2017年09月03日
4-2-2. 米国経済実態指標(2017年9月版)
財政収支・国際収支の赤字が続いていても、主要先進国において米国経済は最も好調です。そういう実態を踏まえると、我々アマチュアにも現状の景気の良し悪しを最もわかりやすく表しているのがGDPです。
FX会社HPで重要度・注目度が高く位置付けられていても、反応が小さな指標が多い点が特徴です。
平均的に最も大きく反応する指標は小売売上高で、生産関係の指標はほとんど反応しません。
6月29日に発表された1-3月期GDP確定値は、改定値を上回って1.4%となりました。雇用状況が好調ゆえに、速報値の0.7%・改定値の1.2%よりもいずれ盛り返す、というFOMC見解は正しかったのでしょう。
そして、7月28日に発表された4-6月期GDP速報値は、期待通り+2.6%まで上昇しました。それにも関わらず、一部市場予想を下回ったため、発表直後の反応は陰線です。+2.6%という数字は、1-3月期の+1.4%だけでなく、10-12月期の+2.1%も上回っていたのに、です。
8月30日に発表されたGDP改定値の+3.0%という数字は、直近だと2016年7-9月期分の+3.2%に次ぐ水準です(改定値比較)。米GDPは夏頃(4-6月期か7-9月期)に毎年ピークを迎えます。
(分析事例) 四半期GDP速報値(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP改定値(2017年8月30日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP確定値(2017年6月29日発表結果検証済)
速報値は、初期に比較的安定して大きく反応するものの、その後は伸び悩む傾向があります。
改定値の市場予想は低めになりがちで、発表結果は高めになりがちです。結果、直前10-1分足・直後1分足・直後11分足の陽線率がいずれも70%前後と、かなり偏っています。
また、直後1分足の戻り比率は13%しかないものの、直後11分足のそれは42%もあります。その結果、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったことが69%にも達しています。よって、追撃は発表から1分過ぎまでで、その後は値を戻しがちです。
GDPに直接大きな影響を与えるPCEへの反応より、PCE結果を示唆する小売売上高への反応の方が大きくなる傾向があります。そして、GDPに占める比率が小さな生産関連指標や、個人消費に占める比率が高いと思われる住宅関連指標は、反応が小さい傾向があります。
米国GDPの約70%は個人消費(PCE)が占めています。その個人消費に直結する先行指標は小売売上高と考えられます。
8月15日に発表された7月分小売売上高は、前月比・コア前月比(除輸送機器)ともに前回・予想を上回り、反応は陽線でした。発表直後陽線は5か月ぶりでした。
指標のグラフ推移は、前月比・コア前月比ともに直近ピークの2017年4月を上回り、前月比は2016年12月以来、コア前月比は2017年1月以来の良い数字です。それらの時期はトランプ相場終盤の最も米国指標全般に良かった時期です。
8月30日に発表された4-6月期四半期PCE改定値は+3.3%で、この値は2016年4-6月期分の+4.4%に次ぐ水準でした(改定値比較)。7月28日に発表された4-6月期PCE速報値は+2.8%だったので、かなり大きな上方改定です。
8月31日に発表された7月分PCEは+0.3%(前回+0.1%)、同月分個人所得は+0.4%(前回0%)でした。前月に引き続き、個人所得0%は2016年11月以来です。
(分析事例) 四半期PCE速報値(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期PCE改定値(2017年8月30日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期PCE確定値(2017年6月29日発表結果検証済)
(分析事例) PCE・個人所得(2017年8月31日発表結果検証済)
(分析事例) 小売売上高(2017年8月15日発表結果検証済)
四半期PCEはGDPと同時発表されます。
多くのFX会社が重要度・注目度を高く評価しているにも関わらず、毎月のPCE・個人所得は、反応が小さい指標です。但し、反応方向は、直前10-1分足の方向と一致する傾向があり、発表から暫くしてもその方向に反応が伸びやすい、という特徴があります。
PCEは、CB消費者信頼感指数や小売売上高が先行指標だという話があります。がしかし、同月集計の両指標の実態差異はともに50%前後で、相関があるとは言えません。
初期反応は小さく、指標結果に素直に反応しがちです。発表から1分を過ぎても暫く反応を伸ばしがちですが、時間が経つと反応を伸ばし続けるか否か怪しくなります。追撃は早期参加し、短期利確を繰り返しながら複数回に分けて行った方が良いでしょう。
小売売上高は、CPI結果との実態差異の方向一致率が高い指標です(同時発表されることも多い)。指標発表後の反応は大きく一方向に伸びやすいため、追撃に適した指標だと言えます。
個人資産というのは、金融資産と住宅とがほとんどです。住宅は(ふつう)個人消費で最大の金額です。なので、住宅指標の良し悪しは、経済実態(個人消費)に直接的(住宅購入)にも間接的(家具等の耐久財購入)にも影響が大きい、と考えられています。
現在、米国住宅市場は在庫不足で、低価格帯住宅の販売が好調です。
8月23日に発表された7月分新築住宅販売件数は、年換算販売件数が57.1万件で、前月比が△9.4%でした。
8月24日に発表された7月分中古住宅販売件数は、年換算販売件数が544万件で、前月比が△1.3%でした。中古住宅在庫は26か月連続で前年水準を下回りました。その結果、販売価格が前年同月比で+6.2%となっています。
(分析事例) 新築住宅販売件数(2017年8月23日23:00発表結果検証済)
(分析事例) 中古住宅販売件数(2017年8月24日23:00発表結果検証済)
ともに、FX会社HPなどでは注目度や重要度が高く評価されている指標です。これら指標結果を予想するための指標も多く発表されているものの、これら指標自体の反応は小さく、よっぽど長期ポジションを持つFX参加者を除けば大して重要ではありません。
新築住宅販売件数は中古住宅販売件数より1〜2か月先行するという話があります。その理由の論理飛躍は、異なる客層の行動原理が異なることを無視した誤解が広く流布されたため、と考えられます。実際には両指標のどちらが先行指標であるにせよ、両指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は増減方向すら一致率が高くありません。
ただ、新築住宅販売件数はユニークで、取引上の魅力があります。
指標発表前に予兆的な動きが見受けられることと、発表から1分経過後の追撃に逆張りが適している点で、他の指標で見られない特徴を有しているからです。大したpipsは稼げないものの、勝ちやすい指標かも知れません。これは魅力です。
そして、中古住宅販売件数は、指標発表前に発表直後の反応方向を示唆する偏りが、いくつか過去事例から見出せます。指標発表後も一方向に反応を伸ばしやすいという傾向が見受けられます。これも、取引しやすい指標なのです。
鉱工業(含製造業・エネルギー産業)は、米国GDPの約12%しか占めていません。だから、製造業の好不調が米国経済に与える直接効果は小さい、と捉えています。雇用指標・景気指標・国際収支に影響すると考えているので記録を取って見ていますが、反応が小さくそのときどきのトレンドに呑まれがちなため、指標分析に基づく取引には適していません。
8月17日に発表された7月分鉱工業生産・製造業生産は前回より低下しました。低下幅は、これら指標の過去推移に比べて正常範囲内です。よって、今回の発表があっても鉱工業生産と製造業生産のグラフ推移からは、変化の兆しが窺えません。ただ、設備稼働率は、2016年11月分以降の上昇基調が77%手前で4か月連続停滞しています。
グラフ推移から鉱工業・製造業の好不調を見やすい設備稼働率を見る限り、ここ最近の製造関連景気指標の低下は説明が付かない現象でした。
8月25日に発表された7月分耐久財受注前月比は、前回を大きく下回り△6.8%(前回+6.5%)ました。コア受注は+0.5%(前回+0.2%)でした。
(分析事例) 鉱工業生産・製造業生産・設備稼働率(2017年8月17日発表結果検証済)
(分析事例) 耐久財受注(2017年8月25日発表結果検証済)
指標発表直後1分足跳幅が数pipsしかない指標では、指標結果に素直に反応しがち(事後差異と直後1分足の方向一致率が70%以上)で、且つ、指標結果の予想ができなければ取引する意味がありません。
僅か数pipsしか跳ねない指標では、比較的稼ぎやすい反応方向を確認してからの追撃をうまく出来ても、もっと小さなpipsしか得られません。何より、指標発表直後にすら大きく跳ねない指標は、もし反応を伸ばしがちだという分析結論を得ても、それが単にそのときどきのトレンドに偏りがあったことと区別ができないからです。
耐久財受注は、先に発表される鉱工業生産(同時に製造業生産・設備稼働率が発表)の実態差異(発表結果ー前回結果)との方向一致率が77%となり、両指標の良し悪しに相関があります。
最近は毎月400億ドル台の貿易赤字が続いています。毎月400億ドルという大きさは、年間で日本の国家予算近い規模の赤字ということです。米国の経済規模というのは本当にすごいのですね。
8月4日に発表された6月分貿易収支は、前月比△5.9%の465億ドルの赤字でした。
前月発表(5月分)では、内訳の輸出が2年ぶりの高水準でした。石油輸出が好調なだけでなく、輸出全体が約2年半ぶりの好調さです。今回発表では収支全体が2016年10月以来の赤字縮小でした。がしかし、直近の収支はここ2・3年で赤字が大きな時期に属します。赤字縮小に向かっている兆しは、まだグラフ推移から見出せません。
対中貿易赤字は+3.1%増加し、輸出が減って(△4.7%)、輸入が増えていました(+1.2%)。
米貿易赤字の47%は対中赤字です(2016年)。
7月16日に期日を迎えた米中100日計画は、早い時期にいくつかの合意がありました。中国市場への米国産牛肉輸出再開、米金融機関が中国市場で格付け業務・債券売買に参入、米LNG(液化天然ガス)輸出、といった内容です。その後、新たな合意についての報道がありません。これらの合意成果は、まだ指標結果に反映されていません。
8月18日、USTR(米通商代表部)は、通商法301条に基づく中国の知的財産権侵害調査を開始しました。8月24日、中国商務省は、国益を守るために必要なあらゆる手段を講じる、と表明しました。
(分析事例) 貿易収支(2017年4月4日発表結果検証済)
本指標の特徴は、貿易赤字が多少増えようが減ろうが、発表直後の反応方向にあまり関係ありません。発表時刻の関係で、他の大きな指標と同時発表されることも多く、その結果、見掛け上の反応平均値は大きくなっています。単独で発表される場合には、あまり反応しない指標です。
本指標結果や内訳を論拠に、米政権からの2国間貿易収支に関する牽制発言があり得ます。本指標の意義は、毎月の貿易赤字の多寡よりも、そうした発言でUSDJPYが動くことへの警鐘を与えてくれることです。
FX会社HPで重要度・注目度が高く位置付けられていても、反応が小さな指標が多い点が特徴です。
平均的に最も大きく反応する指標は小売売上高で、生産関係の指標はほとんど反応しません。
【4-2-2.(1).経済成長】
6月29日に発表された1-3月期GDP確定値は、改定値を上回って1.4%となりました。雇用状況が好調ゆえに、速報値の0.7%・改定値の1.2%よりもいずれ盛り返す、というFOMC見解は正しかったのでしょう。
そして、7月28日に発表された4-6月期GDP速報値は、期待通り+2.6%まで上昇しました。それにも関わらず、一部市場予想を下回ったため、発表直後の反応は陰線です。+2.6%という数字は、1-3月期の+1.4%だけでなく、10-12月期の+2.1%も上回っていたのに、です。
8月30日に発表されたGDP改定値の+3.0%という数字は、直近だと2016年7-9月期分の+3.2%に次ぐ水準です(改定値比較)。米GDPは夏頃(4-6月期か7-9月期)に毎年ピークを迎えます。
(分析事例) 四半期GDP速報値(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP改定値(2017年8月30日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期GDP確定値(2017年6月29日発表結果検証済)
速報値は、初期に比較的安定して大きく反応するものの、その後は伸び悩む傾向があります。
改定値の市場予想は低めになりがちで、発表結果は高めになりがちです。結果、直前10-1分足・直後1分足・直後11分足の陽線率がいずれも70%前後と、かなり偏っています。
また、直後1分足の戻り比率は13%しかないものの、直後11分足のそれは42%もあります。その結果、直後11分足が直後1分足の値幅を削ったことが69%にも達しています。よって、追撃は発表から1分過ぎまでで、その後は値を戻しがちです。
【4-2-2.(2) 実態指標】
GDPに直接大きな影響を与えるPCEへの反応より、PCE結果を示唆する小売売上高への反応の方が大きくなる傾向があります。そして、GDPに占める比率が小さな生産関連指標や、個人消費に占める比率が高いと思われる住宅関連指標は、反応が小さい傾向があります。
(2-1) 消費関連
米国GDPの約70%は個人消費(PCE)が占めています。その個人消費に直結する先行指標は小売売上高と考えられます。
8月15日に発表された7月分小売売上高は、前月比・コア前月比(除輸送機器)ともに前回・予想を上回り、反応は陽線でした。発表直後陽線は5か月ぶりでした。
指標のグラフ推移は、前月比・コア前月比ともに直近ピークの2017年4月を上回り、前月比は2016年12月以来、コア前月比は2017年1月以来の良い数字です。それらの時期はトランプ相場終盤の最も米国指標全般に良かった時期です。
8月30日に発表された4-6月期四半期PCE改定値は+3.3%で、この値は2016年4-6月期分の+4.4%に次ぐ水準でした(改定値比較)。7月28日に発表された4-6月期PCE速報値は+2.8%だったので、かなり大きな上方改定です。
8月31日に発表された7月分PCEは+0.3%(前回+0.1%)、同月分個人所得は+0.4%(前回0%)でした。前月に引き続き、個人所得0%は2016年11月以来です。
(分析事例) 四半期PCE速報値(2017年7月28日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期PCE改定値(2017年8月30日発表結果検証済)
(分析事例) 四半期PCE確定値(2017年6月29日発表結果検証済)
(分析事例) PCE・個人所得(2017年8月31日発表結果検証済)
(分析事例) 小売売上高(2017年8月15日発表結果検証済)
四半期PCEはGDPと同時発表されます。
多くのFX会社が重要度・注目度を高く評価しているにも関わらず、毎月のPCE・個人所得は、反応が小さい指標です。但し、反応方向は、直前10-1分足の方向と一致する傾向があり、発表から暫くしてもその方向に反応が伸びやすい、という特徴があります。
PCEは、CB消費者信頼感指数や小売売上高が先行指標だという話があります。がしかし、同月集計の両指標の実態差異はともに50%前後で、相関があるとは言えません。
初期反応は小さく、指標結果に素直に反応しがちです。発表から1分を過ぎても暫く反応を伸ばしがちですが、時間が経つと反応を伸ばし続けるか否か怪しくなります。追撃は早期参加し、短期利確を繰り返しながら複数回に分けて行った方が良いでしょう。
小売売上高は、CPI結果との実態差異の方向一致率が高い指標です(同時発表されることも多い)。指標発表後の反応は大きく一方向に伸びやすいため、追撃に適した指標だと言えます。
(2-2) 住宅関連
個人資産というのは、金融資産と住宅とがほとんどです。住宅は(ふつう)個人消費で最大の金額です。なので、住宅指標の良し悪しは、経済実態(個人消費)に直接的(住宅購入)にも間接的(家具等の耐久財購入)にも影響が大きい、と考えられています。
現在、米国住宅市場は在庫不足で、低価格帯住宅の販売が好調です。
8月23日に発表された7月分新築住宅販売件数は、年換算販売件数が57.1万件で、前月比が△9.4%でした。
8月24日に発表された7月分中古住宅販売件数は、年換算販売件数が544万件で、前月比が△1.3%でした。中古住宅在庫は26か月連続で前年水準を下回りました。その結果、販売価格が前年同月比で+6.2%となっています。
(分析事例) 新築住宅販売件数(2017年8月23日23:00発表結果検証済)
(分析事例) 中古住宅販売件数(2017年8月24日23:00発表結果検証済)
ともに、FX会社HPなどでは注目度や重要度が高く評価されている指標です。これら指標結果を予想するための指標も多く発表されているものの、これら指標自体の反応は小さく、よっぽど長期ポジションを持つFX参加者を除けば大して重要ではありません。
新築住宅販売件数は中古住宅販売件数より1〜2か月先行するという話があります。その理由の論理飛躍は、異なる客層の行動原理が異なることを無視した誤解が広く流布されたため、と考えられます。実際には両指標のどちらが先行指標であるにせよ、両指標の実態差異(発表結果ー前回結果)は増減方向すら一致率が高くありません。
ただ、新築住宅販売件数はユニークで、取引上の魅力があります。
指標発表前に予兆的な動きが見受けられることと、発表から1分経過後の追撃に逆張りが適している点で、他の指標で見られない特徴を有しているからです。大したpipsは稼げないものの、勝ちやすい指標かも知れません。これは魅力です。
そして、中古住宅販売件数は、指標発表前に発表直後の反応方向を示唆する偏りが、いくつか過去事例から見出せます。指標発表後も一方向に反応を伸ばしやすいという傾向が見受けられます。これも、取引しやすい指標なのです。
(2-3) 生産関連
鉱工業(含製造業・エネルギー産業)は、米国GDPの約12%しか占めていません。だから、製造業の好不調が米国経済に与える直接効果は小さい、と捉えています。雇用指標・景気指標・国際収支に影響すると考えているので記録を取って見ていますが、反応が小さくそのときどきのトレンドに呑まれがちなため、指標分析に基づく取引には適していません。
8月17日に発表された7月分鉱工業生産・製造業生産は前回より低下しました。低下幅は、これら指標の過去推移に比べて正常範囲内です。よって、今回の発表があっても鉱工業生産と製造業生産のグラフ推移からは、変化の兆しが窺えません。ただ、設備稼働率は、2016年11月分以降の上昇基調が77%手前で4か月連続停滞しています。
グラフ推移から鉱工業・製造業の好不調を見やすい設備稼働率を見る限り、ここ最近の製造関連景気指標の低下は説明が付かない現象でした。
8月25日に発表された7月分耐久財受注前月比は、前回を大きく下回り△6.8%(前回+6.5%)ました。コア受注は+0.5%(前回+0.2%)でした。
(分析事例) 鉱工業生産・製造業生産・設備稼働率(2017年8月17日発表結果検証済)
(分析事例) 耐久財受注(2017年8月25日発表結果検証済)
指標発表直後1分足跳幅が数pipsしかない指標では、指標結果に素直に反応しがち(事後差異と直後1分足の方向一致率が70%以上)で、且つ、指標結果の予想ができなければ取引する意味がありません。
僅か数pipsしか跳ねない指標では、比較的稼ぎやすい反応方向を確認してからの追撃をうまく出来ても、もっと小さなpipsしか得られません。何より、指標発表直後にすら大きく跳ねない指標は、もし反応を伸ばしがちだという分析結論を得ても、それが単にそのときどきのトレンドに偏りがあったことと区別ができないからです。
耐久財受注は、先に発表される鉱工業生産(同時に製造業生産・設備稼働率が発表)の実態差異(発表結果ー前回結果)との方向一致率が77%となり、両指標の良し悪しに相関があります。
【4-2-2.(3) 貿易指標】
最近は毎月400億ドル台の貿易赤字が続いています。毎月400億ドルという大きさは、年間で日本の国家予算近い規模の赤字ということです。米国の経済規模というのは本当にすごいのですね。
8月4日に発表された6月分貿易収支は、前月比△5.9%の465億ドルの赤字でした。
前月発表(5月分)では、内訳の輸出が2年ぶりの高水準でした。石油輸出が好調なだけでなく、輸出全体が約2年半ぶりの好調さです。今回発表では収支全体が2016年10月以来の赤字縮小でした。がしかし、直近の収支はここ2・3年で赤字が大きな時期に属します。赤字縮小に向かっている兆しは、まだグラフ推移から見出せません。
対中貿易赤字は+3.1%増加し、輸出が減って(△4.7%)、輸入が増えていました(+1.2%)。
米貿易赤字の47%は対中赤字です(2016年)。
7月16日に期日を迎えた米中100日計画は、早い時期にいくつかの合意がありました。中国市場への米国産牛肉輸出再開、米金融機関が中国市場で格付け業務・債券売買に参入、米LNG(液化天然ガス)輸出、といった内容です。その後、新たな合意についての報道がありません。これらの合意成果は、まだ指標結果に反映されていません。
8月18日、USTR(米通商代表部)は、通商法301条に基づく中国の知的財産権侵害調査を開始しました。8月24日、中国商務省は、国益を守るために必要なあらゆる手段を講じる、と表明しました。
(分析事例) 貿易収支(2017年4月4日発表結果検証済)
本指標の特徴は、貿易赤字が多少増えようが減ろうが、発表直後の反応方向にあまり関係ありません。発表時刻の関係で、他の大きな指標と同時発表されることも多く、その結果、見掛け上の反応平均値は大きくなっています。単独で発表される場合には、あまり反応しない指標です。
本指標結果や内訳を論拠に、米政権からの2国間貿易収支に関する牽制発言があり得ます。本指標の意義は、毎月の貿易赤字の多寡よりも、そうした発言でUSDJPYが動くことへの警鐘を与えてくれることです。
以上
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