2009年06月15日
鶏肉が危険
今から10年ほど前でしょうか、講演活動用に本屋で資料を探していたら『週刊現代』に衝撃的な記事が載っていました。致死率50%恐ろしい病原菌鶏肉から検出!!という風な記事でした。そこで初めて知った言葉が『薬剤耐性菌やくざいたいせいきん』という言葉でした。
正直にこの『薬剤耐性菌』という言葉を知っている人って何割くらいいるのでしょうか?気になりますが、巷では新型インフルエンザで話題が持ちきりですが実はインフルエンザと人類の戦いに終止符が打たれていないのと同じで細菌と人類の戦争にも未だ決着がついていません。
ことの発端は結核菌との戦いからだそうですが、戦中戦後は国民病と言われ全世界で蔓延していた病気が結核でした。不治の病と言われ感染したら助からないと言われ、あの武田信玄や竹中半兵衛、沖田総司、曹操、周喩、諸葛亮孔明、正岡子規、ショパンも結核で亡くなったそうです。
長い間、結核に勝てなかった人類が勝利を収めたのが、抗生物質『ペニシリン』開発です。結核の研究をしていたフレミングという学者が、たまたま研究中に食べていたパンを結核菌を培養したシャーレの中に落とし気がつかないまま時間が過ぎ、しばらく時間がたつとパンが腐って青カビが発生しました。ところが青カビが発生していた周りだけ結核菌が死滅していたことに気付き研究した結果、青カビからペニシリンの抽出に成功しました。人類を救う世紀の大発明が偶然から生まれた瞬間です。
その大発見から現在まで結核の死亡率は格段に下がり不治の病ではなくなりました。もしこの発見が三国志の時代に発見されていたら歴史は大きく大きく変わっていたはずです。曹操も周喩も孔明も若くして死なないで済んだかもしれないと考えるとゾッとします。
しかし、抗生物質を長期にわたって乱用しすぎた結果思いもがけないツケが回ってきました。それが薬剤耐性菌なんです。
人間の腸内には腸内フローラと言われ、まるでお花畑のようにたくさんの腸内細菌に支配されています。抗生物質が体内に入ってくるとこの腸内細菌が一時的に死滅してしまします。その時に悪玉菌と言われる悪さをする細菌だけが死滅してくれれば有り難いのですが、同時に善玉菌という健康を司る細菌も一緒に死滅します。一旦死滅すると復活までには時間が必要ですがその時に生まれ変わりながら増殖していく細菌の中にたった一匹(正確には一株)だけ突然変異で抗生物質の全く効かない薬剤耐性菌というスーパー病原菌が生まれてしまう時があります。更に抗生物質を乱用するとどんどん耐性菌の発生しやすい腸内環境になってしまいます。
聞くところによると病院で肺炎などで入院する患者には間違いなく抗生物質が投与されます。その患者さんの腸内では先ほどのような耐性菌が発生しやすい腸内環境になります。
そしてその患者さんが院内のトイレで排便をします。その手でトイレのペーパーホルダーや洗浄コック、トイレのドアノブ、洗面所の水栓などを触ります。その時に患者さんの手に付いた耐性菌がいろんな処に撒き散らしてしまうことになります。これが二次感染を引き起こし院内感染が拡大することになります。
私が講演に来た方に伝える事が病院ではなるべくトイレに行かない方がいいという事を伝えます。アメリカの病院は院内感染対策として衛生面の強化を迎合しているそうですが、日本の病院の対策はズサンなものだと聞いたことがあります。もしそれが原因で感染すると家まで持ち帰り三次感染四次感染と広がる可能性もあります。もし家族の中に抵抗力の低いお子様やご年配の方がいればそれが原因で命を落としたというケースも報告されていますので気を付けて下さい。
予備知識としてスーパー病原菌の中でも最も恐れられている細菌を紹介します。
@ペニシリン耐性結核菌
Aストレプトマイシン耐性結核菌
Bメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (通称MRSA)
Cバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌 (通称VRSA)
Dバンコマイシン耐性腸球菌 (通称VRE)
この5つは中でも有名な耐性菌です。
耐性の前に付くカタカナ名が抗生物質の種類です。今現在、最強と言われていて最終手段と判断した時以外は使われない抗生物質がバンコマイシンと言われていますが、このバンコマイシンすら効かない菌に感染するということは死を意味します。
ここで安心しがちなことが、病院に行かなければ大丈夫だろう!抗生物質を飲用しなければ大丈夫だろう!と思ってしまうことです。それはそれで大事なことなのですが、冒頭の週刊現代の記事が何故怖かったかというと抗生物質を投与するのは何も人間だけではないよ!という事実を知ったからです。
人間に投与される抗生物質の約2倍近くが鳥などの家畜に餌として撒かれるということです。養鶏家の間では抗生物質を餌に混ぜた方が病気しないだけではなく鶏の腸内細菌叢にも薬が沁み渡り悪玉菌が増殖し鶏が太りやすくなり肉の出荷量が増える。こういう事を平気でやっている業者もいるということです。抗生物質を使ったほうがリスクが減り収穫量が増えるので有り難いというのです。この時点で悟らないといけないのが、生産者の中にはコストダウンと収穫量アップに力を注ぎ消費者の健康は考慮していないということです。勿論全部が全部ではありません。ちゃんと消費者優先で真面目にやっている方もいます。
そして、国産の鶏もそうなんですが、もっともっと怖いのが輸入鶏肉なんです。10年ほど前に講演した時のお客様に聞いたことを覚えているのですが、『スーパーで買う鶏肉は昔、国産か外国産か分かるシールって貼っていましたか?』と聞くと『どこ産かなんて分らなかった』と返事が返ってきました。実はちゃんと明記しなさいと義務付けられたのは海外の鶏にVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)が頻繁に検出されたという報道があってからなんです。
当時の厚生省の発表では
フランス産の鶏肉から50%
タイ産から21%
ブラジル産、ベトナム産の鶏肉からも高確率でVREを検出したという報告でした。
こんな感染菌だらけの鶏肉ばかり食べていたらいつか必ず肺炎を併発し死んでしまう可能性もでてきます。そして、このような細菌に感染している鶏は殆どブロイラーだということです。宮崎県で鳥インフルエンザが発生しましたが全部、ブロイラーだったそうです。
放し飼いの鶏は自由気ままなのでストレスが少なく感染症にもなり難いので抗生物質を必要としないのでまず、耐性菌が発生することは少ないと思います。
以前も卵のお話をした時にも放し飼いの鶏が良いと言いましたがこういう理由もあるからです。
前に近くの大手スーパーの出店の焼鳥屋さんに何げなく聞いたのですが『随分安いですね。国産ですか?』と聞いたら『いやいやベトナム産だから安く手に入るんですよ』と聞いてからなるべく買うのを控える事にしました。知らないというのは怖いことです。
高温で焼いているから安心と言いますが入荷する時はみんな生肉です。仕分けする段階、運ぶ段階、調理する段階にいつ誰の手に細菌が付着しているかは目では確認できません。だから、なるべくでいいんです。極力不安と思うものには手を出さないことが自分を守る手段です。
これは鶏肉にだけ限ることではなく豚肉も牛肉も同じことです。綾小路君麻呂も言っています『牛肉も駄目、豚肉も鶏肉も駄目、食べていい肉はのはにんにくだけ』