2019年08月21日
女の子と赤シャツの男 シエゴ・デ・アビラの交通事故にまつわるちょっといい話 キューバ
女の子と赤シャツの男
Cubadebate、2019年8月21日、Ortelio González Martínez記者
そこで彼を見た。不安げに、右手を上にのばして、視線は廊下のほうに向けられていた。彼は血清を支えていた。私が去ろうとしたその瞬間、彼はその婦人(写真に写っている女性)に頼んでいた。アントニオ・ルアセス・イラオラ病院の救護隊までちょっと行くので手伝ってもらえないかと。あの運命的な8月11日の夜遅く、バスがスリップして路肩に止まろうとして横転し、6つのタイヤは宙をあおぎ、44人の乗客はその中に閉じ込められたときだ。
「運転手は速度違反はしていなかったし、飲酒もしていなかった。暑かったからホテルに着いたときに清涼飲料水を飲んだだけだった」、と男の子が母親に話していた。子どもたちは嘘をつかない。
時間がたって、その男はそこで、血清を持って、女の子と話していた。女の子は驚いて彼を見ていた。旅が途中で終わってしまい、悲劇はもっと悪いものでありえた。「何かある。ねえ、ジャーナリストさん、バスがどうなったか。私たちはみんな死んでいてもおかしくなかった。まだ車の下にとじこめられている男性がいる。真ん中あたりの席にいた人だ。彼を覚えているわ」、とある女性が言った。夜のとばりが、シエゴ・デ・アビラ市のヒコテア集落近く、ちょうど454km地点の中央道を包み始めていた中、フラッシュをたいたときだった。
- おしっこがしたい、と女の子が言った。
男、「おまるを持ってきてくれ。この子がおしっこするから」
女の子、「いや、いや、ママかパパがいい」。すると男は着ていた赤シャツを脱いで、カーテンのような空間をつくり、周りの人の目から遠ざけて、その婦人(写真に写っている女性)に女の子を見てくれるよう頼んだ。
- あなたはお父さんですか?
- いいえ。この女の子とは知り合いではない。私はマハグアから来て、事故を見かけた。女の子は血を流していた。急がないといけないと思い、車に乗せて、病院に連れてきた。知り合いではないが、女の子はいい子にしている。
子どもがいる人ならだれでも、おばあちゃんや、母親や、父親や、叔母さんたちのことばの数多くの教えが思い出されるだろう。「子どもたちは両親とだけ出かけるべきで、他人とはダメ」、「最良の家族は母親である」、「叔父さんたちは海水浴場ではあてにならない」、「父親は息子を連れていないときに思い出す」。結局、推測と現実の混合である。
見ている側によるのだ。
しばらくして、黒いブラウスを着た女性が、勢いよく、駆け寄ってきた、おそらく最悪の事態を考えていたのだろう、そこには女の子がいた、その小さな手は赤シャツの男をつかんでいた。
事故にあった女の子の母親
La niña y el hombre del pulóver rojo
http://www.cubadebate.cu/especiales/2019/08/21/la-nina-y-el-hombre-del-pulover-rojo/#.XV_E7OgzbIV
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