2020年06月09日
父の寿命A
私の父は現在80歳。
4月に癌であることが発覚して
「ああ、もうすぐ確実に父は逝くんだ」とおもい、
残りの父との人生をどのように過ごそうかと
焦ったり、焦っても仕方ないし…とか思いながら
暮らしていた。
とりあず、毎週実家に帰り、父の気に入るおみやげ
(シズヤのあんパンとか、りくろーおじさんのチーズケーキとか)を
でご機嫌を伺おうかとおもっていた。
しかし、コロナの騒動で母から「帰ってこなくていい」といわれ
4月はまるまる1カ月父に会うことはなかった。
そしてまだ解除はされていないゴールデンウィークの最中
やっぱり心配だし、帰ることにした。
父は普段やることといえば、リビングのテレビの前で
テレビを観たり、ラジオを聞いたり、新聞を読んだり
「これは」と思う新聞記事を切り抜いてスクラップすること。
漫画も好きで、ここ何年かは西原理恵子がお気に入り。
そんな日常…だけど、だんだん、なかなかリビングにやってくる時間が
遅くなり、ほとんどベッドルームで過ごすようになっていた。
私が帰ったときは、いつものリビングにいて、
私の買ってきたあんパンとりくろーおじさんのチーズケーキを
喜んで、おいしそうに食べた。
だけど、あまり食べることができずにほとんど残していた。
でも、「やっぱりりくろーおじさんのチーズケーキはうまい!」と
喜んでいたので、私は毎週買って帰ろうとおもった。
しかし、次の週は、ベッドから起きてくることはなかった。
母のことも心配だったので、私は母とたくさん喋って
庭の掃除などをして帰った。
次の週も、ベッドで寝ていたけど、
よろよろと起きてきた。
その日はすいかとメロンを買ってきていた。
父はその日あたりから、ほとんど何も食べていなかったそうなのだ。
でも、すいかとメロンは食べたので
私は安心した。
そしてなんやかんやと喋った。
だいぶ痩せていたけど、いつも通りの父。
しかし…
私が帰った後、トイレで転んだそうなのだ。
毎日看護師さんが通ってくれていたので、
母が連絡をし、なんとか助けることができた。
しかし…
さらに、その夜、大量の血を吐いた、と
姉からのラインが。
もう夜中、明け方近かったらしいが、
看護師さんはすぐ来てくれたようで
処置をしてくれたらしい。
そして看護師さんは「娘さんを呼んでください」と告げた。
姉と姉の旦那が向かい、
「今夜が山です」とのこと。
大量の血を吐き黒い便をもらした父は
一時は急変したけど、看護師さんの処置で
症状は安定。
そしてその夜、私も実家へ向かった。
スイカとメロンを買っていった次の日のことである。
まさか、まさか、こんな早くに…
と、ここまでが5月末までの話。
現在は…
なんと父は生きている。
普通、血を吐き黒い便が出ると
もうそろそろ…
なのだそうなのだけど(看護師さんが自信をもって言うてはった)
父は…死ななかった。死んでないのだ、今も。
5月の半ばから食欲がなくほとんど食べていない。
現在も、何も食べていない。水だけ。
…なんだけど…
生きてます。
しかし、寝たきりになってしまったことは
もう仕方ない。
母も高齢なので、姉がよく泊まって介護。
私も、3日に1回、泊まりに通っている、という感じ。
看護師さんが1日に1回来てくれているので、気がラクです。
寝たきりの父の介護…
私はめっちゃ恐れていた。
…でも…
なんか、想像していたのと違う。
なんというか…
恐れていたほどイヤではないです。
想像していたような悲壮感はないのです。
そして、悲しみもないです。
なんでしょうか、不思議です。
「死なないで!」みたいな気持ちもないし
「はやく死ね!」みたいな憎しみもないです。
父は…
余命を知ってショック…よりも
死ぬ準備をしているのかなと
思ったのです。
周りは「治療しなくちゃ!」とかいろいろ言うけど
自分の命のことって、自分自身でしか
わからないとおもうのですよ。
「寝たきりになるくらいなら、死んだ方がまし!」と
いう人もいるけど(私もそうおもってたけど)
それは、本人にしかわからない。
寝たきりであっても、それでも
生きているということを
選びたい、とおもうこともある。
誰も死にたいとはおもわない、とおもう。
でも…それも
誰だって生きていたいはず、というのも
他人からの押し付けです。
ちなみに…
父はかなりの変人です。
寝たきりの今でも文句いうし…
「かわいそう」な感じはない。
人って他人に「こうするべき」とか「こうしたいはず」とか
「こう思うはず」って期待ばかりしますよね。
そういうのが、すべて自分勝手な幻想なのではないか?と
感じます。
ていうか…
「確実にもうすぐですよ」とまで
言われた父の臨終は、まだもうちょっと先のようです。
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