予定されていました。3月・6月を市場予想通り実施し、次回は12月と見なされていました。9月には、BS縮小によって引締め政策転換が実際に始まると見なされていました。
ところが、7月下旬〜8月中旬にかけて、2018年度予算が9月末までの期限に不成立との話が出て、少し状況が変わりました。デフォルトを起こしかけているのに、大きな金融政策変更なんて出来る訳ありません。その結果、12月利上げ確率が下がり、BS縮小についても実施が危ぶまれていました。
そこに、ハリケーン来週による災害です。大きな自然災害に対し、まさか予算措置が取られないはずがありません。これでデフォルトリスクは低下しました。リスクが低下したからと言って、起きないとは限らないのですが。
8月25日のジャクソンホールでのFRB議長の講演では、今後政策に関するヒントがなかったように思われます。
そもそもFRBが何か言える状況ではありません。FRBの金融政策のスケジュールへの最も大きな障害は、議会の予算未承認によるデフォルトリスクかも知れません。そんなときに大きな金融政策変更が出来るはずないでしょう。
(分析事例) FOMC政策金利(2017年7月27日発表結果検証済)
(分析事例) FOMC議事録(2017年5月25日公表結果検証済)
FOMC前には備え方があります。
まず先に、発表日発表前を朝・昼・夕・夜・夜中と5つに分けて、それぞれの時間帯にトレンドが発生しやすく、それに乗れば微益を稼げば比較的安全に微益を積み重ねられる、ということを押さえておきましょう。但し、この方法はポジション保有時間が長くなる、という問題があります。
一方、国内外の大きな株式市場が開くとき、その国のUSDストレート通貨ペアの関係が数分間続きがちです(もっと続くこともありますが、ここでは数分間に注目です)。09:00の東証寄付直後1分足が陽線なら、09:01〜09:03ぐらいまで陽線が続きがちです。こちらは短時間取引で済みます。
実際のFOMC金融政策発表時刻に危ない橋を渡らなくても、こうしたやり方で数分✕数回の取引で数10pips稼ぐ方が魅力的です。
米国GDPに対し公共投資が与える影響は、日本の場合に比して小さなものです(絶対額でなく比率で考察)。従って、政府予算の配分が変わることは経済的な直接効果よりも、関連法規改正などで予算配分が増えた分野への政府支援が強まる間接効果となります(日本の場合は直接効果が大きい)。にも関わらず、そうした政策変更は、JPYに対してよりもUSDに対して大きく影響が現れがちな点が不思議です。
現在、米政権はオバマケア代案法案・税制改革・2018年度予算案(予算削減先が多い)・ロシアゲート問題・北朝鮮問題(中国問題)・多国間協定離脱の代替施策必要性(FTAやパリ協定)・政府高官の相次ぐ辞任、を抱えています。
きっと風呂敷も日本の20倍ぐらいあるのでしょう。もう「わやくそ」と言った状況です。
8月はデフォルトリスクが現実味を帯び始めました。財務長官によれば9月いっぱいの予算手当はできているそうですが、一度、数年前に期限に間に合わなかった前科があります。北朝鮮を見ればわかるように、瀬戸際交渉戦術というのは、以前よりも大きな刺激や衝撃が必要です。
この影響で9月の取引は、指標分析なんてあまり役に立たないかも知れません。
景気指標の発表結果予想では、ふたつの指標の上昇基調・下降基調といったトレンド一致を論拠にすることはできます。がしかし、先に発表された指標結果の良し悪しを論拠に、後で発表される指標結果の良し悪しを予想することはできません。
8月分景気指標は、UM速報値・CB・ISMのいずれも前回を上回りました。
9月分景気指標は、UM速報値が9月15日、CBが9月26日、ISMは10月4日、の発表予定です。
8月18日に発表された8月分UM消費者信頼感指数速報値は、総合指数(信頼感指数速報値)・期待指数が前回結果を上回り、現状指数が前回結果を下回りました。8月上旬には、ダウが22000ドルを一時的に上抜けているので、そのことと関係があるかも知れません。但し、その後はダウが下げることの方が多かったので、確定値は低下するかも知れません。
UM(ミシガン大学)消費者信頼感指数速報値とCB(カンファレンスボード)消費者信頼感指数とは、統計の目的・内容・時期が同じにも関わらず、単月毎の実態差異(発表結果ー前回結果)の方向が一致しません(一致率50%前後)。
よって、全体的なグラフの上昇基調・下降基調といったトレンドを論拠に発表結果を予想することは可ですが、単月毎の先に発表された指標結果を論拠に、後で発表される指標結果を予想することは不可です。
(分析事例) UM消費者信頼感指数速報値(2017年8月18日発表結果検証済)
8月29日に発表された8月分CB消費者信頼感指数は122.9でした。3か月連続で前回結果を上回り、グラフ推移が上昇基調に復しました。直近ピークは2017年3月分(125.6)で、今回結果はこれに次ぐ水準でした。
CB消費者信頼感指数は、直後1分足と直後11分足の方向一致率がそこそこあっても、それら終値同士を比較すると反応を伸ばしたことが33%しかありません。跳幅同士を比較すると反応を伸ばしがちなので、発表から1分を過ぎると逆張りの機会を窺った方が良い指標です。なるべくなら、取引しない方が良いでしょう。
(分析事例) CB消費者信頼感指数(2017年8月29日発表結果検証済)
9月6日に発表された8月分ISM製造業景況指数発表は55.3でした。前回(53.9)を上回り、予想(55.4)を僅かに下回ったものの、反応は陽線でした。
ISM非製造業景況指数には妙な特徴があります。市場予想が前回結果より低めになりがち(73%)です。がしかし、実際の発表結果が前回結果を下回ったことは45%です。こうした特徴を持った指標は他に見当たりません。市場予想が最もアテにならない指標だと言っても良いでしょう。
過去の傾向では、反応程度があまり大きくありません。また、反応方向は素直なものの、その方向に反応が伸び続ける訳でもないようです。指標発表後の追撃は、順張り早期開始して、さっさと利確した方が良いでしょう。
つまり、取引する上であまり魅力的な指標ではありません
(分析事例) ISM非製造業・総合景況指数(2017年9月6日発表結果検証済)
多くの指標解説書籍・記事では「NY連銀指標で動向を掴み、Phil連銀指標でそれを再確認して、ISM発表に臨むと良い」旨、記載されています。がしかし、この話をアテにすることはできません。
NY連銀結果とPhil連銀結果との実態差異一致率にせよ、Phil連銀結果とISM結果の実態差異にせよ、50%程度しか一致していていません。実態差異は、発表結果ー前回結果、で指標値の増減を表します。単月毎に見る限り、増減方向すら丁半博奕と同じぐらいしか一致していないのです。
但し、これにISM直前に発表される製造業PMIも加え「NY連銀・Phil連銀・PMIの方向が揃って一致したとき」とすると、ISM実態差異の方向一致率を70%付近まで向上できます。もちろん、そんな3つとも一致という機会は少ないため、指標予測には別の分析方法が必要です。
8月15日に発表された8月分指数は+25.2で、前回結果(+9.8)を大きく上回りました。
9月15日に発表された9月分指数は+24.4でした。
2016年1月を底として、それ以降は上下動をしながら全体的に上昇基調が続いています。5月分データが7か月ぶりにマイナス転換したことで景気減速が懸念されたものの、グラフ推移は上昇基調に保っています。上昇基調の起点は2016年1月分からです。
次回発表は10月16日の予定です。
(分析事例) NY連銀製造業景気指数(2017年7月17日発表結果検証済)
まず、事前差異(市場予想ー前回差異)のプラス率が76%と、異常な偏りがあります。がしかし、事前差異と直前10-1分足との方向一致率は37%しかありません。市場予想が高めになりがちだと、参加者は知っているのでしょう。
次に、指標発表直後の反応程度は平均的で、指標結果の良し悪しに素直に反応しがちです。事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足との方向一致率は72%です。がしかし、事後差異と直後11分足との方向一致率が58%しかありません。
発表結果が市場予想を上回っても、必ずしも反応が伸び続けるとは限りません。
そして、実態差異(発表結果ー前回結果)は、直後1分足・直後11分足との方向一致率がそれぞれ72%・70%です。反応が伸び続けて欲しければ、実態差異の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)を確認しておきましょう。
追撃は、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えたことが76%と高いので、反応方向を確認したら早期開始です。直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びたことは52%しかないので、追撃を続けるならば前述の実態差異を確認することは必須です。
8月17日に発表された8月分指数は+18.9(前回+19.5)で、反応は陽線でした。ほぼ横ばいですが、グラフ推移を見ると、今後の上昇・下降いずれも予感させます。
ただ、今回の内訳で見るべき大きな変化は、新規受注が大きく伸びたことです。前回は受注が急落(6月25.9、7月2.1)していたので、これで7月を異常値と見なすことができます。7月の受注は、2016年9月以来の低い値でした。
9月21日に発表された9月分指数は+23.8で、前回・予想を上回りました。がしかし、僅かな上昇で、まだ上昇基調に転じたようには見えません。
次回は10月19日に発表予定です。
(分析事例) Phil連銀製造業景気指数(2017年8月17日発表結果検証済)
先述の通り、NY連銀結果とPhil連銀結果との実態差異の方向一致率は、50%程度しか一致していていません。実態差異は、発表結果ー前回結果、で指標値の増減を表します。単月毎に見る限り、NY連銀製造業景気指数の良し悪しを論拠にすることはできません。
直前1分足の陰線率が75%と、異常な偏りがあります。
指標発表後の反応方向を示唆する予兆は見受けられません。
直後1分足と直後11分足の方向一致率は79%と高いものの、事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率はそれぞれ76%・66%です。直後1分足終値を超えて直後11分足終値が反応を伸ばしていたことは41%しかありません。追撃するなら、発表後早期開始して、短期利確が基本です。
9月1日に発表された8月分ISM製造業景況指数は58.8でした。グラフ推移は直近ピークだった6月分57.8を上回り、近年ピークだった2014年11月の58.7も上回っています。グラフ推移は上昇基調が明確になっています。
次回発表は10月2日です。
(分析事例) ISM製造業景況感指数(2017年8月1日発表結果検証済)
先行発表されるNY連銀指数とPhil連銀指数の実態差異方向が一致したことは、2015年1月分以降15回です。この15回のうちISM指数も同じ方向になったことは9回(期待的中率60%)です。あまりアテになる数字ではありません。
更に、本指標発表前に製造業PMIが先行発表されます。先に挙げたNY連銀とPhil連銀と、この製造業PMIとが全て前月結果との増減方向が同じだったことは、同じ期間に7回ありました。この7回のうち5回(期待的中率71%)が、ISMも先行する3指標と同方向の発表結果となっています。
アテに出来る期待的中率は、先行3指標の実態差異方向が一致した場合のみです。
そして、直後1分足と直後11分足の方向一致率は80%で、この80%の方向一致時に跳幅を伸ばしていたことは83%です。方向一致率・反応伸長率も高い以上、発表後は早期追撃開始です。直後1分足と直後11分足が終値で反応を伸ばしていたことは60%あり、複数回の追撃も可です。60%なので、短期利確で複数回が基本です。
四半期毎に発表される四半期PCEコアデフレータは、GDPと同時発表されます。
毎月発表されるPCEコアデフレータは、FRBが注目していると言われています。がしかし、最近はあまり大きな反応がありません。最近はCPIが小売売上高と同時発表されることが続いたこともあって、CPIの方が大きく反応しています。
8月10日に発表された7月分PPI・コアPPIは前回結果を下回りました。
ただ、前回よりも今回結果が低下と言っても、0.1〜0.2%程度です。この結果解釈は難しいところです。このところのUSD安と設備稼働率上昇で、製造原価は下がって当然です。
8月11日に発表された7月分CPIは前回結果を上回りました。
コアCPIは前回同値でしたが、グラフ推移を見る限りでは、CPIは下げ止まったように見受けられます。市場の解釈は、市場予想を下回っていたため一旦大きく陰線で反応したものの、発表から10分を過ぎる頃から反転し、30分を過ぎる頃には発表前の水準を超えて陽線側に転じました。
8月1日に発表された6月分PCEコアデフレータは、上昇・下降を見極めやすい前年比が前回よりやや改善しました。まだ、上昇に転じたと言えるほどではありません。
8月31日に発表された7月分PCEコアデフレータは、前期比+0.1%・前年比+1.4%でした。前年比は前期より0.1%低下しています。
(分析事例) 四半期PCEコアデフレータ(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) PCEコアデフレータ(2017年8月31日発表結果検証済)
(分析事例) CPI(2017年8月11日発表結果検証済)
(分析事例) PPI(2017年9月13日発表結果検証済)
(分析事例) 輸入物価指数(2017年7月18日発表結果検証済)
多くの指標解説書籍・記事に記されている「物価は、材料(輸入物価指数)→生産(PPI)→消費(CPI)へと下流に波及する」旨は、少なくとも最近に関する限りあてはまりません。
輸入物価とPPIとは、単月毎に前回結果と発表結果の差を求め、上流指標と下流指標の増減方向を比べた場合、一方を前後3か月ずらしても増減方向の一致率は高くありません。
PPIとCPIは「波及する」というよりも、ほぼ同時に同じ方向に向かいがちです。同月発表のPPIとCPIの実態差異は71%一致するのです。
景気を表すのは新規雇用者数と失業率で、これらについては既にFRB幹部も満足しています。だから、最近は景気を後押しする平均時給の伸びが注目されています。インフレ圧力が強まっているのに、賃金が伸びなければいずれ好調な個人消費が減少に転じ、それが経済成長を阻むと考えられているから、です。
8月30日に発表された8月分ADP民間雇用者数前月差は+23.7万人で、前回・予想を大きく上回りました。
9月1日に発表された8月分雇用統計は、NFP増減が+15.6万人、失業率が4.4%、平均時給が+0.1%でした。いずれも前回・予想を下回りました。
(分析事例) ADP民間雇用者数(2017年8月30日発表結果検証済)
(分析事例) 雇用統計(2017年9月1日発表結果検証済)
ADPは、直後1分足と直後11分足の方向一致率が高く、且つ、それらの戻り比率も小さいことから、追撃は早期開始して徹底することに適しています。
雇用統計は非常に大きな反応する指標です。発表前には、ISM製造業景況指数や同非製造業景況指数の雇用指数や、ADP雇用統計の結果を根拠に、雇用統計の良し悪しを論じる記事は多数見かけます。がしかし、少なくとも過去2年程度に関する限り、単月毎のISMの雇用指数は雇用統計の良し悪しと関係ありません。ADP結果は雇用統計結果とやや相関があるものの、それでも前月発表結果と今月発表結果の増減方向が60%も一致していません。
雇用統計発表から1分間の反応は極めて大きいため注意が必要です。発表から1分を過ぎると、それ以前のポジションは一旦利確のタイミングを計った方が良さそうです。そして、発表から10分を過ぎた頃に、再度の追撃可否をチャートと相談すると良いでしょう。やみくもに複数回の追撃を繰り替えすやり方には向いていない指標です。
2017年の政策金利利上げは3回が予定されていました。3月・6月を市場予想通り実施し、次回は12月と見なされていました。9月には、BS縮小によって引締め政策転換が実際に始まると見なされていました。
ところが、7月下旬〜8月中旬にかけて、2018年度予算が9月末までの期限に不成立との話が出て、少し状況が変わりました。デフォルトを起こしかけているのに、大きな金融政策変更なんて出来る訳ありません。その結果、12月利上げ確率が下がり、BS縮小についても実施が危ぶまれていました。
そこに、ハリケーン来週による災害です。大きな自然災害に対し、まさか予算措置が取られないはずがありません。これでデフォルトリスクは低下しました。リスクが低下したからと言って、起きないとは限らないのですが。
【4-2-1.(1) 金融政策】
8月25日のジャクソンホールでのFRB議長の講演では、今後政策に関するヒントがなかったように思われます。
そもそもFRBが何か言える状況ではありません。FRBの金融政策のスケジュールへの最も大きな障害は、議会の予算未承認によるデフォルトリスクかも知れません。そんなときに大きな金融政策変更が出来るはずないでしょう。
(分析事例) FOMC政策金利(2017年7月27日発表結果検証済)
(分析事例) FOMC議事録(2017年5月25日公表結果検証済)
FOMC前には備え方があります。
まず先に、発表日発表前を朝・昼・夕・夜・夜中と5つに分けて、それぞれの時間帯にトレンドが発生しやすく、それに乗れば微益を稼げば比較的安全に微益を積み重ねられる、ということを押さえておきましょう。但し、この方法はポジション保有時間が長くなる、という問題があります。
一方、国内外の大きな株式市場が開くとき、その国のUSDストレート通貨ペアの関係が数分間続きがちです(もっと続くこともありますが、ここでは数分間に注目です)。09:00の東証寄付直後1分足が陽線なら、09:01〜09:03ぐらいまで陽線が続きがちです。こちらは短時間取引で済みます。
実際のFOMC金融政策発表時刻に危ない橋を渡らなくても、こうしたやり方で数分✕数回の取引で数10pips稼ぐ方が魅力的です。
【4-2-1.(2) 財政政策】
米国GDPに対し公共投資が与える影響は、日本の場合に比して小さなものです(絶対額でなく比率で考察)。従って、政府予算の配分が変わることは経済的な直接効果よりも、関連法規改正などで予算配分が増えた分野への政府支援が強まる間接効果となります(日本の場合は直接効果が大きい)。にも関わらず、そうした政策変更は、JPYに対してよりもUSDに対して大きく影響が現れがちな点が不思議です。
現在、米政権はオバマケア代案法案・税制改革・2018年度予算案(予算削減先が多い)・ロシアゲート問題・北朝鮮問題(中国問題)・多国間協定離脱の代替施策必要性(FTAやパリ協定)・政府高官の相次ぐ辞任、を抱えています。
きっと風呂敷も日本の20倍ぐらいあるのでしょう。もう「わやくそ」と言った状況です。
8月はデフォルトリスクが現実味を帯び始めました。財務長官によれば9月いっぱいの予算手当はできているそうですが、一度、数年前に期限に間に合わなかった前科があります。北朝鮮を見ればわかるように、瀬戸際交渉戦術というのは、以前よりも大きな刺激や衝撃が必要です。
この影響で9月の取引は、指標分析なんてあまり役に立たないかも知れません。
【4-2-1.(3) 景気指標】
景気指標の発表結果予想では、ふたつの指標の上昇基調・下降基調といったトレンド一致を論拠にすることはできます。がしかし、先に発表された指標結果の良し悪しを論拠に、後で発表される指標結果の良し悪しを予想することはできません。
(3-1) 総合・非製造業
8月分景気指標は、UM速報値・CB・ISMのいずれも前回を上回りました。
9月分景気指標は、UM速報値が9月15日、CBが9月26日、ISMは10月4日、の発表予定です。
(3-1-1) UM消費者信頼感指数速報値
8月18日に発表された8月分UM消費者信頼感指数速報値は、総合指数(信頼感指数速報値)・期待指数が前回結果を上回り、現状指数が前回結果を下回りました。8月上旬には、ダウが22000ドルを一時的に上抜けているので、そのことと関係があるかも知れません。但し、その後はダウが下げることの方が多かったので、確定値は低下するかも知れません。
UM(ミシガン大学)消費者信頼感指数速報値とCB(カンファレンスボード)消費者信頼感指数とは、統計の目的・内容・時期が同じにも関わらず、単月毎の実態差異(発表結果ー前回結果)の方向が一致しません(一致率50%前後)。
よって、全体的なグラフの上昇基調・下降基調といったトレンドを論拠に発表結果を予想することは可ですが、単月毎の先に発表された指標結果を論拠に、後で発表される指標結果を予想することは不可です。
(分析事例) UM消費者信頼感指数速報値(2017年8月18日発表結果検証済)
(3-1-2) CB消費者信頼感指数
8月29日に発表された8月分CB消費者信頼感指数は122.9でした。3か月連続で前回結果を上回り、グラフ推移が上昇基調に復しました。直近ピークは2017年3月分(125.6)で、今回結果はこれに次ぐ水準でした。
CB消費者信頼感指数は、直後1分足と直後11分足の方向一致率がそこそこあっても、それら終値同士を比較すると反応を伸ばしたことが33%しかありません。跳幅同士を比較すると反応を伸ばしがちなので、発表から1分を過ぎると逆張りの機会を窺った方が良い指標です。なるべくなら、取引しない方が良いでしょう。
(分析事例) CB消費者信頼感指数(2017年8月29日発表結果検証済)
(3-1-3) ISM製造業景況指数
9月6日に発表された8月分ISM製造業景況指数発表は55.3でした。前回(53.9)を上回り、予想(55.4)を僅かに下回ったものの、反応は陽線でした。
ISM非製造業景況指数には妙な特徴があります。市場予想が前回結果より低めになりがち(73%)です。がしかし、実際の発表結果が前回結果を下回ったことは45%です。こうした特徴を持った指標は他に見当たりません。市場予想が最もアテにならない指標だと言っても良いでしょう。
過去の傾向では、反応程度があまり大きくありません。また、反応方向は素直なものの、その方向に反応が伸び続ける訳でもないようです。指標発表後の追撃は、順張り早期開始して、さっさと利確した方が良いでしょう。
つまり、取引する上であまり魅力的な指標ではありません
(分析事例) ISM非製造業・総合景況指数(2017年9月6日発表結果検証済)
(3-2) 製造業
多くの指標解説書籍・記事では「NY連銀指標で動向を掴み、Phil連銀指標でそれを再確認して、ISM発表に臨むと良い」旨、記載されています。がしかし、この話をアテにすることはできません。
NY連銀結果とPhil連銀結果との実態差異一致率にせよ、Phil連銀結果とISM結果の実態差異にせよ、50%程度しか一致していていません。実態差異は、発表結果ー前回結果、で指標値の増減を表します。単月毎に見る限り、増減方向すら丁半博奕と同じぐらいしか一致していないのです。
但し、これにISM直前に発表される製造業PMIも加え「NY連銀・Phil連銀・PMIの方向が揃って一致したとき」とすると、ISM実態差異の方向一致率を70%付近まで向上できます。もちろん、そんな3つとも一致という機会は少ないため、指標予測には別の分析方法が必要です。
(3-2-1) NY連銀製造業景気指数
8月15日に発表された8月分指数は+25.2で、前回結果(+9.8)を大きく上回りました。
9月15日に発表された9月分指数は+24.4でした。
2016年1月を底として、それ以降は上下動をしながら全体的に上昇基調が続いています。5月分データが7か月ぶりにマイナス転換したことで景気減速が懸念されたものの、グラフ推移は上昇基調に保っています。上昇基調の起点は2016年1月分からです。
次回発表は10月16日の予定です。
(分析事例) NY連銀製造業景気指数(2017年7月17日発表結果検証済)
まず、事前差異(市場予想ー前回差異)のプラス率が76%と、異常な偏りがあります。がしかし、事前差異と直前10-1分足との方向一致率は37%しかありません。市場予想が高めになりがちだと、参加者は知っているのでしょう。
次に、指標発表直後の反応程度は平均的で、指標結果の良し悪しに素直に反応しがちです。事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足との方向一致率は72%です。がしかし、事後差異と直後11分足との方向一致率が58%しかありません。
発表結果が市場予想を上回っても、必ずしも反応が伸び続けるとは限りません。
そして、実態差異(発表結果ー前回結果)は、直後1分足・直後11分足との方向一致率がそれぞれ72%・70%です。反応が伸び続けて欲しければ、実態差異の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)を確認しておきましょう。
追撃は、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えたことが76%と高いので、反応方向を確認したら早期開始です。直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びたことは52%しかないので、追撃を続けるならば前述の実態差異を確認することは必須です。
(3-2-2) Phil連銀製造業景気指数
8月17日に発表された8月分指数は+18.9(前回+19.5)で、反応は陽線でした。ほぼ横ばいですが、グラフ推移を見ると、今後の上昇・下降いずれも予感させます。
ただ、今回の内訳で見るべき大きな変化は、新規受注が大きく伸びたことです。前回は受注が急落(6月25.9、7月2.1)していたので、これで7月を異常値と見なすことができます。7月の受注は、2016年9月以来の低い値でした。
9月21日に発表された9月分指数は+23.8で、前回・予想を上回りました。がしかし、僅かな上昇で、まだ上昇基調に転じたようには見えません。
次回は10月19日に発表予定です。
(分析事例) Phil連銀製造業景気指数(2017年8月17日発表結果検証済)
先述の通り、NY連銀結果とPhil連銀結果との実態差異の方向一致率は、50%程度しか一致していていません。実態差異は、発表結果ー前回結果、で指標値の増減を表します。単月毎に見る限り、NY連銀製造業景気指数の良し悪しを論拠にすることはできません。
直前1分足の陰線率が75%と、異常な偏りがあります。
指標発表後の反応方向を示唆する予兆は見受けられません。
直後1分足と直後11分足の方向一致率は79%と高いものの、事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率はそれぞれ76%・66%です。直後1分足終値を超えて直後11分足終値が反応を伸ばしていたことは41%しかありません。追撃するなら、発表後早期開始して、短期利確が基本です。
(3-2-3) ISM製造業景況指数
9月1日に発表された8月分ISM製造業景況指数は58.8でした。グラフ推移は直近ピークだった6月分57.8を上回り、近年ピークだった2014年11月の58.7も上回っています。グラフ推移は上昇基調が明確になっています。
次回発表は10月2日です。
(分析事例) ISM製造業景況感指数(2017年8月1日発表結果検証済)
先行発表されるNY連銀指数とPhil連銀指数の実態差異方向が一致したことは、2015年1月分以降15回です。この15回のうちISM指数も同じ方向になったことは9回(期待的中率60%)です。あまりアテになる数字ではありません。
更に、本指標発表前に製造業PMIが先行発表されます。先に挙げたNY連銀とPhil連銀と、この製造業PMIとが全て前月結果との増減方向が同じだったことは、同じ期間に7回ありました。この7回のうち5回(期待的中率71%)が、ISMも先行する3指標と同方向の発表結果となっています。
アテに出来る期待的中率は、先行3指標の実態差異方向が一致した場合のみです。
そして、直後1分足と直後11分足の方向一致率は80%で、この80%の方向一致時に跳幅を伸ばしていたことは83%です。方向一致率・反応伸長率も高い以上、発表後は早期追撃開始です。直後1分足と直後11分足が終値で反応を伸ばしていたことは60%あり、複数回の追撃も可です。60%なので、短期利確で複数回が基本です。
【4-2-1.(4) 物価指標】
四半期毎に発表される四半期PCEコアデフレータは、GDPと同時発表されます。
毎月発表されるPCEコアデフレータは、FRBが注目していると言われています。がしかし、最近はあまり大きな反応がありません。最近はCPIが小売売上高と同時発表されることが続いたこともあって、CPIの方が大きく反応しています。
8月10日に発表された7月分PPI・コアPPIは前回結果を下回りました。
ただ、前回よりも今回結果が低下と言っても、0.1〜0.2%程度です。この結果解釈は難しいところです。このところのUSD安と設備稼働率上昇で、製造原価は下がって当然です。
8月11日に発表された7月分CPIは前回結果を上回りました。
コアCPIは前回同値でしたが、グラフ推移を見る限りでは、CPIは下げ止まったように見受けられます。市場の解釈は、市場予想を下回っていたため一旦大きく陰線で反応したものの、発表から10分を過ぎる頃から反転し、30分を過ぎる頃には発表前の水準を超えて陽線側に転じました。
8月1日に発表された6月分PCEコアデフレータは、上昇・下降を見極めやすい前年比が前回よりやや改善しました。まだ、上昇に転じたと言えるほどではありません。
8月31日に発表された7月分PCEコアデフレータは、前期比+0.1%・前年比+1.4%でした。前年比は前期より0.1%低下しています。
(分析事例) 四半期PCEコアデフレータ(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) PCEコアデフレータ(2017年8月31日発表結果検証済)
(分析事例) CPI(2017年8月11日発表結果検証済)
(分析事例) PPI(2017年9月13日発表結果検証済)
(分析事例) 輸入物価指数(2017年7月18日発表結果検証済)
多くの指標解説書籍・記事に記されている「物価は、材料(輸入物価指数)→生産(PPI)→消費(CPI)へと下流に波及する」旨は、少なくとも最近に関する限りあてはまりません。
輸入物価とPPIとは、単月毎に前回結果と発表結果の差を求め、上流指標と下流指標の増減方向を比べた場合、一方を前後3か月ずらしても増減方向の一致率は高くありません。
PPIとCPIは「波及する」というよりも、ほぼ同時に同じ方向に向かいがちです。同月発表のPPIとCPIの実態差異は71%一致するのです。
【4-2-1.(5) 雇用指標】
景気を表すのは新規雇用者数と失業率で、これらについては既にFRB幹部も満足しています。だから、最近は景気を後押しする平均時給の伸びが注目されています。インフレ圧力が強まっているのに、賃金が伸びなければいずれ好調な個人消費が減少に転じ、それが経済成長を阻むと考えられているから、です。
8月30日に発表された8月分ADP民間雇用者数前月差は+23.7万人で、前回・予想を大きく上回りました。
9月1日に発表された8月分雇用統計は、NFP増減が+15.6万人、失業率が4.4%、平均時給が+0.1%でした。いずれも前回・予想を下回りました。
(分析事例) ADP民間雇用者数(2017年8月30日発表結果検証済)
(分析事例) 雇用統計(2017年9月1日発表結果検証済)
ADPは、直後1分足と直後11分足の方向一致率が高く、且つ、それらの戻り比率も小さいことから、追撃は早期開始して徹底することに適しています。
雇用統計は非常に大きな反応する指標です。発表前には、ISM製造業景況指数や同非製造業景況指数の雇用指数や、ADP雇用統計の結果を根拠に、雇用統計の良し悪しを論じる記事は多数見かけます。がしかし、少なくとも過去2年程度に関する限り、単月毎のISMの雇用指数は雇用統計の良し悪しと関係ありません。ADP結果は雇用統計結果とやや相関があるものの、それでも前月発表結果と今月発表結果の増減方向が60%も一致していません。
雇用統計発表から1分間の反応は極めて大きいため注意が必要です。発表から1分を過ぎると、それ以前のポジションは一旦利確のタイミングを計った方が良さそうです。そして、発表から10分を過ぎた頃に、再度の追撃可否をチャートと相談すると良いでしょう。やみくもに複数回の追撃を繰り替えすやり方には向いていない指標です。
以上
4-2-2. 米国経済実態指標(2017年9月版)
財政収支・国際収支の赤字が続いていても、主要先進国において米国経済は最も好調です。そういう実態を踏まえると、我々アマチュアにも現状の景気の良し悪しを最もわかりやすく表しているのがGDPです。
FX会社HPで重要度・注目度が高く位置付けられていても、反応が小さな指標が多い点が特徴です。
平均的に最も大きく反応する指標は小売売上高で、生産関係の指標はほとんど反応しません。
6月29日に発表された1-3月期GDP確定値は、改定値を上回って1.4%となりました。雇用状況が好調ゆえに、速報値の0.7%・改定値の1.2%よりもいずれ盛り返す、というFOMC見解は正しかったのでしょう。
そして、7月28日に発表された4-6月期GDP速報値は、期待通り+2.6%まで上昇しました。それにも関わらず、一部市場予想を下回ったため、発表直後の反応は陰線です。+2.6%という数字は、1-3月期の+1.4%だけでなく、10-12月期の+2.1%も上回っていたのに、です。
8月30日に発表されたGDP改定値の+3.0%という数字は、直近だと2016年7-9月期分の+3.2%に次ぐ水準です(改定値比較)。米GDPは夏頃(4-6月期か7-9月期)に毎年ピークを迎えます。
(分析事例) 四半期GDP速報値(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP改定値(2017年8月30日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP確定値(2017年6月29日発表結果検証済)
速報値は、初期に比較的安定して大きく反応するものの、その後は伸び悩む傾向があります。
改定値の市場予想は低めになりがちで、発表結果は高めになりがちです。結果、直前10-1分足・直後1分足・直後11分足の陽線率がいずれも70%前後と、かなり偏っています。
また、直後1分足の戻り比率は13%しかないものの、直後11分足のそれは42%もあります。その結果、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったことが69%にも達しています。よって、追撃は発表から1分過ぎまでで、その後は値を戻しがちです。
GDPに直接大きな影響を与えるPCEへの反応より、PCE結果を示唆する小売売上高への反応の方が大きくなる傾向があります。そして、GDPに占める比率が小さな生産関連指標や、個人消費に占める比率が高いと思われる住宅関連指標は、反応が小さい傾向があります。
米国GDPの約70%は個人消費(PCE)が占めています。その個人消費に直結する先行指標は小売売上高と考えられます。
8月15日に発表された7月分小売売上高は、前月比・コア前月比(除輸送機器)ともに前回・予想を上回り、反応は陽線でした。発表直後陽線は5か月ぶりでした。
指標のグラフ推移は、前月比・コア前月比ともに直近ピークの2017年4月を上回り、前月比は2016年12月以来、コア前月比は2017年1月以来の良い数字です。それらの時期はトランプ相場終盤の最も米国指標全般に良かった時期です。
8月30日に発表された4-6月期四半期PCE改定値は+3.3%で、この値は2016年4-6月期分の+4.4%に次ぐ水準でした(改定値比較)。7月28日に発表された4-6月期PCE速報値は+2.8%だったので、かなり大きな上方改定です。
8月31日に発表された7月分PCEは+0.3%(前回+0.1%)、同月分個人所得は+0.4%(前回0%)でした。前月に引き続き、個人所得0%は2016年11月以来です。
(分析事例) 四半期PCE速報値(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期PCE改定値(2017年8月30日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期PCE確定値(2017年6月29日発表結果検証済)
(分析事例) PCE・個人所得(2017年8月31日発表結果検証済)
(分析事例) 小売売上高(2017年8月15日発表結果検証済)
四半期PCEはGDPと同時発表されます。
多くのFX会社が重要度・注目度を高く評価しているにも関わらず、毎月のPCE・個人所得は、反応が小さい指標です。但し、反応方向は、直前10-1分足の方向と一致する傾向があり、発表から暫くしてもその方向に反応が伸びやすい、という特徴があります。
PCEは、CB消費者信頼感指数や小売売上高が先行指標だという話があります。がしかし、同月集計の両指標の実態差異はともに50%前後で、相関があるとは言えません。
初期反応は小さく、指標結果に素直に反応しがちです。発表から1分を過ぎても暫く反応を伸ばしがちですが、時間が経つと反応を伸ばし続けるか否か怪しくなります。追撃は早期参加し、短期利確を繰り返しながら複数回に分けて行った方が良いでしょう。
小売売上高は、CPI結果との実態差異の方向一致率が高い指標です(同時発表されることも多い)。指標発表後の反応は大きく一方向に伸びやすいため、追撃に適した指標だと言えます。
個人資産というのは、金融資産と住宅とがほとんどです。住宅は(ふつう)個人消費で最大の金額です。なので、住宅指標の良し悪しは、経済実態(個人消費)に直接的(住宅購入)にも間接的(家具等の耐久財購入)にも影響が大きい、と考えられています。
現在、米国住宅市場は在庫不足で、低価格帯住宅の販売が好調です。
8月23日に発表された7月分新築住宅販売件数は、年換算販売件数が57.1万件で、前月比が△9.4%でした。
8月24日に発表された7月分中古住宅販売件数は、年換算販売件数が544万件で、前月比が△1.3%でした。中古住宅在庫は26か月連続で前年水準を下回りました。その結果、販売価格が前年同月比で+6.2%となっています。
(分析事例) 新築住宅販売件数(2017年8月23日23:00発表結果検証済)
(分析事例) 中古住宅販売件数(2017年8月24日23:00発表結果検証済)
ともに、FX会社HPなどでは注目度や重要度が高く評価されている指標です。これら指標結果を予想するための指標も多く発表されているものの、これら指標自体の反応は小さく、よっぽど長期ポジションを持つFX参加者を除けば大して重要ではありません。
新築住宅販売件数は中古住宅販売件数より1〜2か月先行するという話があります。その理由の論理飛躍は、異なる客層の行動原理が異なることを無視した誤解が広く流布されたため、と考えられます。実際には両指標のどちらが先行指標であるにせよ、両指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は増減方向すら一致率が高くありません。
ただ、新築住宅販売件数はユニークで、取引上の魅力があります。
指標発表前に予兆的な動きが見受けられることと、発表から1分経過後の追撃に逆張りが適している点で、他の指標で見られない特徴を有しているからです。大したpipsは稼げないものの、勝ちやすい指標かも知れません。これは魅力です。
そして、中古住宅販売件数は、指標発表前に発表直後の反応方向を示唆する偏りが、いくつか過去事例から見出せます。指標発表後も一方向に反応を伸ばしやすいという傾向が見受けられます。これも、取引しやすい指標なのです。
鉱工業(含製造業・エネルギー産業)は、米国GDPの約12%しか占めていません。だから、製造業の好不調が米国経済に与える直接効果は小さい、と捉えています。雇用指標・景気指標・国際収支に影響すると考えているので記録を取って見ていますが、反応が小さくそのときどきのトレンドに呑まれがちなため、指標分析に基づく取引には適していません。
8月17日に発表された7月分鉱工業生産・製造業生産は前回より低下しました。低下幅は、これら指標の過去推移に比べて正常範囲内です。よって、今回の発表があっても鉱工業生産と製造業生産のグラフ推移からは、変化の兆しが窺えません。ただ、設備稼働率は、2016年11月分以降の上昇基調が77%手前で4か月連続停滞しています。
グラフ推移から鉱工業・製造業の好不調を見やすい設備稼働率を見る限り、ここ最近の製造関連景気指標の低下は説明が付かない現象でした。
8月25日に発表された7月分耐久財受注前月比は、前回を大きく下回り△6.8%(前回+6.5%)ました。コア受注は+0.5%(前回+0.2%)でした。
(分析事例) 鉱工業生産・製造業生産・設備稼働率(2017年8月17日発表結果検証済)
(分析事例) 耐久財受注(2017年8月25日発表結果検証済)
指標発表直後1分足跳幅が数pipsしかない指標では、指標結果に素直に反応しがち(事後差異と直後1分足の方向一致率が70%以上)で、且つ、指標結果の予想ができなければ取引する意味がありません。
僅か数pipsしか跳ねない指標では、比較的稼ぎやすい反応方向を確認してからの追撃をうまく出来ても、もっと小さなpipsしか得られません。何より、指標発表直後にすら大きく跳ねない指標は、もし反応を伸ばしがちだという分析結論を得ても、それが単にそのときどきのトレンドに偏りがあったことと区別ができないからです。
耐久財受注は、先に発表される鉱工業生産(同時に製造業生産・設備稼働率が発表)の実態差異(発表結果ー前回結果)との方向一致率が77%となり、両指標の良し悪しに相関があります。
最近は毎月400億ドル台の貿易赤字が続いています。毎月400億ドルという大きさは、年間で日本の国家予算近い規模の赤字ということです。米国の経済規模というのは本当にすごいのですね。
8月4日に発表された6月分貿易収支は、前月比△5.9%の465億ドルの赤字でした。
前月発表(5月分)では、内訳の輸出が2年ぶりの高水準でした。石油輸出が好調なだけでなく、輸出全体が約2年半ぶりの好調さです。今回発表では収支全体が2016年10月以来の赤字縮小でした。がしかし、直近の収支はここ2・3年で赤字が大きな時期に属します。赤字縮小に向かっている兆しは、まだグラフ推移から見出せません。
対中貿易赤字は+3.1%増加し、輸出が減って(△4.7%)、輸入が増えていました(+1.2%)。
米貿易赤字の47%は対中赤字です(2016年)。
7月16日に期日を迎えた米中100日計画は、早い時期にいくつかの合意がありました。中国市場への米国産牛肉輸出再開、米金融機関が中国市場で格付け業務・債券売買に参入、米LNG(液化天然ガス)輸出、といった内容です。その後、新たな合意についての報道がありません。これらの合意成果は、まだ指標結果に反映されていません。
8月18日、USTR(米通商代表部)は、通商法301条に基づく中国の知的財産権侵害調査を開始しました。8月24日、中国商務省は、国益を守るために必要なあらゆる手段を講じる、と表明しました。
(分析事例) 貿易収支(2017年4月4日発表結果検証済)
本指標の特徴は、貿易赤字が多少増えようが減ろうが、発表直後の反応方向にあまり関係ありません。発表時刻の関係で、他の大きな指標と同時発表されることも多く、その結果、見掛け上の反応平均値は大きくなっています。単独で発表される場合には、あまり反応しない指標です。
本指標結果や内訳を論拠に、米政権からの2国間貿易収支に関する牽制発言があり得ます。本指標の意義は、毎月の貿易赤字の多寡よりも、そうした発言でUSDJPYが動くことへの警鐘を与えてくれることです。
FX会社HPで重要度・注目度が高く位置付けられていても、反応が小さな指標が多い点が特徴です。
平均的に最も大きく反応する指標は小売売上高で、生産関係の指標はほとんど反応しません。
【4-2-2.(1).経済成長】
6月29日に発表された1-3月期GDP確定値は、改定値を上回って1.4%となりました。雇用状況が好調ゆえに、速報値の0.7%・改定値の1.2%よりもいずれ盛り返す、というFOMC見解は正しかったのでしょう。
そして、7月28日に発表された4-6月期GDP速報値は、期待通り+2.6%まで上昇しました。それにも関わらず、一部市場予想を下回ったため、発表直後の反応は陰線です。+2.6%という数字は、1-3月期の+1.4%だけでなく、10-12月期の+2.1%も上回っていたのに、です。
8月30日に発表されたGDP改定値の+3.0%という数字は、直近だと2016年7-9月期分の+3.2%に次ぐ水準です(改定値比較)。米GDPは夏頃(4-6月期か7-9月期)に毎年ピークを迎えます。
(分析事例) 四半期GDP速報値(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP改定値(2017年8月30日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP確定値(2017年6月29日発表結果検証済)
速報値は、初期に比較的安定して大きく反応するものの、その後は伸び悩む傾向があります。
改定値の市場予想は低めになりがちで、発表結果は高めになりがちです。結果、直前10-1分足・直後1分足・直後11分足の陽線率がいずれも70%前後と、かなり偏っています。
また、直後1分足の戻り比率は13%しかないものの、直後11分足のそれは42%もあります。その結果、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったことが69%にも達しています。よって、追撃は発表から1分過ぎまでで、その後は値を戻しがちです。
【4-2-2.(2) 実態指標】
GDPに直接大きな影響を与えるPCEへの反応より、PCE結果を示唆する小売売上高への反応の方が大きくなる傾向があります。そして、GDPに占める比率が小さな生産関連指標や、個人消費に占める比率が高いと思われる住宅関連指標は、反応が小さい傾向があります。
(2-1) 消費関連
米国GDPの約70%は個人消費(PCE)が占めています。その個人消費に直結する先行指標は小売売上高と考えられます。
8月15日に発表された7月分小売売上高は、前月比・コア前月比(除輸送機器)ともに前回・予想を上回り、反応は陽線でした。発表直後陽線は5か月ぶりでした。
指標のグラフ推移は、前月比・コア前月比ともに直近ピークの2017年4月を上回り、前月比は2016年12月以来、コア前月比は2017年1月以来の良い数字です。それらの時期はトランプ相場終盤の最も米国指標全般に良かった時期です。
8月30日に発表された4-6月期四半期PCE改定値は+3.3%で、この値は2016年4-6月期分の+4.4%に次ぐ水準でした(改定値比較)。7月28日に発表された4-6月期PCE速報値は+2.8%だったので、かなり大きな上方改定です。
8月31日に発表された7月分PCEは+0.3%(前回+0.1%)、同月分個人所得は+0.4%(前回0%)でした。前月に引き続き、個人所得0%は2016年11月以来です。
(分析事例) 四半期PCE速報値(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期PCE改定値(2017年8月30日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期PCE確定値(2017年6月29日発表結果検証済)
(分析事例) PCE・個人所得(2017年8月31日発表結果検証済)
(分析事例) 小売売上高(2017年8月15日発表結果検証済)
四半期PCEはGDPと同時発表されます。
多くのFX会社が重要度・注目度を高く評価しているにも関わらず、毎月のPCE・個人所得は、反応が小さい指標です。但し、反応方向は、直前10-1分足の方向と一致する傾向があり、発表から暫くしてもその方向に反応が伸びやすい、という特徴があります。
PCEは、CB消費者信頼感指数や小売売上高が先行指標だという話があります。がしかし、同月集計の両指標の実態差異はともに50%前後で、相関があるとは言えません。
初期反応は小さく、指標結果に素直に反応しがちです。発表から1分を過ぎても暫く反応を伸ばしがちですが、時間が経つと反応を伸ばし続けるか否か怪しくなります。追撃は早期参加し、短期利確を繰り返しながら複数回に分けて行った方が良いでしょう。
小売売上高は、CPI結果との実態差異の方向一致率が高い指標です(同時発表されることも多い)。指標発表後の反応は大きく一方向に伸びやすいため、追撃に適した指標だと言えます。
(2-2) 住宅関連
個人資産というのは、金融資産と住宅とがほとんどです。住宅は(ふつう)個人消費で最大の金額です。なので、住宅指標の良し悪しは、経済実態(個人消費)に直接的(住宅購入)にも間接的(家具等の耐久財購入)にも影響が大きい、と考えられています。
現在、米国住宅市場は在庫不足で、低価格帯住宅の販売が好調です。
8月23日に発表された7月分新築住宅販売件数は、年換算販売件数が57.1万件で、前月比が△9.4%でした。
8月24日に発表された7月分中古住宅販売件数は、年換算販売件数が544万件で、前月比が△1.3%でした。中古住宅在庫は26か月連続で前年水準を下回りました。その結果、販売価格が前年同月比で+6.2%となっています。
(分析事例) 新築住宅販売件数(2017年8月23日23:00発表結果検証済)
(分析事例) 中古住宅販売件数(2017年8月24日23:00発表結果検証済)
ともに、FX会社HPなどでは注目度や重要度が高く評価されている指標です。これら指標結果を予想するための指標も多く発表されているものの、これら指標自体の反応は小さく、よっぽど長期ポジションを持つFX参加者を除けば大して重要ではありません。
新築住宅販売件数は中古住宅販売件数より1〜2か月先行するという話があります。その理由の論理飛躍は、異なる客層の行動原理が異なることを無視した誤解が広く流布されたため、と考えられます。実際には両指標のどちらが先行指標であるにせよ、両指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は増減方向すら一致率が高くありません。
ただ、新築住宅販売件数はユニークで、取引上の魅力があります。
指標発表前に予兆的な動きが見受けられることと、発表から1分経過後の追撃に逆張りが適している点で、他の指標で見られない特徴を有しているからです。大したpipsは稼げないものの、勝ちやすい指標かも知れません。これは魅力です。
そして、中古住宅販売件数は、指標発表前に発表直後の反応方向を示唆する偏りが、いくつか過去事例から見出せます。指標発表後も一方向に反応を伸ばしやすいという傾向が見受けられます。これも、取引しやすい指標なのです。
(2-3) 生産関連
鉱工業(含製造業・エネルギー産業)は、米国GDPの約12%しか占めていません。だから、製造業の好不調が米国経済に与える直接効果は小さい、と捉えています。雇用指標・景気指標・国際収支に影響すると考えているので記録を取って見ていますが、反応が小さくそのときどきのトレンドに呑まれがちなため、指標分析に基づく取引には適していません。
8月17日に発表された7月分鉱工業生産・製造業生産は前回より低下しました。低下幅は、これら指標の過去推移に比べて正常範囲内です。よって、今回の発表があっても鉱工業生産と製造業生産のグラフ推移からは、変化の兆しが窺えません。ただ、設備稼働率は、2016年11月分以降の上昇基調が77%手前で4か月連続停滞しています。
グラフ推移から鉱工業・製造業の好不調を見やすい設備稼働率を見る限り、ここ最近の製造関連景気指標の低下は説明が付かない現象でした。
8月25日に発表された7月分耐久財受注前月比は、前回を大きく下回り△6.8%(前回+6.5%)ました。コア受注は+0.5%(前回+0.2%)でした。
(分析事例) 鉱工業生産・製造業生産・設備稼働率(2017年8月17日発表結果検証済)
(分析事例) 耐久財受注(2017年8月25日発表結果検証済)
指標発表直後1分足跳幅が数pipsしかない指標では、指標結果に素直に反応しがち(事後差異と直後1分足の方向一致率が70%以上)で、且つ、指標結果の予想ができなければ取引する意味がありません。
僅か数pipsしか跳ねない指標では、比較的稼ぎやすい反応方向を確認してからの追撃をうまく出来ても、もっと小さなpipsしか得られません。何より、指標発表直後にすら大きく跳ねない指標は、もし反応を伸ばしがちだという分析結論を得ても、それが単にそのときどきのトレンドに偏りがあったことと区別ができないからです。
耐久財受注は、先に発表される鉱工業生産(同時に製造業生産・設備稼働率が発表)の実態差異(発表結果ー前回結果)との方向一致率が77%となり、両指標の良し悪しに相関があります。
【4-2-2.(3) 貿易指標】
最近は毎月400億ドル台の貿易赤字が続いています。毎月400億ドルという大きさは、年間で日本の国家予算近い規模の赤字ということです。米国の経済規模というのは本当にすごいのですね。
8月4日に発表された6月分貿易収支は、前月比△5.9%の465億ドルの赤字でした。
前月発表(5月分)では、内訳の輸出が2年ぶりの高水準でした。石油輸出が好調なだけでなく、輸出全体が約2年半ぶりの好調さです。今回発表では収支全体が2016年10月以来の赤字縮小でした。がしかし、直近の収支はここ2・3年で赤字が大きな時期に属します。赤字縮小に向かっている兆しは、まだグラフ推移から見出せません。
対中貿易赤字は+3.1%増加し、輸出が減って(△4.7%)、輸入が増えていました(+1.2%)。
米貿易赤字の47%は対中赤字です(2016年)。
7月16日に期日を迎えた米中100日計画は、早い時期にいくつかの合意がありました。中国市場への米国産牛肉輸出再開、米金融機関が中国市場で格付け業務・債券売買に参入、米LNG(液化天然ガス)輸出、といった内容です。その後、新たな合意についての報道がありません。これらの合意成果は、まだ指標結果に反映されていません。
8月18日、USTR(米通商代表部)は、通商法301条に基づく中国の知的財産権侵害調査を開始しました。8月24日、中国商務省は、国益を守るために必要なあらゆる手段を講じる、と表明しました。
(分析事例) 貿易収支(2017年4月4日発表結果検証済)
本指標の特徴は、貿易赤字が多少増えようが減ろうが、発表直後の反応方向にあまり関係ありません。発表時刻の関係で、他の大きな指標と同時発表されることも多く、その結果、見掛け上の反応平均値は大きくなっています。単独で発表される場合には、あまり反応しない指標です。
本指標結果や内訳を論拠に、米政権からの2国間貿易収支に関する牽制発言があり得ます。本指標の意義は、毎月の貿易赤字の多寡よりも、そうした発言でUSDJPYが動くことへの警鐘を与えてくれることです。
以上
2017年08月31日
米国雇用統計発表前後のUSDJPY反応分析(2017年9月1日21:30発表結果検証済)
以下、「T.指標予想要点」「U.過去調査詳細」を事前投稿し、「V.発表結果検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「V.発表結果検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年9月1日21:30に米国雇用指標「雇用統計」が発表されます。今回発表は2017年8月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
米国雇用統計は、市場の関心が最も高い経済指標として有名です。
過去に最も反応したのはNFP(非農業部門雇用者数)ですが、最近は平均時給への注目が高まっています。これは、以前にFRB幹部が注目していると発言したからです。現在、米国経済は成長とインフレが持続しています。インフレが進むのに賃金が上昇しなければ、いずれ成長が腰折れしてしまいます。だから、FRBは平均時給の上昇に関心があるのです。
最も市場の関心を集めるだけに、雇用統計の結果を事前分析した記事は、毎月数多く見受けられます。
例えば、ISM製造業景況指数や同非製造業景況指数の内訳には、雇用指数というのがあります。また、ADP民間雇用者数も有名です。同月のこれら指数・指標結果に絡めて当月の雇用統計の結果を論じる記事は、かなり多く見受けられます。
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で50pipsにも達しています。反応が非常に大きいため、指標発表時刻を跨いでポジションを持つことは慎重でなければいけません。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
次に、見るべきポイントを絞り込むため、主要項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上3行は、各項目をひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
上から4行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から5行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段6行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
結果、1✕NFP増減事前差異[万人]+15✕失業率事前差異[%]ー2✕平均時給事前差異[%]、という判別式で求めた解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)は、直前10-1分足との方向一致率が76%です。
同様に、1✕NFP増減事後差異[万人]ー10✕失業率事後差異[%]+30✕平均時給事後差異[%]、という判別式で求めた解の符号は、直後1分足との方向一致率が87%です。
実態差異判別式も高い一致率を示していますが、事後差異よりも一致率が低いので用いることはないでしょう。
ADP雇用統計の結果は、本指標のうちNFPを先行示唆する、と言われています。
相関の有無は、それぞれの指標の実態差異(発表結果ー前回結果)を用いて調べます。事前差異・事後差異・実態差異のうち、市場予想が含まれないのは実態差異だけだからです。もし両指標の間に相関があるなら、実態差異(発表結果ー前回結果)に現れるはずです。
2015年1月以降前回発表までの31回について調べたところ、結果は実態差異一致率は58でした。
期待的中率58%なら、他の分析をアテにした方が良いでしょう。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が7pipsです。跳幅がその1.5倍の10pips以上だったことは過去8回(頻度26%)あります。
この8回の直後1分足跳幅は46pipsで、これは直後1分足の過去全平均50pipsとほぼ同じです。また、この8回の直前10-1分足と直後1分足の方向が一致したことは3回(一致率38%)です。
つまり、直前10-1分足の反応がいつもより大きくても、それが直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は16pipsです。16pipsという数字は、多くの指標の発表直後反応と同じぐらい動いています。
この跳幅が20pips以上だったことは過去7回(頻度23%)です。
この7回の直後1分足跳幅の平均は53pipsで、これは過去全平均50pipsとほぼ同じです。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向が一致したことは2回(一致率29%)です。
つまり、直前1分足の反応が20pips以上に達しても、それが直後1分足の反応が大きいとは言えません。但し、こうした場合には、直後1分足が直前1分足と逆方向に反応することが多いようです(71%)。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は13pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率26%)です。直後11分足のそれは19pips(戻り比率31%)です。反応が大きい指標だけに戻りのpipsも大きいので、高値(安値)掴みには気を付けましょう。
直後1分足の過去平均跳幅は50pipsです。
過去平均の50pipsを超えたことは13回(頻度42%)です。この13回の事例では、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えたことが8回(62%)です。終値同士を比較した場合、反応が伸びたことは6回(46%)です。
直後1分足が大きく跳ねても、その後に反応を伸ばし続けるとは言えません。
この結果は過去の経験に反しています。
雇用統計の初期反応が大きい場合、反応が長時間に亘って一方向に継続することが多いのです。よって、そうした大きく反応するときには、発表から11分経過した頃に戻りが起きやすいと理解した方がしっくりきます。
ならば、直後1分足が50pips以上跳ねたときには、この頃(直後11分足終値がつく頃)に再追撃を行うか否か、再びチャートと相談すれば良いのです。
この項は、定量データによる裏付けがなく、過去の感触に基づくことにご注意ください。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事前差異と直前10-1分足の方向一致率は76%です。今回の事前差異はマイナスなので、直前10-1分足が陰線となる期待的中率が76%ということです。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率がそれぞれ87%・81%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応する指標です。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足は陰線率が84%と、偏りが目立ちます。他のローソク足には、そういった単純で極端な偏りは見受けられません。
そして、直後1分足と直後11分足の方向一致率は87%です。反転リスクはあまり考えなくても良いものの、とはいえ、直後11分足が直後1分足の値幅を削ることもあります。直後1分足の反応が大きい指標だけに、その点は注意が必要です。
その他、先に形成されたローソク足が、後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は87%です。そして、その87%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは81%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びたことは48%です。48%という数字は、早期追撃で得たポジションは、指標発表から1分を過ぎたら早めに利確した方が良いということです。伸びるか伸びないかが半々ですから、無理する必要なんてありません。
過去の経験から言えば、この分析に現れていない「騙し」が過去に散見されます。ここで言う「騙し」とは、発表と同時もしくは発表から3秒ぐらい、その後と逆方向に反応が生じることが多いのです。もちろん、3秒を過ぎて反転したこともあったでしょうから、これは特に記憶に残っている感触です。
追撃方向をあまり拙速に決めると、痛い目に遭うことも多いので、この点はご注意ください。
そして、発表から1分経過時点での関心は、いつ利確(損切)するかと、更に追撃を行うか、です。
直後1分足終値に対し直後11分足終値が伸びていたことは、意外に小さく50%未満しかありません。よって、発表から1分以内に取得した追撃ポジションは、発表から1分を過ぎたら利確のタイミングを見つけた方が良いでしょう。
複数回の追撃を行うなら、高値(安値)掴みには気を付けましょう。
通常の反応程度の指標では、15分足と1時間足のチャートでレジスタンスやサポートを事前に手元にメモしておくだけで、追撃の成功率がだいぶ改善できます。がしかし、雇用統計は非常に大きく反応する指標です。4時間足と日足のチャートで、事前にレジスタンスやサポートをメモして手元に置いて取引した方が良いでしょう。
たったこれだけの習慣で、追撃の収益率は2倍(成功率はもっと)になるものです。2倍というのは感触で、定量的な裏付けはありません。
そして、経済指標発表時の取引で追撃の収益率が倍になるということは、指標発表時以外の取引の1日分の収益を時間圧縮して確保できるということです。1日分というのは感触で、これも定量的な裏付けはありません。
何かいちいち但し書きが面倒ですが、だいたいそういうことです。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以下は2017年9月1日22:26頃に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は全項目が前回・予想を下回り、反応は陰線でした。
それでも、発表から10分後には反転が始まり、22:00前には発表前の値まで戻しました。この反応は何でしょう。再来週のFOMCでの引締め政策延期を睨んでいるのでしょうか。
取引結果は次の通りでした。
問題ありません。
事前調査分析内容には問題ありません。
事前準備していたシナリオには問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
T.指標予想要点
2017年9月1日21:30に米国雇用指標「雇用統計」が発表されます。今回発表は2017年8月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 指標発表から1分間の反応は極めて大きいため注意が必要です。その間の反応方向は、本指標取引に多くのプロが参加するため、個別項目の良し悪しだけでなく総合的な解釈によって決まります。一見すると素直とは言えない場合も散見されます。
1✕NFP増減事後差異[万人]ー10✕失業率事後差異[%]+30✕平均時給事後差異[%]、という判別式で求めた解の符号は、直後1分足との方向一致率が87%です。事後差異とは(発表結果ー市場予想)のことです。 - 発表から1分を過ぎると、それ以前のポジションは一旦利確の機会を探った方が良さそうです。そして、発表から10分を過ぎた頃に、再度の追撃可否をチャートと相談すると良いでしょう。やみくもに複数回の追撃を繰り替えすやり方には向いていない指標です。
- 先に発表されたADP民間雇用者数の結果は、雇用統計発表直後の反応方向を当てるための判断材料として、大してアテになりません。
ADPとNFP増減の実態差異(発表結果ー前回結果)の一致率は58%です。そして、総合的な雇用統計の結果と対比するため、両指標の直後1分足の方向一致率を調べると50%前後しかありません。
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前10-1分足は陰線と見込みます。
論拠は、指標一致性分析で事前差異(指標予想ー前回結果)との方向一致率が76%あるため、です。 - 直前1分足は陰線と見込みます。
論拠は、反応一致性分析の結果、過去の陰線率が84%と高いことです。 - もし、直前1分足跳幅が20pipsを超えた(超えそう)なら、指標発表直前にその跳ねと逆方向にポジションを取ります。指標発表直後の跳ねで利確(損切)です。
過去事例では、直前1分足が20pips以上跳ねたことが23%あります。この23%の事例では、直前1分足と直後1分足の方向が一致したことは29%しかありません。 - 指標発表後の追撃は早期開始し、発表から1分をを過ぎたら決済のタイミングを計ります。
論拠は、反応性分析の結果に依ります。 - 指標発表から10分経過した頃、再度追撃を行うか否かを決めます。直後1分足跳幅が50pips以上の場合は再追撃です。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
米国雇用統計は、市場の関心が最も高い経済指標として有名です。
過去に最も反応したのはNFP(非農業部門雇用者数)ですが、最近は平均時給への注目が高まっています。これは、以前にFRB幹部が注目していると発言したからです。現在、米国経済は成長とインフレが持続しています。インフレが進むのに賃金が上昇しなければ、いずれ成長が腰折れしてしまいます。だから、FRBは平均時給の上昇に関心があるのです。
最も市場の関心を集めるだけに、雇用統計の結果を事前分析した記事は、毎月数多く見受けられます。
例えば、ISM製造業景況指数や同非製造業景況指数の内訳には、雇用指数というのがあります。また、ADP民間雇用者数も有名です。同月のこれら指数・指標結果に絡めて当月の雇用統計の結果を論じる記事は、かなり多く見受けられます。
ーーー$€¥ーーー
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で50pipsにも達しています。反応が非常に大きいため、指標発表時刻を跨いでポジションを持つことは慎重でなければいけません。
【2. 既出情報】
(2-1. 過去情報)
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
次に、見るべきポイントを絞り込むため、主要項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上3行は、各項目をひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
上から4行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から5行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段6行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
結果、1✕NFP増減事前差異[万人]+15✕失業率事前差異[%]ー2✕平均時給事前差異[%]、という判別式で求めた解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)は、直前10-1分足との方向一致率が76%です。
同様に、1✕NFP増減事後差異[万人]ー10✕失業率事後差異[%]+30✕平均時給事後差異[%]、という判別式で求めた解の符号は、直後1分足との方向一致率が87%です。
実態差異判別式も高い一致率を示していますが、事後差異よりも一致率が低いので用いることはないでしょう。
ーーー$€¥ーーー
ADP雇用統計の結果は、本指標のうちNFPを先行示唆する、と言われています。
相関の有無は、それぞれの指標の実態差異(発表結果ー前回結果)を用いて調べます。事前差異・事後差異・実態差異のうち、市場予想が含まれないのは実態差異だけだからです。もし両指標の間に相関があるなら、実態差異(発表結果ー前回結果)に現れるはずです。
2015年1月以降前回発表までの31回について調べたところ、結果は実態差異一致率は58でした。
期待的中率58%なら、他の分析をアテにした方が良いでしょう。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が7pipsです。跳幅がその1.5倍の10pips以上だったことは過去8回(頻度26%)あります。
この8回の直後1分足跳幅は46pipsで、これは直後1分足の過去全平均50pipsとほぼ同じです。また、この8回の直前10-1分足と直後1分足の方向が一致したことは3回(一致率38%)です。
つまり、直前10-1分足の反応がいつもより大きくても、それが直後1分足の反応程度や方向を示唆しているとは言えません。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は16pipsです。16pipsという数字は、多くの指標の発表直後反応と同じぐらい動いています。
この跳幅が20pips以上だったことは過去7回(頻度23%)です。
この7回の直後1分足跳幅の平均は53pipsで、これは過去全平均50pipsとほぼ同じです。そして、このとき直前1分足と直後1分足の方向が一致したことは2回(一致率29%)です。
つまり、直前1分足の反応が20pips以上に達しても、それが直後1分足の反応が大きいとは言えません。但し、こうした場合には、直後1分足が直前1分足と逆方向に反応することが多いようです(71%)。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は13pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率26%)です。直後11分足のそれは19pips(戻り比率31%)です。反応が大きい指標だけに戻りのpipsも大きいので、高値(安値)掴みには気を付けましょう。
直後1分足の過去平均跳幅は50pipsです。
過去平均の50pipsを超えたことは13回(頻度42%)です。この13回の事例では、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えたことが8回(62%)です。終値同士を比較した場合、反応が伸びたことは6回(46%)です。
直後1分足が大きく跳ねても、その後に反応を伸ばし続けるとは言えません。
この結果は過去の経験に反しています。
雇用統計の初期反応が大きい場合、反応が長時間に亘って一方向に継続することが多いのです。よって、そうした大きく反応するときには、発表から11分経過した頃に戻りが起きやすいと理解した方がしっくりきます。
ならば、直後1分足が50pips以上跳ねたときには、この頃(直後11分足終値がつく頃)に再追撃を行うか否か、再びチャートと相談すれば良いのです。
この項は、定量データによる裏付けがなく、過去の感触に基づくことにご注意ください。
【3. 定型分析】
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事前差異と直前10-1分足の方向一致率は76%です。今回の事前差異はマイナスなので、直前10-1分足が陰線となる期待的中率が76%ということです。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率がそれぞれ87%・81%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応する指標です。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足は陰線率が84%と、偏りが目立ちます。他のローソク足には、そういった単純で極端な偏りは見受けられません。
そして、直後1分足と直後11分足の方向一致率は87%です。反転リスクはあまり考えなくても良いものの、とはいえ、直後11分足が直後1分足の値幅を削ることもあります。直後1分足の反応が大きい指標だけに、その点は注意が必要です。
その他、先に形成されたローソク足が、後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は87%です。そして、その87%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは81%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びたことは48%です。48%という数字は、早期追撃で得たポジションは、指標発表から1分を過ぎたら早めに利確した方が良いということです。伸びるか伸びないかが半々ですから、無理する必要なんてありません。
ーーー$€¥ーーー
過去の経験から言えば、この分析に現れていない「騙し」が過去に散見されます。ここで言う「騙し」とは、発表と同時もしくは発表から3秒ぐらい、その後と逆方向に反応が生じることが多いのです。もちろん、3秒を過ぎて反転したこともあったでしょうから、これは特に記憶に残っている感触です。
追撃方向をあまり拙速に決めると、痛い目に遭うことも多いので、この点はご注意ください。
そして、発表から1分経過時点での関心は、いつ利確(損切)するかと、更に追撃を行うか、です。
直後1分足終値に対し直後11分足終値が伸びていたことは、意外に小さく50%未満しかありません。よって、発表から1分以内に取得した追撃ポジションは、発表から1分を過ぎたら利確のタイミングを見つけた方が良いでしょう。
複数回の追撃を行うなら、高値(安値)掴みには気を付けましょう。
通常の反応程度の指標では、15分足と1時間足のチャートでレジスタンスやサポートを事前に手元にメモしておくだけで、追撃の成功率がだいぶ改善できます。がしかし、雇用統計は非常に大きく反応する指標です。4時間足と日足のチャートで、事前にレジスタンスやサポートをメモして手元に置いて取引した方が良いでしょう。
たったこれだけの習慣で、追撃の収益率は2倍(成功率はもっと)になるものです。2倍というのは感触で、定量的な裏付けはありません。
そして、経済指標発表時の取引で追撃の収益率が倍になるということは、指標発表時以外の取引の1日分の収益を時間圧縮して確保できるということです。1日分というのは感触で、これも定量的な裏付けはありません。
何かいちいち但し書きが面倒ですが、だいたいそういうことです。
【4. シナリオ作成】
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前10-1分足は陰線と見込みます。
論拠は、指標一致性分析で事前差異(指標予想ー前回結果)との方向一致率が76%あるため、です。 - 直前1分足は陰線と見込みます。
論拠は、反応一致性分析の結果、過去の陰線率が84%と高いことです。 - もし、直前1分足跳幅が20pipsを超えた(超えそう)なら、指標発表直前にその跳ねと逆方向にポジションを取ります。指標発表直後の跳ねで利確(損切)です。
過去事例では、直前1分足が20pips以上跳ねたことが23%あります。この23%の事例では、直前1分足と直後1分足の方向が一致したことは29%しかありません。 - 指標発表後の追撃は早期開始し、発表から1分をを過ぎたら決済のタイミングを計ります。
論拠は、反応性分析の結果に依ります。 - 指標発表から10分経過した頃、再度追撃を行うか否かを決めます。直後1分足跳幅が50pips以上の場合は再追撃です。
以上
2017年9月1日21:30発表
以下は2017年9月1日22:26頃に追記しています。
V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は全項目が前回・予想を下回り、反応は陰線でした。
それでも、発表から10分後には反転が始まり、22:00前には発表前の値まで戻しました。この反応は何でしょう。再来週のFOMCでの引締め政策延期を睨んでいるのでしょうか。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
問題ありません。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容には問題ありません。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオには問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
2017年08月30日
米国物価指標「PCEデフレータ」・実態指標「PCE(個人消費)・個人所得」発表前後のUSDJPY反応分析(2017年8月31日21:30発表結果検証済)
以下、「T.指標予想要点」「U.過去調査詳細」を事前投稿し、「V.発表結果検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「V.発表結果検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年8月31日21:30に米国物価指標「PCEデフレータ」・実態指標「PCE(個人消費)・個人所得」が発表されます。今回発表は2017年7月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
PCEコアデフレータは個人消費の物価動向を示した物価指標です(食糧・エネルギーを除く)。個人消費(PCE)と個人所得は消費者の経済活動を表した実態指標です。
同時発表される個人消費(PCE)・個人所得・PCEコアデフレータにおいて、PCEコアデフレータが重視されています。これは、FRBが重視する物価指標がCPIでなくPCEコアデフレータだと言われているためです。その理由は、PCEコアデフレータよりもCPIには上方バイアスが生じるため、という解説があります。何を言っているのかはさておき、PCEコアデフレータが重要視されることはわかります。
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は過去平均で8pipsと、反応が小さな指標です。分析に凝っても仕方ありません。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
発表項目が多いため、見るべきポイントを絞り込むため、各項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上4行は、各項目と反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
上から5行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から6行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段7行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
結果、1✕コアデフレータ前年比の事前差異ー1✕コアデフレータ前月比の事前差異+1✕PCEの事前差異ー1✕個人所得、の解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)が、直前10-1分足との方向一致率85%です。
また、2✕コアデフレータ前年比の事前差異+2✕コアデフレータ前月比の事前差異+1✕PCEの事前差異+1✕個人所得、の解の符号が、直後1分足との方向一致率75%です。
そして、実態差異判別式の係数は事後差異判別式と同じです。同じですが、直後11分足との方向一致率が60%と、事後差異判別式と直後1分足との方向一致率より低くなっています。よって、実態差異判別式を活用することはないでしょう。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が6pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去4回(頻度13%)あります。
この4回の直後1分足跳幅は10pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均8pipsとほぼ同じです。直前10-1分足跳幅が大きくても、それが直後1分足跳幅も大きくなるとは言えません。
次に、この4回の直前10-1分足と直後1分足の方向は3回(75%)一致しています。どちらかと言えば、直前10-1分足跳幅が大きいときには、直後1分足は直前10-1分足と同方向に反応する確率の方が高いものの、事例4回での3回でそれをアテにできるか微妙です。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は3pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去にありません。
直前1分足は明らかに陰線率が高くなっており、しかもヒゲが目立ちます。この平均pipsだと、陽線側にヒゲが形成するのを待って逆張りする方が良いでしょう。ヒゲが形成しなければ取引するのを止めても良い訳です。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は2pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率25%)です。直後11分足のそれは4pips(戻り比率27%)です。反応が小さい指標の割に戻り比率が小さい指標です。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事前差異と直前10-1分足の方向一致率は84%です。今回の事前差異はマイナスなので、直前10-1分足は陰線、ということになります。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率がそれぞれ75%・64%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応する指標です。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
まず、直前1分足の陰線率が75%と、偏りが見受けられます。
また、直後1分足と直後11分足の方向一致率が75%と高くなっています。
そして、直前1分足と直後11分足は、方向一致率が29%(不一致率71%)となっています。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は76%です。そして、その76%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは77%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは55%です。55%という数字は、そんなに安心して追撃できる数字ではありません。追撃するなら、短期利確を繰り返しながら複数回に分けて行う方がいいでしょう。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以下は2017年8月31日22:18頃に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、物価指標が前回より悪化、実態指標が前回より改善、となりました。予想に対し、物価指標は同値、実態指標は個人所得が上回り・個人支出が下回りました。反応は陰線でした。
事後差異判別式では中立(0)となり、陰線での反応は指標結果だけでない可能性があります。指標発表直前に110.6付近で、この水準がやや高すぎるのかも知れません。
取引結果は次の通りでした。
問題ありません。
事前調査分析には問題ありません。
シナリオには問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
T.指標予想要点
2017年8月31日21:30に米国物価指標「PCEデフレータ」・実態指標「PCE(個人消費)・個人所得」が発表されます。今回発表は2017年7月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 物価指標(PCEデフレータ)と実態指標(PCE・個人所得)とでは、同じだけ市場予想と発表結果がズレたときは物価指標の方が反応方向への寄与が大きくなります。がしかし、実態指標の方が市場予想とのズレが大きくなりがちです。
直後1分足の反応方向は、2✕デフレータ事後差異+2✕コアデフレータ事後差異+1✕‘PCE事後差異+1✕個人所得事後差異、という判別式符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)との一致率が75%となっています。事後差異というのは(発表結果ー市場予想)のことです。 - 同月集計分のCPIの実態差異(発表結果ー前回結果)と本指標実態差異の方向一致率は、僅か27%しかありません。同月集計でなく月ズレが起きていないかは未検証です。
CB消費者信頼感指数や小売売上高は、PCEの先行指標という話があります。がしかし、同月集計の両指標の実態差異はともに50%前後で、相関があるとは言えません。同月集計でなく月ズレが起きていないかは未検証です。 - 初期反応は小さく、指標結果に素直に反応しがちです。発表から1分を過ぎても暫く反応を伸ばしがちですが、時間が経つと反応を伸ばし続けるか否か怪しくなります。
追撃は早期参加し、短期利確を繰り返しながら複数回に分けて行った方が良いでしょう。
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前10-1分足は陰線と見込みます。
事前差異判別式がマイナスとなっており、この判別式の期待的中率が85%と高いため、です。
但し、過去平均跳幅が6pipsしかありません。それにも関わらず、ヒゲが目立ちます。陽線側に伸びたときに逆張り3pipsを狙う機会があれば取引します。 - 直前1分足は陰線と見込みます。
反応一致性分析の結果、陰線率が75%となっています。
但し、過去平均跳幅が3pipsしかありません。それにも関わらず、2-4pipsのヒゲが目立ちます。陽線側に伸びたときに逆張り2pipsを狙う機会があれば取引します。 - 追撃は、反応方向を確認したら早期開始します。そして短期利確を繰り返しながら複数回行います。
反応性分析の結果、直後1分足と直後11分足の方向一致率が高く、跳幅同士は発表から1分を過ぎても反応を伸ばしがちなことを示しています。但し、終値同士を比較した場合は、反応を伸ばしたことが55%と、安心して追撃できる数字ではありません。だから、反応方向を確認したら早期参加、短期利確の繰り返しで、様子を見ながら追撃です。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
PCEコアデフレータは個人消費の物価動向を示した物価指標です(食糧・エネルギーを除く)。個人消費(PCE)と個人所得は消費者の経済活動を表した実態指標です。
同時発表される個人消費(PCE)・個人所得・PCEコアデフレータにおいて、PCEコアデフレータが重視されています。これは、FRBが重視する物価指標がCPIでなくPCEコアデフレータだと言われているためです。その理由は、PCEコアデフレータよりもCPIには上方バイアスが生じるため、という解説があります。何を言っているのかはさておき、PCEコアデフレータが重要視されることはわかります。
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本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は過去平均で8pipsと、反応が小さな指標です。分析に凝っても仕方ありません。
【2. 既出情報】
(2-1. 過去情報)
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
発表項目が多いため、見るべきポイントを絞り込むため、各項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上4行は、各項目と反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
上から5行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から6行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段7行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
結果、1✕コアデフレータ前年比の事前差異ー1✕コアデフレータ前月比の事前差異+1✕PCEの事前差異ー1✕個人所得、の解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)が、直前10-1分足との方向一致率85%です。
また、2✕コアデフレータ前年比の事前差異+2✕コアデフレータ前月比の事前差異+1✕PCEの事前差異+1✕個人所得、の解の符号が、直後1分足との方向一致率75%です。
そして、実態差異判別式の係数は事後差異判別式と同じです。同じですが、直後11分足との方向一致率が60%と、事後差異判別式と直後1分足との方向一致率より低くなっています。よって、実態差異判別式を活用することはないでしょう。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が6pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去4回(頻度13%)あります。
この4回の直後1分足跳幅は10pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均8pipsとほぼ同じです。直前10-1分足跳幅が大きくても、それが直後1分足跳幅も大きくなるとは言えません。
次に、この4回の直前10-1分足と直後1分足の方向は3回(75%)一致しています。どちらかと言えば、直前10-1分足跳幅が大きいときには、直後1分足は直前10-1分足と同方向に反応する確率の方が高いものの、事例4回での3回でそれをアテにできるか微妙です。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は3pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去にありません。
直前1分足は明らかに陰線率が高くなっており、しかもヒゲが目立ちます。この平均pipsだと、陽線側にヒゲが形成するのを待って逆張りする方が良いでしょう。ヒゲが形成しなければ取引するのを止めても良い訳です。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は2pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率25%)です。直後11分足のそれは4pips(戻り比率27%)です。反応が小さい指標の割に戻り比率が小さい指標です。
【3. 定型分析】
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事前差異と直前10-1分足の方向一致率は84%です。今回の事前差異はマイナスなので、直前10-1分足は陰線、ということになります。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率がそれぞれ75%・64%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応する指標です。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
まず、直前1分足の陰線率が75%と、偏りが見受けられます。
また、直後1分足と直後11分足の方向一致率が75%と高くなっています。
そして、直前1分足と直後11分足は、方向一致率が29%(不一致率71%)となっています。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は76%です。そして、その76%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは77%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは55%です。55%という数字は、そんなに安心して追撃できる数字ではありません。追撃するなら、短期利確を繰り返しながら複数回に分けて行う方がいいでしょう。
【4. シナリオ作成】
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前10-1分足は陰線と見込みます。
事前差異判別式がマイナスとなっており、この判別式の期待的中率が85%と高いため、です。
但し、過去平均跳幅が6pipsしかありません。それにも関わらず、ヒゲが目立ちます。陽線側に伸びたときに逆張り3pipsを狙う機会があれば取引します。 - 直前1分足は陰線と見込みます。
反応一致性分析の結果、陰線率が75%となっています。
但し、過去平均跳幅が3pipsしかありません。それにも関わらず、2-4pipsのヒゲが目立ちます。陽線側に伸びたときに逆張り2pipsを狙う機会があれば取引します。 - 追撃は、反応方向を確認したら早期開始します。そして短期利確を繰り返しながら複数回行います。
反応性分析の結果、直後1分足と直後11分足の方向一致率が高く、跳幅同士は発表から1分を過ぎても反応を伸ばしがちなことを示しています。但し、終値同士を比較した場合は、反応を伸ばしたことが55%と、安心して追撃できる数字ではありません。だから、反応方向を確認したら早期参加、短期利確の繰り返しで、様子を見ながら追撃です。
以上
2017年8月31日21:30発表
以下は2017年8月31日22:18頃に追記しています。
V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、物価指標が前回より悪化、実態指標が前回より改善、となりました。予想に対し、物価指標は同値、実態指標は個人所得が上回り・個人支出が下回りました。反応は陰線でした。
事後差異判別式では中立(0)となり、陰線での反応は指標結果だけでない可能性があります。指標発表直前に110.6付近で、この水準がやや高すぎるのかも知れません。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
問題ありません。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析には問題ありません。
(6-2. シナリオ検証)
シナリオには問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
2017年08月29日
米国経済指標「四半期GDP改定値」発表前後のUSDJPY反応分析(2017年8月30日21:30発表結果検証済)
以下、「T.指標予想要点」「U.過去調査詳細」を事前投稿し、「V.発表結果検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「V.発表結果検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年8月30日21:30に米国経済指標「四半期GDP改定値」が発表されます。今回発表は2017年4-6月期分の集計結果です。
GDO改定値自体もさておき、その内訳として同時発表される物価指標「GDPデフレータ」・実態指標「PCE・コアPCE」注目を集めることがあります。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 本記事は8月29日に記しています。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
GDPは、当該期米国の総合的な経済実態を表していることです。経済実態が悪ければ、金融政策を始め、あらゆる政策に影響を与えます。
デフレータ(価格指数)は物価変動を示しています。
PCE(個人消費支出)は米国GDPの約70%を占めています。自動車・家電等の耐久財と、食品・衣料等の非耐久財と、外食・交通費等のサービス支出と、からなります。
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は過去平均で15pipsです。15pipsというと、平均的な反応程度しかなく、重要度や注目度の割に反応が小さくがっかりしがちです。8pips以下しか反応しなかったことさえ、29%もあります。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
見るべきポイントを絞り込むため、主要項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上4行は、各項目をひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
上から5行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から6行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段7行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
結果、1✕GDPの事前差異+1✕デフレータの事前差異+1✕PCEの事前差異、の解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)が、直前10-1分足との方向一致率が73%となりました。
また、2✕GDPの事後差異+2✕デフレータの事後差異+1✕PCEの事後差異+1✕コアPCEの事後差異、の解の符号が、直後1分足との方向一致率が94%となりました。
そして、3✕GDPの実態差異+2✕デフレータの実態差異+1✕PCEの実態差異、の解の符号が、直後11分足との方向一致率が63%となりました。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が5pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去2回(頻度12%)あります。
この2回の直後1分足跳幅は13pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均15pipsとほぼ同じです。直前10-1分足跳幅が大きくても、それで直後1分足跳幅も大きくなるとは言えません。
次に、この2回の直前10-1分足と直後1分足の方向は1回(50%)一致しています。直前10-1分足が大きく跳ねても、直後1分足がその方向に反応するとは言えません。釣られて痛い目に遭わないように気を付けましょう。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は4pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去にありません。
また、直前1分足はヒゲが目立っています。pipsも小さいし、方向に偏りも見られない以上、取引は避けた方が良いでしょう。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は2pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率13%)です。直後11分足のそれは8pips(戻り比率42%)です。指標発表から1分を過ぎると、戻り比率が40%を超えており、高値(安値)掴みには気を付けた方が良いでしょう。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事前差異・事後差異・実態差異はプラス率がそれぞれ76%・65%・76%、と偏りがあります。市場予想は低めになりがちで、発表結果は高めになりがち、ということです。
事前差異と直前10-1分足は方向一致率が73%となっています。今回の事前差異はプラスなので、直前10-1分足は陽線の可能性が高い、というこです。
また、直前10-1分足は実態差異との方向一致率が73%となっています。そして、実態差異と直後1分足の方向一致率は71%と、低くはありません。がしかし、それよりも直後1分足は事後差異との方向一致率が高くなっています。
その直後1分足は、事後差異との方向一致率が94%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しには、非常に素直に反応します。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
まず、直前10-1分足・直後1分足・直後11分足の陽線率は、それぞれ73%・71%・69%と、かなり偏りがあります。
そして、直前1分足は直前10-1分足との方向一致率が27%(不一致率73%)なので、陰線となる可能性が高い、と見込まめます。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は88%です。そして、その88%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは64%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
けれども、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは19%しかありません。69%の直後11分足は、直後1分足の値幅を削っています。
つまり、本指標への反応は、発表から1分を過ぎたら伸びないのです。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以下は2017年8月31日に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、GDP速報値・PCE改定値が上方改定され市場予想も上回りました。反応は陽線でした。
GDPの+3.0%という数字は、直近だと2016年7-9月期分の+3.2%に次ぐ水準です(改定値比較)。米GDPは夏頃(4-6月期か7-9月期)に毎年ピークを迎えます。
PCE改定値は+3.3%で、こちらも2016年4-6月期分の+4.4%に次ぐ水準です(改定値比較)。PCEは必ずしも夏にピークとは言えません。
指標発表直前118.18に対し、日足チャート基準線が110.23にありました。この110.23のレジスタンスは15分前に発表されたADP雇用統計で抜けずに跳ね返されていました。GDP発表で、これを上抜けました。
取引結果は次の通りでした。
逆張り追撃の損切は、シナリオに依るものです。
先述のレジスタンス上抜けがあったものの、このレジスタンスが日足チャートだったので、この日はレジスタンス上側に少し上ヒゲを残してレジスタンスより下に戻す、と考えていたものの、意外に値を伸ばしました。
ほぼ、分析通りの動きと言えます。
外したのは、戻しに意外と時間を要した点です。21:39に高値を付けると、その後は21:52に110.10付近まで値を戻しました(指標発表時始値よりも下)。
時間がかかった理由は、先に発表されたADP雇用統計と本指標がともに大きく前回・予想を上回ったため、です。逆に言えば、これだけ予想を大きく上回っても、戻しが起きやすい指標です。
シナリオには問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
T.指標予想要点
2017年8月30日21:30に米国経済指標「四半期GDP改定値」が発表されます。今回発表は2017年4-6月期分の集計結果です。
GDO改定値自体もさておき、その内訳として同時発表される物価指標「GDPデフレータ」・実態指標「PCE・コアPCE」注目を集めることがあります。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 本記事は8月29日に記しています。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 事前差異・事後差異・実態差異はプラス率がそれぞれ76%・65%・76%、と偏りがあります。市場予想は低めになりがちで、発表結果は高めになりがち、ということです。結果、直前10-1分足・直後1分足・直後11分足の陽線率は、それぞれ73%・71%・69%と、かなり偏っています。
- 直後1分足の戻り比率は13%しかないものの、直後11分足のそれは42%もあります。その結果、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったことが69%にも達しています。指標発表から1分を過ぎたら、そのまま反応を伸ばすか反転するのか、上下に迷っているうちに指標発表から10分が過ぎてしまいがちです。
- 反応程度は平均的で、指標結果の良し悪しに素直に反応します。追撃は発表から1分過ぎまでで、その後は前述の通り値を戻す傾向があります。がしかし、直後1分足値幅は過去平均で13pipsしかないため、その値幅を削った確率が69%あっても、逆張りのリスクの割にpipsが稼げません。
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前10-1分足は陽線と見込みます。
指標一致性分析の結果、事前差異との方向一致率が73%あります。反応一致性分析の結果、過去の陽線率も76%あります。 - 直後1分足は陽線と見込みます。指標発表直前にポジションを取り、発表直後の跳ねで利確(損切)します。
市場予想は低めで発表結果が高めになりがちな過去傾向と、反応一致性分析で過去の陽線率が71%あります。 - 追撃は、方向確認したら早期開始し、発表から1分を過ぎたら早期利確を狙います。
発表から1分経過後は、逆張りの機会を窺うものの、短期取引で数pips取れたら利確です。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
GDPは、当該期米国の総合的な経済実態を表していることです。経済実態が悪ければ、金融政策を始め、あらゆる政策に影響を与えます。
デフレータ(価格指数)は物価変動を示しています。
PCE(個人消費支出)は米国GDPの約70%を占めています。自動車・家電等の耐久財と、食品・衣料等の非耐久財と、外食・交通費等のサービス支出と、からなります。
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本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は過去平均で15pipsです。15pipsというと、平均的な反応程度しかなく、重要度や注目度の割に反応が小さくがっかりしがちです。8pips以下しか反応しなかったことさえ、29%もあります。
【2. 既出情報】
(2-1. 過去情報)
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
見るべきポイントを絞り込むため、主要項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上4行は、各項目をひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
上から5行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から6行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段7行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
結果、1✕GDPの事前差異+1✕デフレータの事前差異+1✕PCEの事前差異、の解の符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)が、直前10-1分足との方向一致率が73%となりました。
また、2✕GDPの事後差異+2✕デフレータの事後差異+1✕PCEの事後差異+1✕コアPCEの事後差異、の解の符号が、直後1分足との方向一致率が94%となりました。
そして、3✕GDPの実態差異+2✕デフレータの実態差異+1✕PCEの実態差異、の解の符号が、直後11分足との方向一致率が63%となりました。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が5pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去2回(頻度12%)あります。
この2回の直後1分足跳幅は13pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均15pipsとほぼ同じです。直前10-1分足跳幅が大きくても、それで直後1分足跳幅も大きくなるとは言えません。
次に、この2回の直前10-1分足と直後1分足の方向は1回(50%)一致しています。直前10-1分足が大きく跳ねても、直後1分足がその方向に反応するとは言えません。釣られて痛い目に遭わないように気を付けましょう。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は4pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去にありません。
また、直前1分足はヒゲが目立っています。pipsも小さいし、方向に偏りも見られない以上、取引は避けた方が良いでしょう。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は2pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率13%)です。直後11分足のそれは8pips(戻り比率42%)です。指標発表から1分を過ぎると、戻り比率が40%を超えており、高値(安値)掴みには気を付けた方が良いでしょう。
【3. 定型分析】
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事前差異・事後差異・実態差異はプラス率がそれぞれ76%・65%・76%、と偏りがあります。市場予想は低めになりがちで、発表結果は高めになりがち、ということです。
事前差異と直前10-1分足は方向一致率が73%となっています。今回の事前差異はプラスなので、直前10-1分足は陽線の可能性が高い、というこです。
また、直前10-1分足は実態差異との方向一致率が73%となっています。そして、実態差異と直後1分足の方向一致率は71%と、低くはありません。がしかし、それよりも直後1分足は事後差異との方向一致率が高くなっています。
その直後1分足は、事後差異との方向一致率が94%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しには、非常に素直に反応します。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
まず、直前10-1分足・直後1分足・直後11分足の陽線率は、それぞれ73%・71%・69%と、かなり偏りがあります。
そして、直前1分足は直前10-1分足との方向一致率が27%(不一致率73%)なので、陰線となる可能性が高い、と見込まめます。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は88%です。そして、その88%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは64%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
けれども、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは19%しかありません。69%の直後11分足は、直後1分足の値幅を削っています。
つまり、本指標への反応は、発表から1分を過ぎたら伸びないのです。
【4. シナリオ作成】
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前10-1分足は陽線と見込みます。
指標一致性分析の結果、事前差異との方向一致率が73%あります。反応一致性分析の結果、過去の陽線率も76%あります。 - 直後1分足は陽線と見込みます。指標発表直前にポジションを取り、発表直後の跳ねで利確(損切)します。
市場予想は低めで発表結果が高めになりがちな過去傾向と、反応一致性分析で過去の陽線率が71%あります。 - 追撃は、方向確認したら早期開始し、発表から1分を過ぎたら早期利確を狙います。
発表から1分経過後は、逆張りの機会を窺うものの、短期取引で数pips取れたら利確です。
以上
2017年8月30日21:30発表
以下は2017年8月31日に追記しています。
V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、GDP速報値・PCE改定値が上方改定され市場予想も上回りました。反応は陽線でした。
GDPの+3.0%という数字は、直近だと2016年7-9月期分の+3.2%に次ぐ水準です(改定値比較)。米GDPは夏頃(4-6月期か7-9月期)に毎年ピークを迎えます。
PCE改定値は+3.3%で、こちらも2016年4-6月期分の+4.4%に次ぐ水準です(改定値比較)。PCEは必ずしも夏にピークとは言えません。
指標発表直前118.18に対し、日足チャート基準線が110.23にありました。この110.23のレジスタンスは15分前に発表されたADP雇用統計で抜けずに跳ね返されていました。GDP発表で、これを上抜けました。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
逆張り追撃の損切は、シナリオに依るものです。
先述のレジスタンス上抜けがあったものの、このレジスタンスが日足チャートだったので、この日はレジスタンス上側に少し上ヒゲを残してレジスタンスより下に戻す、と考えていたものの、意外に値を伸ばしました。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
ほぼ、分析通りの動きと言えます。
外したのは、戻しに意外と時間を要した点です。21:39に高値を付けると、その後は21:52に110.10付近まで値を戻しました(指標発表時始値よりも下)。
時間がかかった理由は、先に発表されたADP雇用統計と本指標がともに大きく前回・予想を上回ったため、です。逆に言えば、これだけ予想を大きく上回っても、戻しが起きやすい指標です。
(6-2. シナリオ検証)
シナリオには問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
米国雇用指標「ADP雇用統計」発表前後のUSDJPY反応分析(2017年8月30日21:15発表結果検証済)
以下、「T.指標予想要点」「U.過去調査詳細」を事前投稿し、「V.発表結果検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「V.発表結果検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年8月30日21:15に米国雇用指標「ADP雇用統計」が発表されます。今回発表は2017年8月分の集計結果です。
当月は、本発表の15分後に4-6月期GDP改定値が発表されます。よって、今回は本指標発表後に次のGDP発表に向けた動きに変化する可能性があります。今回のGDP改定値は市場予想が高めになっています。よって、ADP発表後のある時点から陽線側に引っ張り上げようとする動きが始まる可能性がある、ということです。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 市場予想は8月28日時点の値です。発表直前に確認しておきましょう。
本指標の特徴は以下の通りです。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
本指標は、米国「雇用統計」を翌日(ないしは翌々日)に控え、NFP(非農業部門雇用者数)の直前先行指標としての重要度・注目度が高いものです。
本指標についてはおもしろい話があります。
確か「前月結果に対する増減を無視し、市場予想に対する増減だけに着目します。このとき、ADP発表結果に沿ってポジションを持つと、ほぼ3勝2敗で2日後のNFPの増減方向と一致する」と言われています。そして、「本指標発表後にポジションを取得し、雇用統計直前に解消するポジションの持ち方をADP手法という」のだそうです。ADP手法の勝率は60%付近だそうです。
これらについては、まことしやかに語られていたものの、調査期間や実際にポジションを持って継続的に取引を行ったという記録が見当たりませんでした。当会では真偽を調べたことがないので、責任を負いかねます。が、もし成立するのなら何となく納得できそうな話ですね。
但し、ポジションを持ち続ける期間が長すぎるため、このブログでは扱いません。ポジション保有時間が長くなるリスクの割に期待的中率が低すぎます。
このように、本指標は雇用統計のNFPの先行指標としてアテになります。がしかし、直近の雇用統計は、NFPよりも平均時給に反応しがちなので、今では更に勝率が下がっている可能性があります。
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で17pipsです。
17pipsというと、平均的な反応程度の指標です。がしかし、分布を見ると、8pips以下しか跳ねなかったことが32%、9-23pips跳ねたことが45%、24pips以上跳ねたことが23%と、ばらつきが大きいようです。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
グラフは、平坦な市場予想に対し、発表結果の凸凹が目立ちます。こうした指標では、前月が良ければ翌月が悪く、前月が悪ければ翌月は良くなる、という予想解説が多くなります。
こういうことは確認しておきましょう。
確認は、データを確認できる2015年2月以降前回までの30回で行いました。この期間に前月と翌月の予想と結果の大小関係が入れ替わったことが11回(入れ替わり率37%)ありました。
市場予想後追い型(入れ替わり率30%以下)とまでは言えないものの、それに近い指標です。
前月は発表結果が市場予想を下回りました。
ほぼ市場予想後追い型と見なせば、今回発表結果が市場予想を下回る期待的中率は63%、ということになります。
前週分新規失業保険受給申請は毎週木曜に前週分が発表されています。
前週8月24日に発表された申請数4週平均値は23.8万人でした。一方、8月3日に発表された申請数4週平均は24.2万人でした。失業保険受給申請件数は、当月に入って減っています。
そして、失業保険受給申請件数と民間雇用者数は、逆相関の関係にあると見なせます(仮説です。逆相関の一致率は定量分析していません)。
もしこの仮説が正しければ、今回の民間雇用者数は前回を上回る可能性があります。
過去に遡って調べてみましょう。
下表をご覧ください。項目Aと項目Bとは、符号が1回を除き全て不一致です(不一致率86%)。
項目 A 項目B
8月分差異 △0.4万人 +
7月分差異 △0.1万人 +2.0万人
6月分差異 +0.5万人 △9.7万人
5月分差異 △0.5万人 +7.6万人
4月分差異 △0.7万人 △8.9万人
3月分差異 +1.6万人 △3.0万人
2月分差異 △1.4万人 +5.2万人
1月分差異 △0.9万人 +9.4万人
項目Aは、2017年の前週分失業保険受給申請件数の4週平均値が、前月分に対してどれだけ増減したかを示しています。項目Aを求めるために、まず、7月分は8月3日発表値(24.2万人)、6月分は7月6日発表値(24.3万人)、というように、翌月最初の4週平均発表値を調べます。そして、7月分差異は、6月分24.3万人よりも7月分24.2万人が0.1万人少ない(△0.1万人)、と求めます。
項目Bは、ADP民間雇用者数が6月15.8万人、7月分17.8万人だから、7月分差異がその差の2.0万人増加(+2.0万人)、ということを表しています。
よって仮説通り、失業保険受給申請件数と民間雇用者数は、逆相関の関係にあると見なせます。何しろ今年に入って期待的中率86%の不一致率です。
8月分差異は、項目Aにまだ9月7日発表値を用いることができません。そのため、8月24日分データを用いました。
仮説通りなら、ADPの8月分差異はプラスになるでしょう。
幸い、今回のADPの市場予想は18.3万人で、前回結果17.8万人と近接しています。よって、今回のADPは市場予想を上回る、と予想します。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が5pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去3回(頻度10%)あります。
この3回の直後1分足跳幅平均は18pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均17pipsとほぼ同じです。直前10-1分足跳幅が大きくても、それが直後1分足跳幅も大きくなるとは言えません。
次に、この3回の直前10-1分足と直後1分足の方向は1回(33%)一致しています。どちらかと言えば、直前10-1分足跳幅が大きいときには、直後1分足は直前10-1分足と逆方向に反応する確率の方が高いものの、事例3回での2回でそれを特徴的偏りとは言えません。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は5pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去4回(頻度13%)あります。
この4回の直後1分足跳幅平均は13pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均17pipsより小さくなっています。直前1分足跳幅が大きくても、それが直後1分足跳幅も大きくなるとは言えません。
次に、この4回の直前1分足と直後1分足の方向は3回(75%)一致しています。どちらかと言えば、直前1分足跳幅が大きいときには、直後1分足は直前1分足と同方向に反応する確率が高くなっています。
また、直前1分足が陽線となったことは4回(頻度13%)しかありません。この4回の直前1分足と直後1分足の方向が一致したことは3回(75%)です。
更に、直前1分足が陽線で、且つ、10pips以上跳ねたことは2回で、この2回は直前1分足と直後1分足の方向一致率は100%です。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は5pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率29%)です。直後11分足のそれは6pips(戻り比率29%)です。戻り比率が直後1分足・直後11分足ともに30%未満で、追撃を行いやすい指標だと言えるでしょう。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率がそれぞれ73%・81%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応する指標です。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
まず、直前1分足の陰線率が87%、直後1分足の陽線率が73%と、異常な偏りが見受けられます。
そして、直後1分足と直後11分足の方向一致率が80%と高い点を除けば、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は79%です。そして、その79%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは91%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
そして、指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは64%です。64%という数字は、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったり(14%)、直後11分足が直後1分足と反転したり(21%)する確率を踏まえると、他の起こり得る事象より約3倍高い確率です。
追撃は徹底した方が良いでしょう。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以下は2017年8月31日に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、前回・予想を大きく上回り、反応は陽線でした。
指標発表直前1分足が10数秒前から一気に伸びたこともあり、発表後はほとんど伸びませんでした。
これは、前日の北朝鮮リスク回避の巻き戻しで、前日日足が長い下ヒゲを残したこともあり、日中から陽線側に大きく伸びたいたことに一因があります。そして、直前1分足跳幅が15pipsとなり、これは2015年1月分以降で最大の跳幅です。何より、こうして発表前に値を伸ばした結果、指標発表直前の110.17は、日足チャート基準線の110.23のレジスタンス直前でした。その結果、値を伸ばす余地がなかったため、と考えられます。
取引結果は次の通りでした。
発表時刻を跨いだポジションは、上記日足チャート基準線のレジスタンスを抜けるか抜けないかを迷って、利確が一瞬遅れた結果、僅かながら損切となりました。
事前調査分析内容を検証は省略します。
反応程度の問題はさておき、ほぼ事前分析通りでした。
但し、追撃徹底を想定したのに、それが大したことがなかった点は、分析を外しています。外した原因は、事前分析作成時点で、まさか指標発表前にここまで陽線側に高い位置まで来るとは想定外でした。
外れは外れなので、言い訳もみっともないですが、直後11分足の陰線は売りポジション取得と言うより、一部参加者がこの時点で利確したからと思われます。積極的な売ポジション取得が行われた気配はなかったように思います。
シナリオには問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
T.指標予想要点
2017年8月30日21:15に米国雇用指標「ADP雇用統計」が発表されます。今回発表は2017年8月分の集計結果です。
当月は、本発表の15分後に4-6月期GDP改定値が発表されます。よって、今回は本指標発表後に次のGDP発表に向けた動きに変化する可能性があります。今回のGDP改定値は市場予想が高めになっています。よって、ADP発表後のある時点から陽線側に引っ張り上げようとする動きが始まる可能性がある、ということです。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 市場予想は8月28日時点の値です。発表直前に確認しておきましょう。
本指標の特徴は以下の通りです。
- まだ、データ数が少ないものの(2017年分のみ)、ADP民間雇用者数の実態差異(発表結果ー市場予想)の符号は、前週分新規失業保険受給申請の4週平均の今月値と前月値の差の符号と、不一致率が86%あります。最新(先週発表)の前週分新規失業保険受給申請の4週平均と、7月分のその値の差はマイナスとなっています。
よって、今回のADP発表は前回を上回り、今回の市場予想が前回発表値に近接していることを踏まえると、今回のADP発表は市場予想を上回る、と見込めます。 - 直前10-1分足や直前1分足が10pips以上跳ねても、それは直後1分足の方向と関係ありません。但し、直前1分足が陽線で、且つ、10pips以上跳ねたときだけは、過去2回の事例でともに直後1分足が陽線となっています。
- 初期反応程度の平均は17pipsで、これは平均的な指標です。直後1分足と直後11分足の方向一致率が高く、且つ、それらの戻り比率も小さいことから、追撃は早期開始して徹底することを薦めます。
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
反応一致性分析の結果、陰線率が87%と偏っています。但し、過去平均跳幅を5pipsしかないので、2・3pips取れれば利確です。 - 直後1分足は陽線と見込み、指標発表直前にポジションを取ります。この論拠は、前週分新規失業保険受給申請件数の推移に基づきます。
- 追撃は早期開始・徹底します。
反応性分析の結果、直後1分足と直後11分足の跳幅同士・値幅同士の反応を伸ばした確率が高くなっています。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
本指標は、米国「雇用統計」を翌日(ないしは翌々日)に控え、NFP(非農業部門雇用者数)の直前先行指標としての重要度・注目度が高いものです。
本指標についてはおもしろい話があります。
確か「前月結果に対する増減を無視し、市場予想に対する増減だけに着目します。このとき、ADP発表結果に沿ってポジションを持つと、ほぼ3勝2敗で2日後のNFPの増減方向と一致する」と言われています。そして、「本指標発表後にポジションを取得し、雇用統計直前に解消するポジションの持ち方をADP手法という」のだそうです。ADP手法の勝率は60%付近だそうです。
これらについては、まことしやかに語られていたものの、調査期間や実際にポジションを持って継続的に取引を行ったという記録が見当たりませんでした。当会では真偽を調べたことがないので、責任を負いかねます。が、もし成立するのなら何となく納得できそうな話ですね。
但し、ポジションを持ち続ける期間が長すぎるため、このブログでは扱いません。ポジション保有時間が長くなるリスクの割に期待的中率が低すぎます。
このように、本指標は雇用統計のNFPの先行指標としてアテになります。がしかし、直近の雇用統計は、NFPよりも平均時給に反応しがちなので、今では更に勝率が下がっている可能性があります。
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本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で17pipsです。
17pipsというと、平均的な反応程度の指標です。がしかし、分布を見ると、8pips以下しか跳ねなかったことが32%、9-23pips跳ねたことが45%、24pips以上跳ねたことが23%と、ばらつきが大きいようです。
【2. 既出情報】
(2-1. 過去情報)
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
グラフは、平坦な市場予想に対し、発表結果の凸凹が目立ちます。こうした指標では、前月が良ければ翌月が悪く、前月が悪ければ翌月は良くなる、という予想解説が多くなります。
こういうことは確認しておきましょう。
確認は、データを確認できる2015年2月以降前回までの30回で行いました。この期間に前月と翌月の予想と結果の大小関係が入れ替わったことが11回(入れ替わり率37%)ありました。
市場予想後追い型(入れ替わり率30%以下)とまでは言えないものの、それに近い指標です。
前月は発表結果が市場予想を下回りました。
ほぼ市場予想後追い型と見なせば、今回発表結果が市場予想を下回る期待的中率は63%、ということになります。
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前週分新規失業保険受給申請は毎週木曜に前週分が発表されています。
前週8月24日に発表された申請数4週平均値は23.8万人でした。一方、8月3日に発表された申請数4週平均は24.2万人でした。失業保険受給申請件数は、当月に入って減っています。
そして、失業保険受給申請件数と民間雇用者数は、逆相関の関係にあると見なせます(仮説です。逆相関の一致率は定量分析していません)。
もしこの仮説が正しければ、今回の民間雇用者数は前回を上回る可能性があります。
過去に遡って調べてみましょう。
下表をご覧ください。項目Aと項目Bとは、符号が1回を除き全て不一致です(不一致率86%)。
項目 A 項目B
8月分差異 △0.4万人 +
7月分差異 △0.1万人 +2.0万人
6月分差異 +0.5万人 △9.7万人
5月分差異 △0.5万人 +7.6万人
4月分差異 △0.7万人 △8.9万人
3月分差異 +1.6万人 △3.0万人
2月分差異 △1.4万人 +5.2万人
1月分差異 △0.9万人 +9.4万人
項目Aは、2017年の前週分失業保険受給申請件数の4週平均値が、前月分に対してどれだけ増減したかを示しています。項目Aを求めるために、まず、7月分は8月3日発表値(24.2万人)、6月分は7月6日発表値(24.3万人)、というように、翌月最初の4週平均発表値を調べます。そして、7月分差異は、6月分24.3万人よりも7月分24.2万人が0.1万人少ない(△0.1万人)、と求めます。
項目Bは、ADP民間雇用者数が6月15.8万人、7月分17.8万人だから、7月分差異がその差の2.0万人増加(+2.0万人)、ということを表しています。
よって仮説通り、失業保険受給申請件数と民間雇用者数は、逆相関の関係にあると見なせます。何しろ今年に入って期待的中率86%の不一致率です。
8月分差異は、項目Aにまだ9月7日発表値を用いることができません。そのため、8月24日分データを用いました。
仮説通りなら、ADPの8月分差異はプラスになるでしょう。
幸い、今回のADPの市場予想は18.3万人で、前回結果17.8万人と近接しています。よって、今回のADPは市場予想を上回る、と予想します。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が5pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去3回(頻度10%)あります。
この3回の直後1分足跳幅平均は18pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均17pipsとほぼ同じです。直前10-1分足跳幅が大きくても、それが直後1分足跳幅も大きくなるとは言えません。
次に、この3回の直前10-1分足と直後1分足の方向は1回(33%)一致しています。どちらかと言えば、直前10-1分足跳幅が大きいときには、直後1分足は直前10-1分足と逆方向に反応する確率の方が高いものの、事例3回での2回でそれを特徴的偏りとは言えません。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は5pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去4回(頻度13%)あります。
この4回の直後1分足跳幅平均は13pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均17pipsより小さくなっています。直前1分足跳幅が大きくても、それが直後1分足跳幅も大きくなるとは言えません。
次に、この4回の直前1分足と直後1分足の方向は3回(75%)一致しています。どちらかと言えば、直前1分足跳幅が大きいときには、直後1分足は直前1分足と同方向に反応する確率が高くなっています。
また、直前1分足が陽線となったことは4回(頻度13%)しかありません。この4回の直前1分足と直後1分足の方向が一致したことは3回(75%)です。
更に、直前1分足が陽線で、且つ、10pips以上跳ねたことは2回で、この2回は直前1分足と直後1分足の方向一致率は100%です。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は5pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率29%)です。直後11分足のそれは6pips(戻り比率29%)です。戻り比率が直後1分足・直後11分足ともに30%未満で、追撃を行いやすい指標だと言えるでしょう。
【3. 定型分析】
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率がそれぞれ73%・81%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応する指標です。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
まず、直前1分足の陰線率が87%、直後1分足の陽線率が73%と、異常な偏りが見受けられます。
そして、直後1分足と直後11分足の方向一致率が80%と高い点を除けば、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は79%です。そして、その79%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは91%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
そして、指標発表から1分を経過しても、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは64%です。64%という数字は、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったり(14%)、直後11分足が直後1分足と反転したり(21%)する確率を踏まえると、他の起こり得る事象より約3倍高い確率です。
追撃は徹底した方が良いでしょう。
【4. シナリオ作成】
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
反応一致性分析の結果、陰線率が87%と偏っています。但し、過去平均跳幅を5pipsしかないので、2・3pips取れれば利確です。 - 直後1分足は陽線と見込み、指標発表直前にポジションを取ります。この論拠は、前週分新規失業保険受給申請件数の推移に基づきます。
- 追撃は早期開始・徹底します。
反応性分析の結果、直後1分足と直後11分足の跳幅同士・値幅同士の反応を伸ばした確率が高くなっています。
以上
2017年8月30日21:15発表
以下は2017年8月31日に追記しています。
V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、前回・予想を大きく上回り、反応は陽線でした。
指標発表直前1分足が10数秒前から一気に伸びたこともあり、発表後はほとんど伸びませんでした。
これは、前日の北朝鮮リスク回避の巻き戻しで、前日日足が長い下ヒゲを残したこともあり、日中から陽線側に大きく伸びたいたことに一因があります。そして、直前1分足跳幅が15pipsとなり、これは2015年1月分以降で最大の跳幅です。何より、こうして発表前に値を伸ばした結果、指標発表直前の110.17は、日足チャート基準線の110.23のレジスタンス直前でした。その結果、値を伸ばす余地がなかったため、と考えられます。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
発表時刻を跨いだポジションは、上記日足チャート基準線のレジスタンスを抜けるか抜けないかを迷って、利確が一瞬遅れた結果、僅かながら損切となりました。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容を検証は省略します。
反応程度の問題はさておき、ほぼ事前分析通りでした。
但し、追撃徹底を想定したのに、それが大したことがなかった点は、分析を外しています。外した原因は、事前分析作成時点で、まさか指標発表前にここまで陽線側に高い位置まで来るとは想定外でした。
外れは外れなので、言い訳もみっともないですが、直後11分足の陰線は売りポジション取得と言うより、一部参加者がこの時点で利確したからと思われます。積極的な売ポジション取得が行われた気配はなかったように思います。
(6-2. シナリオ検証)
シナリオには問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
2017年08月28日
米国景気指標「CB消費者信頼感指数」発表前後のUSDJPY反応分析(2017年8月29日23:00発表結果検証済)
以下、「T.指標予想要点」「U.過去調査詳細」を事前投稿し、「V.発表結果検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「V.発表結果検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年8月29日23:00に米国景気指標「CB消費者信頼感指数」が発表されます。今回発表は2017年8月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 市場予想は8月28日時点のものです。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 本指標における事前差異判別式は、単純に(市場予想ー前回結果)です。
本指標の特徴は以下の通りです。
そして、次のシナリオで取引に臨みます。大して反応しないので、無理に取引する必要なんてありません。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
CBはConference Board(全米産業審議委員会)の略で、消費者信頼感指数というのは消費者のセンチメント(消費マインド)を指数化した景気指標です。基準は1985年を100とし、毎月5000世帯対象のアンケート調査結果を集計しています。
調査は、(a) 現在の景況感、(b) 現在の雇用状況、(c) 6か月先の景況感、(d) 6か月先の雇用、(e) 6か月先の所得、について行われます。6か月以内の購入計画(自動車・住宅など)についても行われますが、この項目が(c)や(e)に含まれるのか否かは確認できていません。いずれにせよ、これら5項目について「楽観している」か「悲観している」かを指数化しています。
指数化にあたっては、現状の経済と雇用に関する2項目の平均が「現状指数」で、経済・雇用・所得の先行きに関する3項目の平均(季節調整実施)が「期待指数」です。そして、これら5項目の平均値が消費者信頼感指数です。
この内容はUM(ミシガン大学)消費者信頼感指数と同じです。よって、調査数の差(UMは確報値で500名)こそあれ、原理的にはUMがCBの先行指標と言えるでしょう。がしかし、後述するように、少なくとも直近のデータを見る限り両者の単月毎の改善・悪化には相関がありません。
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で9pipsしかありません。そして、過去反応のうち71%は5-12pipsの間となっています。
反応は小さい指標です。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
グラフ推移は、2016年5月頃をボトムに、その後は上昇基調が続いていました。がしかし、2017年3月をピークに上昇が停滞しています。
2015年2月以降前回まで、発表結果と市場予想の大小関係が前月と翌月で入れ替わった回数は16回(入れ替わり率53%)です。ただ、直近ボトムの翌月2016年5月以降だと、それは4回(入れ替わり率29%)となります。
よって現在、本指標は市場予想後追い型です。
本指標は、先行発表(8月18日)された同じ8月分UM消費者信頼感指数速報値と、調査期間・発表時期・調査目的・調査方法がほぼ同じです。両指標間に相関がないか、調べておきました。
相関の有無は、それぞれの指標の実態差異(発表結果ー前回結果)を用いて調べます。事前差異・事後差異・実態差異のうち、市場予想が含まれないのは実態差異だけだからです。もし両指標の間に相関があるなら、実態差異(発表結果ー前回結果)に現れるはずです。
がしかし、上図の通り、両指標の実態差異一致率は52%しかないことがわかりました。52%なら、一致するか一致しないかを丁半博奕で決めるのと同じです。
よって、UM速報値とCBとの間には、調査期間・発表時期・調査目的・調査方法がほぼ同じであるにも関わらず相関がない、と言えます。
以上の分析要点は以下の通りです。
(1) 本指標は現在、上昇基調TOP付近で停滞中です。
(2) 本指標は2016年6月以降、市場予想後追い型となっています。前回は発表結果を市場予想が上回っており、今回も市場予想を上回る期待的中率は71%です。
(3) 8月18日に先行発表されたUM消費者信頼感指数速報値と、調査期間・発表時期・調査目的・調査方法がほぼ同じです。がしかし、本指標と同月集計同士の実態差異一致率を調べたところ、それは52%しかありません。よって、単月毎の発表結果が前月結果より良くなるか悪くなるかについて、UM消費者信頼感指数速報値の同月発表結果を参考にすることは無意味です。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が7pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去5回(頻度16%)あります。
この5回の直後1分足跳幅平均は10pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均9pipsとほぼ同じです。直前10-1分足跳幅が大きくても、それが直後1分足跳幅も大きくなるとは言えません。
次に、この5回の直前10-1分足と直後1分足の方向は3回一致しており、一致しなかった2回の直後1分足は同値終了です(期待的中率100%、同値は集計しない)。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は4pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去1回しかありません。その1回の直後1分足跳幅は13pipsで、直前1分足と直後1分足の方向は一致しています。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は4pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率44%)です。直後11分足のそれは6pips(戻り比率40%)です。直後11分足の戻り比率が40%を超えており、高値(安値)掴みには気を付けた方が良いでしょう。
過去のローソク足の特徴を纏めると以下の通りです。
(1) たまに(頻度16%)直前10-1分足跳幅が10pips以上となることがあります(過去5回、頻度16%)。この5回のうち2回の直後1分足は同値終了で、残る3回は直後1分足が直前10-1分足と方向が一致しています(期待的中率100%、期待的中率算出では同値を集計しない)。
(2) ごくまれに(頻度3%)直前1分足跳幅が10pips以上だったことは過去1回しかありません。その1回の直後1分足跳幅は13pipsで、直前1分足と直後1分足の方向は一致しています(期待的中率100%だが過去事例1回)。
(3) 直後1分足・直後11分足の戻り比率はそれぞれ44%・40%です。反応が小さな指標は戻り比率が高くなりがちで、高値(安値)掴みには気を付けた方が良いでしょう。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事前差異と直前1分足の方向一致率は22%(不一致率78%)となっています。現時点での事前差異はマイナスとなっているので、直前1分足が陽線となる期待的中率78%ということです。
事後差異・実態差異と直後1分足の方向一致率がそれぞれ83%・80%となっています。市場予想や前回結果に対する発表結果の良し悪しには素直に反応する指標です。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
まず、直後1分足の陽線率が77%と、異常な偏りが見受けられます。
そして、直後1分足と直後11分足の方向一致率が70%と高いことを除けば、先に形成されたローソク足が、後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆候はありません。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は70%です。そして、その70%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは62%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
けれども、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは33%しかありません。早期開始した追撃は、発表から1分を過ぎたら跳幅を伸ばすことこそ62%あるものの、10分後には67%の確率で逆方向に位置しています。発表から1分ないしは反応を伸ばしきったら、逆張りの機会を窺う方が良さそうです。
以下のシナリオで取引に臨みます。大して反応しないので、無理に取引する必要なんてありません。
以下は2017年8月30日00:00頃に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は前回・予想を上回り、反応は陽線でした。
前月結果を上回るのは3か月連続で、グラフ推移が上昇基調に復しました。直近ピークは2017年3月分(125.6)です。今回結果はこれに次ぐ水準(122.9)でした。
反応は、指標発表後2-3秒程度、陰線側に僅かに振れたように見受けられました。がしかし、それから陽線側に転じ、発表から5-6分後に108.80に達すると、下降に転じました。108.80は15分足チャートの雲上端のレジスタンスにあたります。
取引結果は次の通りでした。
直前1分足は、下ヒゲ形成と見てポジションを取ったものの、その動きはヒゲではなく実体を陰線化する動きでした。幸い、直後1分足は陽線と見なしていたため、そのままポジションを持ち続け、指標発表直後の跳ねで利確しました。
ラッキーでした。
事前調査分析内容を以下に検証します。
事前準備していたシナリオは次の通りです。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
T.指標予想要点
2017年8月29日23:00に米国景気指標「CB消費者信頼感指数」が発表されます。今回発表は2017年8月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 市場予想は8月28日時点のものです。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 本指標における事前差異判別式は、単純に(市場予想ー前回結果)です。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 本指標は、先に発表されるUM消費者信頼感指数速報値と、調査期間・発表時期・調査目的・調査方法がほぼ同じです。がしかし、両指標は同月集計同士の実態差異一致率が52%しかありません。よって、単月毎の発表結果が前月結果より良くなるか悪くなるかについて、UM消費者信頼感指数速報値の同月発表結果を参考にすることは無意味です。
- 本指標は2016年6月以降、市場予想後追い型となっています。前回は発表結果を市場予想が上回っており、今回も市場予想を上回る期待的中率は71%です。
また、過去事例を見る限り、直前10-1分足や直前1分足が10pips以上跳ねた場合、直後1分足の反応方向はそれと同じ方向になっています。 - 初期反応こそ、指標結果の前回・予想に対する良し悪しに素直なものの、直後11分足終値が直後1分足終値より反応を伸ばしたことが33%しかありません。反応は小さく、しかも直後1分足や直後11分足の戻り比率が40%を超えています。追撃するなら最初順張りで、発表から1分を過ぎると逆張りに適しています。
そして、次のシナリオで取引に臨みます。大して反応しないので、無理に取引する必要なんてありません。
- 直前1分足は陽線と見込みます。
指標一致性分析の結果、事前差異と直前1分足の方向一致率は22%(不一致率78%)となっています。今回の事前差異はマイナスなので、直前1分足が陽線となる期待的中率は78%です。
但し、直前1分足は過去平均跳幅・値幅が4pips・2pipsしかありません。陰線側にヒゲを形成するのを待ってポジションを取り、すぐに利確した方が良いでしょう。そういうヒゲが形成されなければ、取引を諦めた方がいいpipsです。 - 直後1分足は陽線と見込みます。但し、直前10-1分足か直前1分足が10pips以上跳ねたら、直後1分足はそれと同じ方向と見込みます。指標発表直前にポジションを取り、発表後の跳ねで利確(損切)です。
本指標は現在、市場予想後追い型で、前回は発表結果を市場予想が上回っていました。今回も市場予想を上回る期待的中率は71%です。また、反応一致性分析の結果、直後1分足の陽線率は78%と偏っています。
直前10-1分足が10pips跳ねたことは過去16%、直前1分足が10pips以上跳ねたことは過去3%、そして、それらの場合に直後1分足は、同値終了を除けば全てその跳ねと同じ方向に反応しています。 - 指標発表後は、反応方向を確認したら早期追撃開始し、短期利確を狙います。また、発表から1分を過ぎたら、逆張りのチャンスを狙います。逆張りなので、これも短期利確を狙います。
論拠は反応性分析の結果に依ります。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
CBはConference Board(全米産業審議委員会)の略で、消費者信頼感指数というのは消費者のセンチメント(消費マインド)を指数化した景気指標です。基準は1985年を100とし、毎月5000世帯対象のアンケート調査結果を集計しています。
調査は、(a) 現在の景況感、(b) 現在の雇用状況、(c) 6か月先の景況感、(d) 6か月先の雇用、(e) 6か月先の所得、について行われます。6か月以内の購入計画(自動車・住宅など)についても行われますが、この項目が(c)や(e)に含まれるのか否かは確認できていません。いずれにせよ、これら5項目について「楽観している」か「悲観している」かを指数化しています。
指数化にあたっては、現状の経済と雇用に関する2項目の平均が「現状指数」で、経済・雇用・所得の先行きに関する3項目の平均(季節調整実施)が「期待指数」です。そして、これら5項目の平均値が消費者信頼感指数です。
この内容はUM(ミシガン大学)消費者信頼感指数と同じです。よって、調査数の差(UMは確報値で500名)こそあれ、原理的にはUMがCBの先行指標と言えるでしょう。がしかし、後述するように、少なくとも直近のデータを見る限り両者の単月毎の改善・悪化には相関がありません。
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本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で9pipsしかありません。そして、過去反応のうち71%は5-12pipsの間となっています。
反応は小さい指標です。
【2. 既出情報】
(2-1. 過去情報)
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
グラフ推移は、2016年5月頃をボトムに、その後は上昇基調が続いていました。がしかし、2017年3月をピークに上昇が停滞しています。
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2015年2月以降前回まで、発表結果と市場予想の大小関係が前月と翌月で入れ替わった回数は16回(入れ替わり率53%)です。ただ、直近ボトムの翌月2016年5月以降だと、それは4回(入れ替わり率29%)となります。
よって現在、本指標は市場予想後追い型です。
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本指標は、先行発表(8月18日)された同じ8月分UM消費者信頼感指数速報値と、調査期間・発表時期・調査目的・調査方法がほぼ同じです。両指標間に相関がないか、調べておきました。
相関の有無は、それぞれの指標の実態差異(発表結果ー前回結果)を用いて調べます。事前差異・事後差異・実態差異のうち、市場予想が含まれないのは実態差異だけだからです。もし両指標の間に相関があるなら、実態差異(発表結果ー前回結果)に現れるはずです。
がしかし、上図の通り、両指標の実態差異一致率は52%しかないことがわかりました。52%なら、一致するか一致しないかを丁半博奕で決めるのと同じです。
よって、UM速報値とCBとの間には、調査期間・発表時期・調査目的・調査方法がほぼ同じであるにも関わらず相関がない、と言えます。
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以上の分析要点は以下の通りです。
(1) 本指標は現在、上昇基調TOP付近で停滞中です。
(2) 本指標は2016年6月以降、市場予想後追い型となっています。前回は発表結果を市場予想が上回っており、今回も市場予想を上回る期待的中率は71%です。
(3) 8月18日に先行発表されたUM消費者信頼感指数速報値と、調査期間・発表時期・調査目的・調査方法がほぼ同じです。がしかし、本指標と同月集計同士の実態差異一致率を調べたところ、それは52%しかありません。よって、単月毎の発表結果が前月結果より良くなるか悪くなるかについて、UM消費者信頼感指数速報値の同月発表結果を参考にすることは無意味です。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が7pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去5回(頻度16%)あります。
この5回の直後1分足跳幅平均は10pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均9pipsとほぼ同じです。直前10-1分足跳幅が大きくても、それが直後1分足跳幅も大きくなるとは言えません。
次に、この5回の直前10-1分足と直後1分足の方向は3回一致しており、一致しなかった2回の直後1分足は同値終了です(期待的中率100%、同値は集計しない)。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は4pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去1回しかありません。その1回の直後1分足跳幅は13pipsで、直前1分足と直後1分足の方向は一致しています。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は4pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率44%)です。直後11分足のそれは6pips(戻り比率40%)です。直後11分足の戻り比率が40%を超えており、高値(安値)掴みには気を付けた方が良いでしょう。
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過去のローソク足の特徴を纏めると以下の通りです。
(1) たまに(頻度16%)直前10-1分足跳幅が10pips以上となることがあります(過去5回、頻度16%)。この5回のうち2回の直後1分足は同値終了で、残る3回は直後1分足が直前10-1分足と方向が一致しています(期待的中率100%、期待的中率算出では同値を集計しない)。
(2) ごくまれに(頻度3%)直前1分足跳幅が10pips以上だったことは過去1回しかありません。その1回の直後1分足跳幅は13pipsで、直前1分足と直後1分足の方向は一致しています(期待的中率100%だが過去事例1回)。
(3) 直後1分足・直後11分足の戻り比率はそれぞれ44%・40%です。反応が小さな指標は戻り比率が高くなりがちで、高値(安値)掴みには気を付けた方が良いでしょう。
【3. 定型分析】
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事前差異と直前1分足の方向一致率は22%(不一致率78%)となっています。現時点での事前差異はマイナスとなっているので、直前1分足が陽線となる期待的中率78%ということです。
事後差異・実態差異と直後1分足の方向一致率がそれぞれ83%・80%となっています。市場予想や前回結果に対する発表結果の良し悪しには素直に反応する指標です。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
まず、直後1分足の陽線率が77%と、異常な偏りが見受けられます。
そして、直後1分足と直後11分足の方向一致率が70%と高いことを除けば、先に形成されたローソク足が、後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆候はありません。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は70%です。そして、その70%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは62%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
けれども、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは33%しかありません。早期開始した追撃は、発表から1分を過ぎたら跳幅を伸ばすことこそ62%あるものの、10分後には67%の確率で逆方向に位置しています。発表から1分ないしは反応を伸ばしきったら、逆張りの機会を窺う方が良さそうです。
【4. シナリオ作成】
以下のシナリオで取引に臨みます。大して反応しないので、無理に取引する必要なんてありません。
- 直前1分足は陽線と見込みます。
指標一致性分析の結果、事前差異と直前1分足の方向一致率は22%(不一致率78%)となっています。今回の事前差異はマイナスなので、直前1分足が陽線となる期待的中率は78%です。
但し、直前1分足は過去平均跳幅・値幅が4pips・2pipsしかありません。陰線側にヒゲを形成するのを待ってポジションを取り、すぐに利確した方が良いでしょう。そういうヒゲが形成されなければ、取引を諦めた方がいいpipsです。 - 直後1分足は陽線と見込みます。但し、直前10-1分足か直前1分足が10pips以上跳ねたら、直後1分足はそれと同じ方向と見込みます。指標発表直前にポジションを取り、発表後の跳ねで利確(損切)です。
本指標は現在、市場予想後追い型で、前回は発表結果を市場予想が上回っていました。今回も市場予想を上回る期待的中率は71%です。また、反応一致性分析の結果、直後1分足の陽線率は78%と偏っています。
直前10-1分足が10pips跳ねたことは過去16%、直前1分足が10pips以上跳ねたことは過去3%、そして、それらの場合に直後1分足は、同値終了を除けば全てその跳ねと同じ方向に反応しています。 - 指標発表後は、反応方向を確認したら早期追撃開始し、短期利確を狙います。また、発表から1分を過ぎたら、逆張りのチャンスを狙います。逆張りなので、これも短期利確を狙います。
論拠は反応性分析の結果に依ります。
以上
2017年8月29日23:00発表
以下は2017年8月30日00:00頃に追記しています。
V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は前回・予想を上回り、反応は陽線でした。
前月結果を上回るのは3か月連続で、グラフ推移が上昇基調に復しました。直近ピークは2017年3月分(125.6)です。今回結果はこれに次ぐ水準(122.9)でした。
反応は、指標発表後2-3秒程度、陰線側に僅かに振れたように見受けられました。がしかし、それから陽線側に転じ、発表から5-6分後に108.80に達すると、下降に転じました。108.80は15分足チャートの雲上端のレジスタンスにあたります。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
直前1分足は、下ヒゲ形成と見てポジションを取ったものの、その動きはヒゲではなく実体を陰線化する動きでした。幸い、直後1分足は陽線と見なしていたため、そのままポジションを持ち続け、指標発表直後の跳ねで利確しました。
ラッキーでした。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容を以下に検証します。
- 先行指標との関係について、次のように捉えていました。
「本指標は、先に発表されるUM消費者信頼感指数速報値と、調査期間・発表時期・調査目的・調査方法がほぼ同じです。がしかし、両指標は同月集計同士の実態差異一致率が52%しかありません。よって、単月毎の発表結果が前月結果より良くなるか悪くなるかについて、UM消費者信頼感指数速報値の同月発表結果を参考にすることは無意味です。」
今月結果は、UM速報値とCBと、ともに実態差異がプラスでした。
但し、この分析は確率的なものです。来月以降もまだ暫く様子を見て、確率的な正しさが維持できているかの確認を継続します。 - 本指標の特徴について、次のように捉えていました。
「本指標は2016年6月以降、市場予想後追い型となっています。前回は発表結果を市場予想が上回っており、今回も市場予想を上回る期待的中率は71%です。
また、過去事例を見る限り、直前10-1分足や直前1分足が10pips以上跳ねた場合、直後1分足の反応方向はそれと同じ方向になっています。」
結果は、市場予想後追い型らしく、前月発表と同じく今月も市場予想を上回りました。 - 取引シナリオについて、次のように捉えていました。
「初期反応こそ、指標結果の前回・予想に対する良し悪しに素直なものの、直後11分足終値が直後1分足終値より反応を伸ばしたことが33%しかありません。反応は小さく、しかも直後1分足や直後11分足の戻り比率が40%を超えています。追撃するなら最初順張りで、発表から1分を過ぎると逆張りに適しています。」
結果は、直後1分足が事後差異方向と一致し、素直な反応をしました。そして、反応は小さく(10pips)、直後11分足終値は直後1分足値幅を削りました。逆張りをするなら、指標発表から5分後に売ポジションを取るのが最適だったでしょう。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオは次の通りです。
- 直前1分足は陽線と見込みました。結果は陰線でした。
但し、直前10-1分足との方向一致率が低い点は、直前10-1分足と直前1分足とが反転し、分析通りとなりました。 - 直後1分足は陽線と見込みました。結果は陽線でした。
- 指標発表後は、反応方向を確認したら早期追撃開始し、短期利確を狙いました。また、発表から1分を過ぎたら、逆張りのチャンスを狙いました。逆張りなので、これも短期利確を狙いました。
分析通りで問題ありません。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
4-2. 米国経済指標DB(2017年8月最終版)
米国の経済指標発表前後の取引はUSDJPYで行っています。
米国の政治・金融・経済の動向は、どの通貨ペアにも影響を及ぼします。望ましくは、東京時間の取引はUSDJPYで、欧州・米国時間はEURUSDで行いたいものです。
個別発表・個別指標の問題ではありません。
7月は変化の兆しが多い月でした。
具体的には、高水準だった製造業景気指標が低下に転じたように見受けられました。ところが、生産関連実態指標には、そういった兆しが見受けられません。逆に、物価指標Iや小売売上高が低下や悪化したにも関わらず、4-6月期GDP速報値や4-6月期PCEは前期比で+2.6%・+2.8と良い数字でした。CPIと小売売上高の低下・減少にはかなり大きな陰線で反応しました。雇用は相変わらず良好で平均時給も前月比プラス推移しています。
米経済にプラス結果ではあまり反応せず、マイナス材料に過度に反応したのが7月でした。
8月は、経済自体に過度な心配が不要なもののむしろ、政治的混乱に伴う行政遅延・外交的行き詰まり・デフォルトリスクといった問題が相場に影響した月でした。折しも、FRBのBS縮小による引締め政策への転換が9月に予定されていると見なされていたため、その影響もあったでしょう。
具体的には、各種景況感の下げ止まり・小売販売の好調・物価再上昇・GDP速報値+2.6%といった内容にも関わらず、USD売りです。
9月は、デフォルトリスクとBS縮小開始がテーマです。こんな政治的状況でBS縮小なんて始められるはずない(デフォルトで金融市場が大混乱の恐れあり)のですが。BS縮小延期なら、USD買に大きく動く可能性があります。
2017年の政策金利利上げは3回が予定されていました。3月・6月を市場予想通り実施し、次回は12月と見なされていました。9月には、BS縮小によって引締め政策転換が実際に始まると見なされていました。
がしかし、8月25日のジャクソンホールでのFRB議長の講演では、今後政策に関するヒントがなかったように思われます。
そもそもFRBが何か言える状況ではありません。FRBの金融政策のスケジュールへの最も大きな障害は、議会の予算未承認によるデフォルトリスクかも知れません。そんなときに大きな金融政策変更が出来るはずないでしょう。
(分析事例) FOMC政策金利(2017年7月27日発表結果検証済)
(分析事例) FOMC議事録(2017年5月25日公表結果検証済)
米国GDPに対し公共投資が与える影響は、日本の場合に比して小さなものです(絶対額でなく比率で考察)。従って、政府予算の配分が変わることは経済的な直接効果よりも、関連法規改正などで予算配分が増えた分野への政府支援が強まる間接効果となります(日本の場合は直接効果が大きい)。にも関わらず、そうした政策変更は、JPYに対してよりもUSDに対して大きく影響が現れがちな点が不思議です。
現在、米政権はオバマケア代案法案・税制改革・2018年度予算案(予算削減先が多い)・ロシアゲート問題・北朝鮮問題(中国問題)・多国間協定離脱の代替施策必要性(FTAやパリ協定)・政府高官の相次ぐ辞任、を抱えています。
きっと風呂敷も日本の20倍ぐらいあるのでしょう。もう「わやくそ」と言った状況です。
8月はデフォルトリスクが現実味を帯び始めました。財務長官によれば9月いっぱいの予算手当はできているそうですが、一度、数年前に期限に間に合わなかった前科があります。北朝鮮を見ればわかるように、瀬戸際交渉戦術というのは、以前よりも大きな刺激や衝撃が必要です。
この影響で9月の取引は、指標分析なんてあまり役に立たないかも知れません。
景気指標の発表結果予想では、ふたつの指標の上昇基調・下降基調といったトレンド一致を論拠にすることはできます。がしかし、先に発表された指標結果の良し悪しを論拠に、後で発表される指標結果の良し悪しを予想することはできません。
(3-1) 総合・非製造業
8月18日に発表された8月分UM消費者信頼感指数速報値は、総合指数(信頼感指数速報値)・期待指数が前回結果を上回り、現状指数が前回結果を下回りました。8月上旬には、ダウが22000ドルを一時的に上抜けているので、そのことと関係があるかも知れません。但し、その後はダウが下げることの方が多かったので、確定値は低下するかも知れません。
8月29日には、8月分CB消費者信頼感指数発表が予定されています。
前回7月分は121.1で、直近の最大値は2017年3月分が125.6だったので、それには及ばなかったものの、2か月連続で前回結果より改善が続いて好調を維持しています。
9月6日には、8月分ISM製造業景況指数発表が予定されています。
前回7月分は、価格指数を除き、6月分結果を大きく下回りました。景況指数は、昨年8月以来の水準まで低下しています。
(分析事例) UM消費者信頼感指数速報値(2017年8月18日発表結果検証済)
(分析事例) CB消費者信頼感指数(2017年8月29日23:00発表予定、事前分析済)
(分析事例) ISM非製造業・総合景況指数(2017年8月3日発表結果検証済)
UM(ミシガン大学)消費者信頼感指数速報値とCB(カンファレンスボード)消費者信頼感指数とは、統計の目的・内容・時期が同じにも関わらず、単月毎の実態差異(発表結果ー前回結果)の方向が一致しません(一致率50%前後)。6月・7月の発表結果も、UM速報値とCBの結果はそれぞれ前月結果に対し悪化と改善とが入れ替わっています。
よって、全体的なグラフの上昇基調・下降基調といったトレンドを論拠に発表結果を予想することは可ですが、単月毎の先に発表された指標結果を論拠に、後で発表される指標結果を予想することは不可です。
またCBは、直後1分足と直後11分足の方向一致率がそこそこあっても、それら終値同士を比較すると反応を伸ばしたことが33%しかありません。跳幅同士を比較すると反応を伸ばしがちなので、発表から1分を過ぎると逆張りの機会を窺った方が良い指標です。なるべくなら、取引しない方が良いでしょう。
(3-2) 製造業
8月15日に発表された8月分NY連銀製造業景気指数は+25.2で、前回結果を大きく上回りました。
2016年1月を底として、それ以降は上下動をしながら全体的に上昇基調が続いています。5月分データが7が月ぶりにマイナス転換したことで景気減速が懸念されたものの、グラフ推移は上昇基調に保っています。
8月17日に発表された8月分Phil連銀製造業景気指数は+18.9(前回+19.5)で、反応は陽線でした。ほぼ横ばいですが、グラフ推移を見ると、今後の上昇・下降いずれも予感させます。
ただ、今回の内訳で見るべき大きな変化は、新規受注が大きく伸びたことです。前回は受注が急落(6月25.9、7月2.1)していたので、これで7月を異常値と見なすことができます。7月の受注は、2016年9月以来の低い値でした。
8月分ISM製造業景況指数は9月1日発表予定です。
前回7月分ISM製造業景況指数は、6月結果を下回って56.3でした。但し、この数値は、5月分数値が2014年11月の58.7以来の最高値だったことを踏まえると、それほど低下幅が大きかった訳ではありません。NY連銀・Phil連銀のように下降基調転換の兆しが現れている訳ではありません。
(分析事例) NY連銀製造業景気指数(2017年7月17日発表結果検証済)
(分析事例) Phil連銀製造業景気指数(2017年8月17日発表結果検証済)
(分析事例) ISM製造業景況感指数(2017年8月1日発表結果検証済)
多くの指標解説書籍・記事では「NY連銀指標で動向を掴み、Phil連銀指標でそれを再確認して、ISM発表に臨むと良い」旨、記載されています。がしかし、この話をアテにすることはできません。
NY連銀結果とPhil連銀結果との実態差異一致率にせよ、Phil連銀結果とISM結果の実態差異にせよ、50%程度しか一致していていません。実態差異は、発表結果ー前回結果、で指標値の増減を表します。単月毎に見る限り、増減方向すら丁半博奕と同じぐらいしか一致していないのです。
但し、これにISM直前に発表される製造業PMIも加え「NY連銀・Phil連銀・PMIの方向が揃って一致したとき」とすると、ISM実態差異の方向一致率を70%付近まで向上できます。もちろん、そんな3つとも一致という機会は少ないため、指標予測には別の分析方法が必要です。
四半期毎に発表される四半期PCEコアデフレータは、GDPと同時発表されます。
毎月発表されるPCEコアデフレータは、FRBが注目していると言われています。がしかし、最近はあまり大きな反応がありません。最近はCPIが小売売上高と同時発表されることが続いたこともあって、CPIが最も大きく反応しています。
8月1日に発表された6月分PCEコアデフレータは、上昇・下降を見極めやすい前年比が前回よりやや改善しました。まだ、上昇に転じたと言えるほどではありません。
8月10日に発表された7月分PPI・コアPPIは前回結果を下回りました。
ただ、前回よりも今回結果が低下と言っても、0.1〜0.2%程度です。この結果解釈は難しいところです。このところのUSD安と設備稼働率上昇で、製造原価は下がって当然です。
8月11日に発表された7月分CPIは前回結果を上回りました。
コアCPIは前回同値でしたが、グラフ推移を見る限りでは、CPIは下げ止まったように見受けられます。市場の解釈は、市場予想を下回っていたため一旦大きく陰線で反応したものの、発表から10分を過ぎる頃から反転し、30分を過ぎる頃には発表前の水準を超えて陽線側に転じました。
6月分までのデータを見れば「どこまで(いつまで)下がるのか」といった感想を持つことが自然だったと思います。がしかし、7月分データからは「そろそろボトムかも知れない」と予感させる内容が続いています。但し、これは指標の推移についてで、反応はまだ「下げが大きい」状態が続いています。
(分析事例) 四半期PCEコアデフレータ(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) PCEコアデフレータ(2017年8月31日21:30発表予定、事前分析済)
(分析事例) CPI(2017年8月11日発表結果検証済)
(分析事例) PPI(2017年8月10日発表結果検証済)
(分析事例) 輸入物価指数(2017年7月18日発表結果検証済)
多くの指標解説書籍・記事に記されている「物価は、材料(輸入物価指数)→生産(PPI)→消費(CPI)へと下流に波及する」旨は、少なくとも最近に関する限りあてはまりません。
輸入物価とPPIとは、単月毎に前回結果と発表結果の差を求め、上流指標と下流指標の増減方向を比べた場合、一方を前後3か月ずらしても増減方向の一致率は高くありません。
PPIとCPIは「波及する」というよりも、ほぼ同時に同じ方向に向かいがちです。同月発表のPPIとCPIの実態差異は71%一致するのです。
景気を表すのは新規雇用者数と失業率で、これらについては既にFRB幹部も満足しています。だから、最近は景気を後押しする平均時給の伸びが注目されています。インフレ圧力が強まっているのに、賃金が伸びなければいずれ好調な個人消費が減少に転じ、それが経済成長を阻むと考えられているから、です。
8月2日に発表された7月分ADP民間雇用者数前月差は+17.8万人でした。
8月4日に発表された7月分雇用統計は、NFPが予想(+18.3万人)を上回り(+20.9万人)、失業率(4.3%)と平均時給(+0.3%)は予想通りでした。
(分析事例) ADP民間雇用者数(2017年8月30日21:15発表予定、事前分析済)
(分析事例) 雇用統計(2017年9月1日21:30発表予定、事前分析済)
雇用統計は非常に大きな反応する指標です。発表前には、ISM製造業景況指数や同非製造業景況指数の雇用指数や、ADP雇用統計の結果を根拠に、雇用統計の良し悪しを論じる記事は多数見かけます。がしかし、少なくとも過去2年程度に関する限り、単月毎のISMの雇用指数は雇用統計の良し悪しと関係ありません。ADP結果は雇用統計結果とやや相関があるものの、それでも前月発表結果と今月発表結果の増減方向が60%も一致していません。
雇用統計発表から1分間の反応は極めて大きいため注意が必要です。発表から1分を過ぎると、それ以前のポジションは一旦利確のタイミングを計った方が良さそうです。そして、発表から10分を過ぎた頃に、再度の追撃可否をチャートと相談すると良いでしょう。やみくもに複数回の追撃を繰り替えすやり方には向いていない指標です。
財政収支・国際収支の赤字が続いていても、主要先進国において米国経済は最も好調です。そういう実態を踏まえると、我々アマチュアにも現状の景気の良し悪しを最もわかりやすく表しているのがGDPです。
6月29日に発表された1-3月期GDP確定値は、改定値を上回って1.4%となりました。雇用状況が好調ゆえに、速報値の0.7%・改定値の1.2%よりもいずれ盛り返す、というFOMC見解は正しかったのでしょう。
そして、7月28日に発表された4-6月期GDP速報値は、期待通り+2.6%まで上昇しました。それにも関わらず、一部市場予想を下回ったため、発表直後の反応は陰線です。+2.6%という数字は、1-3月期の+1.4%だけでなく、10-12月期の+2.1%も上回っていたのに、です。
(分析事例) 四半期GDP速報値(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP改定値(2017年8月30日21:30発表予定、事前分析済)
(分析事例) 四半期GDP確定値(2017年6月29日21:30発表結果検証済)
GDP速報値は、初期に比較的安定して大きく反応するものの、その後は伸び悩む傾向があります。
GDPに直接大きな影響を与えるPCEへの反応より、PCE結果を示唆する小売売上高への反応の方が大きくなる傾向があります。そして、GDPに占める比率が小さな生産関連指標や、個人消費に占める比率が高いと思われる住宅関連指標は、反応が小さい傾向があります。
(2-1) 消費関連
米国GDPの約70%は個人消費(PCE)が占めています。その個人消費に直結する先行指標は小売売上高と考えられます。
7月28日に発表された4-6月期PCE速報値は前期比+2.8%でした。同時発表された4-6月期GDP速報値も+2.6%(1-3月期確定値+1.7%)だったにも関わらず、指標発表直後の反応は陰線となりました。
8月1日に発表された6月分個人消費は前月同値、個人所得は2016年11月以来の0%でした。但し、個人所得が減った主因は、配当の項が大きく減ったため、と思われます。配当が減った原因は、前月5月に大きかったため、前月比データでよくある反動と見なせます。
数字だけを見ると前月より悪化した印象があるものの、内容を見ると前月と状況変わらずと解釈した方が良さそうです。
8月15日に発表された7月分小売売上高は、前月比・コア前月比(除輸送機器)ともに前回・予想を上回り、反応は陽線でした。発表直後陽線は5か月ぶりでした。
指標のグラフ推移は、前月比・コア前月比ともに直近ピークの2017年4月を上回り、前月比は2016年12月以来、コア前月比は2017年1月以来の良い数字です。それらの時期はトランプ相場終盤の最も米国指標全般に良かった時期です。
(分析事例) 四半期PCE速報値(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期PCE改定値(2017年8月30日21:30発表予定、事前分析済)
(分析事例) 四半期PCE確定値(2017年6月29日発表結果検証済)
(分析事例) PCE・個人所得(2017年8月31日21:30発表予定、事前分析済)
(分析事例) 小売売上高(2017年8月15日発表結果検証済)
四半期PCEはGDPと同時発表されます。
毎月のPCE・個人所得は、多くのFX会社が重要度・注目度を高く評価しているにも関わらず、反応が小さい指標です。但し、反応方向は、直前10-1分足の方向と一致する傾向があり、発表から暫くしてもその方向に反応が伸びやすい、という特徴があります。
小売売上高は、CPI結果との方向一致率が高い指標です(同時発表されることも多い)。指標発表後の反応は大きく一方向に伸びやすいため、追撃に適した指標だと言えます。
(2-2) 住宅関連
個人資産というのは、金融資産と住宅とがほとんどです。住宅は(ふつう)個人消費で最大の金額です。なので、住宅指標の良し悪しは、経済実態(個人消費)に直接的(住宅購入)にも間接的(家具等の耐久財購入)にも影響が大きい、と考えられています。
現在、米国住宅市場は在庫不足で、低価格帯住宅の販売が好調です。
8月23日に発表された7月分新築住宅販売件数は、年換算販売件数が57.1万件で、前月比が△9.4%でした。
8月24日に発表された7月分中古住宅販売件数は、年換算販売件数が544万件で、前月比が△1.3%でした。中古住宅在庫は26か月連続で前年水準を下回りました。その結果、販売価格が前年同月比で+6.2%となっています。
(分析事例) 新築住宅販売件数(2017年8月23日23:00発表結果検証済)
(分析事例) 中古住宅販売件数(2017年8月24日23:00発表結果検証済)
ともに、FX会社HPなどでは注目度や重要度が高く評価されている指標です。これら指標結果を予想するための指標も多く発表されているものの、これら指標自体の反応は小さく、よっぽど長期ポジションを持つFX参加者を除けば大して重要ではありません。
新築住宅販売件数は中古住宅販売件数より1〜2か月先行するという話があります。その理由の論理飛躍は、異なる客層の行動原理が異なることを無視した誤解が広く流布されたため、と考えられます。実際には両指標のどちらが先行指標であるにせよ、両指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は増減方向すら一致率が高くありません。
ただ、新築住宅販売件数はユニークで、取引上の魅力があります。
指標発表前に予兆的な動きが見受けられることと、発表から1分経過後の追撃に逆張りが適している点で、他の指標で見られない特徴を有しているからです。大したpipsは稼げないものの、勝ちやすい指標かも知れません。これは魅力です。
そして、中古住宅販売件数は、指標発表前に発表直後の反応方向を示唆する偏りがいくつか過去事例から見出せます。指標発表後も一方向に反応を伸ばしやすいという傾向が見受けられます。つまり、取引しやすい指標なのです。
(2-3) 生産関連
鉱工業(含製造業・エネルギー産業)は、米国GDPの約12%しか占めていません。だから、製造業の好不調が米国経済に与える直接効果は小さい、と捉えています。雇用指標・景気指標・国際収支に影響すると考えているので記録を取って見ていますが、反応が小さくそのときどきのトレンドに呑まれがちなため、指標分析に基づく取引には適していません。
8月17日に発表された7月分鉱工業生産・製造業生産は前回より低下しました。低下幅は、これら指標の過去推移に比べて正常範囲内です。よって、今回の発表があっても鉱工業生産と製造業生産のグラフ推移からは、変化の兆しが窺えません。ただ、設備稼働率は、2016年11月分以降の上昇基調が77%手前で4か月連続停滞しています。
グラフ推移から鉱工業・製造業の好不調を見やすい設備稼働率を見る限り、ここ最近の製造関連景気指標の低下は説明が付かない現象でした。
8月25日に発表された7月分耐久財受注前月比は、前回を大きく下回り△6.8%(前回+6.5%)ました。コア受注は+0.5%(前回+0.2%)でした。
(分析事例) 鉱工業生産・製造業生産・設備稼働率(2017年8月17日発表結果検証済)
(分析事例) 耐久財受注(2017年8月25日発表結果検証済)
指標発表直後1分足跳幅が数pipsしかない指標では、指標結果に素直に反応しがち(事後差異と直後1分足の方向一致率が70%以上)で、且つ、指標結果の予想ができなければ取引する意味がありません。
僅か数pipsしか跳ねない指標では、比較的稼ぎやすい反応方向を確認してからの追撃をうまく出来ても、もっと小さなpipsしか得られません。何より、指標発表直後にすら大きく跳ねない指標は、もし反応を伸ばしがちだという分析結論を得ても、それが単にそのときどきのトレンドに偏りがあったことと区別ができないからです。
耐久財受注は、先に発表される鉱工業生産(同時に製造業生産・設備稼働率が発表)の実態差異(発表結果ー前回結果)との方向一致率が77%となり、両指標の良し悪しに相関があります。
最近は毎月400億ドル台の貿易赤字が続いています。毎月400億ドルという大きさは、年間で日本の国家予算近い規模の赤字ということです。米国の経済規模というのは本当にすごいのですね。
8月4日に発表された6月分貿易収支は、前月比△5.9%の465億ドルの赤字でした。
前月発表(5月分)では、内訳の輸出が2年ぶりの高水準でした。石油輸出が好調なだけでなく、輸出全体が約2年半ぶりの好調さです。今回発表では収支全体が2016年10月以来の赤字縮小でした。がしかし、直近の収支はここ2・3年で赤字が大きな時期に属します。赤字縮小に向かっている兆しは、まだグラフ推移から見出せません。
対中貿易赤字は+3.1%増加し、輸出が減って(△4.7%)、輸入が増えていました(+1.2%)。
米貿易赤字の47%は対中赤字です(2016年)。
7月16日に期日を迎えた米中100日計画は、早い時期にいくつかの合意がありました。中国市場への米国産牛肉輸出再開、米金融機関が中国市場で格付け業務・債券売買に参入、米LNG(液化天然ガス)輸出、といった内容です。その後、新たな合意についての報道がありません。これらの合意成果は、まだ指標結果に反映されていません。
8月18日、USTR(米通商代表部)は、通商法301条に基づく中国の知的財産権侵害調査を開始しました。8月24日、中国商務省は、国益を守るために必要なあらゆる手段を講じる、と表明しました。
(分析事例) 貿易収支(2017年4月4日発表結果検証済)
本指標の特徴は、貿易赤字が多少増えようが減ろうが、発表直後の反応方向にあまり関係ありません。発表時刻の関係で、他の大きな指標と同時発表されることも多く、その結果、見掛け上の反応平均値は大きくなっています。単独で発表される場合には、あまり反応しない指標です。
本指標結果や内訳を論拠に、米政権からの2国間貿易収支に関する牽制発言があり得ます。本指標の意義は、毎月の貿易赤字の多寡よりも、そうした発言でUSDJPYが動くことへの警鐘を与えてくれることです。
米国の政治・金融・経済の動向は、どの通貨ペアにも影響を及ぼします。望ましくは、東京時間の取引はUSDJPYで、欧州・米国時間はEURUSDで行いたいものです。
【4-2-1. 8月概観】
個別発表・個別指標の問題ではありません。
7月は変化の兆しが多い月でした。
具体的には、高水準だった製造業景気指標が低下に転じたように見受けられました。ところが、生産関連実態指標には、そういった兆しが見受けられません。逆に、物価指標Iや小売売上高が低下や悪化したにも関わらず、4-6月期GDP速報値や4-6月期PCEは前期比で+2.6%・+2.8と良い数字でした。CPIと小売売上高の低下・減少にはかなり大きな陰線で反応しました。雇用は相変わらず良好で平均時給も前月比プラス推移しています。
米経済にプラス結果ではあまり反応せず、マイナス材料に過度に反応したのが7月でした。
8月は、経済自体に過度な心配が不要なもののむしろ、政治的混乱に伴う行政遅延・外交的行き詰まり・デフォルトリスクといった問題が相場に影響した月でした。折しも、FRBのBS縮小による引締め政策への転換が9月に予定されていると見なされていたため、その影響もあったでしょう。
具体的には、各種景況感の下げ止まり・小売販売の好調・物価再上昇・GDP速報値+2.6%といった内容にも関わらず、USD売りです。
9月は、デフォルトリスクとBS縮小開始がテーマです。こんな政治的状況でBS縮小なんて始められるはずない(デフォルトで金融市場が大混乱の恐れあり)のですが。BS縮小延期なら、USD買に大きく動く可能性があります。
【4-2-2. 政策決定指標】
(1) 金融政策
2017年の政策金利利上げは3回が予定されていました。3月・6月を市場予想通り実施し、次回は12月と見なされていました。9月には、BS縮小によって引締め政策転換が実際に始まると見なされていました。
がしかし、8月25日のジャクソンホールでのFRB議長の講演では、今後政策に関するヒントがなかったように思われます。
そもそもFRBが何か言える状況ではありません。FRBの金融政策のスケジュールへの最も大きな障害は、議会の予算未承認によるデフォルトリスクかも知れません。そんなときに大きな金融政策変更が出来るはずないでしょう。
(分析事例) FOMC政策金利(2017年7月27日発表結果検証済)
(分析事例) FOMC議事録(2017年5月25日公表結果検証済)
(2) 財政政策
米国GDPに対し公共投資が与える影響は、日本の場合に比して小さなものです(絶対額でなく比率で考察)。従って、政府予算の配分が変わることは経済的な直接効果よりも、関連法規改正などで予算配分が増えた分野への政府支援が強まる間接効果となります(日本の場合は直接効果が大きい)。にも関わらず、そうした政策変更は、JPYに対してよりもUSDに対して大きく影響が現れがちな点が不思議です。
現在、米政権はオバマケア代案法案・税制改革・2018年度予算案(予算削減先が多い)・ロシアゲート問題・北朝鮮問題(中国問題)・多国間協定離脱の代替施策必要性(FTAやパリ協定)・政府高官の相次ぐ辞任、を抱えています。
きっと風呂敷も日本の20倍ぐらいあるのでしょう。もう「わやくそ」と言った状況です。
8月はデフォルトリスクが現実味を帯び始めました。財務長官によれば9月いっぱいの予算手当はできているそうですが、一度、数年前に期限に間に合わなかった前科があります。北朝鮮を見ればわかるように、瀬戸際交渉戦術というのは、以前よりも大きな刺激や衝撃が必要です。
この影響で9月の取引は、指標分析なんてあまり役に立たないかも知れません。
(3) 景気指標
景気指標の発表結果予想では、ふたつの指標の上昇基調・下降基調といったトレンド一致を論拠にすることはできます。がしかし、先に発表された指標結果の良し悪しを論拠に、後で発表される指標結果の良し悪しを予想することはできません。
(3-1) 総合・非製造業
8月18日に発表された8月分UM消費者信頼感指数速報値は、総合指数(信頼感指数速報値)・期待指数が前回結果を上回り、現状指数が前回結果を下回りました。8月上旬には、ダウが22000ドルを一時的に上抜けているので、そのことと関係があるかも知れません。但し、その後はダウが下げることの方が多かったので、確定値は低下するかも知れません。
8月29日には、8月分CB消費者信頼感指数発表が予定されています。
前回7月分は121.1で、直近の最大値は2017年3月分が125.6だったので、それには及ばなかったものの、2か月連続で前回結果より改善が続いて好調を維持しています。
9月6日には、8月分ISM製造業景況指数発表が予定されています。
前回7月分は、価格指数を除き、6月分結果を大きく下回りました。景況指数は、昨年8月以来の水準まで低下しています。
(分析事例) UM消費者信頼感指数速報値(2017年8月18日発表結果検証済)
(分析事例) CB消費者信頼感指数(2017年8月29日23:00発表予定、事前分析済)
(分析事例) ISM非製造業・総合景況指数(2017年8月3日発表結果検証済)
UM(ミシガン大学)消費者信頼感指数速報値とCB(カンファレンスボード)消費者信頼感指数とは、統計の目的・内容・時期が同じにも関わらず、単月毎の実態差異(発表結果ー前回結果)の方向が一致しません(一致率50%前後)。6月・7月の発表結果も、UM速報値とCBの結果はそれぞれ前月結果に対し悪化と改善とが入れ替わっています。
よって、全体的なグラフの上昇基調・下降基調といったトレンドを論拠に発表結果を予想することは可ですが、単月毎の先に発表された指標結果を論拠に、後で発表される指標結果を予想することは不可です。
またCBは、直後1分足と直後11分足の方向一致率がそこそこあっても、それら終値同士を比較すると反応を伸ばしたことが33%しかありません。跳幅同士を比較すると反応を伸ばしがちなので、発表から1分を過ぎると逆張りの機会を窺った方が良い指標です。なるべくなら、取引しない方が良いでしょう。
(3-2) 製造業
8月15日に発表された8月分NY連銀製造業景気指数は+25.2で、前回結果を大きく上回りました。
2016年1月を底として、それ以降は上下動をしながら全体的に上昇基調が続いています。5月分データが7が月ぶりにマイナス転換したことで景気減速が懸念されたものの、グラフ推移は上昇基調に保っています。
8月17日に発表された8月分Phil連銀製造業景気指数は+18.9(前回+19.5)で、反応は陽線でした。ほぼ横ばいですが、グラフ推移を見ると、今後の上昇・下降いずれも予感させます。
ただ、今回の内訳で見るべき大きな変化は、新規受注が大きく伸びたことです。前回は受注が急落(6月25.9、7月2.1)していたので、これで7月を異常値と見なすことができます。7月の受注は、2016年9月以来の低い値でした。
8月分ISM製造業景況指数は9月1日発表予定です。
前回7月分ISM製造業景況指数は、6月結果を下回って56.3でした。但し、この数値は、5月分数値が2014年11月の58.7以来の最高値だったことを踏まえると、それほど低下幅が大きかった訳ではありません。NY連銀・Phil連銀のように下降基調転換の兆しが現れている訳ではありません。
(分析事例) NY連銀製造業景気指数(2017年7月17日発表結果検証済)
(分析事例) Phil連銀製造業景気指数(2017年8月17日発表結果検証済)
(分析事例) ISM製造業景況感指数(2017年8月1日発表結果検証済)
多くの指標解説書籍・記事では「NY連銀指標で動向を掴み、Phil連銀指標でそれを再確認して、ISM発表に臨むと良い」旨、記載されています。がしかし、この話をアテにすることはできません。
NY連銀結果とPhil連銀結果との実態差異一致率にせよ、Phil連銀結果とISM結果の実態差異にせよ、50%程度しか一致していていません。実態差異は、発表結果ー前回結果、で指標値の増減を表します。単月毎に見る限り、増減方向すら丁半博奕と同じぐらいしか一致していないのです。
但し、これにISM直前に発表される製造業PMIも加え「NY連銀・Phil連銀・PMIの方向が揃って一致したとき」とすると、ISM実態差異の方向一致率を70%付近まで向上できます。もちろん、そんな3つとも一致という機会は少ないため、指標予測には別の分析方法が必要です。
(4) 物価指標
四半期毎に発表される四半期PCEコアデフレータは、GDPと同時発表されます。
毎月発表されるPCEコアデフレータは、FRBが注目していると言われています。がしかし、最近はあまり大きな反応がありません。最近はCPIが小売売上高と同時発表されることが続いたこともあって、CPIが最も大きく反応しています。
8月1日に発表された6月分PCEコアデフレータは、上昇・下降を見極めやすい前年比が前回よりやや改善しました。まだ、上昇に転じたと言えるほどではありません。
8月10日に発表された7月分PPI・コアPPIは前回結果を下回りました。
ただ、前回よりも今回結果が低下と言っても、0.1〜0.2%程度です。この結果解釈は難しいところです。このところのUSD安と設備稼働率上昇で、製造原価は下がって当然です。
8月11日に発表された7月分CPIは前回結果を上回りました。
コアCPIは前回同値でしたが、グラフ推移を見る限りでは、CPIは下げ止まったように見受けられます。市場の解釈は、市場予想を下回っていたため一旦大きく陰線で反応したものの、発表から10分を過ぎる頃から反転し、30分を過ぎる頃には発表前の水準を超えて陽線側に転じました。
6月分までのデータを見れば「どこまで(いつまで)下がるのか」といった感想を持つことが自然だったと思います。がしかし、7月分データからは「そろそろボトムかも知れない」と予感させる内容が続いています。但し、これは指標の推移についてで、反応はまだ「下げが大きい」状態が続いています。
(分析事例) 四半期PCEコアデフレータ(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) PCEコアデフレータ(2017年8月31日21:30発表予定、事前分析済)
(分析事例) CPI(2017年8月11日発表結果検証済)
(分析事例) PPI(2017年8月10日発表結果検証済)
(分析事例) 輸入物価指数(2017年7月18日発表結果検証済)
多くの指標解説書籍・記事に記されている「物価は、材料(輸入物価指数)→生産(PPI)→消費(CPI)へと下流に波及する」旨は、少なくとも最近に関する限りあてはまりません。
輸入物価とPPIとは、単月毎に前回結果と発表結果の差を求め、上流指標と下流指標の増減方向を比べた場合、一方を前後3か月ずらしても増減方向の一致率は高くありません。
PPIとCPIは「波及する」というよりも、ほぼ同時に同じ方向に向かいがちです。同月発表のPPIとCPIの実態差異は71%一致するのです。
(5) 雇用指標
景気を表すのは新規雇用者数と失業率で、これらについては既にFRB幹部も満足しています。だから、最近は景気を後押しする平均時給の伸びが注目されています。インフレ圧力が強まっているのに、賃金が伸びなければいずれ好調な個人消費が減少に転じ、それが経済成長を阻むと考えられているから、です。
8月2日に発表された7月分ADP民間雇用者数前月差は+17.8万人でした。
8月4日に発表された7月分雇用統計は、NFPが予想(+18.3万人)を上回り(+20.9万人)、失業率(4.3%)と平均時給(+0.3%)は予想通りでした。
(分析事例) ADP民間雇用者数(2017年8月30日21:15発表予定、事前分析済)
(分析事例) 雇用統計(2017年9月1日21:30発表予定、事前分析済)
雇用統計は非常に大きな反応する指標です。発表前には、ISM製造業景況指数や同非製造業景況指数の雇用指数や、ADP雇用統計の結果を根拠に、雇用統計の良し悪しを論じる記事は多数見かけます。がしかし、少なくとも過去2年程度に関する限り、単月毎のISMの雇用指数は雇用統計の良し悪しと関係ありません。ADP結果は雇用統計結果とやや相関があるものの、それでも前月発表結果と今月発表結果の増減方向が60%も一致していません。
雇用統計発表から1分間の反応は極めて大きいため注意が必要です。発表から1分を過ぎると、それ以前のポジションは一旦利確のタイミングを計った方が良さそうです。そして、発表から10分を過ぎた頃に、再度の追撃可否をチャートと相談すると良いでしょう。やみくもに複数回の追撃を繰り替えすやり方には向いていない指標です。
【4-2-3. 経済実態指標】
(1) 経済成長
財政収支・国際収支の赤字が続いていても、主要先進国において米国経済は最も好調です。そういう実態を踏まえると、我々アマチュアにも現状の景気の良し悪しを最もわかりやすく表しているのがGDPです。
6月29日に発表された1-3月期GDP確定値は、改定値を上回って1.4%となりました。雇用状況が好調ゆえに、速報値の0.7%・改定値の1.2%よりもいずれ盛り返す、というFOMC見解は正しかったのでしょう。
そして、7月28日に発表された4-6月期GDP速報値は、期待通り+2.6%まで上昇しました。それにも関わらず、一部市場予想を下回ったため、発表直後の反応は陰線です。+2.6%という数字は、1-3月期の+1.4%だけでなく、10-12月期の+2.1%も上回っていたのに、です。
(分析事例) 四半期GDP速報値(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP改定値(2017年8月30日21:30発表予定、事前分析済)
(分析事例) 四半期GDP確定値(2017年6月29日21:30発表結果検証済)
GDP速報値は、初期に比較的安定して大きく反応するものの、その後は伸び悩む傾向があります。
(2) 実態指標
GDPに直接大きな影響を与えるPCEへの反応より、PCE結果を示唆する小売売上高への反応の方が大きくなる傾向があります。そして、GDPに占める比率が小さな生産関連指標や、個人消費に占める比率が高いと思われる住宅関連指標は、反応が小さい傾向があります。
(2-1) 消費関連
米国GDPの約70%は個人消費(PCE)が占めています。その個人消費に直結する先行指標は小売売上高と考えられます。
7月28日に発表された4-6月期PCE速報値は前期比+2.8%でした。同時発表された4-6月期GDP速報値も+2.6%(1-3月期確定値+1.7%)だったにも関わらず、指標発表直後の反応は陰線となりました。
8月1日に発表された6月分個人消費は前月同値、個人所得は2016年11月以来の0%でした。但し、個人所得が減った主因は、配当の項が大きく減ったため、と思われます。配当が減った原因は、前月5月に大きかったため、前月比データでよくある反動と見なせます。
数字だけを見ると前月より悪化した印象があるものの、内容を見ると前月と状況変わらずと解釈した方が良さそうです。
8月15日に発表された7月分小売売上高は、前月比・コア前月比(除輸送機器)ともに前回・予想を上回り、反応は陽線でした。発表直後陽線は5か月ぶりでした。
指標のグラフ推移は、前月比・コア前月比ともに直近ピークの2017年4月を上回り、前月比は2016年12月以来、コア前月比は2017年1月以来の良い数字です。それらの時期はトランプ相場終盤の最も米国指標全般に良かった時期です。
(分析事例) 四半期PCE速報値(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期PCE改定値(2017年8月30日21:30発表予定、事前分析済)
(分析事例) 四半期PCE確定値(2017年6月29日発表結果検証済)
(分析事例) PCE・個人所得(2017年8月31日21:30発表予定、事前分析済)
(分析事例) 小売売上高(2017年8月15日発表結果検証済)
四半期PCEはGDPと同時発表されます。
毎月のPCE・個人所得は、多くのFX会社が重要度・注目度を高く評価しているにも関わらず、反応が小さい指標です。但し、反応方向は、直前10-1分足の方向と一致する傾向があり、発表から暫くしてもその方向に反応が伸びやすい、という特徴があります。
小売売上高は、CPI結果との方向一致率が高い指標です(同時発表されることも多い)。指標発表後の反応は大きく一方向に伸びやすいため、追撃に適した指標だと言えます。
(2-2) 住宅関連
個人資産というのは、金融資産と住宅とがほとんどです。住宅は(ふつう)個人消費で最大の金額です。なので、住宅指標の良し悪しは、経済実態(個人消費)に直接的(住宅購入)にも間接的(家具等の耐久財購入)にも影響が大きい、と考えられています。
現在、米国住宅市場は在庫不足で、低価格帯住宅の販売が好調です。
8月23日に発表された7月分新築住宅販売件数は、年換算販売件数が57.1万件で、前月比が△9.4%でした。
8月24日に発表された7月分中古住宅販売件数は、年換算販売件数が544万件で、前月比が△1.3%でした。中古住宅在庫は26か月連続で前年水準を下回りました。その結果、販売価格が前年同月比で+6.2%となっています。
(分析事例) 新築住宅販売件数(2017年8月23日23:00発表結果検証済)
(分析事例) 中古住宅販売件数(2017年8月24日23:00発表結果検証済)
ともに、FX会社HPなどでは注目度や重要度が高く評価されている指標です。これら指標結果を予想するための指標も多く発表されているものの、これら指標自体の反応は小さく、よっぽど長期ポジションを持つFX参加者を除けば大して重要ではありません。
新築住宅販売件数は中古住宅販売件数より1〜2か月先行するという話があります。その理由の論理飛躍は、異なる客層の行動原理が異なることを無視した誤解が広く流布されたため、と考えられます。実際には両指標のどちらが先行指標であるにせよ、両指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は増減方向すら一致率が高くありません。
ただ、新築住宅販売件数はユニークで、取引上の魅力があります。
指標発表前に予兆的な動きが見受けられることと、発表から1分経過後の追撃に逆張りが適している点で、他の指標で見られない特徴を有しているからです。大したpipsは稼げないものの、勝ちやすい指標かも知れません。これは魅力です。
そして、中古住宅販売件数は、指標発表前に発表直後の反応方向を示唆する偏りがいくつか過去事例から見出せます。指標発表後も一方向に反応を伸ばしやすいという傾向が見受けられます。つまり、取引しやすい指標なのです。
(2-3) 生産関連
鉱工業(含製造業・エネルギー産業)は、米国GDPの約12%しか占めていません。だから、製造業の好不調が米国経済に与える直接効果は小さい、と捉えています。雇用指標・景気指標・国際収支に影響すると考えているので記録を取って見ていますが、反応が小さくそのときどきのトレンドに呑まれがちなため、指標分析に基づく取引には適していません。
8月17日に発表された7月分鉱工業生産・製造業生産は前回より低下しました。低下幅は、これら指標の過去推移に比べて正常範囲内です。よって、今回の発表があっても鉱工業生産と製造業生産のグラフ推移からは、変化の兆しが窺えません。ただ、設備稼働率は、2016年11月分以降の上昇基調が77%手前で4か月連続停滞しています。
グラフ推移から鉱工業・製造業の好不調を見やすい設備稼働率を見る限り、ここ最近の製造関連景気指標の低下は説明が付かない現象でした。
8月25日に発表された7月分耐久財受注前月比は、前回を大きく下回り△6.8%(前回+6.5%)ました。コア受注は+0.5%(前回+0.2%)でした。
(分析事例) 鉱工業生産・製造業生産・設備稼働率(2017年8月17日発表結果検証済)
(分析事例) 耐久財受注(2017年8月25日発表結果検証済)
指標発表直後1分足跳幅が数pipsしかない指標では、指標結果に素直に反応しがち(事後差異と直後1分足の方向一致率が70%以上)で、且つ、指標結果の予想ができなければ取引する意味がありません。
僅か数pipsしか跳ねない指標では、比較的稼ぎやすい反応方向を確認してからの追撃をうまく出来ても、もっと小さなpipsしか得られません。何より、指標発表直後にすら大きく跳ねない指標は、もし反応を伸ばしがちだという分析結論を得ても、それが単にそのときどきのトレンドに偏りがあったことと区別ができないからです。
耐久財受注は、先に発表される鉱工業生産(同時に製造業生産・設備稼働率が発表)の実態差異(発表結果ー前回結果)との方向一致率が77%となり、両指標の良し悪しに相関があります。
【4-2-4. 収支関連指標】
最近は毎月400億ドル台の貿易赤字が続いています。毎月400億ドルという大きさは、年間で日本の国家予算近い規模の赤字ということです。米国の経済規模というのは本当にすごいのですね。
8月4日に発表された6月分貿易収支は、前月比△5.9%の465億ドルの赤字でした。
前月発表(5月分)では、内訳の輸出が2年ぶりの高水準でした。石油輸出が好調なだけでなく、輸出全体が約2年半ぶりの好調さです。今回発表では収支全体が2016年10月以来の赤字縮小でした。がしかし、直近の収支はここ2・3年で赤字が大きな時期に属します。赤字縮小に向かっている兆しは、まだグラフ推移から見出せません。
対中貿易赤字は+3.1%増加し、輸出が減って(△4.7%)、輸入が増えていました(+1.2%)。
米貿易赤字の47%は対中赤字です(2016年)。
7月16日に期日を迎えた米中100日計画は、早い時期にいくつかの合意がありました。中国市場への米国産牛肉輸出再開、米金融機関が中国市場で格付け業務・債券売買に参入、米LNG(液化天然ガス)輸出、といった内容です。その後、新たな合意についての報道がありません。これらの合意成果は、まだ指標結果に反映されていません。
8月18日、USTR(米通商代表部)は、通商法301条に基づく中国の知的財産権侵害調査を開始しました。8月24日、中国商務省は、国益を守るために必要なあらゆる手段を講じる、と表明しました。
(分析事例) 貿易収支(2017年4月4日発表結果検証済)
本指標の特徴は、貿易赤字が多少増えようが減ろうが、発表直後の反応方向にあまり関係ありません。発表時刻の関係で、他の大きな指標と同時発表されることも多く、その結果、見掛け上の反応平均値は大きくなっています。単独で発表される場合には、あまり反応しない指標です。
本指標結果や内訳を論拠に、米政権からの2国間貿易収支に関する牽制発言があり得ます。本指標の意義は、毎月の貿易赤字の多寡よりも、そうした発言でUSDJPYが動くことへの警鐘を与えてくれることです。
以上
2017年08月25日
米国実態指標「耐久財受注」発表前後のUSDJPY反応分析(2017年8月25日21:30発表結果検証済)
以下、「T.指標予想要点」「U.過去調査詳細」を事前投稿し、「V.発表結果検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「V.発表結果検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年8月25日21:30に米国実態指標「耐久財受注」が発表されます。今回発表は2017年7月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
以上の本指標特徴を踏まえ、後記詳述した調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
本指標は、製造業の耐久財受注状況を表しています。指標名は「受注」となっているものの、発表内容は「出荷」「在庫」「新規受注」「受注残高」です。
ちなみに、耐久財とは3年以上の使用に耐える消費財を指し、代表例として自動車・航空機・家電・家具等があります。このうち、自動車や航空機や船舶を除いたコア指数が発表されます。また、発表は景気と無関係な軍需も含むため、軍需を除いた「非軍事」という発表項目があります。また、輸送機器を除いた発表値は、コア指数と呼ばれます。
この指標とは別に「製造業新規受注」が発表されており、それが翌々月月初発表に対し「耐久財受注」は毎月下旬に前月分速報値が発表されます。そのため、本指標は設備投資分野における先行指標に位置づけられています(現在、製造業新規受注は過去データを整理中のため、この話は確認できていません)。
一方、後記詳述する通り、本指標は鉱工業生産・製造業生産・設備稼働率の発表結果と一定の相関があります。
指標間の相関を調べる場合、グラフの全体傾向を比較する方法と、単月毎の結果を比較する方法があります。両指標は、単月毎の結果を比較し、指標間の相関が高い珍しい特徴を有しています。
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で13pipsです。
13pipsというと、平均的な反応程度の指標ですが、分布を見ると13pips以下しか跳ねなかったことが67%(3回に2回)となっています。たまに大きく反応するものの、通常の反応は小さいと見なした方が良いでしょう。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
両グラフとも前月比のため凸凹が目立ちます。こうした指標では、前月が良ければ翌月が悪く、前月が悪ければ翌月は良くなる、という予想解説が多くなります。
こういうことは確認しておきましょう。
確認は、データを確認できる2015年2月以降前回までの29回で行いました。
耐久財受注(総合)は、この期間に前月と翌月と予想と結果の大小関係が入れ替わったことが15回(52%)ありました。コア耐久財受注はそれが10回(34%)でした。
この結果から(当月はさておき)、少なくとも耐久財受注(総合)に関する限り、前月が良ければ翌月が悪く、前月が悪ければ翌月は良くなる、というプロの予想解説が多いことにきちんと説明がつきます。
次に、見るべきポイントを絞り込むため、主要項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上2行は、各項目をひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
上から3行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から4行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段5行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
結果、事前差異と実態差異は、あまり直前10-1分足と一致率が高い係数を見出すことが出来ませんでした。
事後差異は、2✕総合事後差異+1✕コア事後差異、という判別式符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)とすると、直後1分足との方向一致率が83%となることがわかりました。
コアよりも総合の方が反応に寄与することと、どちらか一方でなく両項目の事後差異を総合的に捉えた方が一致率が高くなること、がわかりました。
この結果から、本指標は発表結果の市場予想に対する良し悪しに、直後1分足(期待的中率83%)も直後11分足(同71%)も、素直に反応することがわかりました。本ブログでの「素直な反応」か否かの基準は70%です。
本指標は設備投資分野の先行指標と言われています。その設備投資は、同じ実態指標の鉱工業生産・製造業生産・設備稼働率と関係があるはずです。
相関の有無は、それぞれの指標の実態差異(発表結果ー前回結果)を用いて調べます。事前差異・事後差異・実態差異のうち、市場予想が含まれないのは実態差異だけだからです。もし両指標の間に相関があるなら、実態差異(発表結果ー前回結果)に現れるはずです。
比較に用いた実態差異は、それぞれの指標の判別式に実態差異を代入した結果です。
まず、上述の通り、両指標の実態差異の方向一致率は77%にも達しています。単月毎の指標間の実態差異の方向一致率がこれほど高いことは珍しいのです。
両指標の発表時期は、前月集計分が翌月に発表されています。発表順序は本指標の方が遅れて発表されます。本指標今回の7月集計分の鉱工業生産・製造業生産・設備稼働率の実態差異はマイナスでした。
よって、本指標今回の実態差異はマイナスとなる期待的中率が77%ということになります。
がしかし、上図で事後差異の項をご覧ください。両指標の事後差異方向一致率は61%と低下しています。
これは当然のことです。先行指標発表結果が低下すれば、後で発表される方の指標の市場予想は低めに予想されるから、です。
以上の分析要点は以下の通りです。
(1) 耐久財受注前月比は、前月が良ければ翌月が悪く、前月が悪ければ翌月は良くなる、という予想解説が多いようです。実際に、前月と翌月と予想と結果の大小関係が入れ替わったことが52%で、そうした解説には裏付けがあります。但し、コア耐久財受注はそれが34%しかなく、市場予想は高めか低めかに偏りがちです。最近は高めに予想されたことが続いています。
(2) 事後差異判別式は、2✕総合事後差異+1✕コア事後差異、という判別式符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)とすると、直後1分足との方向一致率が83%です。コアよりも総合の方が反応に寄与することと、どちらか一方でなく両項目の事後差異を総合的に捉えた方が一致率が高くなること、本指標が指標発表結果の市場予想に対する良し悪しに素直に反応すること、が確認できました。
(3) 本指標は、先に発表された鉱工業生産(同時に製造業生産・設備稼働率が発表)の実態差異(発表結果ー前回結果)との方向一致率が77%となり、両指標の良し悪しには相関があります。
8月17日に発表された鉱工業生産の7月集計分の実態差異はマイナスでした。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が6pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去4回(頻度13%)あります。
この4回の直後1分足跳幅は15pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均13pipsとほぼ同じです。直前10-1分足跳幅が大きくても、それが直後1分足跳幅も大きくなるとは言えません。
次に、この4回の直前10-1分足と直後1分足の方向は1回(25%)一致しています。どちらかと言えば、直前10-1分足跳幅が大きいときには、直後1分足は直前10-1分足と逆方向に反応する確率の方が高いものの、事例4回での1回でそれを特徴的偏りとは言えません。
次に、直前1分足の過去平均跳幅が4pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去にありません。
直前1分足は明らかに陰線率が極端に高くなっています。その平均跳幅は4pipsしかないのに、陽線側にヒゲが目立っています。だから、もし直前1分足で取引するなら、陽線側に跳ねたのを確認してからポジションを取って、陰線側に転じたらすぐ利確、というやり方が良いでしょう。これなら、もし陰線側に転じなくても、損切が小さくて済みます。陽線側に跳ねなければ取引しなければ良いだけです。どうせ大したpipsじゃありません。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は4pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率31%)です。直後11分足のそれは7pips(戻り比率41%)です。直後11分足の戻り比率が40%を超えており、高値(安値)掴みには気を付けた方が良いでしょう。
過去のローソク足の特徴を纏めると以下の通りです。
(1) たまに(頻度13%)直前10-1分足跳幅が10pips以上となることがあります。がしかし、そうした場合に指標発表直後1分足の反応程度や方向に特徴的な偏りは、過去事例から見出せません。慌てて釣られてケガしないように気を付けましょう。
(2) 直前1分足は明らかに陰線率が極端に高くなっています。にも関わらず、陽線側へのヒゲが目立っています。だから、もし直前1分足で取引するなら、陽線側に跳ねたのを確認してからポジションを取って、陰線側に転じたらすぐ利確、という機会を狙った方が良いでしょう。
(3) 直後11分足の戻り比率(1ー値幅/跳幅)は41%とかなり高くなっています。高値(安値)掴みには気を付けた方が良いでしょう。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率がそれぞれ83%・71%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応する指標です。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
まず、直前1分足の陰線率が96%と、異常な偏りが見受けられます。但し、直前1分足は過去平均跳幅・値幅がそれおぞれ4pips・3pipsしかありません。だから陰線側に反応したのを見てから追撃しても手遅れです。先述のように、よく陽線側にヒゲを残すので、そのヒゲなり、そのヒゲを形成したのを確認してから追いかけて短期利確を狙う方が良いでしょう。
そして、直後1分足と直後11分足の方向一致率が75%と高い点を除けば、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は75%です。そして、その75%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは67%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは54%です。54%という数字は、早期追撃で得たポジションは、指標発表から1分を過ぎたら早めに利確した方が良いということです。伸びるか伸びないかが半々ですから、無理する必要なんてありません。
直後11分足は、過去平均跳幅・値幅がそれぞれ17pips・10pipsで、戻り比率は41%です。
以下のシナリオで取引に臨みます。
以下は2017年8月26日に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、総合が前回を大きく下回り予想も下回りました。前月比データが良し悪し各月で入れ替わることはいつものことです。がしかし、今回は過去3回(2015年12月分・2016年6月分・同11月)の大きな下げを更に下回りました。
一方、コアは前回・予想を上回り、グラフ推移も上昇基調が続いています。
反応は陽線でした。
過去傾向に依れば、これだけ大きく耐久財受注が前回より下げて市場予想を下回れば陰線です。一部解説記事には、コア耐久財受注の3か月連続改善への市場の好感を挙げる向きもあるものの、少し違和感があります。耐久財受注の大きな低下と比べて、コア耐久財受注の上昇が小さ過ぎます。
指標分析は結果が全てですが、それでも過去データと異なる反応には理由を考察しておくことが大切です。
おそらくこの日、23:00にFRB議長がジャクソンホールで年次経済シンポジウムで講演予定だったので、それを睨んでの動きと推察されます。
耐久財受注(平均的な反応程度しかない指標)への反応は、大きなイベントやテーマがあるときには起きない、という可能性が仮説として成り立ちます。
取引結果は次の通りでした。
僅かながら、シナリオ通り取引で利確となりました。
事前調査分析内容を以下に検証します。
事前準備していたシナリオは次の通りです。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
T.指標予想要点
2017年8月25日21:30に米国実態指標「耐久財受注」が発表されます。今回発表は2017年7月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 耐久財受注前月比は、前月が良ければ翌月が悪く、前月が悪ければ翌月は良くなる、という予想解説が多いようです。前月比の予想では、こうした傾向がどの指標でも見られます。実際に、前月と翌月の予想と結果の大小関係が入れ替わったことが52%で、本指標へのそうした解説には裏付けがあります。
但し、コア耐久財受注(除輸送機器のこと)はそれが34%しかなく、市場予想は高めか低めかに偏りがちです。最近は高めに予想されたことが続いています。
なお、8月17日に発表された鉱工業生産の7月集計分の実態差異はマイナスでした。でも今回は、極端に耐久財受注の市場予想が低く見込まれているので、この傾向が当てはまらないかも知れません。 - 事後差異判別式は、2✕総合事後差異+1✕コア事後差異、です。この判別式符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と、直後1分足との方向一致率は83%です。
コアの方が反応に寄与しないことと、どちらか一方でなく両項目の事後差異を総合的に捉えた方が一致率が高くなること、本指標が指標発表結果の市場予想に対する良し悪しに素直に反応すること、がわかります。 - そして、指標発表前のローソク足方向が、指標発表後の方向を示唆している兆しはありません。ただ、発表後の追撃に関しては、反応方向を確認したら早期開始し、発表から1分を経過したら早期利確を狙う方が良いようです。
以上の本指標特徴を踏まえ、後記詳述した調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
直前1分足の過去陰線率は96%と、極端な偏りがあります。にも関わらず、陽線側へのヒゲが目立っています。だから、もし直前1分足で取引するなら、陽線側に跳ねたのを確認してからポジションを取って、陰線側に転じたらすぐ利確、という機会を狙った方が良いでしょう。
そういう機会を狙わないと、過去平均跳幅・値幅がそれぞれ4pips・3pipsしかないので、陰線側に振れてから追撃しても勝率が稼げません。 - 追撃を行うなら、初期反応を確認したら早期開始で、指標発表から1分を過ぎたら、早めに利確した方が良いでしょう。
指標発表から1分経過時点で、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは54%です。そこから反応を伸ばすか反転するかが半々です。けれども、直後1分足と直後11分足の方向一致率は75%と高いので、逆張りはあり得ません。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
本指標は、製造業の耐久財受注状況を表しています。指標名は「受注」となっているものの、発表内容は「出荷」「在庫」「新規受注」「受注残高」です。
ちなみに、耐久財とは3年以上の使用に耐える消費財を指し、代表例として自動車・航空機・家電・家具等があります。このうち、自動車や航空機や船舶を除いたコア指数が発表されます。また、発表は景気と無関係な軍需も含むため、軍需を除いた「非軍事」という発表項目があります。また、輸送機器を除いた発表値は、コア指数と呼ばれます。
この指標とは別に「製造業新規受注」が発表されており、それが翌々月月初発表に対し「耐久財受注」は毎月下旬に前月分速報値が発表されます。そのため、本指標は設備投資分野における先行指標に位置づけられています(現在、製造業新規受注は過去データを整理中のため、この話は確認できていません)。
一方、後記詳述する通り、本指標は鉱工業生産・製造業生産・設備稼働率の発表結果と一定の相関があります。
指標間の相関を調べる場合、グラフの全体傾向を比較する方法と、単月毎の結果を比較する方法があります。両指標は、単月毎の結果を比較し、指標間の相関が高い珍しい特徴を有しています。
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本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均で13pipsです。
13pipsというと、平均的な反応程度の指標ですが、分布を見ると13pips以下しか跳ねなかったことが67%(3回に2回)となっています。たまに大きく反応するものの、通常の反応は小さいと見なした方が良いでしょう。
【2. 既出情報】
(2-1. 過去情報)
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
両グラフとも前月比のため凸凹が目立ちます。こうした指標では、前月が良ければ翌月が悪く、前月が悪ければ翌月は良くなる、という予想解説が多くなります。
こういうことは確認しておきましょう。
確認は、データを確認できる2015年2月以降前回までの29回で行いました。
耐久財受注(総合)は、この期間に前月と翌月と予想と結果の大小関係が入れ替わったことが15回(52%)ありました。コア耐久財受注はそれが10回(34%)でした。
この結果から(当月はさておき)、少なくとも耐久財受注(総合)に関する限り、前月が良ければ翌月が悪く、前月が悪ければ翌月は良くなる、というプロの予想解説が多いことにきちんと説明がつきます。
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次に、見るべきポイントを絞り込むため、主要項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上2行は、各項目をひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
上から3行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から4行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段5行目は、実体差異(前回改定値結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
結果、事前差異と実態差異は、あまり直前10-1分足と一致率が高い係数を見出すことが出来ませんでした。
事後差異は、2✕総合事後差異+1✕コア事後差異、という判別式符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)とすると、直後1分足との方向一致率が83%となることがわかりました。
コアよりも総合の方が反応に寄与することと、どちらか一方でなく両項目の事後差異を総合的に捉えた方が一致率が高くなること、がわかりました。
この結果から、本指標は発表結果の市場予想に対する良し悪しに、直後1分足(期待的中率83%)も直後11分足(同71%)も、素直に反応することがわかりました。本ブログでの「素直な反応」か否かの基準は70%です。
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本指標は設備投資分野の先行指標と言われています。その設備投資は、同じ実態指標の鉱工業生産・製造業生産・設備稼働率と関係があるはずです。
相関の有無は、それぞれの指標の実態差異(発表結果ー前回結果)を用いて調べます。事前差異・事後差異・実態差異のうち、市場予想が含まれないのは実態差異だけだからです。もし両指標の間に相関があるなら、実態差異(発表結果ー前回結果)に現れるはずです。
比較に用いた実態差異は、それぞれの指標の判別式に実態差異を代入した結果です。
まず、上述の通り、両指標の実態差異の方向一致率は77%にも達しています。単月毎の指標間の実態差異の方向一致率がこれほど高いことは珍しいのです。
両指標の発表時期は、前月集計分が翌月に発表されています。発表順序は本指標の方が遅れて発表されます。本指標今回の7月集計分の鉱工業生産・製造業生産・設備稼働率の実態差異はマイナスでした。
よって、本指標今回の実態差異はマイナスとなる期待的中率が77%ということになります。
がしかし、上図で事後差異の項をご覧ください。両指標の事後差異方向一致率は61%と低下しています。
これは当然のことです。先行指標発表結果が低下すれば、後で発表される方の指標の市場予想は低めに予想されるから、です。
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以上の分析要点は以下の通りです。
(1) 耐久財受注前月比は、前月が良ければ翌月が悪く、前月が悪ければ翌月は良くなる、という予想解説が多いようです。実際に、前月と翌月と予想と結果の大小関係が入れ替わったことが52%で、そうした解説には裏付けがあります。但し、コア耐久財受注はそれが34%しかなく、市場予想は高めか低めかに偏りがちです。最近は高めに予想されたことが続いています。
(2) 事後差異判別式は、2✕総合事後差異+1✕コア事後差異、という判別式符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)とすると、直後1分足との方向一致率が83%です。コアよりも総合の方が反応に寄与することと、どちらか一方でなく両項目の事後差異を総合的に捉えた方が一致率が高くなること、本指標が指標発表結果の市場予想に対する良し悪しに素直に反応すること、が確認できました。
(3) 本指標は、先に発表された鉱工業生産(同時に製造業生産・設備稼働率が発表)の実態差異(発表結果ー前回結果)との方向一致率が77%となり、両指標の良し悪しには相関があります。
8月17日に発表された鉱工業生産の7月集計分の実態差異はマイナスでした。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が6pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去4回(頻度13%)あります。
この4回の直後1分足跳幅は15pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均13pipsとほぼ同じです。直前10-1分足跳幅が大きくても、それが直後1分足跳幅も大きくなるとは言えません。
次に、この4回の直前10-1分足と直後1分足の方向は1回(25%)一致しています。どちらかと言えば、直前10-1分足跳幅が大きいときには、直後1分足は直前10-1分足と逆方向に反応する確率の方が高いものの、事例4回での1回でそれを特徴的偏りとは言えません。
次に、直前1分足の過去平均跳幅が4pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去にありません。
直前1分足は明らかに陰線率が極端に高くなっています。その平均跳幅は4pipsしかないのに、陽線側にヒゲが目立っています。だから、もし直前1分足で取引するなら、陽線側に跳ねたのを確認してからポジションを取って、陰線側に転じたらすぐ利確、というやり方が良いでしょう。これなら、もし陰線側に転じなくても、損切が小さくて済みます。陽線側に跳ねなければ取引しなければ良いだけです。どうせ大したpipsじゃありません。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は4pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率31%)です。直後11分足のそれは7pips(戻り比率41%)です。直後11分足の戻り比率が40%を超えており、高値(安値)掴みには気を付けた方が良いでしょう。
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過去のローソク足の特徴を纏めると以下の通りです。
(1) たまに(頻度13%)直前10-1分足跳幅が10pips以上となることがあります。がしかし、そうした場合に指標発表直後1分足の反応程度や方向に特徴的な偏りは、過去事例から見出せません。慌てて釣られてケガしないように気を付けましょう。
(2) 直前1分足は明らかに陰線率が極端に高くなっています。にも関わらず、陽線側へのヒゲが目立っています。だから、もし直前1分足で取引するなら、陽線側に跳ねたのを確認してからポジションを取って、陰線側に転じたらすぐ利確、という機会を狙った方が良いでしょう。
(3) 直後11分足の戻り比率(1ー値幅/跳幅)は41%とかなり高くなっています。高値(安値)掴みには気を付けた方が良いでしょう。
【3. 定型分析】
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
まず、指標一致性分析の結果を下表に示します。
事後差異と直後1分足・直後11分足の方向一致率がそれぞれ83%・71%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応する指標です。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
まず、直前1分足の陰線率が96%と、異常な偏りが見受けられます。但し、直前1分足は過去平均跳幅・値幅がそれおぞれ4pips・3pipsしかありません。だから陰線側に反応したのを見てから追撃しても手遅れです。先述のように、よく陽線側にヒゲを残すので、そのヒゲなり、そのヒゲを形成したのを確認してから追いかけて短期利確を狙う方が良いでしょう。
そして、直後1分足と直後11分足の方向一致率が75%と高い点を除けば、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は75%です。そして、その75%の方向一致時だけに注目したとき、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは67%です。
指標発表時点から見たその後の方向一致率が高く、且つ、反応を伸ばしているのだから、指標発表後に反応方向を確認したら、追撃は早期開始です。
そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは54%です。54%という数字は、早期追撃で得たポジションは、指標発表から1分を過ぎたら早めに利確した方が良いということです。伸びるか伸びないかが半々ですから、無理する必要なんてありません。
直後11分足は、過去平均跳幅・値幅がそれぞれ17pips・10pipsで、戻り比率は41%です。
【4. シナリオ作成】
以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前1分足は陰線と見込みます。
直前1分足の過去陰線率は96%と、極端な偏りがあります。にも関わらず、陽線側へのヒゲが目立っています。だから、もし直前1分足で取引するなら、陽線側に跳ねたのを確認してからポジションを取って、陰線側に転じたらすぐ利確、という機会を狙った方が良いでしょう。
そういう機会を狙わないと、過去平均跳幅・値幅がそれぞれ4pips・3pipsしかないので、陰線側に振れてから追撃しても勝率が稼げません。 - 追撃を行うなら、初期反応を確認したら早期開始で、指標発表から1分を過ぎたら、早めに利確した方が良いでしょう。
指標発表から1分経過時点で、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは54%です。そこから反応を伸ばすか反転するかが半々です。けれども、直後1分足と直後11分足の方向一致率は75%と高いので、逆張りはあり得ません。
以上
2017年8月25日21:30発表
以下は2017年8月26日に追記しています。
V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、総合が前回を大きく下回り予想も下回りました。前月比データが良し悪し各月で入れ替わることはいつものことです。がしかし、今回は過去3回(2015年12月分・2016年6月分・同11月)の大きな下げを更に下回りました。
一方、コアは前回・予想を上回り、グラフ推移も上昇基調が続いています。
反応は陽線でした。
過去傾向に依れば、これだけ大きく耐久財受注が前回より下げて市場予想を下回れば陰線です。一部解説記事には、コア耐久財受注の3か月連続改善への市場の好感を挙げる向きもあるものの、少し違和感があります。耐久財受注の大きな低下と比べて、コア耐久財受注の上昇が小さ過ぎます。
指標分析は結果が全てですが、それでも過去データと異なる反応には理由を考察しておくことが大切です。
おそらくこの日、23:00にFRB議長がジャクソンホールで年次経済シンポジウムで講演予定だったので、それを睨んでの動きと推察されます。
耐久財受注(平均的な反応程度しかない指標)への反応は、大きなイベントやテーマがあるときには起きない、という可能性が仮説として成り立ちます。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
僅かながら、シナリオ通り取引で利確となりました。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容を以下に検証します。
- (事前分析:指標特徴)
耐久財受注前月比は、前月が良ければ翌月が悪く、前月が悪ければ翌月は良くなる、という予想解説が多いようです。前月比の予想では、こうした傾向がどの指標でも見られます。実際に、前月と翌月の予想と結果の大小関係が入れ替わったことが52%で、本指標へのそうした解説には裏付けがあります。
但し、コア耐久財受注(除輸送機器のこと)はそれが34%しかなく、市場予想は高めか低めかに偏りがちです。最近は高めに予想されたことが続いています。
なお、8月17日に発表された鉱工業生産の7月集計分の実態差異はマイナスでした。でも今回は、極端に耐久財受注の市場予想が低く見込まれているので、この傾向が当てはまらないかも知れません。
(事後分析:指標特徴)
耐久財受注前月比は、前月が良かったため、当月は大きく下げました。
コア耐久財受注は、市場予想を上抜け、事前分析には余計なことを記しました。
7月分鉱工業生産実態差異はマイナスで、本指標結果実態差異もマイナスで、方向は一致しました。 - (事前分析:直後反応)
事後差異判別式は、2✕総合事後差異+1✕コア事後差異、です。この判別式符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と、直後1分足との方向一致率は83%です。
コアの方が反応に寄与しないことと、どちらか一方でなく両項目の事後差異を総合的に捉えた方が一致率が高くなること、本指標が指標発表結果の市場予想に対する良し悪しに素直に反応すること、がわかります。
(事後分析:直後反応)
今回は、事後差異判別式符号がマイナスに対し、陽線で反応しており、判別式符号は正しくありません。この結果、本判別式の期待的中率は当月83%から来月81%に低下します。
まだ、見直しが必要な数値ではありません。 - (事前分析:注意事項)
そして、指標発表前のローソク足方向が、指標発表後の方向を示唆している兆しはありません。ただ、発表後の追撃に関しては、反応方向を確認したら早期開始し、発表から1分を経過したら早期利確を狙う方が良いようです。
(事後分析:注意事項)
問題ありません。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオは次の通りです。
- (シナリオ)
直前1分足は陰線と見込みます。
直前1分足の過去陰線率は96%と、極端な偏りがあります。にも関わらず、陽線側へのヒゲが目立っています。だから、もし直前1分足で取引するなら、陽線側に跳ねたのを確認してからポジションを取って、陰線側に転じたらすぐ利確、という機会を狙った方が良いでしょう。
そういう機会を狙わないと、過去平均跳幅・値幅がそれぞれ4pips・3pipsしかないので、陰線側に振れてから追撃しても勝率が稼げません。
(結果)
取引はしていません。
結果は陰線で、上ヒゲも含めて3pipsの全幅でした。全幅が小さく、もし取引していても、負けはしなくても利確も大したことなかったはずです。 - (シナリオ)
追撃を行うなら、初期反応を確認したら早期開始で、指標発表から1分を過ぎたら、早めに利確した方が良いでしょう。
指標発表から1分経過時点で、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことは54%です。そこから反応を伸ばすか反転するかが半々です。けれども、直後1分足と直後11分足の方向一致率は75%と高いので、逆張りはあり得ません。
(結果)
シナリオに従って、発表から9秒後に追撃開始し、その17秒後に利確しました。利幅は僅かですが、直後11分足は直後1分足より跳幅・値幅を伸ばしていないので、結果的にこれで良かったと言えるでしょう。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上
2017年08月23日
米国実態指標「中古住宅販売件数」発表前後のUSDJPY反応分析(2017年8月24日23:00発表結果検証済)
以下、「T.指標予想要点」「U.過去調査詳細」を事前投稿し、「V.発表結果検証」を事後投稿しています。ブログの日付は事前投稿日となっています。指標発表後に事後投稿し、その日時は「V.発表結果検証」のタイトル行付近に記載しています。
2017年8月24日23:00に米国実態指標「中古住宅販売件数」が発表されます。今回は2017年7月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 本稿は8月22日に記しています。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
以上の本指標特徴を踏まえ、後記詳述した調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
本指標は全米不動産業者協会(NAR)が翌月25日頃に発表します。
数値は季節調整済・年率換算されています。
発表結果に対する初期反応は小さいものの、素直に反応する傾向があり、反応の持続時間も長め、という傾向があります。
米国では新築住宅よりも中古住宅の流通量が大きく、そのため住宅関連指標では本指標が注目されます。また、住宅販売件数は消費やリフォームなどの関連需要にも繋がるため波及効果も大きい上、消費者個人の収入・金利の見通しが反映されています。
注意すべき点は、新築住宅販売件数が契約書署名ベースであるのに対して、中古住宅販売件数は所有権移転完了ベースで集計されています。従って、本指標は新築住宅販売件数に対し1〜2か月遅行する、と言われています。
がしかし、直近の傾向を見る限り、よく指標解説に見かける1〜2か月の遅行など起きていません。この件は後記詳述いたします。
本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均でたった6pipsです。反応が小さいため、大きなトレンドが発生しているときには、指標発表結果の影響はすぐにトレンドに呑まれてしまいます。こうした反応が小さい指標で取引するときは、例えば、
というやり方が良いでしょう。
個々の取引で大けがさえしなければ、これで年間を通してプラスにしやすくなるでしょう。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
年換算販売件数と前月比とは、グラフの様子がまるで異なります。これら項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上2行は、販売件数と前月比の各項目を、ひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
上から3行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から4行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段5行目は、実体差異(前回結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
事前差異判別式は、2✕販売件数の差異+1✕前月比の差異、としておけば、この判別式符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と直前10-1分足の方向一致率が67%となります。
事後差異判別式は、1✕販売件数の差異+2✕前月比の差異、としておけば、この判別式符号と直後1分足との方向一致率が75%となります。
実態差異判別式は、直後1分足・直後11分足のいずれとも方向一致率が事後差異判別式のそれより低くなっているので、使う必要がないでしょう。
年換算販売件数は、前月と翌月とで発表結果と市場予想の大小関係が入れ替わったことが12回(41%)あります。前月比は、それが18回(62%)あります。
いずれも、中立的な50%から大きく外れておらず、本指標は市場予想後追い型ではありません。
本指標は所有権移転完了ベースで集計されています。そして、関連指標である新築住宅販売件数は、契約書署名ベースで集計されています。そのため、本指標は新築住宅販売件数に対し1〜2か月遅行する、という解説を多く見かけます。
これは、事実に照らして正しくありません。
事務手続き上の順序と所用時間については、その通りなのでしょう。けれども、新築住宅を購入する人と中古住宅を購入する人は、両方同時に購入する人を除けば一致しません。だから、実際に販売件数が前月より増えたか減ったかを調べると、事務手続き上の所要時間1〜2か月の新築住宅販売件数の先行性はありません。
事実が「ありそうな話」と異なる原因はわかりません。ただ、新築住宅購入者と中古住宅購入者は、同じように住宅購入をするにせよ、所得階層か年齢層が異なるのではないでしょうか。所得階層や年齢層が異なれば、「えい」と住宅購入を決めることに時間差が生じることだって「ありそうな話」です。
実際に確認しておきましょう。
両指標間に先行・遅行の関係があるなら、実態差異(発表結果ー前回結果)に現れるはずです。下図は、中古住宅販売件数と新築住宅販売件数の実態差異を、前後3か月ずらして一致率を調べた結果です。調査期間は2015年1月分から2017年6月分までの30回分です。一方の指標を1か月ずらすと、両指標を対比できるデータ数は29に減り、2か月ずらすと28に減ります。
図から、ある集計月の中古住宅販売件数と最も一致率が高くなるのは、翌月集計された新築住宅販売件数です。中古住宅販売件数の方が1か月遅行しており、事務手続き上の順序や期間とは関係ありません。そして、両指標の実態差異は、最も一致率が高いズレでも59%しか一致していません。両指標に関係がない、とまでは言いませんが、59%しか増減方向すら一致しないなら、他の予兆を探した方がマシです。
以上の分析要点は以下の通りです。
(1) 事後差異判別式は、1✕販売件数の差異+2✕前月比の差異、としておけば、この判別式符号と直後1分足との方向一致率が75%となります。
(2) 本指標は現在、市場予想後追い型ではありません。
(3) 本指標は、新築住宅販売件数の遅行指標として知られています。がしかし、両指標の実態差異の方向一致率は低く(60%未満)、そうした関係は両指標間にありません。
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が6pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去4回(頻度13%)あります。この4回の直後1分足跳幅は6pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均6pipsと同じです。そして、この4回の直前10-1分足と直後1分足の方向は3回(75%)一致しています。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は4pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去にありません。逆に言えば、もし直前1分足跳幅が10pips以上動いた場合、何か過去にない異常なことが起きている可能性があります。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は2pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率33%)です。直後11分足のそれは5pips(戻り比率45%)です。反応が小さい指標は戻り率が高くなりがちで、そのことが余計に取引を難しくします。
これらのローソク足の詳細分析は、ローソク足観察よりも他の分析を参照する方が良いでしょう。
過去のローソク足の特徴を纏めると以下の通りです。
(1) (頻度13%)直前10-1分足跳幅が10pips以上動くことがあります。過去事例では、その動きは直後1分足の方向を示唆している可能性があります(期待的中率75%)。
(2) 直前1分足の過去平均跳幅は4pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去にありません。逆に言えば、もし直前1分足跳幅が10pips以上動いた場合、何か過去にない異常なことが起きている可能性があります。
(3) 直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は2pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率33%)です。直後11分足のそれは5pips(戻り比率45%)です。反応が小さい指標は戻り率が高くなりがちで、そのことが余計に取引を難しくします。戻り率が高い指標では、高値掴み・安値掴みをしやすいので気を付けましょう。
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
指標一致性分析の結果を下表に示します。
事前差異は、直前10-1分足との方向一致率が67%となっています。今回の事前差異はプラスなので、こうした場合に直前10-1分足は3回に2回の割合で陽線となります。
事後差異と直後1分足の方向一致率は75%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応しがちな指標です。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足は陰線率が85%、直後1分足は陽線率が79%と、偏りが目立ちます。直前1分足と直後1分足との方向一致率は27%(不一致率が73%)なので、矛盾はありません。
あとは、直後1分足と直後11分足の方向一致率が84%と高いことを除けば、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
まず、直後1分足と直後11分足との方向一致率は84%です。そして、その84%の方向一致時に、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは90%に達しています。
つまり、指標発表後は反応方向を確認したら追撃を早期開始すればいいのです。
そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが60%となっています。この確率は、直後1分足と直後11分足とが反転したり(16%)、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったり(24%)したことに比べ、かなり高くなっています。
よって、追撃は徹底です。
巻頭箇条書きのシナリオの項をご参照願います。
以下は2017年8月25日に追記しています。
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、販売件数が前回・予想を下回り、前月比が前回を上回ったものの予想を下回りました(といっても、前月比マイナス)。反応は直後1分足が陽線となり、直後11分足は陰線となりました。上下にヒゲを有して、方向の定まらない動きでした。
発表結果は、本ブログで注目している年換算販売件数こそ減少したものの、前年同月比としては+2.1%でした。がしかし、この前年同月比を直後1分足の陽線での反応理由にするには、少し無理があるように思われます。
指標結果への反応は、在庫不足による販売増が難しくなっている、との事前報道も散見されたことから、数値低下にも関わらず陰線が伸びる状況ではなかった、と思われます。1分足の陽線は、そうした悪化指標終了の安堵もあったのかも知れません。
なお、在庫は26か月連続で前年水準を下回りました。その結果、販売価格は前年同月比で+6.2%となっています。日本に置き換えれば、去年2千万円だった中古住宅が、今年は2120万になった、という感じでしょうか。
また、発表後の方向が定まらなかった理由のひとつには、テクニカルな要因もあった、と思われます。
まず、発表直前が109.20に対し、発表時点における15分足チャートで、レジスタンス109.21(雲上端)とサポート(雲下端)に挟まれていました。
そして、指標結果悪化を事前に予想していた参加者が多かったためか、直前10-1分足と直前1分足の値幅は計そして、11pipsとなっていました。本指標の直後1分足跳幅・値幅は、過去平均でそれぞれ6pips・4pipsしかありません。つまり、指標結果悪化に伴う下げは、指標発表前に下げきっていた、と見なすこともできます。
取引結果は次の通りでした。
直前10-1分足は、それ以前からの下降が止まらずに跳幅11pips・値幅7pipsの陰線となりました。指標発表前の反発もあるかと思って、シナリオ通りに買ポジションを取りましたが損切です。
直前1分足は陰線、発表後は上下動が大きく、これならショートでなくてロングでも微益を重ねることができていたかも知れません。
事前調査分析内容を以下に検証します。
事前準備していたシナリオは次の通りです。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
T.指標予想要点
2017年8月24日23:00に米国実態指標「中古住宅販売件数」が発表されます。今回は2017年7月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事作成時点の値です。
※ 本稿は8月22日に記しています。市場予想は発表直前に確認しておきましょう。
※ 黄色欄は、後述する事前差異判別式の変数と解です。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 本指標は、新築住宅販売件数との関係で論じられることが多々見受けられます。
がしかし、こうした関係を論拠に本指標結果を論じても、あるいは、本指標結果から新築住宅販売件数を論じても、両指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は増減方向すら一致率が高くありません。グラフの上昇基調や下降基調が一致することはあっても、単月毎だと前月と翌月の増減すら大して一致しません。例え、どちらかの指標が前後1〜3か月先行/遅行しているとしてもです。 - そんなことを気にしなくても構いません。
本指標は、反応こそ小さいものの、指標発表前に発表直後の反応方向を示唆する偏りがいくつか過去事例から見出せます。そして、指標発表後は一方向に反応を伸ばしやすいという傾向も見受けられます。
つまり、取引しやすい指標なのです。 - 注意すべき点は、本指標の反応がかなり小さいため、強いトレンドを生じているときに指標結果なんて関係ないことです。強いトレンドが生じていないときにも、こうした反応が小さな指標は、戻り率が大きいという特徴があります。
負けても大したことありませんが、高値(安値)掴みには気を付けましょう。
以上の本指標特徴を踏まえ、後記詳述した調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
- 直前10-1分足は陽線と見込みます。
指標一致性分析の結果、直前10-1分足は事前差異との方向一致率が67%です。取引基準の70%に達しないものの、まぁいいでしょう。
但し、過去平均跳幅は6pipsしかありません。2・3pipsで利確(損切)するぐらいのつもりでいましょう。 - 直前1分足は陰線と見込みます。
過去の陰線率が85%と、極端な偏りを示しています。但し、過去平均跳幅が4pipsしかありません。1・2pipsで利確(損切)するぐらいのつもりでいなければならないので、気が向かなければ取引は取りやめます。 - 指標発表を跨いでポジションを取るのは、直前10-1分足跳幅が10pips以上となったときだけです。直前10-1分足が10pips以上跳ねたら、跳ねた方向でなく値幅方向に指標発表前にポジションを取得します。利確(損切)は指標発表直後の跳ねで行います。
- 指標発表後は、追撃を早期開始・徹底します。
反応性分析の結果、直後1分足と直後11分足の方向一致率が高く、跳幅・終値ともに一方向への反応を伸ばしがちです。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「T.調査・分析」に記しています。
U.過去調査詳細
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
本指標は全米不動産業者協会(NAR)が翌月25日頃に発表します。
数値は季節調整済・年率換算されています。
発表結果に対する初期反応は小さいものの、素直に反応する傾向があり、反応の持続時間も長め、という傾向があります。
米国では新築住宅よりも中古住宅の流通量が大きく、そのため住宅関連指標では本指標が注目されます。また、住宅販売件数は消費やリフォームなどの関連需要にも繋がるため波及効果も大きい上、消費者個人の収入・金利の見通しが反映されています。
注意すべき点は、新築住宅販売件数が契約書署名ベースであるのに対して、中古住宅販売件数は所有権移転完了ベースで集計されています。従って、本指標は新築住宅販売件数に対し1〜2か月遅行する、と言われています。
がしかし、直近の傾向を見る限り、よく指標解説に見かける1〜2か月の遅行など起きていません。この件は後記詳述いたします。
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本指標に関する調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
最も指標結果に素直に反応する直後1分足跳幅は、過去平均でたった6pipsです。反応が小さいため、大きなトレンドが発生しているときには、指標発表結果の影響はすぐにトレンドに呑まれてしまいます。こうした反応が小さい指標で取引するときは、例えば、
- まず、本指標にはトレンド方向を転換するほどの影響力がないことを頭に入れておく
- 事前に15分足チャートでトレンド方向と上下のサポート・レジスンタンスの位置を確認しておく
- トレンドに逆らわない方向に期待的中率が高ければ取引し、そうでなければ取引しない
- トレンドに反する方向に反応を伸ばしても、サポートやレジスタンスを抜けることは少ない(抜けるときは強いトレンドがあるときぐらい)
というやり方が良いでしょう。
個々の取引で大けがさえしなければ、これで年間を通してプラスにしやすくなるでしょう。
【2. 既出情報】
(2-1. 過去情報)
(2-1. 過去情報)
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。
下図は発表結果と市場予想をプロットしています。市場予想は発表直前の値をプロットし、発表結果は後に修正値が発表されても定時発表値のままをプロットしています。
年換算販売件数と前月比とは、グラフの様子がまるで異なります。これら項目毎に反応方向にどの程度影響しているのかを下表に纏めておきました。
上表の上2行は、販売件数と前月比の各項目を、ひとつずつ反応方向との一致率を求めています。これは予備計算のようなもので、この予備計算は最も反応方向との一致率が高い項目に注目しています。
上から3行目は、事前差異(市場予想ー前回結果)と直前10-1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
上から4行目は、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
最下段5行目は、実体差異(前回結果ー市場予想)と直後11分足の方向一致率が高くなるように、各項目の係数を求めています。
事前差異判別式は、2✕販売件数の差異+1✕前月比の差異、としておけば、この判別式符号(プラスが陽線、マイナスが陰線)と直前10-1分足の方向一致率が67%となります。
事後差異判別式は、1✕販売件数の差異+2✕前月比の差異、としておけば、この判別式符号と直後1分足との方向一致率が75%となります。
実態差異判別式は、直後1分足・直後11分足のいずれとも方向一致率が事後差異判別式のそれより低くなっているので、使う必要がないでしょう。
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年換算販売件数は、前月と翌月とで発表結果と市場予想の大小関係が入れ替わったことが12回(41%)あります。前月比は、それが18回(62%)あります。
いずれも、中立的な50%から大きく外れておらず、本指標は市場予想後追い型ではありません。
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本指標は所有権移転完了ベースで集計されています。そして、関連指標である新築住宅販売件数は、契約書署名ベースで集計されています。そのため、本指標は新築住宅販売件数に対し1〜2か月遅行する、という解説を多く見かけます。
これは、事実に照らして正しくありません。
事務手続き上の順序と所用時間については、その通りなのでしょう。けれども、新築住宅を購入する人と中古住宅を購入する人は、両方同時に購入する人を除けば一致しません。だから、実際に販売件数が前月より増えたか減ったかを調べると、事務手続き上の所要時間1〜2か月の新築住宅販売件数の先行性はありません。
事実が「ありそうな話」と異なる原因はわかりません。ただ、新築住宅購入者と中古住宅購入者は、同じように住宅購入をするにせよ、所得階層か年齢層が異なるのではないでしょうか。所得階層や年齢層が異なれば、「えい」と住宅購入を決めることに時間差が生じることだって「ありそうな話」です。
実際に確認しておきましょう。
両指標間に先行・遅行の関係があるなら、実態差異(発表結果ー前回結果)に現れるはずです。下図は、中古住宅販売件数と新築住宅販売件数の実態差異を、前後3か月ずらして一致率を調べた結果です。調査期間は2015年1月分から2017年6月分までの30回分です。一方の指標を1か月ずらすと、両指標を対比できるデータ数は29に減り、2か月ずらすと28に減ります。
図から、ある集計月の中古住宅販売件数と最も一致率が高くなるのは、翌月集計された新築住宅販売件数です。中古住宅販売件数の方が1か月遅行しており、事務手続き上の順序や期間とは関係ありません。そして、両指標の実態差異は、最も一致率が高いズレでも59%しか一致していません。両指標に関係がない、とまでは言いませんが、59%しか増減方向すら一致しないなら、他の予兆を探した方がマシです。
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以上の分析要点は以下の通りです。
(1) 事後差異判別式は、1✕販売件数の差異+2✕前月比の差異、としておけば、この判別式符号と直後1分足との方向一致率が75%となります。
(2) 本指標は現在、市場予想後追い型ではありません。
(3) 本指標は、新築住宅販売件数の遅行指標として知られています。がしかし、両指標の実態差異の方向一致率は低く(60%未満)、そうした関係は両指標間にありません。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が6pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去4回(頻度13%)あります。この4回の直後1分足跳幅は6pipsで、これは直後1分足跳幅の過去全平均6pipsと同じです。そして、この4回の直前10-1分足と直後1分足の方向は3回(75%)一致しています。
次に、直前1分足の過去平均跳幅は4pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去にありません。逆に言えば、もし直前1分足跳幅が10pips以上動いた場合、何か過去にない異常なことが起きている可能性があります。
そして、直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は2pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率33%)です。直後11分足のそれは5pips(戻り比率45%)です。反応が小さい指標は戻り率が高くなりがちで、そのことが余計に取引を難しくします。
これらのローソク足の詳細分析は、ローソク足観察よりも他の分析を参照する方が良いでしょう。
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過去のローソク足の特徴を纏めると以下の通りです。
(1) (頻度13%)直前10-1分足跳幅が10pips以上動くことがあります。過去事例では、その動きは直後1分足の方向を示唆している可能性があります(期待的中率75%)。
(2) 直前1分足の過去平均跳幅は4pipsです。その跳幅が10pips以上だったことは過去にありません。逆に言えば、もし直前1分足跳幅が10pips以上動いた場合、何か過去にない異常なことが起きている可能性があります。
(3) 直後1分足の過去平均跳幅と値幅の差は2pips(1ー値幅/跳幅=戻り比率33%)です。直後11分足のそれは5pips(戻り比率45%)です。反応が小さい指標は戻り率が高くなりがちで、そのことが余計に取引を難しくします。戻り率が高い指標では、高値掴み・安値掴みをしやすいので気を付けましょう。
【3. 定型分析】
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は「反応性分析」をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は「反応一致性分析」をご参照願います。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は「指標一致性分析」をご参照願います。
指標一致性分析の結果を下表に示します。
事前差異は、直前10-1分足との方向一致率が67%となっています。今回の事前差異はプラスなので、こうした場合に直前10-1分足は3回に2回の割合で陽線となります。
事後差異と直後1分足の方向一致率は75%となっています。市場予想に対する発表結果の良し悪しに、素直に反応しがちな指標です。
次に、反応一致性分析の結果を下表に示します。
直前1分足は陰線率が85%、直後1分足は陽線率が79%と、偏りが目立ちます。直前1分足と直後1分足との方向一致率は27%(不一致率が73%)なので、矛盾はありません。
あとは、直後1分足と直後11分足の方向一致率が84%と高いことを除けば、先に形成されたローソク足が後で形成されるローソク足の方向を示唆している兆しはありません。
最後に、反応性分析の結果を下表に示します。
まず、直後1分足と直後11分足との方向一致率は84%です。そして、その84%の方向一致時に、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えて反応を伸ばしたことは90%に達しています。
つまり、指標発表後は反応方向を確認したら追撃を早期開始すればいいのです。
そして、指標発表から1分を経過すると、直後1分足終値を超えて直後11分足終値が伸びていたことが60%となっています。この確率は、直後1分足と直後11分足とが反転したり(16%)、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったり(24%)したことに比べ、かなり高くなっています。
よって、追撃は徹底です。
【4. シナリオ作成】
巻頭箇条書きのシナリオの項をご参照願います。
以上
2017年8月24日23:00発表
以下は2017年8月25日に追記しています。
V.発表結果検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は、販売件数が前回・予想を下回り、前月比が前回を上回ったものの予想を下回りました(といっても、前月比マイナス)。反応は直後1分足が陽線となり、直後11分足は陰線となりました。上下にヒゲを有して、方向の定まらない動きでした。
発表結果は、本ブログで注目している年換算販売件数こそ減少したものの、前年同月比としては+2.1%でした。がしかし、この前年同月比を直後1分足の陽線での反応理由にするには、少し無理があるように思われます。
指標結果への反応は、在庫不足による販売増が難しくなっている、との事前報道も散見されたことから、数値低下にも関わらず陰線が伸びる状況ではなかった、と思われます。1分足の陽線は、そうした悪化指標終了の安堵もあったのかも知れません。
なお、在庫は26か月連続で前年水準を下回りました。その結果、販売価格は前年同月比で+6.2%となっています。日本に置き換えれば、去年2千万円だった中古住宅が、今年は2120万になった、という感じでしょうか。
また、発表後の方向が定まらなかった理由のひとつには、テクニカルな要因もあった、と思われます。
まず、発表直前が109.20に対し、発表時点における15分足チャートで、レジスタンス109.21(雲上端)とサポート(雲下端)に挟まれていました。
そして、指標結果悪化を事前に予想していた参加者が多かったためか、直前10-1分足と直前1分足の値幅は計そして、11pipsとなっていました。本指標の直後1分足跳幅・値幅は、過去平均でそれぞれ6pips・4pipsしかありません。つまり、指標結果悪化に伴う下げは、指標発表前に下げきっていた、と見なすこともできます。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
直前10-1分足は、それ以前からの下降が止まらずに跳幅11pips・値幅7pipsの陰線となりました。指標発表前の反発もあるかと思って、シナリオ通りに買ポジションを取りましたが損切です。
直前1分足は陰線、発表後は上下動が大きく、これならショートでなくてロングでも微益を重ねることができていたかも知れません。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容を以下に検証します。
- 関連指標との相関について、次のように捉えていました。
「本指標は、新築住宅販売件数との関係で論じられることが多々見受けられます。
がしかし、こうした関係を論拠に本指標結果を論じても、あるいは、本指標結果から新築住宅販売件数を論じても、両指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は増減方向すら一致率が高くありません。グラフの上昇基調や下降基調が一致することはあっても、単月毎だと前月と翌月の増減すら大して一致しません。例え、どちらかの指標が前後1〜3か月先行/遅行しているとしてもです。」
同月7月集計分の新築住宅販売件数も、数値低下で陰線でした。今月発表では、新築住宅・中古住宅ともに実態差異はマイナスで一致したことになります。がしかし、まだそれでも一致率は60%に足りません。
来月も同じ見解で構いません。 - 次に、発表前後の反応について、次のように分析していました。
「本指標は、反応こそ小さいものの、指標発表前に発表直後の反応方向を示唆する偏りがいくつか過去事例から見出せます。そして、指標発表後は一方向に反応を伸ばしやすいという傾向も見受けられます。
つまり、取引しやすい指標なのです。」
反応こそ小さかったものの、直前10-1分足と直後1分足の方向は逆となりました。発表後に一方向に反応を伸ばしたか否かは、4本足チャートではわかりにくいものの、1分足チャートではそうした形状となっています。 - 取引上の注意点として、次のように記していました。
「本指標の反応がかなり小さいため、強いトレンドを生じているときに指標結果なんて関係ないことです。強いトレンドが生じていないときにも、こうした反応が小さな指標は、戻り率が大きいという特徴があります。
負けても大したことありませんが、高値(安値)掴みには気を付けましょう。」
結果は、強いトレンドが発生している場面ではなかったものの、戻り比率が大きく、上下にヒゲを形成しながら少しずつ値を下げていく動きでした。
問題ありません。
(6-2. シナリオ検証)
事前準備していたシナリオは次の通りです。
- 直前10-1分足は陽線と見込みました。
指標一致性分析の結果、直前10-1分足は事前差異との方向一致率が67%で、取引基準の70%に達しないものの、まぁ良しとしました。
但し、過去平均跳幅は6pipsしかないので、2・3pipsで利確(損切)するぐらいのつもりでいました。
結果は陰線で損切となりました。しかも判断が遅れ、傷口を広げてしまいました。 - 直前1分足は陰線と見込んでいました。
過去の陰線率が85%と、極端な偏りを示していました。但し、過去平均跳幅が4pipsしかないので、1・2pipsで利確(損切)するぐらいのつもりでいました。
結果は陰線で問題ありません。 - 指標発表を跨いでポジションを取るのは、直前10-1分足跳幅が10pips以上となったときだけ、のつもりでした。直前10-1分足が10pips以上跳ねたら、跳ねた方向でなく値幅方向に指標発表前にポジションを取得し、利確(損切)は指標発表直後の跳ねで行うつもりでした。
結果は、陽線側への跳ねが2pips、陰線への跳ねが3pipsで、値幅1pipsの陰線となりました。
分析を外したことに違いありませんが、反応が生じるまで待った結果、発表直後の利確(損切)は行えませんでした。
結果的にこれが正解でした。 - 指標発表後は、追撃を早期開始・徹底するつもりでした。
反応性分析の結果、直後1分足と直後11分足の方向一致率が高く、跳幅・終値ともに一方向への反応を伸ばしがちだったから、です。
結果は、2回追撃を行い、2回とも利確できました。思ったより反応が伸びなかったことが誤算でした。
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は「1. FXは上達するのか」をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上