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2015年12月09日

(小説)ルシーの明日・その7

 とは言え、私だって、シリコニーの謎を自力では全く突き止められなかった訳でもないのである。シリーそのものからは明確な証拠は引き出せなかったものの、自分で調べてみる事で「シリコニー」と同じ発音のものは探し当てていたのだ。
 アイザック・アシモフと言うSF作家が書いた小説の一つに「もの言う石」と言う短編がある。この作品に出てくる特殊な宇宙生物がシリコニーと呼ばれているのだった。このシリコニーを一言で説明してしまえば、鉱物型の生き物の事である。地球に住む一般的な動植物の体内組織が全て炭素系の原子を中心に構成されているのに対して、シリコニーはケイ素系の原子によって体が構築されている。だから、鉱物(石)のような生き物と言う訳だ。
 もちろん、これは理論上で考えだされただけの生物に過ぎない。実際には、ケイ素系生物なんて、まだ、どこからも見つかっていないのだった。SFと言うフィクションだからこそ、存在を認められた生き物なのだ。真面目な科学者の見解によると、広い外宇宙の別の天体においてすら、ケイ素系生物が自然発生する可能性はほぼゼロだろうとも言われている。
 よって、シリーが語る「シリコニー」は、このケイ素生物の事でもないのであろう。地球上でも外宇宙でも、ケイ素生物なんてものが存在出来そうにないと言うのでは、そもそも話にならない。
 しかし、シリコニーと呼ばれるものが、調べた限り、このケイ素生物しかないらしいと言うのも確かなのである。   (つづく)

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posted by anu at 21:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説
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