2009年05月03日
慢性前立腺炎や前立腺痛症に対する生薬
慢性前立腺炎とは下腹部や陰部、肛門周囲の痛み、あるいは不快感といった症状が主体となって現れる男性の病気です。慢性前立腺炎は、はっきり言うと泌尿器科医にとっても謎の病気です。座り仕事をする男性に多い事とか、刺激物(香辛料の多い食事)で悪化すること、下半身を暖めたら多少よくなる事くらいがわかっているが、原因・診断・治療にいたるまで全てが不明な点が多い。
一般論としては、細菌性慢性前立腺炎と呼ばれている疾患群では抗生物質が効くことがある。一般検尿に異常がある場合は、抗生物質の効く場合も多く、完治する場合も多い。細菌性慢性前立腺炎患者とされる患者の何割かは細菌が関与しているのだろう。しかし、本当に全例が「細菌性」なのかは疑問が多い。実際に「細菌性」と診断したにもかかわらず抗生剤の効かない症例の方が圧倒的に多く、難治性である。非細菌性前立腺炎という「細菌を検出できない」前立腺炎では一般検尿所見に異常がないことがほとんどで、抗生剤はたいてい無効である。
しかし、慢性前立腺炎と呼ばれている疾患群の診断自体が「前立腺マッサージの分泌液」や「マッサージ後検尿」という、現在では否定されつつある診断法によって診断されている。診断として従来は前立腺マッサージ後の前立腺液と検尿に白血球を証明するのが慢性前立腺炎の証明とされていた。近年では、慢性前立腺炎患者と健常者とで前立腺マッサージ後の前立腺液検査を比較した所、健常者にも多数の白血球認められ慢性前立腺炎患者との差は無かったとの研究報告があり、従来のマッサージ検尿による診断法も疑問視せざるおえない。つまり、正常人もマッサージすると分泌液に白血球が混じるので意味がないのではないかととされている。唯一の診断法だったマッサージ検尿が否定された今では、「客観的な異常所見がなく、他の類似疾患が見当たらない」という消去法的診断法が唯一の診断法となりつつある。
治療も確立した治療法がなく、病院で処方するような薬効の確立された薬(αブロッカーや抗コリン剤、ブラダロンなど)が奏功する場合もあるが、奏功する頻度は高くない。また、植物エキス製剤、アミノ酸製剤、漢方薬など薬効の不明な薬(エビプロスタット、パラプロスト,セルニルトン,八味地黄丸など)が古くから処方されてきましたが、その作用機序や有用性については十分に検討されていない。しかし、これらの生薬は何故か奏功(完治ではなく症状軽減)がみられる事がある。不可解な点であるが、個々人によって本人が「効いた」という薬が異なるため、患者が気に入ったものを処方している。病院で処方する薬以外にはサプリメントを推奨する事も多い。
ノコギリヤシ(ソーバルメッド)
自分が病院で推奨しているものは、生薬のなかでも作用機序や有用性が一番検討されているおりノコギリヤシ(ソーバルメッド)です。5αレダクターゼ(テストステロン代謝)に関与されているとされており、160mg錠を1日2回。一日量320mgで内服してもらう。問題点は処方薬でも市販薬でもなくサプリメントであるので、有効成分が少なかったり、表記どおりの有効成分が入ってなかったりする可能性がある。粗悪品を買わないようにパンフレットを渡して注意するようにしている。大塚製薬が輸入している 「ネイチャーズリソース」を推奨している。少なくとも海外でしかデータのないサプリメントなので、アメリカで実際に汎用されているもので効果を確認すべきと思う。米国ファーマバイト社が厳しい品質管理のもと製造しているとのこと。
ネイチャーズリソース ノコギリヤシ:60粒入
エビプロスタット
次に推奨しているものがエビプロスタットである。こちらは前立腺肥大症で汎用される薬剤である。αブロッカーと違い尿勢や残尿の改善は得られないが、頻尿・膀胱刺激症状の改善のため使用される。生薬ならではの根拠に乏しい薬ではあるが、基礎実験レベルではモノアミンの抑制による機序だろうと推測されており、全く根拠がないわけではない。モノアミンとはカテコラミンなどの交感神経系の伝達物質である。下部尿路は交感・副交感神経による支配が強く、αブロッカーやα刺激剤、抗コリン、コリン作動薬などの交感・副交感神経関連の薬剤で調節するのが基本なので、他の生薬より優先して使いたい。オオウメガサソウ、ハコヤナギ、セイヨウオキナグサ、スギナ、小麦胚芽油から調剤されているが、どの成分が薬効があるのか未だ不明とのことである。
エビプロスタット:100錠(PTP)
セルニルトン
おそらく前立腺炎で最も汎用されている生薬と思う。チモシイ・トウモロコシ・ライムギ・ヘーゼル・ネコヤナギ・ハコヤナギ・フランスギク・マツの花粉を、ミツバチが集めてきたものを錠剤としているものらしい。薬効や作用機序は不明。同期の腫瘍免疫学の研究をしてた泌尿器科医は、「免疫応答に関連するのではないか?」などと言っていたが、データにもとづいた話ではないようだ。
セルニルトン錠:100錠(10錠×10)PTP
パラプロスト
Lグルタミン酸・Lアラニン・アミノ酢酸の合剤。何でこんなものが効くのか、本当に効くのか、完全に不明な薬。しかし、他の薬も薬効が完全に実証されているわけでもなく、試してみる場合もある。
パラプロスト:100カプセル(PTP)
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一般論としては、細菌性慢性前立腺炎と呼ばれている疾患群では抗生物質が効くことがある。一般検尿に異常がある場合は、抗生物質の効く場合も多く、完治する場合も多い。細菌性慢性前立腺炎患者とされる患者の何割かは細菌が関与しているのだろう。しかし、本当に全例が「細菌性」なのかは疑問が多い。実際に「細菌性」と診断したにもかかわらず抗生剤の効かない症例の方が圧倒的に多く、難治性である。非細菌性前立腺炎という「細菌を検出できない」前立腺炎では一般検尿所見に異常がないことがほとんどで、抗生剤はたいてい無効である。
しかし、慢性前立腺炎と呼ばれている疾患群の診断自体が「前立腺マッサージの分泌液」や「マッサージ後検尿」という、現在では否定されつつある診断法によって診断されている。診断として従来は前立腺マッサージ後の前立腺液と検尿に白血球を証明するのが慢性前立腺炎の証明とされていた。近年では、慢性前立腺炎患者と健常者とで前立腺マッサージ後の前立腺液検査を比較した所、健常者にも多数の白血球認められ慢性前立腺炎患者との差は無かったとの研究報告があり、従来のマッサージ検尿による診断法も疑問視せざるおえない。つまり、正常人もマッサージすると分泌液に白血球が混じるので意味がないのではないかととされている。唯一の診断法だったマッサージ検尿が否定された今では、「客観的な異常所見がなく、他の類似疾患が見当たらない」という消去法的診断法が唯一の診断法となりつつある。
治療も確立した治療法がなく、病院で処方するような薬効の確立された薬(αブロッカーや抗コリン剤、ブラダロンなど)が奏功する場合もあるが、奏功する頻度は高くない。また、植物エキス製剤、アミノ酸製剤、漢方薬など薬効の不明な薬(エビプロスタット、パラプロスト,セルニルトン,八味地黄丸など)が古くから処方されてきましたが、その作用機序や有用性については十分に検討されていない。しかし、これらの生薬は何故か奏功(完治ではなく症状軽減)がみられる事がある。不可解な点であるが、個々人によって本人が「効いた」という薬が異なるため、患者が気に入ったものを処方している。病院で処方する薬以外にはサプリメントを推奨する事も多い。
ノコギリヤシ(ソーバルメッド)
自分が病院で推奨しているものは、生薬のなかでも作用機序や有用性が一番検討されているおりノコギリヤシ(ソーバルメッド)です。5αレダクターゼ(テストステロン代謝)に関与されているとされており、160mg錠を1日2回。一日量320mgで内服してもらう。問題点は処方薬でも市販薬でもなくサプリメントであるので、有効成分が少なかったり、表記どおりの有効成分が入ってなかったりする可能性がある。粗悪品を買わないようにパンフレットを渡して注意するようにしている。大塚製薬が輸入している 「ネイチャーズリソース」を推奨している。少なくとも海外でしかデータのないサプリメントなので、アメリカで実際に汎用されているもので効果を確認すべきと思う。米国ファーマバイト社が厳しい品質管理のもと製造しているとのこと。
ネイチャーズリソース ノコギリヤシ:60粒入
エビプロスタット
次に推奨しているものがエビプロスタットである。こちらは前立腺肥大症で汎用される薬剤である。αブロッカーと違い尿勢や残尿の改善は得られないが、頻尿・膀胱刺激症状の改善のため使用される。生薬ならではの根拠に乏しい薬ではあるが、基礎実験レベルではモノアミンの抑制による機序だろうと推測されており、全く根拠がないわけではない。モノアミンとはカテコラミンなどの交感神経系の伝達物質である。下部尿路は交感・副交感神経による支配が強く、αブロッカーやα刺激剤、抗コリン、コリン作動薬などの交感・副交感神経関連の薬剤で調節するのが基本なので、他の生薬より優先して使いたい。オオウメガサソウ、ハコヤナギ、セイヨウオキナグサ、スギナ、小麦胚芽油から調剤されているが、どの成分が薬効があるのか未だ不明とのことである。
エビプロスタット:100錠(PTP)
セルニルトン
おそらく前立腺炎で最も汎用されている生薬と思う。チモシイ・トウモロコシ・ライムギ・ヘーゼル・ネコヤナギ・ハコヤナギ・フランスギク・マツの花粉を、ミツバチが集めてきたものを錠剤としているものらしい。薬効や作用機序は不明。同期の腫瘍免疫学の研究をしてた泌尿器科医は、「免疫応答に関連するのではないか?」などと言っていたが、データにもとづいた話ではないようだ。
セルニルトン錠:100錠(10錠×10)PTP
パラプロスト
Lグルタミン酸・Lアラニン・アミノ酢酸の合剤。何でこんなものが効くのか、本当に効くのか、完全に不明な薬。しかし、他の薬も薬効が完全に実証されているわけでもなく、試してみる場合もある。
パラプロスト:100カプセル(PTP)
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