2011年12月28日
虫歯奇譚・歯痛殿下3(アニメ学校の怪談・二次創作作品)
さて水曜日。2000年フジテレビ系列放送アニメ、「学校の怪談」の二次創作の日です。
キャラクター等当作品を良く知りたい方は、リンクWikiwを参照。
それではどうぞ…の前にコメントの返事。
今までの「よもやま話」は、このためのフリだったのか!さすがだぜっ!だが、1つ足りないものがある、それは……動画の宣伝だ!このページ内で紹介するべきだったな!!
→http://www.nicovideo.jp/mylist/16638163
!!!!ぬ、ぬかったわぁ!!( ゚д゚)・°。ガハァ
と、いうことは、唯一羽衣をまとっていたヒータの憑依装着シーンの詳しい描写はあるんでしかね!(ワクワク♥)
・・・小生は一体何を期待されているのだ・・・(汗)
弟が進学のため家を出る→遊戯王と疎遠になる→その後ニコニコへ……。なんか身に覚えのあるストーリーだな……デジャヴ?
貴殿は小生のドッペルゲンガーか・・・?
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その6・(ああ、こりゃ酷いなぁ。痛いはずだよ。)
旧校舎の保健室。そこは午後の日差しの中でひっそりと静まりかえっていた。
「見て・・これ。」
部屋に入ったさつきは床に散乱した備品と、それらに混じって転がるひびの入った古い歯列標本を指さした。
「きっと、この中に霊眠させられてたんだ・・・。」
「どうして割れてしまったんでしょう・・・?」
レオの疑問に桃子が答える。
「たしか、三日ほど前に地震がありましたから、きっとその時に戸棚から落ちてしまったんですね。考えて見れば、あの地震の後からですものね。歯痛を起こす方が増え始めたのは・・・。」
「そっか・・・。よし!!みんな、始めましょう!!」
さつきの言葉に、皆がうなずいた。
ベッドには皆の中で唯一、歯痛の難を逃れていた桃子が横になり、さつき達はカーテンの陰に隠れて見張る事にした。
「来ますかね・・・?」
「今は天邪鬼の言う事を当てにするしかないだろ・・・。」
「しっ、あれ!!」
さつきの声に、ハジメ達も会話を止めその方向を凝視する。
シュルシュルシュル・・・
いつの間にか、空中に白く長い、糸の様なものが漂っていた。それはやがて空中で絡まり始め、何かの形を編み上げていく。
シュルシュル・・シュルシュルシュルシュルシュル・・・
「・・・あれが・・歯痛殿下・・・!?」
さつき達の前に現れたのは、想像以上に奇妙な化け物だった。
短い足にダラリと長い腕、その先には人間の倍以上の長さを持つ細い指が六本ずつ、ミミズの様にのたうっている。顔つきはひょろ長く、犬と猿の中間の様な印象を持つ。その顔の中心には、飛び出す様に付いた真っ赤な目玉が二つ、グリグリと左右好き勝手に動いていた。
そして、何よりも奇異なのは白い糸状のもので編み上げられたその体。一本の糸として空を舞っている時には気が付かなかったが、一箇所に凝縮した今ではそれが妙に生々しいヌメヌメした質感を持っている事が良く分かる。その体を構成するもの・・・それは白い糸などではなく、ぬるぬると照り光る歯神経の塊だった。
『歯歯歯歯歯歯歯・・・』
それは楽しそうに含み笑いをすると、ベッドに横たわる桃子に近づき、ウネウネと動くその指を桃子の口元へと近づけた。
その7・(こりゃ、抜くしかないね。)
「そこまでよ!!」
『歯?』
突然の人の声に、歯痛殿下は驚いた様に振り向く。
「歯痛殿下!!かくご!!」
カーテンの陰から踊り出たさつきが、新校舎の保健室から失敬してきた歯列標本を歯痛殿下に突きつける。
『歯!?歯歯っ!!!歯歯歯ーーーっ!!!』
それを見た歯痛殿下は慌てて体の構成を解き、糸の姿になって逃げ出そうとする。
しかしー
「させるかよっ!!」
『歯っ!?』
突然戸棚の上から踊り出た天邪鬼が、その鋭い爪で歯痛殿下の体を突き刺し、床に縫い付けてしまう。
『歯っ!?歯歯ーーー!!』
怒りの声を上げる歯痛殿下を睨み付け、天邪鬼は不敵な笑みを浮かべる。
「おい!!てめぇ、新参者の分際で、随分と好き勝手やってくれたじゃねぇか!!
お礼はたっぷりさせてもらうぜ!!さつき、やれっ!!」
「うん!!みんな!!」
さつきの声を受け、ハジメ達が歯痛殿下をに五亡星の形に取り囲む。
そしてティッシュペーパーの包みを取り出し、包まれていた塩を床に
置く。
日記の通り、五亡星の形に置かれた塩はただちに結界を構成し、歯痛殿下の動きを封じ込める。
『歯っ!!!歯歯歯歯歯歯歯ーーーーー!!!』
悲鳴を上げる歯痛殿下に、さつきは歯列標本を真正面から突きつける。
「かくごしなさい・・・。今までのお返しよ!!」
そして、声をはりあげて霊眠の呪文を口にしようとしたその時―
ボゥ・・・
歯痛殿下の両眼が怪しい光を放つ。途端―
ズッキィイイイイッ
「ウェッ!?」
「ヒッ!!」
「ヒャッ!!」
「ウォッ!?」
それまでとは比べ物にならない程の激痛が歯を襲い、さつき達は堪らず悲鳴を上げた。
「い、イタ・・イタタタタッ!!」
「痛いよ―――っ!!」
「だ、だめ、こんなの、無理―――っ!!」
耐え切れずに床に伏し、のたうち回る。
「お、おい、お前ら・・・!!」
「み、皆さん、大丈夫ですか!?」
桃子と、何故か平静を保っているハジメが慌てて皆を見回す。
「う・・や、野郎・・・っ!!」
激痛を堪えながら、天邪鬼が苦悶の声を上げる。
激痛のあまり緩んだその爪から、歯痛殿下がヌルリと抜け出していた。
結界を作っていた塩の山は、さつき達がのた打ち回ったせいで崩され、当にその効力を失っていた。
『歯歯歯歯歯歯歯歯・・・。』
そんなさつき達を嘲る様に笑うと、歯痛殿下はその身体を解き始める。
「や、野郎!!逃げる気だ!!」
ハジメが慌てた声を上げたその時―
「ハジメさん、これを―――っ!!」
「!!」
そんな声と共に桃子から投げ渡されたものを見たハジメは、その意図を瞬時に理解し、頷く。
「おい!!歯痛殿下!!」
『歯?』
ベチャッ
名を呼ばれ、思わず振り返った歯痛殿下の顔に何か白いものが当たった。途端―
『歯、歯歯―――――っっ!!』
悲鳴を上げて床に墜落する歯痛殿下。顔を抑えたまま、今度は自分がのたうち回る。
「・・・あ、あれ?」
「歯が・・・?」
さっきまでの激痛が治まり、キョトンとするさつき達に向かって、ハジメが叫ぶ。
「さつき―――!!」
「――え・・きゃっ・・・ってこ、これ・・・。」
自分の手の中に入ってきたものを見て、さつきは目を丸くする。
それは某大手はみがきメーカーの目玉商品、桃子愛用の「サ〇スターつぶ塩はみがき」だった。
「な、なるほど…。」
全てを理解したさつきはそれを足元に練り出すと、今度は隣の敬一郎に向かって投げ渡す。
「敬一郎!!」
「う・・うん!!」
敬一郎、レオと歯磨きのチューブは回り、最後に桃子の手に戻る。
メンバーそれぞれの足元に盛られた歯磨き粉の山。その中に含まれた荒塩が、再び結界を形成する。
「歯歯歯歯ぃいい―――っ!!!」
苦悶の声を上げる歯痛殿下。そして―
「今度こそ!!」
落とした歯列標本を拾い直したさつきは、キッと顔を上げるとそれを床でのたうつ歯痛殿下にむけ、高らかに霊眠の呪文を唱えあげる。
「治療は本日で終了です!!治療は本日で終了です!!治療は本日で終了です!!」
シュオォォォオンッ!!
それとともに、歯列標本の開かれた口の中に光が灯り、そこに異界への入り口が開く。不可思議な力が流動し、歯痛殿下の体を捕らえ、引き寄せる。
『歯ぃぃぃぃいいいいいいぃぃーーーーーーーーーーーーー!!!』
尾を引く断末魔を残し、歯痛殿下の体が歯列標本の中へと吸い込まれていく。
やがて歯列標本の放つ光も歯痛殿下の断末魔も消え、それと同時に歯列標本の口がパクッと閉じた。
「よし・・・。霊眠、完了だ。」
「ふぅ・・・。」
天邪鬼の言葉に、皆がほっと息をつく。と、
「!!、お姉ちゃん、歯の痛いの、治ったよ!!」
「え!?あ、ほ、本当だ!!」
敬一郎の言葉に、さつきは驚きの声を上げる。
たしかに、さきほどまでズキズキと頭に響いていたはずの痛みが、きれいさっぱり消えていた。
「なるほど!!痛みの元凶だった歯痛殿下が霊眠したから、その妖力の産物である歯痛も消えたというわけですね!!ああ・・健康って素晴らしい!!」
晴れ晴れとした表情で喜び合うさつき達を、うれしそうに見ていた桃子が、一人その輪から外れている人物がいる事に気が付く。
「?、ハジメさん、どうしました?」
「あの・・・俺の歯痛、治んないんですけど・・・。」
「・・・え?」
ハジメの言葉に、皆の歓声が止まる。
「そんな馬鹿な・・・。現に僕達の歯痛は治ってるんですよ?」
「んなこと言ったって、治ってねーんだからしょうがねぇだろ!!」
「どういう事でしょう・・・。ひょっとしてまだ完全に霊眠していないとか・・・?」
「えー!?でも、ちゃんと日記に書いてある通りにやったじゃん!!」
不安そうに言い合うさつき達を見ていた桃子が、ふと何か思いついた様に口を開いた。
「あの・・・ハジメさん・・・」
「?、はい?」
「それってひょっとして・・・本当の虫歯なのでは・・・?」
「・・・・・あ・・・・・。」
ひゅーーーーー・・・
凍りついた皆の間を、冷たい風がむなしい音を立てて通り過ぎて行った・・・。
エピローグ・(それじゃ、痛かったら痛いって言ってねー。)
「ああ、こりゃ酷いなぁ。痛いはずだよ。」
ハジメの口の中をのぞいた医師は、顔をしかめてそう言うと、傍らの用具入れからおもむろに注射器を取り出す。
それを見たハジメの顔から、スーッと血の気が引いていく・・・。
「こりゃ、抜くしかないね。それじゃ、痛かったら痛いって言ってねー。」
医師はにこやかにそう言うと、口を開けたままものを言う事もままならないハジメの歯茎に、ブッスリと注射針を突き刺した。
「〇×△◎■×▽ーーーーーーーーっ!!!!!」
「・・・やっぱり、歯磨きって大事ですね・・・。」
「敬一郎、これからも歯磨きはちゃんとしなきゃ駄目よ・・・。」
「うん!!」
窓越しにハジメの声にならない悲鳴を聞きながら、決意を新たにするさつき達であった・・・。
『歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯ッ♪♪♪』
終
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posted by 土斑猫(まだらねこ) at 20:27| 虫歯奇譚・歯痛殿下(学校の怪談・完結)