「北朝鮮」で同床異夢、「歴史」は日本が得点: 新聞記事の解読法

2018年05月10日

「北朝鮮」で同床異夢、「歴史」は日本が得点

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　日中韓首脳会談は合意文書の作成に手間取りました。「検証可能かつ不可逆的な非核化」を北朝鮮に求めることを日本政府は明記しようとしましたが、中韓の反対で見送られました。
　共同宣言を見ると、中国が使うような表現が多いように思います。拉致問題についても「対話を通じて可能な限り早期に解決されることを希望する」という言い回しにとどまりました。
　ただ、歴史認識については、「３カ国が悠久の歴史および久遠の未来を共有していることを再確認しつつ、引き続き協力を進めていく」という書きぶり。これは安倍晋三首相の「勝利」です。
　３年前のソウルで開かれた日中韓首脳会談の共同宣言は「歴史を直視し未来に向かう」と書かれていました。「直視」は「日本の過去の侵略」の含意があります。今回は「悠久の歴史を共有」という中立的な表現になりました。
　深夜まで調整に時間が掛かった理由がよく分かりました。日本政府は北朝鮮問題に関して強硬姿勢を取り、歴史認識の部分で押し切るという作戦だったのでしょう。
　北朝鮮に対する支持を鮮明にしつつある中国と南北融和に染まる韓国を相手に、「検証可能かつ不可逆的な非核化」で一致することは現時点では不可能です。他方、日本が議長国の会議で、歴史認識で譲歩してしまうと危険でした。次回以降、「歴史の直視」よりもさらに日本にとって受け入れがたい書き方になってしまうかもしれません。
　あえて「北朝鮮」で無理筋の要求をしておいて、絶対に譲れない「歴史」で自らの要求を呑ませることができました。
　ただ、今の北朝鮮情勢、中韓との関係を考えると、「このぐらいの表現は当たり前だろう」という冷静な評価もできます。今回は北朝鮮問題やそれぞれの国内事情で比較的合意しやすかったはずなのですが、それでも、互いになかなか容易に歩み寄れないというのが日中韓の関係。今後も道のりは平坦ではないでしょう。

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