格闘科学トレーニング研究所

俺とヌンチャクとパワーリスト

パワーリストの話

「ドラゴンへの道」がテレビ放映された翌日、クラスではその話ばかりだった。男子の中でだけだが。

それまではスーパーカーとかテリーファンクやドリーファンク、ミルマスカラスなんかの話題で、休み時間はプロレスごっこだったが、翌日からクンフーごっこになってしまった。

俺はやられ役ばかりやらされるので嫌になってクンフーごっこはやらなくなった。そのかわりタオルだろうが給食袋だろうが、ヌンチャクのように振り回していた。

俺が馬鹿な小学生だったからかもしれないが、俺の周りの友達もみんな振り回していた。つまりみんな馬鹿男子だったのだ。

肉体改造を決意していた俺はまずなにから始めようか考えた。
そのころの俺の情報源はテレビと漫画である。

車田まさみ先生の連載していた「リングにかけろ」でパワーリストというトレーニング用具があることを知り、衝撃を受けた。「これしかない！」と。

今まで、ねだるものと言えばプラモデルやモデルガンだったのに聞いたこともない運動用具をねだられた親は、いぶかりながらスポーツ用品店に問い合わせてくれた。

まだ、ジャンプで通信販売のパワーリストが売られる前だったので、いったいどこに行けば買うことが出来、いくらぐらいするものなのか、まったく情報が無かった。

ヌンチャクも欲しかったが、まずは稲妻パンチを身につけてからだろう、と考えた俺は、1点集中でパワーリストをねだり続け、かなり高価な特殊運動器具扱いの鉛の入ったサポーターを買ってもらった。　今でもパッケージ写真もありありと思い出せるのだが、資料が見つからない。

250グラムの鉛の板が入ったマジックテープ式のリストバンドで鮮やかなブルーがやけに目立つ。

俺としては目立たないように四六時中つけてパワーアップを図りたかったのだが、学校につけていくのは、勇気が出ずにあきらめた。

家ではいつでも付けていたが、両親に評判が異常に悪く、常に文句を言われた。

親父曰く「そんな、手に重りをつけて1日中いるなんて、ガレー船の奴隷みたいだ」

おやじは「ベンハー」を見たばかりだったようだ。

母曰く「見るだけで、だるくなる、いいかげん外しなさい」

それでもめげずに俺は次はヌンチャクだと心に決めていた。

かなり後になってこうゆう広告が出てはやりだした。